全4件 (4件中 1-4件目)
1

日本文壇史(2) (著者:伊藤整|出版社:講談社文芸文庫) 明治19年から24年まで。口語文の出現によって新しい文学が次々に生み出されていくかと思うとそう簡単にはいかない。 重要なのは文体だけではなく内容がよくなくてはならないわけで、もてはやされた山田美妙はしだいに評価が低くなっていく。 読んでいて心を打たれるのは、小説を書いて人に知られたいと思いながらも志を得ず消えていく人が少なくない、ということだ。いつの世でもそうだし、小説に限ったことではないが、無名のまま消えていった人々の上に歴史が存在しているのだ。古本で探す
1998.09.25
コメント(0)

日本文壇史(1) (著者:伊藤整|出版社:講談社文芸文庫) 書名から想像していたのとは全く違う面白い本だった。 明治維新の少し前から、坪内逍遙が脚光を浴びるあたりまでが書いてあるのだが、ほとんど水滸伝の世界だ。 あちらこちらで別々に好きなことをやっていた連中が少しずつ関係しあって日本文学の新しい方向性を生み出していく様子が、実に面白く書いてある。 特に、登場する時にはみな本名で書いてあるので、それが後に何という名で有名になる人物なのかわかったりわからなかったりするのがまた面白い。「森林太郎」はすぐにわかるが、例えば、 「またこの山田と同じ級には、英語と漢文がよく出来て、ときどき教師いじめをするが、毎日ボートとか流行りだした野球とか器械体操とか、運動ばかりやっている塩原金之助という、顔にアバタのある学生がいた。」 などとさらりと書いてある。これが夏目漱石であることは巻末の索引で引いてみるまでわからなかった。漱石が出てくるのはこの巻ではここ一カ所。おそらく、先々までの構成が出来ていて、こういう書き方をしたのだろう。古本で探す
1998.09.16
コメント(0)
事件記者 新婚夫婦殺人事件(著者:大谷昭宏|出版社:幻冬舎アウトロー文庫) かつて読売新聞の記者として捜査一課で殺人事件を扱う刑事たちと経験したあれこれが書いてある。 読み物としては面白く、どんどん読み進んでいく。しかし、著者にはちっとも好感が持てない。 解説者は「根底にあるのは、何の落ち度もなく人権を侵害された被害者への悼みなのである」などと書いているが、新聞記者のでっちあげ記事や、勝手な思いこみで犯罪者扱いした人たちへの人権侵害については、著者はどう思っているんだろう。 特に、「情報やふーさん」で週刊誌記者に情報を提供してお礼にごちそうしてもらった話など、よく恥ずかしくなく書けるものだと思う。 「新婚夫婦殺人事件」などというミステリーまがいのタイトルの付け方など、どうもまともな神経の持ち主ではないのでは、とさえ思える。 ただ一点褒められるのは、「新聞記者は自分の都合しか考えていない」ということが正直に書かれていることだ。古本で探す
1998.09.08
コメント(0)
憑霊信仰論(著者:小松和彦|出版社:講談社学術文庫) 最初から一冊の本として書かれたのではなく、テーマの共通する論文を集めたもの。一般読者を対象としているわけではないせいか、あるいはじっくり読まないこちらが悪いのか、読んでいるとその部分部分は分かるし、ほうほうそうか、とも思うのだが、全体としては何だかよく分からないままになってしまった。 一番よく分かったのは、「山姥をめぐって」で、柳田国男の「妖怪は零落した神である」という考え方が否定されている点だった。少しは知識がないと理解できないということなのかな。 なお、巻末に索引があり、これはありがたい。論文集などはこうあってほしいものだ。
1998.09.07
コメント(0)
全4件 (4件中 1-4件目)
1
![]()
