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April 16, 2022
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カテゴリ: REALIZE
駅を降りると、すぐ目の前に目的の店舗は見つかった。とりあえず飲み物を買って座席に座ってみたが、誰かに出くわすこともなく時間だけが過ぎて行った。

「一度、自宅に帰りましょう。ジークさんたちと連絡を取って一緒に考えた方がいいでしょう」
「そうだな。」
「じゃあ、帰りにスーパーに寄って晩御飯のお買い物をさせて」

 最寄り駅まで帰ってくると、手慣れた様子でヒカルがカートを押し始める。

「二人は食べられないものとか嫌いな物とかある?」

 カートを押しながら店内をめぐるヒカルが、まっかなリンゴを手に取った。

「リンゴは好き?」
「私はラフランスの方が好きですね」

「おい、今かごに入れた緑の奴、あんまり好きじゃないかも」
「ピーマン?う~ん、向こうのと味は似てるかなぁ。大丈夫よ。色々食べないと大きくなれないんだから」

 ヒカルは楽しそうにピーマンを3つもかごに入れた。

「ええー、俺の好みは聞いてもらえないのか…」

次々とカートに食品が埋まっていく。会計はスマートフォンを使った電子マネーだ。リッキーはここでも目を見開いて驚いていた。

自宅に辿り着くと、ヒカルはお風呂の準備に取り掛かった。

「ヒカル、手伝います。何もかも自分でしなくてもいいですよ。長らく使っていなかったでしょうから、ここは私がやりましょう」
「ありがとうございます。じゃあ、他の事をしてきます」

 ヒカルは、アランの部屋に布団を2人分敷いて、さっさと次の作業とばかりに夕食の支度にとりかかった。

「おーい、ヒカル。この箱、どうやって使うんだっけ?」

 リッキーは以前に来た時からテレビがお気に入りで、今日も早速テレビの前に座り込んでいる。


「へいへい」

 リッキーはすっかり我が家気分だ。お皿に盛りつけたのはナポリタン。例のピーマンもしっかり入っている。フォークを並べていると、ハワードがダイニングにやってきた。

「お風呂の準備、できましたよ」
「はは、ご飯ができて湯あみの準備もできて、実家にいるみたいだなぁ」
「日本は身分制度がないから、みんな自分でやるんだよ。リッキーは仕事忘れて子供にもどっちゃったの?帰ったらベスに言いつけちゃおう」



ヒカルが洗い物を片付けてハワードがお茶を入れて戻ってくると、ちょうどニュースの時間になった。交通事故のニュース、政治家のニュース、もうすっかり遠い世界のように感じていたヒカルが突然「え!」と声を上げた。画面にアランの姿が映っていたのだ。
アナウンサーは淡々と殺人事件の詳細について語っている。

「亡くなったのは平田 真理さん(35)。帰宅したところを室内でまちぶせしていた犯人にナイフで刺された模様。現場には、犯人の指紋があり、返り血を浴びた犯人は逃走途中に道路に飛び出し車と接触した。」
「お、お父さん」

 自分でも驚くほど声が震えていた。どうしてお父さんが人を刺すの?車と接触したっていうけど、お父さんは大丈夫なの?足に力が入らず、ヒカルはその場に崩れ落ちそうになって、ハワードに抱きかかえられた。

「ヒカル。大丈夫です。お父さんが亡くなったわけではないんです。明日、警察に行ってみましょう」

 12歳の少女にはあまりにもショックが大きかった。ハワードの胸にしがみついて、こらえようとした涙は次々あふれ出した。室内の空気は一気に重苦しいものになた。

「とりあえず、明日に備えて今日は休もう」

 リッキーが勤めて明るく声を掛けた。ハワードに抱えられたまま、ヒカルは自分のベッドに寝かされた。ベッドサイドに膝をついたハワードがそっとヒカルの手を握って励ます。

「ヒカル、不安な気持ちも分かりますが、さっきまで殿下が無事に生きておられるかどうかさえ分からなかったのですから、会いに行ける場所が見つかったと思えば大きな前進です。」
「そうだぞ。俺たちはいつだってヒカルの味方なんだから、泣きたい時は泣けばいい」

 枕に顔をうずめたまま、ヒカルは頷いた。そのまま背中をゆっくり撫でられているうちに、嗚咽は寝息へと変わっていった。
 二人は頷き合ってそっとヒカルの部屋を出ると、アランの部屋へと移動した。ドアを開けたとたん、リッキーが声を上げた。

「あいつ…、子供のくせにこんなことまで気が付くなんて」

 リッキーはきれいに敷かれた布団に驚いていた。

「王太子殿下が侍女も執事もつけずに店舗経営が出来たのは、彼女のスペックのおかげでしょうね」
「じゃあ、とりあえず団長に報告しよう」

 水晶玉を取り出して、リッキーは早速連絡を取った。


 リッキーと並んで布団に横になり、平静を装うハワードだったが、抱き上げたヒカルの華奢なのにふんわりとした感触にドキリとしたことに戸惑っていた。

「布団、固いなぁ。眠れるかなぁ」
「リッキー、日本は元々そういう生活様式なんですよ。諦めて…。え、もう寝てる? はぁ、羨ましいです。」

 ハワードはリッキーに背を向けて横になると、締め付けられる胸をそっとなで、深い深いため息をついた。


翌日3人が警察署に向かうと、アランは警察病院にいるとのことだった。係員に案内されて病室を訪ねると、右足を吊り下げられたアランがぼんやりと窓の外を見ていた。

「お父さん!大丈夫?」
「ヒカル。どうしてこんなところに…」

 言いかけて、後ろにハワードとリッキーを見て取ると、はぁと深いため息をついた。

「そうか、長らく帰らないから、心配されたんだな。ヒカル、心配かけてごめん。君たちにも迷惑をかけたな」
「そんなことより、お父さんが悪いことしたって昨日ニュースで言ってたよ。どうなってるの?」

 ヒカルはベッドにしがみついて詰め寄ったが、アランはなんでもないんだと笑った。

「いろいろ調べている間に平田というベビーシッターに会えたんだけど、どうやらその黒幕に見つかったらしくてね。いきなりトマトジュースを掛けられて後ろから押されたんだ。」
「じゃあ、返り血を浴びていたって、トマトジュースだったんですか?」

 緊張していた肩をすっと緩めて、リッキーが呆れたように呟いた。

「ま、ここは警察病院だからいいが、一応、僕が容疑者ってことにして、本当の犯人をあぶりだす作戦らしいから、もう少しここにいることになるだろうね。」

 ほっとしたヒカルがハワードと視線を合わせて頷き合った。

「何か、必要な物があれば準備してきます。退院まではヒカルさんにもこっちにいてもらった方がいいですよね」
「…まだ、ダメだよ。」

 ハワードの申し出に答えず、じっとその姿を見ていたアランはぼそっと言葉を漏らした。

「え?何が?」

 首をかしげて問う娘の髪をそっとなでながら、「いや、なんでもないんだ。お父さんは寂しがりだなぁ」と笑った。
 その時、ドアがノックされ、今度は中年の男性が案内されてきた。

「殿下!! ああ、やっぱり殿下だ! よくぞ、よくぞ御無事で…」

つづく





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最終更新日  April 16, 2022 02:00:41 PM
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