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「映画のようなラブストーリー」 ←こちらからどうぞ いよいよ、婚礼前夜となった。マツさんは益々忙しく、婚礼の宴の場となる地主さんの家の大広間(二間の真ん中の襖をすべて取り払って、長方形の大広間とした) と屋敷内外の清掃、祝い事のみに使用される漆塗りのお膳や御椀などの食器の準備、料理の下ごしらえ等、細部にわたって「見落としはないか?」と朝から休みなく目を配り、女中さんたちに指図を与えている。そして、マツさんの指示を受けて広間、台所、蔵に繋がる廊下を行き交う女中さんたちは、時には危うくぶつかりそうになりながら、せわしなく働き続けている。一方、肝心のお二人はどんな風にその日を過ごされていたか・・・作治さんは、気心の知れた村の若い衆を家に呼んでささやかな酒の席を設け、一人一人から祝いの言葉を受け、その度に杯に注がれた酒を飲み干す。その賑やかな談笑は夕方まで続いた。終始上機嫌だった作治さんの後ろには、地主さんが調達してくれた羽織が衣桁に掛けてある。 きくさんは・・・これまた衣桁に掛けられた「紅裏白綸子」の打掛けの前で、母親と二人きりで居た。
2009.03.29
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あの雨の日から約3ヶ月増築成った「作治さんときくさん」の部屋に真新しい青々とした畳がしかれ、その上にこれまた木の香も芳しい婚礼家具が収められた。それらの家具は、当時の小作農家には(明治初期)とても手の届かない高価なものであったため、村中の評判となり、ささやかな祝いの品を持参してはきくさんの婚礼道具を、目を丸くして眺め、出されたお茶のおかわりを二度も三度も重ねてから帰ってゆく者が大勢いたそうな。米の収穫を終え、農閑期に入ったせいもあるだろうが、接客に忙しい作治さん一家に代わって、婚礼家具や真新しい畳を汚されないようにとマツさんは旧家屋と増築された部屋の境である敷居の脇に座り、来客の誰彼を問わず、部屋の内側には一歩たりとも入れなかった。それは二人の婚礼をあと一週間後にひかえた頃のことでした。
2009.03.27
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< 打ち合わせ > タカシは首を振った。「え!だめなの?」「いや、そうじゃなくて・・・このカードの中身、10億以上あるんだよね・・・」「・・・そうね、端数までは覚えていないけど」「そんな大金をもらえるほどの大きな役目って・・想像もできないな・・・それに、今日は驚きの連続で、仮眠なんか出来そうにないよ・・・」「そうだね・・・うん、わかった」アンはそういうとまたシップの壁面のどこかから何かを取り出し、タカシの手のひらに錠剤のようなものをのせた。「それはある植物のエキスから抽出して作られたものよ、心地よい眠りをもたらしてくれるの。短時間でも熟睡できるわよ、大丈夫。しっかり睡眠をとっておいてもらわなきゃね」「そうだな・・・それでないと、ちゃんと理解できそうにない・・・そんな話なんだろ」「多分そうだと思う・・・それでね、あなたが勤務を終えて、お家に帰りついた頃に電話を入れることにする。それから銀行でお金を引き出して、どこかで久しぶりにジーンズとか、この星にいて違和感の無い何か身につけるものを買ってもらって、それからまたここに戻ってきて詳しい話をタカシに聞いてもらう。これでいい?」「ああ、そうだねそれがいい・・・ちょっと待って、電話するってどこから?」「決まってる。公衆電話からよ」「その格好で?」アンはタカシに言われてあらためて彼女自身の姿を見直した。タカシは それじゃちょっとね そう言いながら立ち上がるとロッカールームへ行き、もどってくると私物の黒いジャンパーをアンの肩にかけて「せめてこれを着てくれ、そのままじゃ目立ちすぎる」アンは立ち上がると、タカシのジャンパーの袖に腕を通しながら「ありがとう・・・」そう、嬉しそうに言ったが、その眼差しはタカシを困惑させるのに十分過ぎるほど魅力的だった。「・・・そうと決まったら、そろそろ行ってくれないか、俺にはまだ仕事が・・日誌を書かないと・・・悪いけど」「いいわ、じゃあ・・・何時頃すればいい?電話」「勤務交代が8時半、家に帰りつくのが9時ちょっと過ぎだ、それから朝飯だから・・・9時半頃がいいかな?」「わかった。じゃあ、その頃に・・・」少しだけ間をおいて 「電話する」とアンは声の調子を変えてからそう言った後、タカシの顔を覗きこみながら前かがみになる。タカシがすでにデスクの前のイスに腰を下ろしていたからだ。彼女がしばしの別れを惜しむ気分になっているのは明白だった。「急ぐんだ・・ごめん」アンは腰を伸ばすと無言でタカシにあかんべをして、そのまま警備室を後にした。「いけない娘だ、どこであんな仕草を覚えた・・・」タカシは独り言を吐くと、日誌に向かいペンを走らせ始めた。
2009.03.23
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「大 変 更」 <インターナショナルキャッシュカード> 「ピーッ!ピーッ!」突然、シップの中に警報が響き渡り、タカシは一瞬で夢心地から醒め、現実に引き戻された・・・もっとも数秒の後に再び頬をつねって見ることになるのだが。とにかく、本日2回目の館内巡回点検の時間となったのだ。「そろそろ行かないと・・・」タカシがそう言うと、アンはタカシの腕をつかみ、引きとめながら言った。「大事なことを伝え損ねるところだった、タカシ。実は、父が10年前に地球を発つ時、彼の財産を全て処分してお金に換えたんだけど、それは残らず日本円に替えて東京のある銀行に預けてあるのよ。あなたの名義でね」「おれの口座を作ってくれたって?マークがかい?」「そうよ」アンは、シップの壁面へ近づきながらそういうと、どうやったのかは分からないが1枚のカードを手にしてタカシの目の前に差し出して「磁気を乱さないように保管しておいたから、ちゃんと使えるはずよ」タカシはそのカードを受け取ると目を大きく開いて「これは日本最大手銀行のインターナショナルキャッシュカードじゃないか!」「そう、そのカードは世界150カ国以上の国で使えるわ」タカシは信じられないものを見るような目をしながらも、好奇心を抑えきれず「マークは、一体どのくらいの額を残していったんだろう?」「うーん、正確には分からないけれど、アメリカにあった家と、絵画、貴金属、骨董品。それらはほんど地球の歴史を知る為に、集められたもの・・・あと海底に沈んでいた沈没船から引き上げたものも全部処分したから・・・億の単位ね、それも一桁なんかじゃないわね」「・・・・・」タカシは、暫し言葉を失った。だが、次の言葉は的を得たものだった。「何か、使い道に大きな意図があるんだろうね・・・」「そう・・・あなたにはとても大きな役目を果たしてもらうことになるから、今日のところはそれだけ伝えて、あとは明日にでも詳しく話すわね・・・時間が必要になるから・・・」「・・・・・・・・・アン?」
2009.03.20
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<きくさん許される> そして、ついにあの夜、作治さんときくさんは「駆け落ちでもされたのでは堪ったものではない・・・」という、地主であるきくさんの父親の苦渋の決断によって結婚を許された。ただし、それには3つの条件つきだった。その1、「娘のために部屋を三つ増築すること」きくさんの嫁入り道具である箪笥などを置く部屋、新婚夫婦の寝間、そして女中頭、まつさんのための小部屋。(増築に掛かる費用はすべて地主さんの負担)その2、女中頭のまつさんを、きくさんが畑仕事などに慣れるまでサポート役として毎日出向かせること。その3、きくさんは、週に一度は屋敷に来て、顔を見せること。いくら、条件付とはいえ、きくさんは躍り上がって喜び、涙ながらに父親に対して何度も感謝し、作治さん共々(作治さんのお父さんも含めて)、頭を下げたということでした。
2009.03.15
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「大 変 更」 (ちょっと跳んでしまいました。初めての方は前回、2月20日の記事を読んでから、こちらを読まれることをお勧めします) < 不完全な選択 > 「でしょ!おかげで私達の平均寿命は200歳なの」「そいつはすごい!」「驚くのは、まだ早いわよ。脳と脊髄以外の臓器、骨格、筋肉、皮膚を全て人工化して、全身を義体化すれば500年は生きてゆける。ただし、費用は相当なものになるわ。定期的なメンテナンスも必要だから、そうね・・・フェラーリを買えるほどの収入がないと無理ね」「フェラーリか・・・僕にはとても無理だね・・・!まてよ、さっき君は『全身を義体化』って言ったよね、それってサイボーグのことかい?」「そう、地球では、そう呼んでるわね・・・まだ実現してないけれど」「それにしても、すごいねえ、500年も生き続けれるって・・・君の星の住人たちは、なんて幸せなんだ・・・」アンは、軽く頭を振って・・・それからやや声のトーンを落として言った。「それが、そうでもないのよ・・・事故や未知のウィルスに侵されて、脳に致命的なダメージを受けた場合、その人を蘇生させることは、さすがに無理なのよ・・・だから、長生きをすればするほど、大切な人を失う可能性も増える・・・それが理由で、結局メンテナンスを止めてしまう人も少なくないの・・・淋しさに耐えられなくなるのでしょうね・・・」「なるほど・・・分かるような気がするよ」
2009.03.08
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今日は何だか、お話したくなって・・・告白します。みーさんにお話ししたら・・・何だか気持ちが、楽になったんです。それで皆さんにも・・・お話ししておこうと思って・・・関心の無い方には、申し訳ないけれど・・・スルーしちゃってください。 <心を春に、冬を短くする仕組み> 深い湖を心として その湖の底の、そのまた下に ぼくだけの世界があります それは葛藤の末にぼくが作り上げた世界 ぼくは、そこにどうしても忘れることができない 思い出を解き放っているのですが・・・ 彼らはそこで好き勝手に遊んでいます けれどごく稀に、どこかに生じた隙間から 泡となって浮いてきては、ぼくを悩ませる それでも少しずつ 冬は短くなってきています しかし、僕は知ってしまったのです 冬は、どんなに短くなっても、決して 無くなってしまうことはないのだと・・・
2009.03.06
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「映画のようなラブストーリー」 < 地主さま登場 > 作治さんの母親に手伝ってもらい着替えを済ませた「きく」さんは、囲炉裏の前に座って身体を温めていた。作治さんの父親が何か言おうとして口を開きかけたその時、突然この家の引き戸を叩く音がした。「せいちゃん(清治《仮名》、作治さんの父親の名前)わしだよ正一(地主、つまり、きくさんの父親の名前)だ。きくが来ておるじゃろ、開けてくれんか」清治さんはすぐさま、引き戸のカンヌキをはずすと地主であり幼馴染でもある正一を迎え入れた。そして深く頭を下げながら言った。「このたびは申し訳ねえことで、だどもお嬢様が雨に濡れておられたので乾いた着物に着替えてもらって、囲炉裏で温まってもらってからお屋敷までお送りするつもりでおりましただども・・・」「そりゃあ反対だ、せいちゃん。詫びを言わねばならんのは、わしの方だて。娘が面倒をかけたのう、このとおりじゃ」そう言うと地主さんは清治さんに頭を下げた。清治さんは感動していた。(正ちゃんは未だにわしのことを幼馴染と思うてくれているのか・・・)他のひとたちは皆一様に驚いていた。この時代、大地主が一農民に頭を下げることなど考えられないことだったのである。清治さんに向かって頭を下げた後、地主さんは囲炉裏の前で身体を強張らせて座っているわが娘を見やって、一つため息をついてから話しかけた。「きく、これまでにただの一度たりともわしの言いつけに背いたことの無いお前のことじゃ、てこでも其処を動く気はないのじゃろうな」「はい・・・ごめんなさいお父様」きくさんは父親に向かって深く頭を下げたが、はっきりそう言い切った。
2009.03.06
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「映画のようなラブストーリー」は実話に基づいています。どうしても、思い出せない部分もあって・・・上記の故、この言い訳は通用させて頂きます。つまり、多少文脈が飛ぶ、ということも・・・そういう訳で「雨」のシーンから・・・ < 雨の中を > きくさんに会えなくなってから、悶々とした日々を過ごす作治さんでした・・・そんなある雨の降る夜のこと・・・作治さんの耳に足音が聞こえてきました。「ばしゃ、ばしゃ!」とその足音は作治さんの家に近づいてきます。「誰かな?こんな夜に・・・雨じゃというのに・・・」作治さんは不審に思いながら、土間に下りてゆき引き戸を閉めたまま、外の様子をうかがうため、耳を澄ませた。足音は急に小さく、しかしながらはっきり聞き取れるようになり、やがて止まった。それは、訪問者が戸口のすぐそばまで来たことを教えている。「誰かな?」「作ちゃん!?・わたし、『きく』よ!」「きくちゃん!?」作治さんは驚いた。けれどきくさんの名前を呼びながら、同時に引き戸のカンヌキをはずしにかかっている。引き戸を開けると、そこには雨の中を駆けてきたため、全身をぐっしょりと濡らした『きくさん』が立っていた。「作ちゃん、・わたし・・」「話はともかく、早く中へ入れ」(ここ、強い口調ではありません、つまり、訛っているわけですね)作治さんは、きくさんを抱えるようにして土間に入れ、引き戸を閉めた。振り返るときくさんが・・・「わたし、やっぱり作ちゃんじゃないと嫌だ!明日のお見合いには絶対行かないから!」全身を小刻みに震わせながら、きくさんは大きな声で、涙を浮かべてそう言い切った。作治さんは勿論嬉しかったが、きくさんとのことは諦めていたことであり、突然の予想外な出来事に戸惑った。何しろまだ18歳である。 それでも言うべきことに気づき、それを口にしようとしたその時・・・誰かの声が割って入った。「まずは、暖かくして濡れたきものを着替えねば、風邪ひくぞ・母さん、手伝ってやれ。作治はちょっと向こうの部屋に居れ」そう言いながら、囲炉裏の火をおこしてくれたのは作治さんの父親だった。まずはそれが今このとき、順当なことである。誰一人、異論はなかった。きくさんは、作治さんの父親に頭を下げ、作治さんは、きくさんに優しい笑顔を見せてから土間から上がり、隣の部屋へ入り障子を閉めた。
2009.03.03
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