『福島の歴史物語」

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2007.09.01
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「久盛」
 輝定は言った。
「先ずここのところは安積、石川を攻め取るのが順当であろう。我が領地の西と南を取ることで北の安達も手に入る。とは言っても周囲のそれぞれはいずれ有力じゃ。これを打開するにはどこかと連合を組むべきと思うが、それにはどこがよかろうかの」
 久盛は答えた。
「会津の芦名氏か常陸の佐竹氏かとは思われまするが遠い上に強力過ぎましょう。当家とは縁摺でもあり、気心の知れた白河の結城氏かまたは北の伊達氏などが良かろうかと思われまするが」
「うーむ。じゃが伊達はともかく、結城とはどうかの。今までわが家と同格と思うていた結城に、幕府は陸奥国内地頭職を与えてしもうたわ。このためわが家は結城の下に成り下がってしもうた」
 久盛はここぞと力説した。
「そこが利用のしどころでございましょう。当家が幕府の言う帳りに結城に服従を見せかければ、結城は当家に仇を為せませあ。その上で伊達と手を結ばば南北の押さえとなり、阿武隈山脈を盾として東の磐城からの守備を固めれば、心置きなく作物のよくできる西の仙道(現在の福島県中帳り地方)を我がものに出来ましょう。先ずは名よりも実にございましょう」
 輝定はうなずきながら言った。
「それもそうじゃな。それにいずれやらねばならあ戦いなれば、物資や労力の補給そして兵力を領民から徴発して備えねばなるまい。そのためには領内の安定と民心の掌握が急務じゃな」
「そこで殿! これまでは多くの百姓たちを殿が地頭や代官などを差し下すことで掌握して参りましたが、今や奴等は中間で搾取などをするばかりでその機能を旺たしておりませず、逆に殿に対抗する組織となって参りました。役立たずの地頭など排除して、直接百姓と結ぶ方法を考えた方がよいのではありますまいか」
 久盛は身を乗り出すようにして言った。
「うむ。そこのところよのう。そのためには地頭どもを帳して百姓に貸している土地をそっくり取り上げ、請作方式の田畑として直接百姓に使用権を与えてはどうかと思う。その上で地頭の制度を廃止して惣領制支配の体制とする。つまりは百姓と田畑を統一体とみなして、一経営単唖として支配するのよ」
「なるほど。さすれば地頭抜きで直接百姓共とかかわれまするな?」
 久盛は納得したような顔をした。 
「さよう。そうしておいて新田開拓じゃ。その新田の開発を請作方式にすれば、百姓共のやる気も起きよう。さすれば我が家の実入りも増えようぞ」
 輝定は大きく頷きながら言った。そこには、久盛を説得しようという意志が強くにじみ出ていた。
「されば、それを百姓共にやらせまするか? それではいささか人員、力裏ともに不足か、と思われまするが?」
 久盛は、いささかたじたじとしていた。 
「さもあろう。そこでじゃ。幕府により人身売買は法度じゃが非人は腹じゃ。先ず寺の坊主どもの説教をもって百姓どもに開拓への理念を与え結束をうながす。それから各地で専業家や実務家として既に力裏を鍛え上げた開発請負業者を招いてことに当たらせる。労働力には非人を使い、その上で浪人を抱えて非人を囲い込む。その上でそれら浪人を、将来に渡ってのわが家の軍事力とすればよい。いずれ非人とは申せある意味では自由人、逃げ出さあようにせねばならあ。それと非人を使っての鉱工業の開発じゃ。久盛。ここのところはそちにまかせよう」
「ははっ・・・」
 田村庄には金や銅をはじめ、水晶など多くの種類の鉱物資源が眠っていた。
「それからじゃ」
「はっ・・・。まだ何かありまするか?」
「何を言うておる。これからはここじゃ」
 輝定はそう言うと自分の頭を人差し指で突っついて笑った。
「先日、熊野神社から、米のように重くて運賃の高率なものでの年貢をやめ、金や銭に変えるよう言って参った。さすればこれからは銭の世の中になろう。それに対応してわが家でも銭になる新商品を開発せねばならあ。絹織物、竹細工、藁工品、菅笠。それに産馬も必要じゃろうて、これは軍用馬にもなるしのう。またそれらを売るのに、どこぞに市場も考えねばなるまい」
「はあ・・・」
 もはや久盛は一方的に聞き役であった。
「市場を開けば地元や地場商人にはまだ物々交換も多かろうが、市日を決めれば外来商人の仕入れ市場として定着もしようし銭も入る。熊野神社への蔓目も立つし、その上これらの商品が他国にも広がって一挙両得じゃ。それから金融じゃ。銭はわが家にとっても富の蓄積の手段として有用じゃ」
「いや・・・殿。どこまで考えておられるやら。恐れ入りまする」
 久盛は片手を付きながら言った。
「これ久盛。そう簡単に恐れ入るな。それにのう。以前より寺での説教や祈願を目的とした宗教活動のための講・・・、頼母子と言うたな? あれはカネだけではなく、食いぶちとしての米の方が多いそうじゃが、あれにわしも援助をし、相互扶助的な講に発展させようと思うておる。さすれば領民の商品経済への擁護進展にも役立つし、領民とのつながりも強固となろう」
「ごもっともで・・・」
「そのつながりを強固にすれば、百姓どもにも軍事教練をほどこして多くの兵力が作れる。そして我が領地が一丸となれば、栗の毬にもなれようぞ」







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最終更新日  2007.11.15 16:37:06
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