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2012.08.21
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カテゴリ: 安積親王と葛城王
     挽 歌

 安積派の人びとが、「しまった」と思ったのは間違いのないことであろう。安積親王の薨去は、依るべき柱を失った安積派の壊滅と藤原氏の隆盛を意味したからである。

 天平勝宝元(749)年、父・聖武天皇の譲位により、長女の阿倍内親王が第四十六代・孝謙天皇として即位した。阿倍内親王は基王の実姉であり、安積親王の義姉であった。皇室は、その後も懊悩を繰り返していた。この安積親王の突然の薨去に際して、二十七歳であった家持が、安積親王への挽歌を詠っている。

  かけまくも あやにかしこし 言はまくも ゆゆしきかも
  我が大君 皇子(みこ)のみこと(命) よろづよ(万代)に 
  見したまはまし おほやまと(大日本) 久邇の都は うち靡く
  春さりぬれば 山辺には 花咲きをゐり 川瀬には 鮎子さ走り 
  いや日けに 栄ゆる時に およづれの たはこととかも
  白栲(しろたへ)に 舎人よそひて 『和束山』(わづかやま)
  御輿(みこし)立たして ひさかたの 天(あめ)知らしぬれ
  こいまろび ひづち泣けども せむすべもなし 
              注 『和束山』の『』は筆者による。

(心にかけて思うのも 畏れおおく 言葉にだすのも 憚りおおいことながら オオキミが 万代までも 安積親王が これを継いで万代までも 治めたまうおほやまと(大日本)の 大和の 久邇の都は 春になれば 山辺に花咲き 川瀬には 若鮎がついついと泳ぎ 日に日に 栄えてゆく時に 和束山に 安積皇子は 御輿を停めて 天上を治めに 昇ってしまわれた 人を惑わす 空言ではなかろうか 事もあろうに 舎人達は白栲の喪服を着て 伏し悶え 涙にまみれて泣くのだが いまは どうするすべもない 嗚呼)
                  (万葉集 03/475)

   反し歌
  我が大君 天(あめ)知らさむと 思はねば おほにぞ見ける
  和束杣山(わづかそまやま)

(我らが大君である 安積皇子が ここ和束の杣山を 常宮(とこみや)になさろうとは 思いもかけなかったので いままで なおざりにみていたのだった この和束の杣山を)
                 (万葉集 03/476)

   反し歌
  あしひきの 山さへ光り 咲く花の 散りぬるごとき
  我が大君かも
            注 この花は桜であろうと言われている。

(山のくまぐままで 照り輝いて 咲き誇っていた 花が にわかに 散ってしまったような 我らが大君 徳高き 安積皇子よ)
                 (万葉集 03/477)

 次は安積皇子の薨去より七十一日目に、大伴家持が作った歌である。なお七十一日目は四十二日目の六七日(むなのか)の誤記との説もある。

  かけまくも あやにかしこし 我が大君


  男を 召し集へ あども(率)ひたまひ 朝狩に
  鹿猪(しし)踏みおこし 夕狩に とり(鶉雉)踏み立て
  大御馬(おほみま)の 口抑へとめ 御心を見し明らしめ
  活道山(いくぢやま) 木立の茂に 咲く花も うつろひにけり
  世のなかは かくのみならし ますらをの 心振りおこし
  剣大刀 腰に取り佩き 梓弓 靫取り負いて あめつち(天地)と 
  いや遠長に よろづよ(万代)に かくしもがもと 頼めりし
  皇子の御門の さばへ(五月蠅)なす 騒く舎人は
  白栲(しろたへ)に 衣取り着て つねなりし
  ゑま(笑)ひ振舞ひ いや日異(ひけ)に 変らふ見れば
  悲しきろかも

(心にかけて思うのも 畏れおおく 言葉にだすのも 憚りおおいことながら 我れらが大君と たたえる皇子の命(みこと)であった 安積皇子は 数多くの臣下達を 呼び集め 引き連れられて 朝の狩には 鹿や猪を追い立て 夕べの狩りには 鶉や雉を飛び出させ 乗馬の手綱を引いて馬を止め あたりを眺めて 心を晴らされた 活道(いくぢ)の山 活道山の 木々は伸び放題に伸び 咲いていた花も 皇子とともに 散ってしまった 世のなかは こんなに儚いものであるらしい ますらおが 雄々しい心を振りおこし 剣大刀(つるぎだち)を 腰に佩き帯び あずさ弓を手に 矢入れの靫(うつぼ)を背負って 天地とともに ますます遠く久しく 万代(よろずよ)までも こうしてお仕えしたいと 頼みにしてきた その皇子の御門に かっては賑わしく お仕えしてきた舎人達は 今は 白栲の喪服を身にまとい いつもの立ち居振る舞いが 日々に失われていくのを 見ると 悲しくて やりきれない)
                  (万葉集 03/478)

   反し歌
  はしきかも 皇子のみことの あり通い 見しし活道の道は
  荒れにけり

(嗚呼 いたましい 安積皇子が 愉しみ通われた 活道の道は 荒れは
ててしまった 嗚呼 安積皇子よ)
                  (万葉集 03/479)

   反し歌
  大伴の 名負ふ靫(ゆき)帯びて よろづよに 頼みし心
  いづくか寄せむ

(武門の大伴の名を 靫負う大伴の名を 帯して 万代までも お仕えしようと 頼りにしていた心を 安積皇子が 崩御された今はいったいどこに寄せたらいいのか)
                  (万葉集 03/480)

 家持は、このような長歌、反し歌をそれぞれ二首奉った。この後、家持は四月の頃まで平城京の自宅で喪に服していた形跡がある。

 天平十八(746)年、大伴家持は越中守に遷任され、七月、越中へ向け旅立った。橘諸兄とはこの後も連絡をとりあっている。

  いにしへに 君が三代経て 仕へけり 我が大主は 七代申さね

(過ぎし御世には 大君三代(文武・元明・元正)を通してお仕えしたと申しますが わが主君(橘諸兄)はどうか七代までもお仕え下さいますよう)
                 (万葉集 19/4256)

 万葉集の編者とも目される二人が、このような歌を万葉集に堂々と載せていることは、藤原氏に気兼ねなく、亡くなった安積親王を称えることができる状況に変わったということであろう。



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最終更新日  2012.08.21 06:21:50
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