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April 15, 2022
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カテゴリ: REALIZE
ハワードからその日の報告を受けたシルベスタは、一人考え込んでいた。手元からは香りのよい紅茶がほのかに湯気を上げている。一口飲んで、思い立ったようにハワードを呼んだ。

「ハワード、今日、何かあったのか?」
「は?いえ。特には…」
「ふむ、こちらも無意識か。今日はリカルドと二人で出かけたんだったな」
「はい、途中でリカルド殿の仕事仲間のルドルフ殿も合流されました。ジーク団長の事をとても心配されていて、状況を説明していただいた次第です。」

 主の意図がつかめず戸惑いを見せるハワードを、観察しながら続ける。

「ほう、一介の騎士団員を王女様の前に連れ出したのか? 騎士団はなかなか女性と交流する機会がないから、浮かれていただろう」
「はい、確かに。悪い人間ではなさそうでしたが、王女様をかわいいとか、けなげとか、その、軽々しく…」

 ハワードのこぶしが握りしめられているのをちらりと見て、シルベスタは楽し気に笑う。


「シ、シルベスタ様、私をからかっていますね!」
「クックックッ」

 シルベスタは耐えきれないでわらい声を漏らした。

「いや、すまない。君たちを見ていると、自分が過去に縛られて落ち込んでいるのが馬鹿らしくなるよ。君も知っている通り、この国はまだ若い国だ。身分制度で罰を受けることもない。ましてや、君やヒカルのいた国では、身分制度すらなかったそうじゃないか。伝えたい気持ちがあるなら、伝えるべきだと思うよ。私のように、何十年もくすぶってしまうことにはならないでくれ。」
「シルベスタ様!わ、私はそのようなことは…」
「はは、気にするな。今日の紅茶が少し渋かったから、余計なことを言いたくなっただけだ。明日はうまい紅茶を淹れてくれよ」

 はっとして、失礼しました!とハワードは急いで紅茶を淹れなおした。

第6章異世界日本再び

 春の宴まで、あと2週間に迫っていた。シルベスタはジークを訪ね、アラン捜索について相談していた。日本に行ったことがある者を向かわせるのが一番だが、まさか王女に行かせることはできないとジークは渋っていた。

「では、前回アラン王子を連れ戻したリカルドと、日本に行ったことがあるハワードを護衛に付けよう。それに、先日発表された通信ができる水晶玉を使ったら、中間報告も聞けるだろう。」
「しかし、まだ幼い王女が危険な目に遭ってしまっては…」
「ジーク、ヒカルは守ってもらうだけの弱い子じゃないよ。こちらに着て1年足らずだというのに、行儀作法も生活様式も、そして魔術も、どんどん洗練されている。それに、あの子は相当な人たらしだ。仲間も多いだろ? そしてなにより、王妃様譲りのあの意志の強さだ。」




 ヒカルはリッキーとハワードを伴って、懐かしい異世界日本に戻ってきた。

「リッキー、水晶玉は持ってる?」
「ああ、大丈夫だ。同じヘマはしないさ。それにしても、懐かしいなぁ。」
「ここが、殿下がマスターをしていたお店ですか。落ち着きがあっていい佇まいですね。」

 カウンターの分厚い天板を触りながら、ハワードが納得する。リッキーはするりと黒猫になって、まだ置いたままになっているクリアケースに収まってみた。


「うふふ。リッキーはお客さんに人気あったもんね」
「猫カフェ、ですね。でも、猫になりながら、ここで何をしていたんですか?」

 ハワードの疑問にヒカルがぷぷっと噴出した。

「リッキーは、お父さんを迎えに来てたのに、水晶玉落としたから、傍にいるのにしばらく気づけなかったのよ」
「あ~ヒカル、それを言うなよぉ」

 3人は笑い合いながら、住居エリアに進んでいく。

「ここが私の部屋。あ、机の上に紅の騎士の本とポスターがまとめてある!これ、お父さんが準備してくれてたんだわ。じゃあ、ちゃんとここにはたどり着いたってことよね」

 丸めてあるポスターを開いて、リッキーがうなる。

「うわぁ、かっこいいなぁ」
「それは映画のポスターですね。懐かしいなぁ」
「ホントに俳優だったんだなぁ。あ、これが噂の紅の騎士か、後で読ませてもらおう」

 リッキーは初めて入るヒカルの私室が珍しくて仕方がない。ハワードにとっても初めての日本の一般的な家なので、珍しそうに眺めている。そのまま台所に向かったヒカルはテーブルにポツンと母子手帳が置いてあるのに気が付いた。パラパラとめくっていくと、アランの文字で電話番号と“ハピネスベビー”と書かれたメモを見つけた。すぐさま二人を呼んで、電話をかけることにする。子供の声では聞いてもらえない可能性があるので、ハワードに任せる。固定電話の受話器を上げると、無事、通話ができる状態だ。メモを見ながら電話を掛ける傍らで、リッキーが目を見開いて驚いている。
 しばらくすると、明るい女性の声が出た。

「少し、お尋ねしたいのですが…」

 12年前にこの会社にベビーシッターを依頼したのだと告げると、調べてくれるという。少しの保留音の後、残念そうな声が出てきた。

「申し訳ございません。そちら様からのご依頼は派遣前にキャンセルされているようです。」
「あの、以前にも誰か知り合いがお電話したかと思うのですが、…」

 ハワードはカマを掛けてみた。

「あ、確かに私がお受けしました。たしか、平田さんという方をお探しだったんですよね。でも、こちらでは登録された形跡がなかったのです。お力に慣れず申し訳ございません」

 礼を言って電話を切ったが、ハワードの眉間には深いしわが入った。

 まさかそんな返事が来るとは。ヒカルはショックを隠せない。その横で、電話におっかなびっくりのリッキーが、「どうなってるんだ?」と、そうっと受話器を耳にあてて、ツーっとなっているのを聞いて驚いて受話器を戻したりしていた。

「でも、殿下がお電話されたのは間違いないでしょう。さっきの方は、平田さんという人を探していると言われたそうです」
「平田さん? 私は聞いたことがないですね。」

 ため息交じりに返事するヒカルの横で、電話をいじっていたリッキーが声を上げた。

「おい、なんか書いた跡があるぞ。」

 固定電話の横に置かれたメモ用紙にうっすらと文字が浮かぶ。筆圧の強いアランならではのことだ。透かして見ると、アランが日本に着て3日目の日付と隣の駅の駅前にあるファーストフード店の名前が読み取れた。

「ここに、行ってみようか」
「そうですね。もうずいぶん経ってしまいましたけど、どんなことでここに向かったのか、何か手掛かりがあるかもしれません」

 3人は早速家を出て電車に乗り込んだ。

「お、おい。これって、大丈夫なのか? ずいぶん速度が速いじゃないか。」

 リッキーが小声でヒカルに問いかける。アイスフォレスト王国の世界には電車がないのだ。以前に日本に来ていたはずのリッキーも、駅から見る程度の知識しかない。実際に乗ってみてその速さにたじろいでいるのだ。

「リッキー、こちらのポールにつかまるといいですよ。隣の駅なのですぐ着くでしょう」
「ハワードさんはやっぱり慣れてるんだね」
「いいえ、私も10年ぶりぐらいです。顔が知れ渡ってからは、もっぱら移動は車かヘリでしたから」
「クルマ? ヘリ? なんだそれは?」

 一気にこちらの文明が襲ってきて、リッキーはオーバーヒート状態になった。

つづく





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最終更新日  April 15, 2022 05:03:30 PM
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