まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2024.07.08
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カテゴリ: NHK朝ドラ
朝ドラ「虎に翼」は、




当初、わたしは、
大森美香の「あさが来た」みたいに、
明るくて幸福なドラマになると予想したのですが、

ぜんぜん違いましたね…(^^;

内容は驚くほどシビアだし、
朝ドラのいろいろなセオリーも破ってる。
あまりに型破りなので、


それでいて、
ずっと高視聴率を維持してるのもスゴい。



1.まったく恋をしない!


近年の朝ドラのヒロインは、

というパターンがほとんどなのだけど、

今回のヒロインはまったく恋をしない!

主人公の寅子は、
打算的な結婚のあとに夫と愛情を育んだものの、
すぐに死別してしまいました。

ヒロインも美女じゃないけど、
イケメンらしいイケメンも出てきません。
これほど恋に無縁なヒロインも珍しい…。



従来のNHKの朝ドラは、
家どうしの封建的な結婚ではなく、
個人の恋愛結婚のほうを理想化してきたけど、

今回の「虎に翼」は、
あえて史実に反して打算的な結婚を描きました。
※モデルの三淵嘉子は下宿人の男性を慕って恋愛結婚してます。



現代の日本では恋愛結婚が行きづまりを見せてるし、
打算的な結婚をする人は今も沢山いるはずだから、
そこには一定のリアリティがあるのだと思う。


2.家族が死んでも泣かない!


戦争の不幸もかつてないほど過酷でした。

これは、脚本家の意図というより、
史実にしたがった結果ではあるけれど、
いちどに家の男性が3人もいなくなって、
ほぼ女だけの所帯になってしまった。

上流階級の裕福な家庭だったから、
なんとか乗り切ることができたとはいえ、
これほどの不幸が重なるのは、
朝ドラ史上、例がなかったかもしれない。



その不幸の乗り越え方も、
従来のヒロインとはだいぶ違ってました。
ほとんど涙を見せなかったのです。

母が死ぬときには、
まるで子供みたいに大泣きしてたけど、

夫が死んだときや、
父や兄が死んだときには、
なぜか寅子はほとんど泣きませんでした。



兄の戦死に対しては、
ただ沈黙してただけです。

夫の戦死が分かったときは、
隠していた父に怒りをぶつけたものの、
しばらくして悲しみが襲ってくるまでは、
やはりずっと沈黙しつづけていた。

そして、
父の死の前日には、
家族みんなで爆笑してましたよね。



その日を生きつづけることに必死で、
泣く余裕もないような状況だったから、

たとえ泣くシーンが描かれなくても、
家族の死の重みは十分に伝わったのだけど、

従来の朝ドラの死の描写に比べて、
その独創性は際立って異色だったと思います。


3.努力がちっとも報われない!


女性の社会進出を描く物語としても、
甘ったるいファンタジーの要素は一切なく、
むしろ挫折の描き方こそがえげつなかった。

同窓の友人たちはほぼ全員が挫折してしまった。

ヒロイン自身も、
打算的な結婚によって乗り切ろうとしたものの、
その後の出産が仇になって、
弁護士の道は戦前の段階で諦めることになった。



当初の「男女平等」という理想は、
恩師や友人との努力の賜物としてではなく、

日本が戦争に負けた結果として、
占領軍から "棚ぼた的" にもたらされました。
夫や父や兄を殺した戦争こそが、
日本に「男女平等」の社会をもたらした形です。

しかも、ヒロインは、
その事実を法曹関係者としてではなく、
闇市の焼き鳥を包む新聞紙によって知ることになる。

そこにも容赦のない皮肉がありました。

これは、
努力が報われる一般的なサクセスストーリーではない。
むしろ、それを拒否するような物語になってます。


4.親友や恩師に仇で返す!


親友の寅子に対して、
よねが絶えず攻撃的な態度を取るのも、
しばしば驚かされるのだけど、

恩師の穂高先生に対して、
寅子がしばしば攻撃的な態度を取るのも、
けっこう驚かされましたね。

これは史実に忠実な結果なのか。
一般的なリアリティを追求した結果なのか。
それとも脚本家が自分自身を投影した結果なのか。

ここでもやはり、
視聴者の安易な共感を拒絶してます。


5.それでも高い視聴率!


それにもかかわらず、
この作品がずっと高視聴率を維持してるのは、

やはり、
女性が社会で生きていくことの葛藤と軋轢が、
現代にも通じるリアリティをもってるからだと思う。
これはけっして過去の話じゃないってこと。

この物語のなかには、
悪者らしい悪者はひとりも出てこないけれど、
それでも女性が生きることの困難は絶えません。

社会のなかでも、家庭のなかでも、
それぞれの立場はぶつからざるをえない。

働く女には働く女の苦悩があり、
主婦には主婦の苦悩があります。

若いときは「はて?」を連発していた女性が、
はからずして「すん」の女になりさがることもある。
そこに現代にも通じるリアリティがあります。



こういう型破りな内容で、
若い脚本家が成功を収めてるってのも、
なかなかの脅威じゃないかと感じてます。



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最終更新日  2024.07.10 00:49:19


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