まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2022.01.18
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片襷硬し四日の身を通す 地球史の恐竜遠し炬燵の夜 嚔してスペードの位置忘れたり 雪吊や登校拒否の吾と祖母と 冬旱地図から消えた村の数 雪晴の転勤ミニマリストの棚 裏濾す蕪やアドベントカレンダー あざ笑う鬼の顔ある歌留多かな 寅の尾を目指す迷路よ年賀状 箱の角亡き犬の毛や垂り雪 ルーレット回せど止める炬燵猫 顕微鏡の蠢めく人生ゲーム 幸せの尺度疫禍のちゃんちゃんこ 駒進め人生を知る年始め

お題は「人生ゲーム」。

今回も「異議あり!」ってほどのことじゃないけど、
個人的な感想です。





東国原英夫。
片襷 かただすき 硬し 四日の身を通す


お見事な一句。
新年らしい清廉な身体感覚。

3日までゆっくり休んで、

緊張と潔白とで心を奮い立たせている。

冒頭に「katada」「kata」と、
いかにも硬い音で頭韻を踏むのも面白い。

先生いわく、
「弓始」なら聖、「選挙」なら俗…とのこと。
その解説もちょっと面白かったです。



森口瑤子。
くしゃみ して スペードの位置忘れたり


面白い。
お正月らしい、とぼけたワンカットですね。

後段は「結果描写」というよりも「台詞」っぽい味わいなので、




犬山紙子。
箱の角 すみ 亡き犬の毛や 垂 しず り雪
亡き犬の毛が双六の箱の隅
(添削後)

亡き愛犬を想う心情と、
季語「垂り雪」との響き合いが美しい。
詩情でいうなら上位に匹敵する作品でした。


「箱隅に」「古箱に」「空箱に」 じゃ無理があったでしょうか?



小倉優子。
裏濾す蕪 うらごすかぶ や アドベントカレンダー
離乳食煮て アドベントカレンダー
(添削後a)
離乳食甘し アドベントカレンダー (添削後b)

季語の「蕪」が「アドベントカレンダー」に負けている、
そして「裏濾す蕪」は介護食だと誤読される、
…ってことで添削されてしまった。

ネットで検索する限り、
「かぶの裏ごし」で出てくるのはもっぱら離乳食の情報で、
介護食のことは出てきませんけどね。

それと、
蕪という食材には、
固有の可愛らしさや優しさや暖かさがあって、
それがアドベントカレンダーに響き合うようにも思う。
ロシア民話の「おおきなかぶ」の絵本のイメージ?

個人的には、
蕪の裏ごし アドベントカレンダー
でもいいかなと思います。



キスマイ横尾。
雪晴の転勤 ミニマリストの棚
もの少なき転勤 雪晴の街へ
(添削後)

添削されてしまいましたが、
「ミニマリストの棚」という映像には独特の質感があるし、
それこそが作者の描きたい光景だったろうし、
原句は原句で十分に成立していると思います。

まあ、季語の活かし方は添削のほうが上かな。



千原ジュニア。
雪吊 ゆきつり や 登校拒否の吾と祖母と


本人いわく、
「祖母と兼六園へ出かけた場面」だそうです。
たしかに、雪吊は《兼六園式》が有名ですよね。

しかし、祖母と登校拒否児童が、
一緒に外出した場面を見てとるのは難しい。
なぜなら「登校拒否」「祖母」の字面だけで、
どうしても家庭内の場面を思い浮かべるからです。

ちょっと大きな旧家の庭の景色かと思いました。

まあ、そういう誤読があるとしても、
とくに評価を下げる必要はないかもしれませんが。



梅沢富美男。
冬旱 ふゆひでり 地図から消えた村の数


本人いわく「震災の句」だそうですが、
どうしても季語との因果関係が見えてしまうので、
ごく一般的な「過疎の句」のように読める。
そのぶん、作品のオリジナリティが十分に伝わってきません。

けっして悪い出来ではないのだけれど。



キスマイ千賀。
地球史の恐竜遠し 炬燵 こたつ の夜


フジモンの「マンモス」の句に似ています。
「マンモスの滅んだ理由ソーダ水」ですね。

なかなかの句だとは思うけれど、
強いて言えば、中七の「遠し」が当たり前すぎて、
そこがちょっとつまらない。



フジモン。
あざ笑う鬼の顔ある歌留多かな
あざ笑う鬼の絵赤き歌留多かな
(添削後)

これはいまひとつの出来。
たんに「鬼の札のある歌留多ですよ」と、
京都のいろはカルタを説明しただけの句ですよね…。

梅沢は、
中七の「顔ある」が不要だと言い、
先生は、
とくに「ある」が説明的で損だと言ってたけど、

まず何よりも不要なのは「顔」の一語ですよね。
あざ笑うのは「顔」に決まってるのだから。

他方で「ある」の一語は、
札のなかに鬼の一枚が「ある」という意味だろうから、
作者としては必要な単語だったのでしょう。
ただし、これが説明くささを招いてるのは事実。

最大の敗因は、
季語を主役にしようとするあまり、
最後を「歌留多かな」の詠嘆で締めたことだと思います。
その結果、たんに上方カルタを説明しただけの句になった。

ためしに、
京かるた 吾をあざ笑う鬼のあり
かるたとり 鬼がヒヒヒと嘲笑う

としてみました。



フルポン村上。
寅の尾を目指す迷路よ 年賀状
寅の尾がゴール 年賀状の迷路
(添削後)

これもイマイチ。

原句にしろ、添削句にしろ、
「寅の尾を目指す迷路」=「年賀状」
「寅の尾がゴール 」=「年賀状の迷路」
…ってな感じで、
前段と後段がイコールで結べるのですよね。

つまり、
前段は後段を説明してるだけなので、
これでは取り合わせの句とは言えない。

カットを割らずに一物仕立てにすべきだと思います。

ためしに、
寅の尾へ迷路をたどる年賀状

としてみました。



キスマイ北山。
ルーレット回せど止める炬燵猫


猫が炬燵から手だけ出してるとしても、
ちょっと描写に無理があって正確性に欠ける。

ためしに、
7・8・5の字余りですが、
猫が押さえた炬燵の人生ルーレット
としてみました。



立川志らく。
顕微鏡の蠢 うご めく人生ゲーム


本人いわく、
「地球の生命が微生物から始まったことを人生ゲームに喩えた」
とのこと。

つまり、自然淘汰や系統発生のことを詠んだらしい。

読みの可能性としては、
A:顕微鏡のなかの/蠢めく人生ゲーム

と2通りありえるので、
Bの誤読を排除するためには、
助詞「の」を「に」に直さなければなりません。

顕微鏡に蠢めく人生ゲーム

これなら、かろうじて、
顕微鏡のなかに微生物の生存競争の様子が見える…かもしれない。
でも、どっちにしろ、
地球の生物史までは見えないと思います。



IKKO。
幸せの尺度 疫禍 えきか のちゃんちゃんこ

だいぶ観念的な句。
ちゃんちゃんこ以外の映像がない。

ためしに、
コロナ禍の実家 ちゃんちゃんこの匂い

としてみました。



堀未央奈。
駒進め人生を知る年始め


人生ゲームというより双六でしょうね。

そして、これも双六以外に映像がない。
やはり観念的な句です。

ためしに、
盤上の人生苦 にが き炬燵の子

としてみました。



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最終更新日  2022.01.18 09:20:05


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