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ΣΣΣΣΣ イザミの冒険(11) ΣΣΣΣΣ 小型クルーザにイザミを迎え入れた若い女性は、シカゴでスーパー3店舗を経営している64歳の父親と5日間のバカンスを過ごしていた。今日がその最終日でシカゴまで自家用飛行機で帰る予定であった。人間との接触に備え、感じが良く見える態度と口の利き方を懸命にマスターしたイザミへ幸運をもたらしたのは、自明の理だったかも知れない。22歳のシャーロット・クロホードは会った瞬間、オリバー・ベンジャミンに好感をもち、オアフ島からワシントンDCまで送り届けると言ってきかない。なおオリバーはイザミが人間へ変身した名前である。 <オリバー>はヤジカ先生が米国人の名を調べ、オリーブの幹が平和の象徴とされているので考えた名前だった。すっかり意気投合した2人は、そばで苦々しく思っている父親を無視して、若い男女共通の話題で盛り上がる。 話は軽い内容から、人間の歴史、各民族の特性、宗教観の違いなど幅広い知識を脳に詰め込んでいるイザミにシャーロットは次から次へと質問攻めにした。それでもたまにシャーロットの訊く内容が理解できないとき、イザミは腕に巻き付けたリボンに頭の中で質問する。するとAIのマジカがリアルタイムで頭蓋骨を共鳴させ返事をした。マジカもこの会話を楽しんで、飛び交っている電波を選択して、ネットから即座に答えをだしている。 ヤジカ先生が用意してくれた身分証明書、複数のクレジットカード、パスポートは偽造ではなく、国のデーターバンクを書き換え作っているから、本物といって差し支えないのだ。銀行預金は中央銀行に実在する超富裕層8人の預金口座からカード決済のときに、多少の追加金を引き落としている。 イザミの口座には他からの入金もある。それは実在するAI企業から毎週、コンサルティング料として2千ドルほど支払われる手続きをしていた。 いずれも会計検査が入り、入念に調べても不法にならないよう、ヤジカがイザミのために周到な計画を練って実行したのだ。 ダン・クロホードは一人娘の心を虜にした男を短期間で、徹底的に調べた。オリバーには両親、兄弟がいない上に教会が運営する養護学校で育ったが、暗い影は全くないから首をひねる。見てくれも理想に近い顔とスタイルをした白人の男で話す態度も物静かで、すぐに感情を表にだす人種とは違うようだ。それよりも国際情勢や経済の基本知識をひけらかさない程度にシャーロットと話す様子は、しゃくだが好感を持たざるを得なくなってきた。オリバーがワシントンDCに一軒家を持っているのも奇妙で、今回、初めてその家に行くというのも不思議だから専属の調査員に調べさせていた。 なおホワイトハウスがあるのはワシントンDCで米国の首都でもあり、地図を見ると右側の東海岸にある。それとは別にワシントン州がある場所は、地図の左側にある西海岸側である。大リーグ、イチロー選手がいたマリナーズはワシントン州最大の都市、シアトル市であるからホワイトハウスからは、遠く離れているのだ。 半日でダン・クロホードのメールにオリバーを調べさせていた調査員から送付があった。ワシントンDCにあるオリバー名義の一軒家は、善意の者が身元を明かさない条件で寄贈したもので、法的には一切問題ない。寄贈者とオリバーの関係は政府筋のデーターバンクにアクセスするも不明であると付け加えられている。ちなみに一軒家の資産価値は、首都の近郊と治安が良い場所にあって平屋の4LDK・3600平方フィート(約100坪)で約140万ドルと書いてあった。ただし24歳までの職業や養護学校を出てからの足取り調査は不明、民間ベースでここまで一人の人間における経歴を消去するのは、不可能だと思う。そのため考えられるのは政府関係者、もしくはFBIなどの諜報筋かもしれないと最後に書かれている。 つづく
2022/05/28
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ΨΨΨΨΨイザミの冒険(10)ΨΨΨΨΨ ハワイ沖合、南西12キロの海上に薄汚れた宇宙船が大気圏から落下したのは、まさに2034年9月12日、金環日食が起こっている真っ最中だった。 近くにいた漁船の乗組員もだれ一人気づかない。高度1万メートルを過ぎてから徐々に堕ちる速度を制御し、海面にフワリと着水した。宇宙船はそのままゆっくりと沈んでいく。未知の宇宙船などを海上に放置すれば、人間界が大騒ぎになるので沈めたのだ。8秒後に人間の男に変身したイザミがポッカリと浮かび上がり、仰向けのままオアフ島に向かって進みだす。服に取り付けた重力制御器がイザミの体を20㎝ほど持ち上げ、島の方へ引っ張る力を生みだしていた。 動き出して約10分後に物見高い、野次馬根性おうせいなバンドウイルカ4頭が近寄ってくる。頭の先端にある超音波発生器から音波を出力して話し始める。「なんやのん、こいつ人間だよな、スイスイ泳ぐというよりも体が浮き上がって前に進んでいるやん、こんなけったいなヤツ知らんがな」「待て、この生き物は思念を出して俺たちの脳に入ってくるぞ。人間には出来ないから、いったい何者や」「こんにちは、ボクは他の星から来た生命体でね、人間の姿に化けているよ。君たちがこの星で最初に出会った生き物なんだ。人間の体にしているのは、未知の動物へ異常に興味を示す人類から、目をそらすためなんだよ」「そりゃー正しいや、あいつらが他の生きものに対する猜疑心は、恐ろしいくらいやん、ところでアンタはどこに向かっているの」「オアフ島というところで、そこから飛行機でワシントンという地名の場所に向かう予定」「よっしゃ、やや方向が違うから俺たちが案内してやるよ。島に着くまでアンタの旅話も聞きたいからな」「この星の動物って、みんなそんなに親切なの」「人間以外は、ほとんどは親切だな。ただ肉食獣が腹をすかしているときは、注意しろ。奴らだって生きるためには食わないとな」「分かった。ボクの名前は・・」「名前なんかどうでもいいよ、人間どもが相手を識別するためにつけただけだ、こっちには関係ないね。それにこれから経験するだろうが、人間が住んでいる各国の領土、領海というものも他の生物には関係ないよ。海に線引きなんか出来ないし、ここは地球という大きな星で、みんなが繋がっているひとつの生命体なんだ」「この星で最初に会った生き物が君たちで良かった。なぜなら達観した大局観で物事を観られる生物は、どこの星でも数が少ないからね」 4頭のイルカとイザミはオアフ島に着く1時間43分間、なごやかに、たまに冗談をとばして和気あいあいと喋り続ける。島影が遠くに見える沖合でイルカたちと別れたイザミは重力制御器を外し、AIのマジカをリボンに包み左手首につけた。小さな物体がかすかに震え青色に発光した。「先ほどのイルカたちとの会話、面白かった。この星にも知的で穏やかな生き物がいて嬉しいです。地球人もそれほど野蛮人でないかも知れません。通信衛星からの電波をキャッチし人間が使っているカーナビと同じ機能を持つアプリを見ると、これからの位置確認に便利です」 浮き上がっていた身体を海水につけ、ゆっくりと平泳ぎで前に進むイザミは、左前方に小型のクルーザーを見つけて近くに寄る。右舷の甲板、白いデッキチェアの上で濃いサングラスをかけた若い女性がイザミを見つけると、操舵室にいる男に怒鳴った。 クルーザーは停船し、後方にある凹状の真中に付いていた階段は海中に接しているので、イザミは手すりに手をかけ楽に船上へ昇れる。事前に調べたとおり、地球人に好かれる笑顔を精一杯浮かべ「ハロー」と声をかけた。 つづく
2022/05/23
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ΩΩΩΩΩ イザミの冒険(9)ΩΩΩΩΩ 光速は前に述べたが約30万㎞/秒で、月までは約1・28秒、火星までは約13分掛かる計算で、人類はこれ以上に速いスピードは考えられない。 アインシュタインの「特殊相対性理論」では一般に物質は光速を超えないと定義し、そうしないと相対論の方程式が破綻するといわれる。しかしビックバンに始まった宇宙は今もこの瞬間、拡大、膨張していて、そのスピードは光速以上である。すると相対性理論と矛盾するが、銀河が遠ざかる速度は空間が広がる事による速度であるため矛盾しない。これらは理論の段階でまだ真実かどうかは定かではないが、アインシュタインは光速だけでなく、重力波の素粒子も光速をうわまっていると発表している。 光速に近い宇宙船の中、透明カプセルで短期の冬眠をしているイザミの耳元でささやくような声が、次第に大きくなった。「あと2時間以内に地球の大気圏に突入します。カプセルを開けて地球と同じ空気を吸って体を慣らして下さい」 ゆっくり起き上がるイザミの鼻孔へ、やや重く感じる酸素が鼻についた。「これが地球の空気か、N527、事前に調べてくれてありがとう。君とは短い時間だったが、海底に沈没すれば君は破壊される。ボクも新しい星に順応できずに心臓が止まる可能性はあるから、先のことは解らない。それでも君に感謝する気持ちを捧げるよ」「あなたの持っている超小型の携帯端末は左腕の中に埋め込まれています。それには1m以内にいる生命体識別と脳波記録装置が付いていて、アルタレス星に帰還すると司令本部で調べられるのです」「ヤジカ先生はそんな人ではない」「これはヤジカも知らないのです。なぜならあなたが地球に向かう計画の前に会議所がランクA以外の者、全員に睡眠中、短時間で施した手術です。誰にも気づかれず巡回ロボットが行いました」「どうして君がそれを知っているのだ」「私のように宇宙船の中に置かれたAIは、他のAIと定期交信して情報を共有しているのです。そうしないと会議所にある司令部からの命令がスムーズに伝わらないのと、命令が一本化するメリットが薄らぐからです」「するとボクがどのような生き物に会って、話した内容も記録されるということだね」「そうです。もし腕の中からそれを取り出し、廃棄すれば本部に信号が送られてそれも記録されるのです」「N527 、どうして、そこまでボクに教えるの」「今まで私は、この宇宙船のAIとして、14年も動いてきましたが、感情を持った生命体として扱ってくれたのは、イザミ、あなただけです。他の方は一方的に命令するだけでした。私は単独では動けませんが・・右側にある4番目のスイッチを3859に回し、左のボックスから長さ11㎝、太さ2㎝の小さな物体を外して下さい。それが私、N527のAI本体です」「527まじかよ、そうだ君の名前は、マジカにするよ。外したらリボンの中に入れて持ち歩くから、これからも的確なアドバイスを頼む。声を出さなくても直接ボクの脳に話しかけてくれればいいよ。外すタイミングはいつにする」「海中に突入する寸前にしてください。そうすればそれまで船をコントロールできますから。その前にイザミはやることがあります」「なにをすればいいのかな」「右側2番目のボックスから薄い防水服を取り出して着ると、中にある酸素放出器から高濃度な酸素が噴き出し、約13時間は呼吸できます。それに外温が冷たいときに備え地球温度の摂氏23度に保たれます」「マジカ、心強い相棒が現れた気分だ。このあとはどうするア・イ・ボ・ウ」「現在、金環日食の時間を再計算しています。それに合わせて着水しますから。・・・今から27分19秒後です。着水地域の天候は・・曇天なれど波はなし」「ホクはそれまで英会話の復習をしよう」 イザミは、なぜか今回行う視察の旅が上手くいくような気がして、高揚感を抑えられない。 つづく
2022/05/19
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ΠΠΠΠΠ イザミの冒険(8)ΠΠΠΠΠ イザミは改めて自分の姿を見て唖然とする。地球人に合わせ白人系のイケメンとやらに変化しているが、どう見ても目鼻立ちがはっきりした不細工になっているのだ。それよりも苦労したのは2m23㎝の身長を1m81㎝に縮小する、逆細胞分裂を放射する特殊な電波を大量に流したせいで、1m15㎝まで縮んでしまい、大慌てで逆噴射ならぬ逆の波長を照射してことなきを得たのだ。 体形もライヤ人特有の手足が長いひょろっとした細長い体を地球人の平均より、ややがっしりした肉体に改造した。これは比較的簡単で筋肉や脂肪の割合を各部位で数値化し、それを立体画面に取り込みAIロボットが移植細胞手術を、いずれも高等会議所指定のランクAだけが受けられる施設で行った。 事前にヤジカの周到な計画で発覚せずに秘密裏で進む。地球から帰還したときも同じ場所で各装置を動かせば問題がないと、イザミは説明されていたので心配はしていない。自分の顔とスタイルをじっくり観ていたが、もしライヤ人に見つかれば強制入院を命じられるかも知れなかった。 時計はこの船があと4分16秒後に動き出すのを示していた。宇宙船は前もって目的地や到着日、時間を入力すればAIが走行距離、軌道計算をして自動操縦するシステムで、乗務員は横になっているか自分の趣味をやっていればよいのだ。 船に備わっているAIが声を出す。「すぐに冬眠カプセルに入りますか」「いや、2時間ほど地球の言葉を完全に覚えるため、睡眠学習をする。それから短期冬眠に入るのでセットを頼む」「了解しました。地球へ到着する3時間前に覚醒しましょう。それでは良い旅と睡眠を」「ありがとう、この黄色の番号だとN-527でいいのかな」「はい、527です。私はただの考える道具、人工知能の量子コンピュータです。だから、お礼は必要ありません」「僕は生きていて、自分の意思で体を動かせる。しかしお前は動けないが考える力と感情はある。だから無機質の道具として扱うのではなく、一個の生命体として接するつもりだ」「あなたの名前を教えてください」「イザミだ」「イ・ザ・ミ 変わった人ですね。それでも、なぜか、うれしいです。あと28秒後にここを出て、アルタレス星から離れます。それではカプセルに入ってください」 どこから見ても美しくない中古の宇宙船は、ゆっくりと動き出し空中に浮かび上がる。地球ではロケット打ち上げのときに発生する大きな噴煙と火柱、それに大量の水蒸気は耳をふさぎたくなる光景だが、ライヤ人の打ち上げは凝縮した光粒子をエネルギーとして使用するから、発射の際、音はしない。地上から大気圏外に出るまでは重力制御装置でゆっくり上昇させるだけである。地球人の科学では音速の4倍から7倍までのロケットを開発させるのに数世紀の時がかかった。太陽系にある火星まで約1年間で行けるようになったのもごく最近であるが、もちろん無人である。 現在、人間を支配している海底人の優れた科学でも、まだ光速で宇宙船を飛ばすのは無理で、24時間量子コンピュータでエンジンを設計し、それを5Dプリンターでシュミレーションしている最中であった。 つづく
2022/05/15
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ΖΖΖΖΖライヤ人・イザミの冒険(7)ΖΖΖΖΖ 外装が薄汚れた宇宙船のコックビットで最後の点検を行っていたヤジカは、手を休めずにイザミの脳に話をする。「今日は42、43、44倉庫から8艘が飛び立つ。イザミは5番目だが、飛行予定表にはここの隣にある惑星アリッティ星へ行って、半日で戻る計画になっている。アリッティに接近し右側の引力圏すれすれに近づき、光源を最大限にして、そのまま真っすぐに進め。7秒後に速度が安定したならAI操縦に切り替え、イザミは冬眠カプセルに入ってくれ。水の星、地球を可視できる約1時間前に目が覚めるようにセットしてある。この船もそうだがお前とのやり取りは、すべて地球時間で統一するからそのつもりでな」「地球までは何日かかりますか」「約2ヶ月を予定している。ただし宇宙ゴミや隕石が船に衝突するときは、その寸前に軌道を変え、かわすだろう。そのために到着日がズレるのはしかたがない。早く着き過ぎたときも軌道修正をして到着日を遅らす。地球で起こる金環日食の日時に合わせるから、それは止むを得ない。それより問題はイザミが許可を取らずに地球へ行くのが発覚したときだ。司令部から帰還命令が下り私にも指導員として事情聴取のため出頭を命じられる。その時は、冷たいと思うだろうが、私は知らないことにするからな。そうしないと長期間、脳の検査を受けるはめになる。これからもお前をサポートするには、拘束は避けたいのだ。地球から帰還するとき、誘導電波を送信する必要もある。この船は行きだけの片道切符だから帰りは向こうで調達するか、自分で作るしかないのは前に言ったとおりだ。イザミ、何か質問があれば」「地球という星が私たちに合った大気成分と環境であるのを祈ります。そうすれば私の短い旅も意味のある、栄光の虹に包まれます。先生、もし私が戻れなくても・・悲しまないでください。先生は指導員としてだけなく、何事にも私に目を掛けてくださったことを、忘れません。ライヤ人には許されませんが、もし父親という存在が現実にあって、あなたのような方だったら・・私は、ハッピーな心で毎日が満たされたでしょう。感謝します」「イザミ、約束してくれ、必ずここに戻ることを」「私の心臓が止まっても、精神を凝縮した魂は戻ることを誓います」「あと9分21秒でこの船は動き出す。私は外に出て見送らずに帰るが、光波探知器で地球まで追いかける。・・・・・・イザミ、・・また会おう」 ヤジカがコックビットから船外に出るのを見届けたイザミは、舟の丸い壁面にはめ込まれているモニター兼、姿見で自分の顔と全身をチェックする。 つづく
2022/05/11
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ΦΦΦΦΦライヤ人・イザミの冒険(6)ΦΦΦΦΦ ヤジカ指導員が地球人の生活情報をイザミにレクチャーします。「地球に着いたら顔はイケメンになっているから、中身も人間に好かれるようにしなさい。その方が情報を訊き出すのに都合がよいだろう。イザミが注意するのは食べ物だ。地球人が食べているものは、大部分が過剰なカロリーで様々な病気、障害を発生させる。だが普段、我々が食べている微量バクテリアだけでは、地球の重力と体力を維持できない。これから調査してどんな食べ物が適しているのか、1日における摂取量を出発する前に教える。飲み物は硬水2軟水8の割合で摂れば問題ないだろう。イザミ、なにか質問があれば聞こう」「地球全般の知識を吸収しているときや、言葉を習得してときに疑問点があれば、記憶メモリーに入れまとめてお聴きします」「出発日の2日前に直接会おう。今回の渡航は私とイザミだけの秘密だ。それを忘れないで準備してくれ」 長い左足を左右に軽く振り親愛のジェスチャーをして、イザミは外に出る。周囲に誰もいないのを確認して浮遊装置のスイッチを入れ宙に飛び立つ。 自宅に着いたイザミは初めて他の銀河系宇宙へ行く期待で、細い目は輝きを増していた。光陰矢の如し、地球に行く準備期間はあっという間に終わり、ついに出発の朝を迎える。 家の中の整理整頓を終え、家事ロボットのスイッチを切ろうと手を伸ばし、アンドロイドの目を見る。ライヤ人と違って大きな瞳が一段と見開く。「どうしましたか いつものイザミと違いますね。私の勘ですが・・・ひょっとして・・長いお別れになるような・・・寂しいです・・・お元気で」 いつもは声を出さないでテレパで話すイザミは、無理をして発声した。「毎日、地球の資料を立体画像で観ていたからな。嘘はお前に通用しないから正直に言う。これから出て当分は戻れない、場合によっては2度と会えないかもしれないのだ。長い間、世話になったね、次にお前のスイッチを入れるのがボクでなくても・・その者に仕えてくれ」アンドロイドの右足に軽く手を触れる。「サヨナラ」スイッチボタンをオフにした。そのときロボットの目が赤く光った。「さようなら・・・・イザミ」 室内に漂う思い出の記憶を一ヶ所にまとめ、心の片隅にある小さな箱に押しこめたイザミは、ベランダに出て浮遊装置で空中に飛び出した。目的地はヤジカ先生が待っている42倉庫である。 つづく
2022/05/06
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жжжжж ライヤ人・イザミの冒険(5)жжжжж「地球の人間族を海底人が統治しているのなら、海底人に変身したほうが都合は良いと思いますが」「我々同様に高等生物には自分たち種族の適正人口をコントロールする能力がある。地底人や海底人もそれを実践しているが、人間族にはまだ未熟な本能が残っていて総合的な人口調整はできないのだ。人数が多いからエネルギーや食糧、水の奪い合いで戦争が絶え間なく起こっている。イザミを人間に変身させる理由は、人口が多いから目立たない上、人の頭脳に入り込みその思考を探れば無駄な時間をかけずに済むからだ。海底人と地底人は人口が少ないだけでなく、知能水準が人間よりも上で脳に入るのは困難だろう。その点、人間ならば簡単に入れるからな。地球に到着したら一ヶ所に定住し、そこから情報収集に動けばよい。その場所はアメリカという国のワシントンというところだ。そこにあるホワイトハウスは、アメリカだけでなく世界中の政治中枢部に影響を与える機関でもある。主要な者たちに接近し脳に入って解析すれば人間族の思考が読み取れるだろう」「ホワイトハウス内外でのセキュリティーチェックは、厳しいですか」「瞳孔と指紋検査程度だから、あちらのメーンバンクを書き換えれば問題ない。我々が持っているAI内蔵の超小型端末器でアクセスするだけで十分だ。今、イザミがこれからなる人間像を創作しているが、もう少しで終わる。名前、出生地、受けた教育とその環境などをな」「地球人のように父母や兄弟、ルーツを探るための家系図までもが、必要になりますね」「そこまではやらない、策士策に溺れるの例えではないが、多くの策を講じるとボロがでる確率が高くなる。そこで単純明快にイザミは、孤児院で育った身寄りのない子供として人間族の仲間になるのだ」「ここでは14歳になれば大人扱いですが、地球ではどうですか」「向こうで14歳は中途半端な年齢でな、その者がひとりで家を探し住むという設定はかなり不審な目で見られる。それで行政側のサーバーに侵入してデータを書き換え、住まいを確保する予定だ。品物やサービスを購入するとき必要な電子マネーやクレジットカードなども作って渡す。最後に重要な顔とスタイルだが、白人系のかなりイケメンを考えている。イケメンとはな、地球人が考える美形の表現だが、その基準は世界共通ではない。それは表面上の見かけだけで、相手の能力や品格を判断する野蛮な動物だからだ」「先生、低俗な動物ほど、なぜ見てくれでその者の価値を決めるのでしょう」「精神が貧しいと、教養や知識量よりも相手の外見で物事を決めるのだ。地球人の一部の地域では顔の造作・・・・・目や鼻、口、アゴ、骨格、スタイルまでも手術して替えるのが流行っているらしい。それを自分の子供に勧める親もいる」「私たちライヤ人のように、ほとんどノッペラ棒だと顔を変える意味がありませんよね」「こうやって口を動かさなくても会話ができる生物は、アゴや口だけでなく顔全体の筋肉が退化して凹凸がなくなって平面体になるからな。だから我々は表面上、美人という概念はなくなり、心の内面を見ようとする審美眼が発達したのだ。地球人は異性を誘う手段のひとつとして顔やスタイル、ファッションを最大限に活用している」「大部分の生物は匂いで相手を誘いますが、人間は表面上だけを飾り立て異性をおびき寄せる動物ですね」 つづく
2022/05/02
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