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私:消費税増税を見送るようだね。 しかし、この欄で堀篭氏が指摘しているように、最近の給与明細をみて、健康保険料が増えたのを感じている人もいるかもしれないとし、大企業の会社員らが入る健康保険組合の平均保険料率は、16年度(予算ベース)まで9年連続で上がっていて、1人当たりの保険料は07年度より年9万5742円も多くなっているという。 A氏:ひそかに増税が行われているんだね。 団塊の世代の高齢化により医療費が増え、負担はまだまだ重たくなりそうだね。 賃金が伸び悩み、財布のひもが固くなる原因がここにもあるね。 私:経済同友会の小林喜光代表幹事が「健康保険料はずるずる上がっているのに国民は気づかないが、一方、消費税率の引き上げには非常にヒステリックになる。 国民も覚悟を決めないと、国家は破綻してしまう」と語っているという。 A氏:ところで、この欄の出だしで、英誌「エコノミスト」編集部が最近、出版した日米中の経済の未来を予測する「通貨の未来 円・ドル・元」(文芸春秋刊)という本を紹介し、そこには、日銀のマイナス金利でも資金需要を盛り上げることはできず、日銀は物価を2%上昇させる目標を放棄するという、大きな軌道修正を迫られることになるとあるという。 独自のシンクタンクを持ち、経済予測に定評のある同誌は、アベノミクスの未来についても懐疑的で、「選挙で有権者の支持を獲得する効果はあったが、経済に与える効果は限定的」として、全面的な成功をおさめることはないだろう、とみているという。 私:金融緩和も財施出動も、景気を一時的には刺激するが、カンフル剤の効果はすぐに切れる。 大和総研の武藤敏郎理事長が20日、サミット関連の都内のシンポで「財政や金融政策では構造的な問題は解決できない。長期にわたると、必要な改革を先送りしてしまう副作用を生む」と語ったという。 エコノミスト誌は、日本の社会保障の未来について、「富裕層は年金の給付を削減され、国民全体の医療費の抑制も進む」と予測しているという。 A氏:来春の消費増税を再延期するのならば、財政再建とともに、「痛み」を伴う社会保障改革をどう進めるのか、という議論が必要になり、そうでなければ「将来への不安」は消えず、景気の好循環にはつながらないのではないかと堀篭氏はいう。 私:自民党の谷垣幹事長が言っていたように消費税増税は「進むも地獄、退くも地獄」だね。 堀篭氏が最後に言うように、政権も国民も、誰にとっても「不都合な未来」に、向き合う覚悟が求められているわけだ。
2016.05.31
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今週、興味を持ったのは下記の2冊だけだが、いずれも書籍代が3千円以上なので、本は厚いと思い、図書館予約をやめ、書評のまとめだけに止めた。 1.リチャード・J・サミュエルズ〈著〉『3.11 震災は日本を変えたのか』・評者・佐倉統(東大教授・科学技術社会論) 3・11は日本をほとんど変えなかった――これが著者の結論であるという。 希代の日本ウォッチャーが、日英両語の膨大な資料を渉猟し、国防、エネルギー政策、地方自治の三領域について、透徹した分析をおこなったものだという。 本書で唯一、前向きの変化がみられたとされているのは地方自治。 自治体同士の横のつながり、自主的で自発的な連携の盛り上がりは、すべてを中央が差配していた日本の統治のあり方を変えるのではないか。 著者はここに日本の未来の曙光を見ているように思える。だが、その変化の象徴としてスポットライトが当てられている河村たかしや橋下徹は、今となっては失速した感がぬぐえないという。 それにしても、第1章でまとめられている震災後の対応の右往左往は、読むのが辛いと評者は言う。 既知の事柄ばかりではあるが、端的に濃縮されて提示されると、そのあまりの不甲斐なさが際立ち、これで「現状維持」で良いはずがないと改めて、そう思うと評者はいう。 2.多谷千香子〈著〉『アフガン・対テロ戦争の研究 タリバンはなぜ復活したのか』・評者・杉田敦(政治学者・法大教授) 9・11テロへの反撃としての、アフガニスタンへのアメリカの「対テロ戦争」は、失敗であった。 テロの黒幕オサマ・ビンラディンを保護したというのが、アフガン攻撃の理由であったが、著者によれば、テロ以前からオサマは「招かれざる客」であり、彼を引き渡したいという意図はアフガニスタン側から何度も示されていたが、アメリカはシグナルを見落とす。 タリバンを含むパシュトゥン民族の、「敵であっても客人を匿うという伝統的な部族の慣習法」など、「中世的なイスラム社会に対する理解」をアメリカは欠いていた。 さらに、パキスタンは、表ではアメリカに調子を合わせつつ、裏では、宿敵インドとの対抗上、タリバンを支援するという「ダブルゲーム」を試みたが、アメリカはこれに気付くのが遅れた。 「アフガン一般民衆にとって民主主義は聞いたこともない」ほど遠いことをアメリカは考慮しなかった。 アフガン民主化といった「大それた夢」をもたず、オサマらだけに「的を絞る作戦に特化していればよかった」というのが著者の結論。 さまざまな登場人物が、何を考え、何を求めたかを、それぞれの視点に立って復元しようとする著者の姿勢が、圧倒的なリアリティーを本書に与えていると評者は言う。
2016.05.30
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タックス・ヘイブン 逃げていく税金 私:最近、マスコミで騒がれだした「パナマ文書」で「タックス・ヘイブン」が話題になったね。 さらに、26日の朝日新聞報道によると、主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の開幕を前に、岩井克人・東大名誉教授ら日本の経済学者ら47人は25日、議長国の日本に対し、「タックス・ヘイブン対策、国内の経済学者47人が呼びかけ」とあり、その呼びかけは「『タックス・ヘイブン』により途上国も先進国も税収を失っており、ツケを払わされるのは各国の一般市民と中小企業、世界の最も貧しい人々」として「格差拡大の要因である『タックス・ヘイブン』の時代を今こそ終わらせるため、すべての国が参加する国際的な取り組みが必要」と指摘。 同時に、フランスのピケティ氏など世界の経済学者ら約350人が9日に発表した、「タックス・ヘイブン」をなくすよう求める書簡への賛同も表明したという。 A氏:岩井教授たちは、サミット議長国の日本に対して、多国籍企業の情報公開▽(資産の)実質的所有者の透明性の確保▽途上国を含む広範な国々が参加できる国際的枠組みの構築――の3項目を、首脳宣言と行動計画に盛り込むよう求めているね。 私:しかし、伊勢志摩サミットでは、これは議題にならなかった。 ところで、この滋賀氏の著書「タックス・ヘイブン」は、新書版だが、実によく「タックス・ヘイブン」の全体像を描いていて、著者は「タックス・ヘイブン」についての国際経験も豊富で、「租税回避」のテクニックを実際に起きた事例をもとに説明している。 専門用語もわかりやすく解説している。 A氏:「タックス・ヘイブン」には3つの特徴があり、これを利用して「租税回避」が行われる。 (1)まともな税制がない。 (2)固い秘密保持法制がある。 (3)金融規制やその他の法規制が欠如している。 私:著者は、「タックス・ヘイブン」を利用して、マネーゲームをしているヘッジ・ファンドを、有害極まりないという。 リーマン・ショックに代表されるようなマネーゲームによるいくつかの金融危機は、実体経済も破壊してきた。 A氏:安倍首相が伊勢志摩サミットで言った「リーマン・ショックの前兆」や経済危機やリスクは、このマネーゲゲームの結果だね。 私:だから、経済危機やリスク回避には、伊勢志摩サミットで、タックス・ヘイブン問題を含め、マネーゲームの抑制を議論すべだったね。 日本の経済学者ら47人の呼びかけのようにーーー。 しかし、安倍首相の「リーマン・ショックの前兆」論は、消費税延期の言い訳のためにすぎなかったね。
2016.05.29
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私:今月の「新聞ななみ読み」欄では、東京五輪招致をめぐって2.3億円という巨額の金が動いた問題で、朝日、読売、毎日と「ななみ読み」をしているね。 まず、カネの出所だが、5月24日付の朝日新聞朝刊に、東京都民の税金約35億円と東京五輪・パラリンピック招致委員会が寄付金や協賛金などとして集めた約54億円の計89億円が招致活動費として計上されていて、このうち約2億3千万円が、シンガポールのコンサルタント会社「ブラック・タイディングズ社」(BT社)に支払われたんだね。 A氏:都民の税金がからんでいるね。 私:シンガポールのBT社については5月23日付読売朝刊が、〈シンガポールの都心に近い古い公営住宅の一室に事務所を登録〉していたことを確認して、様子をルポしている。 A氏:結局、ペーパーカンパニーだね。 私:IOCはNGO(非政府組織)で、国連組織や、政府組織でもないから、IOC委員に資金が渡っていても、モラルの問題はあるにしろ、犯罪になるのか。 これは、朝日の前掲記事は、フランスの検察が、国際陸連のドーピング隠しに絡む捜査の一環で、日本からの資金の流れを把握していて、仏刑法では日本とは異なり、公務員でなくても、違法行為などの謝礼として金銭などのやりとりがあれば汚職の対象となり、また、国際機関や海外の公的業務にかかわる人を処罰対象とする規定もあり、民間人であるIOC委員でも、汚職の対象になりうるという。 A氏:フランスも含む欧州連合(EU)と日本の間には「刑事共助協定」があり、仏側の要請があれば、日本の検事が事情聴取したり、ビデオ会議システムによる仏側の聴取に日本側が協力したりすることもあるという。 池上氏は、何が問題なのか、わかりやすい朝日の解説だとして、日本も、BT社に送った金がどう使われようと、知ったことではないなどと答えているわけにはいかないという。 私:BT社の売り込みを受けた日本の招致委員会は、大手広告会社の電通に実績を問い合わせたうえで契約したと説明しているから、毎日が言うように、コンサルタントに高額報酬を払う五輪開催都市は東京だけではなく、それが何に使われたか、表舞台の公職者は知るまいが、知っているのは『電通』の、限られた関係者だけだ。 池上氏は、電通は何と答えるのかと最後に言っているが、第三者委員会だけでなく、フランスの検察も厳しく追及するので期待できるだろう。 舛添都知事の第三者審査のような期待はずれはないだろう。
2016.05.28
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私:今日、オバマ大統領が、広島訪問したが、米軍の当初計画では、横浜も有力な原爆投下目標だったことが、米公文書で分かったという。 米公文書によると、原爆投下都市の選定作業は45年4月27日にワシントンで開かれた目標検討委員会ではじまった。 23日にはソ連軍がベルリンに突入し、ドイツの敗北は時間の問題という段階だった。 A氏:選定基準は(1)人口が集中し直径約4.8キロ以上の広さを持つ都市(2)東京と長崎の間に位置する(3)高度の戦略的価値をもつ、などであった。 具体的には東京湾、川崎、横浜、名古屋、大阪、神戸、京都、広島、八幡、福岡など17地域・都市をリストアップ。 私:しかし、初の原爆の破壊力を確認するには空襲の被害を受けていない都市が望ましいので、すでに破壊された地域は除外されるべきだという条件がついた。 その結果、(1)広島、(2)京都、(3)横浜という公文書内のメモを見出した。 第2回の目標検討委員会は、5月10日、11日の両日開かれ、5都市と皇居を個別に検討。 優先順位の高いAA級には京都と広島があがっており、工業地帯がまだ健在の横浜市が北九州の小倉と並んでA級目標に分類され、横浜は3番目だった。 A氏:ところが5月28日に開かれた第3回会議では、京都、広島、新潟の3都市。 何故、横浜を外したのか説明がないという。 推測だが、横浜は海岸線に沿って長いため、市街地の奥行きが4キロ程度しかなく、選定基準の4.8キロ以上に合わなかったのではないかという。 その代わり、横浜は、5月29日にB29、500機による大空襲を受けている。 これは、さかのぼるが、5月15日の航空軍司令部からの命令で、広島、京都、新潟が原爆投下目標なので、許可のない限り空襲してはいけないという命令がグアムのB29爆撃機部隊司令官に指示が出ていたという。 それで、横浜は、原爆目標値でなくなったので、大空襲となり、横浜の中心街は焼きつくされたというわけか。 私:その後、米陸軍首脳の意向で京都が外れ、広島が第1候補になり、小倉が候補に加わる。 だから、広島に次ぐ、原爆を搭載した爆撃機の当初の目標は小倉だった。 しかし、当日、視界が悪いため、変更し、長崎に向かうということになったね。
2016.05.27
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私:G7で、安倍首相が世界経済の成長を促進するための課題を提示しているが、このピケティコラムでは、冒頭、「難民問題、債務問題、失業問題――欧州の危機に終わりはないようだ」で始まっているように、欧州危機は深刻のようだね。 そして、「今こそ、ユーロ圏の主要国が改めて指導力を発揮し、決断ができて欧州を再び軌道に乗せることができるしっかりした中核をつくるときだ、と提言すべきだ」と述べている。 A氏:欧州連合(EU)をつくる28カ国が締結している条約全体、特に2007年(に署名された)のリスボン条約を見直すのは、恐らく時期尚早で、現条約と並行し、ユーロ圏内の希望する国々が政府間で新条約を結ぶことは、可能だとピケティ氏は言う。 私:11~12年にユーロ圏加盟国が数カ月交渉し、予算に重大な影響をもたらす二つの政府間条約を批准した。 一つはESM(欧州安定メカニズム、資本金7千億ユーロを付され、ユーロ圏加盟国に金融支援をする基金)を設立するもの。 もう一つはTSCG(ユーロ圏における安定、協調、統治に関する条約)で、新たな予算ルールを定め、(違反すれば)自動的に加盟国に制裁が科されるというもの。 問題はこの二つの条約が、さらなる景気後退と、欧州での高級官僚の支配体制拡大をもたらしただけだったということだとピケティ氏は指摘する。 A氏:ピケティ氏は、二つの条約の問題を改善するため、真に民主的な機関をユーロ圏に作らなければならないとして、それは、白日の下で討議し、公明正大な決定を下す機関であり、最良の手はユーロ圏議会の創設だろうという。 各国議会の代表で構成する議会が、ユーロ圏に直接関わる予算と財政上のあらゆる決定を行うべきで、ESMを始め、赤字管理や債務再編もできるようにすることにより、欧州共通法人税や、インフラと大学に投資する予算を可決することもできるだろうとピケティ氏は言う。 私:この欧州の中核は、全ての国に開かれている一方、(改革を)より速く進めようとする国の邪魔をしてはならず、実際、合計でユーロ圏の人口とGDPの75%以上を占めるフランス、ドイツ、イタリア、スペインの4カ国が合意すれば、新しい政府間条約の発効は必ず可能になるとピケティ氏は言う。 このピケティ氏の考えは持論なのか、今年1月のピケティコラムの「欧州の危機 ユーロ圏の新議会発足を」と同じだね。 ユーロ圏については、クルーグマン教授がユーロを導入するため、欧州諸国が自国通貨を手放したのを氏のコラム「スコットランドの未来 自国通貨なき独立のリスク」で問題視していたね。 安倍首相の期待に反して欧州危機は長期化しそうだね。
2016.05.26
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【中古】 大学病院革命 /黒川清【著】 【中古】afb 私:この本が書かれた07年頃は、大学病院で医療事故が多く、著者は、その問題意識で大学病院の危機の原因と対策を指摘しているね。 A氏:しかし、今月の24日の新聞では、群馬大病院で手術後の死亡が相次いだ問題で、死亡した50人のうち、手術を選択したことが妥当と判断されたのは26人と半数にとどまることが、日本外科学会の調査でわかったと報じていて、まだ、問題が多いようだ。 私:この本の著者は、東大医学部を出て、大学病院にいてからアメリカに長くいて日米両方の医療を経験していて、その比較もしているね。 大学病院の問題点1つは、研究と医療をゴチャゴチャにしていることだという。 歴史的にみると、明治に「西洋医学所」ができ、後の東大病院になるが、最初は、実際の場、新しい医療を研究する場として誕生した。 A氏:医者を育てるための「医療教育機関」では、なかったのだね。 私:日本の医学部と大学病院の性格を形成するうえで、明治に重要な歴史的選択があった。 明治政府が、医学は臨床より研究重視のドイツ医学を選択したのが、尾を引いているという。 医者という仕事を続けていくために必要なことは「知力」「技力」「体力」そして「人間愛」だという。 そして、この中で一番重要なのは「人間愛」だという。 医学部に入る学生は、難関の入試を突破してきたから「知力」はあるだろう。 A氏:「人間愛」を学ぶということは、「リベラルアーツ」を学ぶことだね。 これは、このブログの「『文系学部廃止』の衝撃」「『文系学部廃止』の衝撃」と「東工大、集う文系の達人 中島岳志氏・磯崎憲一郎氏ら次々教授陣に 教養重視の伝統」でふれているように、理系に「リベラルアーツ」の学習が少ないのは、日本の大学の欠点だね。 私:カナダやアメリカの大学には医学部はなく、医者になりたいものは、4年制の大学で、「リベラルアーツ」を学び、それを卒業して医学専門のメディカルスクールに行くのだという。 そして、治療の腕があがれば、他の大学病院に呼ばれてでも治療をするという。 だから、日本と違い大学病院の医師の収入は所属大学の固定給でなく、治療の成果報酬だという。 ところで、21世紀の医療体制の基本は高齢社会と疫病構造の変化だという。 そうなると、高齢化で生活習慣病が増えるのは、医者の責任でなく、患者側の責任でもあるという。 また、メディアは、「医者の質が落ちた」という報道をしている片方で「これからの進路は医学部だ」と受験競争をあおる記事やニュースを垂れ流している。 ダメな医者は「あなた」と「メディア」が育てていると著者は最後に警告しているが、この本が出版されてから、10年ほどたつから、大学病院のほうも、少しは改善されているのだろう。
2016.05.25
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私:フォーラム欄では、読者アンケートに基づき、「正規社員の働き方」について紙面で数回にわたり読者の意見を連載する予定だね。 第1回は10名ほどのアンケートとともに、「『日本流』を柔軟にいかして」と題して、今野浩一郎・学習院大教授(人事管理)の専門家の見方が掲載されている。 この意見は興味があるね。 A氏:「正社員」の明確な定義はないが、企業も働き手も長期雇用を前提にしている、という点で一致していて、日本の正社員の根幹となっているのが欧米にない新卒一括採用だと指摘している。 私:学校を卒業して就職するときは、まだ仕事の「素人」。 企業は5年から10年かけて、教育投資の意味も含めて賃金を払い、育てていき、それがいいシステムだと考えられてきた。 A氏:欧米では、あるポストが空くと、その都度、別の場所から採用し、社内で教育するのではなく、外で育った人を採用する。 同一労働、同一賃金の背景があるね。 私:企業が人を育てている今の仕組みを変えるなら、社会が育てることになり、そのためには、大学教育を中心に日本の社会をがらりと変えないといけない。 A氏:日本の大学では、25歳以上の入学者が占める割合はわずか2%。 これは、先進国では異常で、先進国は15%から25%という違いはここから来ているね。 私:どちらがいいという証拠はないが、今野氏は日本流がいいと考えている。 まず、一人前にするには働きながら教える方は効率がいい。 もう一つは、「素人」をとりあえず就職させることで、若者の失業率が低くなる。 A氏:逆に米国には、労働条件に「シニオリティ」というのがあるね。 減産で、一時、解雇されても、増産で再雇用のとき、勤続年数の長い古参従業員が、後から就職した者よりも先に雇用されるという権利だね。 仕事のベテランが有利なことは明らかだ。 私:しかし、日本式も柔軟に対応すればいいと今野氏はいう。 パートの女性などは、途中で新卒一括採用の正社員と同じコースに合流できる仕組みが必要で、例えば、スーパーには長期雇用されている非正社員の店長などは、正社員に転換するか、正社員と同様に扱う方があり、実際、企業の考え方はそうした方向に変わってきているという。 優秀な非正社員を活用しないと競争していけないからだ。 転勤や休日出勤ができないなど、働き方に制約がある人には、従来の正社員とは別の枠を作り、公正な処遇制度をつくるなどの様々な形ができることで、正社員の姿は変わっていくと今野氏は言う。 正社員の勤務態様にバラエティを設けるという考えだね。 賃金差など実際の運用がうまくいくかが問題だね。
2016.05.24
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私:この科学記事は、アサガオのことから始めている。 アサガオは、奈良時代、中国から薬用として日本に伝わった際、色は青だけだったが、江戸時代後期、「変化アサガオ」と呼ばれる多様な形や色の花が登場し、観賞用植物としてブームになったという。 A氏:君のブログによると、東野圭吾のミステリー小説「夢幻花」の夢幻花とは、黄色いアサガオをいい、江戸時代にあったが、種が麻薬になるので、禁止されて廃れたというね。 私:そのことは、この科学記事には出てこないが、変化アサガオが生まれたのは、安定していたDNA上の遺伝子が突然動き始めたからだという説明だ。 約200年前に動く遺伝子が活性化して、様々な遺伝子が壊された結果、目に見える変異として現れたという。 この動く遺伝子が「トランスポゾン」と呼ばれ、60年代には細菌などで発見され、その後、トウモロコシやアサガオなどの植物だけでなく、ヒトを含む哺乳類など多くの生物にあることがわかってきたんだね。 A氏;「トランスポゾン」が動く「転移」の仕組みは二つある。 主に植物でみられるDNA型「トランスポゾン」は元の位置から切り出され、別の位置に入るという「切り貼り型」。 哺乳類に多いレトロ「トランスポゾン」はDNAを複製する機能を持ち、自分のコピーを残して別の場所に入り込み、大量に増えることができるという「コピペ型」。 いずれも高温や放射線などのストレスがきっかけで動くとみられるという。 私:2000年代に入り、ゲノム配列を解読する技術によって、全DNAのうち「トランスポゾン」やその残骸が占める割合がわかってきた。 例えば大腸菌で0・3%、ショウジョウバエで15~22%、カエルで77%。ヒトでは45%を占める。 ヒトのDNAで「トランスポゾン」の割合が多いのは、進化の過程で動いた結果の蓄積で、実際はほとんど動かないとみられてきたが、米国の研究グループが09年、胎児など発達段階の脳の神経前駆細胞で動く現象を確認し、研究は新たな段階に入ったという。 A氏:「トランスポゾン」が病気に関与することも分かってきた。 「トランスポゾン」の増大が統合失調症の発症や病態に関係し、うつ病や躁うつ病の患者でも増加がみられ、精神疾患の発症のしやすさを左右している可能性があるという。 がん細胞でも、「トランスポゾン」の転移が加齢とともに増加し、がんの遺伝子を活発化し、がんを抑える遺伝子の機能を損なうことも分かってきたという。 がんの悪性度を高める変異を抑える仕組みが理解できれば、新しい治療薬の開発につながる可能性があるという。 まだ先の話しだが、期待したいね。
2016.05.23
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書評欄では、次の1冊に興味があったが厚そうなので図書館から借りるのを諦めた。 もう1冊、ビジネス書欄で興味をひいたのが1冊あったが、図書館に検索したら未購入。 1.(書評)『時間かせぎの資本主義 いつまで危機を先送りできるか』 ヴォルフガング・シュトレーク〈著〉・評・諸富徹氏(京大教授・経済学) 資本主義経済の運営がなぜうまく行かないのか。 成長率は回復せず、国家債務は増大の一途をたどるばかり。 各国の中央銀行は競って量的緩和策に乗り出すが、問題の根本治癒に至らない。 時間を買って危機を先送りしているだけだ、と著者シュトレーク氏は断じ、あまたの経済書とは異なる視点で現代資本主義に切り込み、その病巣をえぐり出すという。 著者は、国民福祉より金融資本の利害が貫徹される欧州の現状を、市場による民主主義への深刻な挑戦と受け止める。 欧州各国は、共通通貨ユーロの下で、為替レートによる経済の調整権限を奪われ、富裕国が貧困国を助ける欧州次元の財政調整が夢物語である以上、ユーロを終焉させ各国の通貨主権を回復させることが、民主主義に基づく経済運営を回復する方途だと著者は結論づけており、「欧州統合」はもはや、かつての輝きを失ってしまったのだろうかと評者は懸念する。 来月の「欧州統合」から離脱するか、否かの英国の国民投票もどうなるか。 2.(ビジネス)『ハーバードの人生が変わる東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義』』M・ピュエット、C・グロス=ロー〈著〉 本書で講じられる東洋哲学は、孔子、孟子、老子ら中国三千年の歴史から生まれたもっと大きな智慧で、利己を超えた視点を持つ。 「自分探しをするな」「勤勉が報われるとはかぎらない」「ポジティブな感情も有害になりうる」と、ハーバード的教育の逆を行くような講義は、経済学入門、コンピューター科学入門に次いで、同大で3位の履修者数を誇るという。 「中国の古典思想を知ることが、幸せで有意義な人生のあり方を新鮮な目で見つめなおすきっかけになる」と、同大OGで共著者の女性ジャーナリストも書き添えているという。 ビジネスと東洋哲学の関係で有名なのはアップル社の故ジョブズ氏と禅。 かって、日経ビジネスは、「iPadは禅そのもの:禅プロダクト」と言い、ジョブズ氏が禅をカタチに変えたという。 ツイッターの創始者ジャック・ドーシー氏は、シリコンバレーでは「ポスト・ジョブズに一番近い男」と期待されている天才だが、禅仏教により広まった「わび」「さび」を英語で書いた1冊の本を新入社員研修で渡し、「両極端の要素に中にある『美』、そのバランスこそが大事ということを社員に学んでほしい」という。 ドーシー氏は、アップル社の故ジョブズ氏を師として尊敬しているという。 これらは、このブログの「禅と経営・一流が実践する仕事の法則」で詳しくふれている。
2016.05.22
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私:津田氏は京大卒だが弁護士でプロの雀士。 この「異議あり」欄では賭博について津田氏は原則解禁という興味ある考え方を提言しているね。 A氏:プロ野球選手の野球賭博、バドミントン選手の違法カジノ通いと、最近、賭博をめぐるスキャンダルが表面化しているので、この「異論あり」のインタビュー企画となったのだろうね。 私:津田氏は、いまの刑法の賭博罪は、法のあり方として問題がありすぎるので、賭博罪は不当だと主張している。 賭博がどこまで許され、どこから処罰されるかが恣意的に決められ、その根拠がはっきりしないのが最大の問題だからだという。 1950年の最高裁の判例では、賭博を罪とする理由として、賭博には勤労の美風を害し、副次的に犯罪を誘発する弊害があり、公共の福祉に反するとされている。 だから賭博は一切禁止するというのならまだわかるが、競馬や競輪などの公営競技は認められていて、国や自治体が規制するから賭博の弊害が少なくなるという理屈だが、一般市民が納得できるものではないと、津田氏は言う。 A氏:賭博罪は、日本社会の現実にも合っておらず、パチンコという究極のグレーゾーンがあるね。 パチンコは、風営法で、賞品として現金を提供することを禁止されているが、実際には、客は出玉を『特殊景品』に交換して、パチンコ店のすぐそばにある交換所で換金している。 パチンコについては、この「異議あり」では、韓国が2006年8月にパチンコ禁止に踏み切ったのにふれていないね。 これは、このブログの「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか」でふれているね。 私:津田氏の「異議あり」での主張は、賭博全面解禁だね。 ただし許可を得ずに賭博を開帳してはいけないという、認可制に近いものにするのだという。 世界的にも、ギャンブルは禁止から規制へという流れになっていて、ただ禁止するのでなく、合法化した上で、様々な規制を設けてコントロールしていくという。 合法のカジノがあれば、誰もリスクを冒して闇カジノには行かず、禁止していると、かえって暴力団に利用されやすいという。 グレーゾーンのままにしておく方がギャンブル依存症の対策が進まない。 日本ではすでにギャンブル依存はどんどん増えていてほとんどがパチンコ依存症だという。 パチンコを賭博と位置づけ、特別税をかけて依存症対策の財源にすべきだという。 しかし、韓国がパチンコ撤廃に踏み切ったのは、射幸心をあおり、パチンコ依存症になり、人生の破滅の原因になるからだね。 日本では「なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか」で指摘しているように政、財、官が癒着している産業だから、撤廃は難しいだろうね。 韓国の現実は、津田氏の主張とちがうようだね。
2016.05.21
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私:2月4日にニュージーランドで全12カ国が参加したTPP署名式が行なわれたが、実際に合意内容が発効されるには、署名から2年以内に6カ国以上が議会承認の手続きを終え、手続きを終えた国の国内総生産の合計が全体の85%を超えなければならない。 つまり、経済規模の大きい米国の議会承認がカギとなるね。 A氏:議会承認はオバマ政権の大きな最後の仕事の1つだが、米国際貿易委員会(ITC)が18日、TPPの米国経済への影響分析を公表した報告書によると、TPPがない場合と比べ、2032年のGDPを427億ドル(約4・7兆円)、0・15%分押し上げるとの見通しを示し、押し上げ効果の予想が比較的小幅にとどまったことで、TPPの年内の議会承認を目指すオバマ政権の議会承認の追い風になるかは見通せない状況だというね。 私:20日の報道では、オバマ政権が目指す年内の議会承認は不透明感がさらに増し、早期の発効は見通せない状況だと逆風の見通しとなっているね。 A氏:日本政府試算で見込むTPPの経済効果(2・59%)と比べて米国は0・15%とかなり小さいね。 米国のTPP反対派の重鎮、民主党のレビン下院議員は同日、公表された経済効果について「取るに足らない」と切り捨てたという。 私:雇用がほかの国に奪われるなどとの懸念が根強く、大統領選の有力候補者も反対一色だね。 オバマ政権は、11月の大統領選直後の「レームダック(死に体)」期間に議会承認を得ようと調整を進めており、フロマン通商代表部(USTR)代表は「承認は極めて重要」と電話会見で語ったというが、どうなるか。 A氏;TPP効果では、日米試算に食い違いがあり、日本政府は昨年末に出した国内生産額が10億円以上の農産品33品目についての影響試算で、TPPが発効しても国の経営支援対策の効果があり、国内の生産量はすべての品目で維持されるとし、生産額への影響は「安い輸入品に引っ張られ、価格が下がる」ことだけとし、生産の減少幅は牛肉で最大625億円、乳製品で最大291億円とはじいた。 私:しかし、今回、米国が試算した日本への輸出増の内訳は牛肉922億円、乳製品が587億円と、日本が試算した減少額を上回るものもあるね。 日本の農業も心配だが、米国議会のTPP承認問題もどうなるかね。
2016.05.20
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私:英ロンドンで5日にあった市長選で、初めてイスラム教徒の市長が誕生したね。 パキスタン移民2世の労働党下院議員サディク・カーン氏(45)だね。 A氏:市長選挙は、上流階級出身の保守党下院議員ザック・ゴールドスミス氏(41)と、移民家庭から人権派弁護士になったカーン氏の一騎打ち。 私:案の定、 保守党陣営は、カーン氏を「イスラム過激派」になぞらえるネガティブキャンペーンを展開したんだね。 ゴールドスミス氏は大衆紙に「労働党が勝てば、過激派を正当化する候補を立てる政党に警察行政や対テロ政策をゆだねることになる」と寄稿し、2005年のロンドン同時爆破テロで大破した路線バスの写真とともに掲載された。 反イスラム感情の高まりは欧米共通の現象だね。 だが最終的にはカーン氏が約131万票を獲得し、約99万4千票のゴールドスミス氏に圧勝。 A氏:カーン氏が勝てた背景には、ロンドンという街が培ってきた「多様性」があるという。 11年国勢調査によると、人口817万人(当時)のうち約37%が英国外生まれ。 「英国籍の白人」は約45%にとどまり、イスラム教徒も100万人以上で人口の12・4%を占める。 私:カーン氏自身が多様性を体現する存在で、地元のモスクに通い、戒律に従って酒は飲まない一方、イスラム教が認めない同性婚を支持。 カーン氏は英誌に「私たちはみんな、複合的なアイデンティティーを持つ」「私はロンドン市民で英国人、イングランド人、パキスタン系アジア人、父親で夫、(サッカークラブの)リバプールファン、労働党員、そしてイスラム教徒だ」と語ったという。 A氏:ロンドン大学経済政治学院のトニー・トラバース教授(政治学)は「マイノリティー出身の市長を嫌ってカーン氏に投票しなかった人がいた一方で、ロンドンが民族や信仰に寛容な都市である象徴として、あえて投票した人もいたのではないか」と分析しているという。 私:インド系英国人のヴィアス・ウツパル立命館アジア太平洋大学准教授(国際政治学)は、日本に置き換えると「移民2世の東京都知事が誕生するようなものだ」と言う。 日本でも、そんな日は来るのだろうか。
2016.05.19
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私:熊本地震の「本震」から16日で1カ月。 大災害に備えるため、企業は東日本大震災などを教訓に事業継続計画(BCP)を練り上げてきたが、それが機能し操業を再開した工場がある一方、想定外の事態で復旧が遅れるところも多く、計画の見直しに動き出す企業も出ているという。 A氏:事業継続計画(BCP)とは、地震やテロ、感染症の流行などの緊急時に、行政や企業が業務を続けるための計画で、復旧目標、復旧業務の優先順位、重要な情報や設備の予備の確保、などを事前に考えておくことだね。 私:半導体大手ルネサス・エレクトロニクスの子会社(熊本市)は、地震から約1週間後の4月22日、一部工程で生産を再開し、22日には生産態勢を地震前の水準まで戻せる見通し。 以前からBCPを全面的に見直したのが、役立ったとのこと。 ルネサスは自動車に使うマイコンという部品で世界シェア4割を占めるが、東日本大震災で茨城県の工場が被災し、3カ月間も操業が停止し、その後、全国の工場に総額100億円を投資して、BCPを見直してきた。 熊本の工場は震度6強にも耐えられるように建物を強化し、製造装置の損傷を抑えるため免震機能も搭載し、操業停止に備え、一部製品で在庫も増やしていたという。 A氏:BCPのリスクマネジメントが熊本地震に対して予防効果をあげたのだね。 私:そこで思い出すのがアメリカのモルガン・スタンレー社だね。 2001年の9.11同時多発テロで、貿易センタービルが倒壊し、多くの死者を出したとき、南棟のモルガン・スタンレーの社員2700人は、ほぼ全員がビルから退避し、緊急事態に備え、予備のオフィスを3つ確保していたので、テロが起きても、予備のオフィスに移動して、平常通り業務は継続されたという。 A氏:貿易センタービル内で、このような緊急事態に備え、定期的な避難訓練を社員に義務づけていたのは同社だけであったが、これは、同社のスコット社長の強いリーダーシップによるものであり、しかも、9.11までは、スコット社長のこのような緊急事態への対応策は「変わり者」がやることだと思われていた。 9月12日以降は、天才的な対応策であると評価されたという。 私:内閣府の2015年度の調査では、大企業のうち6割がBCPを「策定済み」だと回答したが、その割合は07年度の3倍に増えたという。 しかし、今度の熊本地震のように、計画には「想定外」がつきまとう。 自動車部品大手のアイシン精機は子会社工場(熊本市)で、金型の(工場からの)取り出しに時間がかかり、ドアの開け閉めを調整する部品の生産がまだ止まり、代替生産が本格化するまで、トヨタ自動車の生産も停止した。 金型の在庫を持つなどBCP見直しも考えているという。 BCPには、スコット社長のように「想定外」を「想定内」にする想像力が必要だね。
2016.05.18
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私:昨日まで3日連載で「『文系学部廃止』の衝撃」吉見俊哉著にふれてきたように、全国的に見れば、国立大の文系は逆風下にあり、文科省が昨年、「組織廃止や、社会的要請の高い分野への転換を」と国立大に通知したことが、マスコミで波紋を呼んだね。 A氏:それが、昨日の報道によると東工大は逆の方向に進んでいるね。 理工系の国立大なのに、中島岳志、池上彰、磯崎憲一郎の各氏ら著名な人文社会系学者、文化人を、次々と教授陣に招き入れている。 全国的に文系学科を巡る状況は厳しくなっているが、東工大は「リベラルアーツ」の充実で志のある学生の育成にあたるという。 私:「リベラルアーツ」とは ギリシャ・ローマ時代の自由7科(文法、修辞、弁証、算術、幾何、天文、音楽)を源流とする、人間を自由へと解き放つ人間形成のための学問を指す。 日本では「教養」と訳されたが、大学における「専門課程の準備段階」といった一般教養のイメージに引きずられるのを避ける意味もあって、最近では「リベラルアーツ」と別に表記されることが多くなった。 A氏:東工大では人間性、社会性を広く養って志を育ててもらうために、「リベラルアーツ」は大学1年から博士課程まで続くという。 東工大の改革の司令塔は4月に発足したリベラルアーツ研究教育院(常勤教員54人)。上田紀行院長(文化人類学)は「立志プロジェクトは入学直後の必修科目で、3年後期には同じグループが再結集し、おのおのが『教養卒論』を書く」という。 私:国立大の文系は逆風下にあるのに、東工大は異色の存在だが、「教養重視」は今に始まったものではなく、同大の「百年史」には終戦直後、当時の理工系単科大としては例を見ない「人文社会系教育重視」の改革を実施したとの記述があるという。 指揮は戦前の科学技術機関、技術院で次長を務めた和田小六学長。 長男の和田昭允・元東大理学部長は「父は研究者と行政の双方を経験し、『世の中を広く知らないと、結局、専門も生かせない』と痛切に感じていた。そこで文系の一流どころを招いた」という。 A氏:試験勉強の成果主義の社会で育った優等生は「正解は一つ」と思いがちだが、世の中は正解のない問題ばかりで、誰かがつくった問いを解くより、自ら問題を見つけ出し「問いを立てる」ほうがはるかに大切だというわけだ。 私:何十年も前の学生が名物教授の授業で衝撃を受けたように、「よりよき世界をめざしていくんだ」という志を教養教育の中で感じとってほしいと上田紀行院長は言う。 文系の弱体化の大学危機を克服することによる東工大の創造性に期待したいね。
2016.05.17
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】「文系学部廃止」の衝撃 [ 吉見俊哉 ] 私:1991年に文部省が「世界をリードするような研究を推進するとともに、優れた研究者や高度の専門能力を持った職業人を養成するための拠点として、大学院を充実強化する」という目的で、大学院増産計画を立てた。 単純化していえば「大学院の教育課程や教育条件の改善・改革を行った大学には、予算を25パーセント増加する」という文科省のお達しだね。 A氏:ところが、その後、博士浪人が話題になり、この頃でも博士過剰は問題になっていたんだね。 少子化が確実に来るとわかっているときに意図的に大学院の増産が行われ、少子化が大学経営に影響が現実に出始めた頃に、大学院からの博士が大量に生まれるという悲劇だ。 私:この大学院重点化の失敗は、日米の専門家育成という面での歴史的な違い、それと大学院と社会の結びつきの違いを十分に考慮せずに、「大学院」という単体で日本の仕組みを米国化しようとしたことに原因があった。 先輩の博士が失業しているのをみて、後輩の優秀な大学生は大学院に行かず、企業に就職するようになるから、大学院の質低下にもつながった。 ところで、大学改革の壁は5つある。 「入試」「就活」「学部」「学年」「言語」(英語)の5つだ。 これらの「壁」を破ることが、大学改革に必要だね。 A氏:「入試」の壁は高校時代の秀才が大学で学問的に成功するとは限らないことだ。 私:大学の質をよくするには、入学者を厳しく選抜する「入口管理」の方法と、卒業生を段階的に絞り込んでいく「出口管理」の方法の2つある。 A氏:日本や中国、韓国は入試が厳しい「入口管理」だが、欧米の大学は「出口管理」。 日本の大学の序列は、入試の難しさに対応していて、東大、京大の順だね。 私:しかし、入学が難しい大学が良い大学とかぎらない。 2015年に「週刊ダイヤモンド」が「最強の大学ランキング」で、「グローバル教育力」では、1位から5位までは地方大学で、東大はなんと24位。 A氏:国内大学のピラミッドが、入試の偏差値の評価に基づいているのは、大学での学びの充実度や卒業人生の評価ではないことだね。 ノーベル賞でも理系は地方大学が結構、健闘しているね。 私:日本の大学では、25歳以上の入学者が占める割合はわずか2%。 これは、先進国では異常で、先進国は15%から25%。 韓国でも18%。 日本の大学は、少子高齢化を迎えながらもグローバル化で構造的な改革を迫られている。 新書版だが、一読して日本の大学の危機状態が理解できたね。
2016.05.16
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】「文系学部廃止」の衝撃 [ 吉見俊哉 ] 私:2000年前後に文科省の通知に文系再編、国立大学の大幅削減、大学への第三者評価による競争原理の導入、評価結果に応じた資金の重点配分といった方針が出ていて、2004年の国立大学法人化は、その結果にすぎない。 「文系学部廃止」問題もこの法人化の延長線で起こった。 A氏:国立大学の資金には国からの運営費交付金と、企業等との共同研究費や寄付金と国からくる特別経費の競争的資金の両方を含んでいる。 私:運営費交付金は毎年1%以上縮小していて「国立」の基盤は弱体化する。 新自由主義の結果だね。 特に「役に立たない」文系の弱体化が加速する。 しかし、競争的資金は逆にむしろ拡大している。 この資金は大学側が知恵を絞り、文科省や関連機関にプレゼンテーションをして得るもので、大学側が自身の研究時間を犠牲にしながら作ったものだ。 国立大学の教員が営業マンとなり「企業化」が始まる。 この競争的資金で文系は理系に劣り、格差は拡大するね。 A氏:これにより、2010年の文科省のまとめでは、常勤教員の人件費は、減少し、非常勤教員の人件費の急増があげられている。 特に文系の弱体化が進み、私立大学の増加に対し、国立大学の教員数は減り、文系の競争力が非常に弱体化していることが指摘されている。 私:こうした背景から2013年に「国立大学改革プラン」が文科省から出される。 ここでは、グローバル化、大学の教育、研究面での競争激化、少子高齢化、新興国台頭による知識人人材競争激化という背景が強調される。 A氏:しかし、伝統的に、文系と理系の「知」は近世の「哲学」のように両方が含まれ、戦後、「一般教育」として、導入されたが、米国から導入された理系と文系を横断するカリキュラムは1960年代には曖昧になり、90年代には崩壊する。 私:古くはコペルニクスは地動説で有名だが、彼は、もとは天文学者でなく、大学に入ったのは教会の神父になるためだった。 その頃は、大学は理系も文系も共通していて、彼は、当時のいくつかの大学に学び、法学、医学、神学の全てを学んだ知識人だったのだね。 それが地動説という価値の転換を生み出した。 本来、理系と文系は一体のものなんだね。 要するに大学は「役立つ」という考えでなく「大学は普遍性に奉仕する機関であって、国立大学といえども、国に奉仕する機関でない」ということだね。 明日は、1990年代に始まった米国を真似た大学院重点化ということにふれよう。
2016.05.15
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【楽天ブックスならいつでも送料無料】「文系学部廃止」の衝撃 [ 吉見俊哉 ]私:氏は東大情報学環教授。 この本は新書版だが、今日の日本の置かれた大学の危機の全体像を分かりやすく示してくれるね。 まず、2015年5月頃からマスコミで「文系学部廃止」論が盛んになったのは、マスコミが勝手に増殖したもので、文科省は数年前から国立大法人化に伴う「ミッションの再定義」という流れのなかで示されていたものだという。 A氏:社会的に「理系は役に立つが、文系は役に立たない」という通念があるね。 文科省もマスコミも政府の諸会議もが「文系」振興に有効な具体的な方向性を示せていないのも問題だね。 私:大学教科を「役立つ」という観点から大学の歴史をみると明治初期は先進国の技術導入で「理工系」が優先し、明治後期は、官僚制度の充実から「文系」重視となる。 しかし、1910年代から、戦争の時代に入ると軍備増強のため「理工系」重視になる。 1940年頃になると日本の科学技術を結集した総力戦となっていくね。 このような戦時下に作られた科学技術予算の仕組みは現在も続いているという。 A氏:戦後は経済成長のための科学振興だね。 高度経済成長時代となる。 「理系」重視が続き、大学の「理系」の定員増となるね。 私:民間も「理系」の大卒者を優先して採用する。 俺達の世代では製造業では、大卒の初任給は「理系」のほうが「文系」より1割くらい高かったね。 だから、大学志願者も「理系」が増加するのは当然だね。 A氏:「理系は役に立つが、文系は役に立たない」という通念が生まれるのは当然だね。 現在はグローバル経済時代を迎え、イノベーションなど「知的な競争」に「役立つ」ことが必要になってきたね。 私:著者は、これに対し、「文系」の「知」は既存の価値や目的の限界を見定め、批判・反省していくことにより、新しい価値を創造することができる「知」で、そこには価値創造的な次元があり、それは長期的に「役にたつ」「知」であるとしている。 A氏:しかし、戦中・戦後の日本の大学では一貫して理系重視、文系の周縁化が進み、「文系学部廃止」以前に日本の国立大学は、実質的に理工系大学となっていたわけだ。 私:しかし、21世紀に入り、日本の大学は「グローバル化」「デジタル化」「少子高齢化」という3つの大波に襲われている。 これに対応して、文科省や大学は今までいろいろ手を打ってきたが成功せず、危機をたかめている。 明日からは、それにふれよう。
2016.05.14
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私:米ニューヨーク市立大学教授で、ノーベル経済学賞受賞者のクルーグマン氏が大統領選についてのマスコミ報道にコメントを掲載しているね。 政治報道に見られる最大の悪習は、あしきバランス主義であるという。 過去の選挙戦でも頻繁に見られたが、もし今回これが起きたら、被害ははるかに甚大になるだろうと教授は言う。 トランプ氏は巨額の減税を提案しているが、これに見合う歳出削減案は示していないが、他方、クリントン氏は具体的な税の引き上げを財源とする、控えめな歳出増を提案している。 教授は、つまり、ひどく無責任な空想をする候補者がいる一方で、かなり綿密に数字をはじいている候補者がおり、「バランスをとる」という名目で、この際立った違いを控えめに扱うニュース分析には用心だと教授は指摘している。 A氏:トランプ氏は共和党の候補者指名を争うライバルたちの人格を攻撃し、うそつき呼ばわりして、テッド・クルーズ氏の父親はケネディ元大統領の暗殺犯と関係がある、とほのめかしもした。 しかし、一方のクリントン氏は、(候補者指名を争う)バーニー・サンダース氏がいくつかの政策課題についてきちんと考えていないと言っており、これはトランプ氏と同じ類いの話ではない。 私:クルーグマン教授は、クリントン擁護だね。 教授によると、米共和党保守派の草の根運動「ティーパーティー」(茶会)の運動は、自分たちの税金が「ああいう連中」を助けるために使われるかもしれないと腹を立てる、白人有権者の運動だったという。 それが困窮するマイノリティーに対する住宅ローンの救済措置であれ、低所得世帯の医療保険であれだ。 A氏: いまや目に付くのは、トランプ主義を駆り立てているのは政治の停滞に対する懸念だとする意見だが、それは違い、「経済的な不安」についての問題でさえもないという。 予備選でのトランプ氏支持は、人種的な恨みつらみと強い相関関係があり、米国社会を支配できないことに怒りを覚える白人男性の運動なのだと教授は言う。 私:結局のところ、報道がひどくても、おそらく選挙結果を変えることはなく、それは、自らの役割がなくなってきたといって腹を立てている白人男性の考えは、正しいからで、米国は人種的にますます多様化し、寛容な社会になってきていて、共和党の支持層とは大違いなのだと教授は指摘する。 市民には正しい情報を得る権利があり、ニュースメディアは、トランプ氏とクリントン氏の両者の報道については、悪しきバランス主義による報道や、報道の中道化は正しい情報を提供しないだろうというわけだ。
2016.05.13
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私:本塁での危険なプレーを避けるために、今季から「コリジョン(衝突)ルール」が設けられたね。 A氏:要するに、ホームベースに滑りこむ走者に対して捕手は、これに対して衝突しないように、本塁を避けた位置にいるということだね。 私:衣笠氏がこの新聞欄で指摘しているシーンを俺はたまたま、テレビで見た。 A氏:俺も見たよ。 11日の阪神―巨人戦(甲子園)で、本塁での危険なプレーを避けるために今季から設けられた「コリジョン(衝突)ルール」が適用され、アウトの判定が覆ったね。 コリジョン(衝突)プレーによる初のビデオ判定だという。 私:三回2死二塁からの中前安打で巨人の二塁走者小林誠が本塁へ向かって走って、間一髪タッチされてアウトになったのが、巨人・高橋監督の抗議で、ビデオ判定となり、アウトの判定が覆ったんだね。 しかし、俺が見た時、阪神の捕手原口は、ホームベースの後ろにいて、ホームベースが白く見えたから、全く衝突の危険性が感じられなかったね。 A氏:原口は最初、本塁前方に立って中堅手からの返球を待ったんだね。 しかし、本塁への返球はワンバウンドし、これを捕るために、原口はいったん本塁の後ろに下がった。 当然、本塁は空いて見える。 そこへ走者原口が滑り込んできたから、捕手はタッチするために前に出て、タッチしてアウト。 しかし、この捕手原口のタッチするために前に出た動きが「ベースをまたいだ」と判断されたのだろうと衣笠氏はいう。 私:衣笠氏も捕手経験者だが、これで違反と言われると、どう守ったらよいのか分からないという。 責任審判は「最初から走路に入っていた」と説明したようだが、どう見ても、ベースをふさいでいるようには見えないね。 昨年からこのルールが導入された大リーグでは間違いなくアウトだろうと衣笠氏は言う。 A氏:阪神金本監督は猛抗議をしていたが、ダメだったね。 しかし、これは明らかに誤審だね。 私:衣笠氏は審判を責めるつもりは全くなく、十分な準備期間がないままこのルールが導入されてしまったのでむしろ審判に同情を覚えるという。 審判が一つひとつのケースについて検証し、勉強する機会を設けてから、日本野球機構は導入するべきで、ルールだけは決まったものの、使い方が突き詰められていないまま、ジャッジを迫られているという印象だと指摘しているね。 しかし、こういう誤審は試合をつまらなくするね。
2016.05.13
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私:11日で3度目となった三菱自動車の燃費偽装を巡る記者会見は、疑惑の対象が広がり、多くの疑問が残る内容だね。 出席した会長も開発部長もなんだか他人事のような発言だね。 軽4車種の燃費偽装では、子会社「三菱自動車エンジニアリング」が偽装したと明らかにしたが、指示した人間の特定など、責任の所在は依然として、不明のまま。 全容解明にはほど遠く、具体的な利用者への補償内容も定まらない。 ブランド価値を損なうのは必至で、経営のリスクが膨らんでいると報じているね。 A氏;朝日の編集委員・安井孝之氏は、この記事の「視点欄」で君が言っていた「三現主義(現場、現物、現実)」という現場で実物を見て、常に改善せよという警句を三菱自は忘れていたと指摘しているね。 私:「机上計算により算出した」「現実には達成が困難でありながら、根拠に乏しい安易な見通し」「実務状況の確認をしなかった」――。 三菱自が国交省に報告した内容からは、現場で現物に基づいて点検しながら開発するという当然の作業ができていなかった実態がみえてくると安井氏は指摘していて、今回の燃費偽装問題は、「現(うつつ)」なき経営の帰結だと言うが、その通りだね。 三菱自動車の設計者は、自分の設計した車の燃費が実際のテストでどうなったのか、テスト現場で立ち会わないのかね。 A氏:昨年10月に横浜の傾斜マンション問題の旭化成建材の杭打ち偽装データと似ているね。 この場合も設計は元請けの三井住友建設。 杭の長さは設計の机上での決定だから、設計者はそれが実際に正しいか気になって、旭化成建材の杭打ち現場に立ち会うはずだがそれがない。 禁じられている「丸投げ」だね。 三井住友建設の設計も現場離れの「現(うつつ)」なき経営の反映だね。 私:杭打ち偽装データも軽自動車の燃費偽装も設計しっぱなしで、設計者は図面描きで技術者でなく、「3現主義」欠如の設計のマネジメントの欠如だね。 これが、今回の偽装問題の根本原因だね。 繰り返し強調するが、トヨタは「現地現物」、ホンダは「三現主義(現場、現物、現実)」と現場で実物を見て、常に改善せよという警句だが、三菱自はそれを忘れていた。 同様に現在の建設現場では、以前なら元請けにあたるゼネコン(総合建設会社)の社員は現場で先輩から、施工図の描き方やコンクリートの打ち方を実地に学べた。 しかし、競争激化によるコスト削減などから現場管理者の臨時雇用化が進んで、現場に出る正社員が減り、現場での技術継承も途絶え始めて「空洞化」、すなわち現場離れの「現(うつつ)」なき経営が起きているという。 日本のものづくり現場は、弱体化が進んでいるね。
2016.05.12
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私:三菱自動車が1991年以降に国内で発売したほぼ全ての車種で、違法な燃費データ測定をしていたことがわかったという。 販売が終了した車種を含めて数十車種にのぼり、軽自動車だけでなく普通車や大型四輪駆動車にも広がる見通しだという。 A氏:時間が経つにしたがって、どんどん、違法行為が拡大するね。 この会社はどうなっているのかね。 誰が管理しているのかね。 社長を始め給与の高い管理職も管理をしていたのかね。 軽自動車の燃費偽装の明確な原因もまだ分かっていないようだね。 経営にスピードがないね。 長い間に出来た経営体質だね。 私:燃費試験データを偽装していた「eKワゴン」など軽自動車4車種については、問題発覚後に同社が改めて走行試験をしたところ、燃費が15%以上悪くなるデータも出ており、三菱自は11日、調査結果を国交省へ報告するというが、対応が遅いね。 一方、軽自動車4車種の4月の新車販売は、前年同月から6割も落ち込み、4車種の販売は4月20日の問題発覚から止まっており、再開のメドは立たないようだ。 日産の軽自動車販売も同様だね。 昨年4月の新車販売ランキングでは、両車をまとめた「デイズ」が日産車として唯一、上位10位に食い込んだが、販売停止の影響で、全国軽自動車協会連合会の10日のまとめでは、今年4月の「デイズ」の販売台数は前年同月比67%減で、順位も35位まで転落したという。 A氏:国内の乗用車販売で最下位の三菱自にとっても、軽は国内販売の半分超を占める主力だが、「eKワゴン」「eKスペース」をまとめた「eK」は同64・2%の大幅減。 三菱自の測定を信用していない国交省は4車種の燃費を測り直しており、その結果が出るのは6月。 販売が一切できない見込みの5月は、4車種の販売台数が「ゼロ」になる可能性も高いね。 私:4車種の販売を再開できたとしても、両社には軽市場の縮減という厳しい現実が待つっている。 三菱自が販売を再開しても、燃費をごまかし、消費者の信頼を裏切ったというマイナスからのスタートになり、「非は三菱自にある」という日産にも、顧客からは厳しい視線が注がれており、もはや、挽回どころでなく、再開しても4車種は停止前の水準には戻らず、両社は大幅な販売減を余儀なくされるだろうという。 その上に利用者への補償費用の問題がある。 売上は激減し、補償の負担はのしかかる。三菱自は持つのだろうか。
2016.05.11
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私:「パナマ文書」について、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ、本部・米ワシントン)は10日未明(米国時間で9日午後)、21万4千の法人とその株主らの名前や住所をインターネット上で公開したね。 A氏:昨日の新聞広告で「週刊現代」が「『パナマ文書』ついに大公開!これが税金を払わない『日本人大金持ち』リストだ」と大きく掲げているね。 私:朝日新聞では、具体的な会社名をあげていないが、飲料大手の社長、大手警備会社の関連法人、大手商社などが載っているほか、暴力団の関係企業の役員と見られる人物も含まれていると報じている。 ICIJの公開前の集計では、日本を住所地とする延べ439の個人や法人がタックスヘイブンと関係していたという。 A氏:「週刊現代」やネットでは、実名で報じているね。 私:麻生太郎財務相は10日の閣議後会見で、今月開かれる主要7カ国(G7)財務省・中央銀行総裁会議や、首脳会議(伊勢志摩サミット)で、租税回避や脱税への防止策を議題とする考えを明らかにしたという。 「パナマ文書」で名前が挙がった日本企業に関しては、「一般論として、問題のある取引が認められれば税務調査を行う」としたという。 A氏:朝刊の「耕論」欄でも「パナマ文書」を扱っているね。 私:鳥羽衛氏(弁護士・元東京国税局長)は、日本の政治家は政権交代があっても、財産や命を奪われるといった危険はないから、パナマに資金を隠す必要がないのではないのではと言っているね。 A氏:黒木亮氏(作家)は、タックスヘイブンを使うこと自体は違法ではなく、氏は長年英国に住んでいたが、以前は利益を本土に送金しない限り無税だったので、多少の金融センスがあれば一般の人でも口座をつくって節税していたという。 英国人はタックスヘイブンの使いようをみんな知っているので、「パナマ文書」でキャメロン首相の父親の名前が出ても、適法に処理していたという説明で批判は下火になっているように思うという。 私:国際金融の世界でもタックスヘイブンは当たり前のように使われているようだ。 パナマ船籍にすると、税金等の船舶にかかる費用が安く済むのも同じだね。 問題は租税回避だね。 世界の富裕層がタックスヘイブンに持つ未申告の金融資産は、2014年時点で24兆ドル(約2570兆円)~35兆ドル(約3750兆円)で、米国と日本の14年の国内総生産(GDP)の合計約22兆ドルを上回る規模で増加傾向にあるという。 このカネが租税回避だとすると大問題だね。
2016.05.10
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A氏:「北米自由貿易協定(NAFTA)は我が国を破壊し、TPPはもっとひどくなりますね」とトランプ氏は超満員の聴衆を前に自由貿易体制を攻撃し続けたという。 会場からあふれた数百人が、隣の会場でスピーカー越しに演説を聞き、喝采を送った。その1人、近くに住む51歳の労働者は、7年間勤めた自動車部品工場が5年前に閉鎖され、解雇された。 彼は「私の時給は当時23ドル(約2400円)だったが、工場の移転先のメキシコでは2ドルと聞いた。お手上げだった」という。 私:企業が労働者を見捨てて海外に出ることが当然になり、金持ちは自由貿易でより豊かになったが、労働者はやせ細そり、献金を受け取っているのが、トランプ氏が倒してきたエスタブリッシュメント(主流派)の政治家たちだという。 ピュー・リサーチ・センターの調査では、自由貿易が「悪いこと」と答えたのは、民主党支持者で34%、共和党支持者は53%、トランプ氏支持者では67%にものぼる。 労者の怒りが止まらないのは、彼らが景気回復を実感できないからだ。 世界的な低成長が広がるなか、一人勝ちといわれる米国でさえ、年2%程度の成長にとどまる。 金融危機から脱し、失業率が下がったとはいえ、4%超の成長をしていた90年代と比べれば、回復の歩みは遅い。 A氏:一方で、貧富の格差は広がり、94年から上位5%の所得は15%増えたが、下位20%の所得は4%減った。 日米などの先進国では、製造業は賃金が安い国に拠点を移してきて、雇用を生む産業は、製造業から医療や教育などサービス分野に移っている。 世の中が必要とする技能が変わるなか、「スキルギャップ」(技能の格差)の壁が立ちはだかり、急激な変化に取り残された人々が「製造業をアメリカに取り戻す」というトランプ氏の言葉に喝采を送っているんだね。 私:ところで、今月発表された米国非農業部門雇用者数は、予想20万人に対し実績16万人と発表されたため、FRBが追加利上げに慎重になるのではないかとの見方が広がり、株の買い注文が先行して株価が上昇した。 しかし、疑問なのは、製造業は海外移転増加なのに、どの産業では雇用が増加しているのか、トータルの数字だけなので、具体的にどの産業分野で増加したのか相変わらず不明なことだね。 4月の失業率は市場予想通りの5・0%で、3月と同じだったが、賃金は前年同月より2・5%増となり、伸びが加速したとある。 賃金も、平均であって低所得者の賃金減が隠れているね。 ファンダメンタルズはいいというのは日米ともあやしいね。
2016.05.09
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今週は下記3点に興味を持った。 いずれも定価2千円以下と厚くない。 1.ボストン・グローブ紙《スポットライト》チーム〈編〉「スポットライト 世紀のスクープ カトリック教会の大罪」・評者編集委員市田隆氏 米国の地方新聞「ボストン・グローブ」は2002年1月、地元ボストンで過去10年間にカトリック教会の司祭計70人が児童に性的虐待を行い、教会組織がそれを隠蔽してきた事実をスクープした。 本書は、取材チームの記事をもとにしたノンフィクション。 これは映画化され、このブログの「実話の調査報道を活写 米アカデミー賞作品賞『スポットライト』」マッカーシー監督に聞く・で、とりあげているね。 映画と違い、本書では、記者の取材過程は最小限にとどめ、司祭らの性的虐待の実態と、教会上層部が問題解決から目をそらし、いかに隠し続けたかの記述に重点が置かれているという。 2.小林哲夫〈著〉「シニア左翼とは何か」・評者放送大学教授原武史氏 昨年夏から秋にかけて、国会前には連日のように安保関連法案に反対する人々が集まったが、そこで注目されたのはSEALs(シールズ)と呼ばれる大学生たちであったが、人数では60代以上の世代の方がまさっていたという。 著者は彼らを「シニア左翼」と名付けている。 彼らの多くは、1952年の血のメーデー事件、60年安保闘争、60年代末の大学闘争などのいずれかに関わった体験をもっている。 そうした体験はしばらく封印されていたが、SEALsはかつての記憶を呼び覚ます役割を果たしたという。 本書には、熱くなりがちなシニア左翼とあくまでも冷静なSEALsとの対比がよく描かれているという。 3.磯崎新〈著〉「偶有性操縦法 何が新国立競技場問題を迷走させたのか」・評者建築評論家東北大学教授五十嵐太郎氏 著者は有名な建築家で、国立競技場の迷走劇を批判的に論じているという。 筋の通った決定をせず、ドタバタの決定を重ね、破局に到達するのが日本国で、それは太平洋戦争に突入して行った道程と似ていると評者は言う。 この本は図書館で未購入らしく検索してもなかったので借りるのをあきらめた。 ところで、2020年東京五輪・パラリンピックには一体、いくらのお金が必要なのだろうか。 招致段階では全体の経費は約7千億円とされていたが、昨年、組織委の森喜朗会長は「最終的に2兆円を超すことになるかもしれない」と発言し、東京都の舛添要一知事も「3兆円は必要だろう」と大幅増の可能性に言及という状態。 リオもあやしいが、磯崎氏が指摘するように日本もすっきりしない。
2016.05.08
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私:アジアが急速に老いているが、シンガポールでも、少子高齢化が進み、労働力不足が問題になりつつあり、現在62歳の退職年齢を2017年に67歳に引き上げるという。 また、中高年の女性にはまだ就業を促す余地があり、同時に、技術の導入や働き方を改めることで生産性を高めることも必要としている。 A氏:人口増には、「合計特殊出生率」がカギを握ると言われ、日本はいま、1・4程度で、シンガポールの出生率も1・2程度と同様に低い水準だ。 シンガポールでは、政府が先頭に立って婚活イベントを企画し、国民が恋愛できる環境を演出し、子育て家庭を支援する『ベビーボーナス』制度もあるという。 私:シンガポールは、自国内の人口増施策だけでなく、外国人や移民も積極的に受け入れることで労働力不足を補ってきたね。 これは、日本と違い、シンガポールは、もともと中華系やマレー系、インド系が共存してきた多民族社会だったので、外国人を受け入れることへの抵抗感も少なかったからだね。 しかし、中心は中華系だね。 A氏:日本が均質的な社会を維持することは、日本にとって長期的な強みになるのか、チョクトン氏は疑問を呈している。 ドイツは、自国の経済力を維持するため、移民に門戸を開いているとドイツの例をあげている。。 50年先を見なければならないという。 私:シンガポールでは、少子高齢化社会を支える様々な制度が整っていて、特に、年金制度は日本とは全く違い、自分で自分の年金を積み立てる中央積立基金(CPF)という仕組みがあり、自分で年金を蓄え、そのお金で家を買い、自分の健康維持に使う。 問題は物価上昇で、20年後のお金の価値は誰にも分からないので、低所得者が十分お金をためられないという問題もあり、これを是正するため、国が低所得者を支援する制度もあるが、どこまで支援するかという妥当性が難しいところだという。 A氏:各国が人材を奪い合う時代に入るなかで、国が外から人材を引きつけるカギは、経済だという。 有能な人々はシンガポールが好きだから来るのではなく、経済成長し、自らが望む仕事があるからやってくるのだとチョクトン氏は言っている。 自国の強みを見つけると同時に、有能な方々に来てもらうために他国とどう競うかに目を向けねばなりないという。 私:シンガポールの人口は320万人、外国人を入れても550万人の小さな国。 しかし、シンガポールの生活水準は、隣国よりも高い。 重要なのは人口の規模ではなく、人の資質と強さだという。 日本は、これから先、人口減少を補うだけのパンチ力をつければ、競争力を保ち、多くの分野で他国に先んじることもできるとチョクトン氏は言う。 最近の日本のスポーツの優秀な若手選手の登場のように知力でもそうありたいね。
2016.05.07
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私:森本氏はキリスト者、神学者で、この欄ではその視点で憲法を巡る現状をどう考えているか述べていて、興味ある意見だね。 憲法が制定された当時、1947年の日本では、キリスト教徒も仏教徒も無神論者も、みんなが祈っていた。 何百万もの人が死に、屍を前にして、できたのは、祈ることくらいで、その気持ちが、この憲法に込められているという。 憲法を読むと、『決意し』『念願し』『信ずる』『誓う』と、ふつうの法律文書にはない言葉が出てくる。 『永久』『恒久』という言葉もあり、それは明らかにこの世の政府や法律が保障できる範囲を越えている。 言葉づかいからして『祈りの書』なのだと氏は言う。 A氏:日本の改憲派が、憲法が敗戦後、占領下で制定されたことを問題視していることについて、憲法が尊重されるには、制定者の権威が必要で、米国が自国の利益だけでなく、より普遍主義的な理念、つまり全世界の正義、自由、民主主義を掲げていたから権威があったという。 私:憲法と米国の理想と言えば、「人民の人民による人民のための政治」というリンカーン米大統領の「ゲティズバーグ演説」があるが、この演説の要素は日本の憲法にも入っていて、前文の「その権威は国民に由来し」は「人民の」、「その権力は国民の代表者がこれを行使し」は「人民による」、「その福利は国民がこれを享受する」は「人民のための」に対応し、戦争の惨禍を経験し、戦没者に対して新しい民主主義を誓う、という点はゲティズバーグ演説と日本国憲法は共通していると森本氏は指摘する。 A氏:日本で、憲法を変えようという声が、いまこの時代に大きくなったのは、終戦直後に人々の目前にあった屍のリアリティーがなくなったからじゃないかという。 70年前の理想主義では立ちゆかない、という意見に対しては、独立宣言を起草したトマス・ジェファーソンは奴隷所有者で、奴隷の女性に子どもまで産ませていて、言っていることとやっていることが全然違うが、彼が残した「平等」という言葉があったから、100年後の奴隷制度廃止が実現し、女性の権利も認められてきた。 そして公民権運動も進んだという。 私:人権の問題はその典型で、多数決では決めらない。 いまの憲法には内容的な正統性があり、手続き的な正統性でそれをひっくり返し、手続き上はたとえ合法だとしても権威は備わらないと森本氏は言う。 憲法の理念を問題にしているのだね。
2016.05.06
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【中古】 震える牛 /相場英雄【著】 【中古】afb私;最初、このブログの相場英雄〈著〉「ガラパゴス」(上・下)の新聞書評で「ガラパゴス」を読みたいと思ったが、図書館予約が殺到し、かつ、図書館予約は上・下2巻の場合、予約のタイミングが難しく、うまくやらないと下巻が先に順番が来たりするので図書館で借りるのを諦めたが、この小説に登場する刑事田川は、著者のベストセラー小説「震える牛」(12年)でも主人公を務め、食肉偽装問題に絡む大手スーパーの暗部を暴くとあった。 A氏:書評では両作品に共通するのは、利益追求のためには平然と人をないがしろにする大企業に向けた著者の怒りだという。 私:松本清張の社会派ミステリーの系譜を受け継いでいるというので、清張ファンの俺はこの相場英雄氏に興味を持ち、3年前刊行の文庫本の「震える牛」を図書館に予約。 古本なのですぐに借りられた。 ついでに同じ著者の大震災と原発事故を背景に、「福島にはカネが埋まっている」と嘯く詐欺師が仕掛ける被災地支援詐欺、最も卑劣だといっていい犯罪を、心熱き警察官が暴く社会派長編警察小説「リバース」も借り、これを先に読んだ。 これは詐欺事件として最初から、底が割れているので、サスペンスとしては期待はずれだった。 A氏:ベストセラーで映画にもなったという「震える牛」はどうだった。 私:これは面白かったね。 サスペンスの舞台裏がうまく設定されていて、確かに松本清張風の社会派ミステリー風で久しぶりに引き込まれるようにして読んだね。 大手スーパーの暗部だけなく、警察内部の派閥、外部との癒着も描いているね。 楽しみな作家の登場だね。 並行して、ある新聞の女性記者が、大新聞が大企業よりなので、やめてネットの記事に移り、大手スーパーの暗部を暴く記事を書くというストーリーがある。 A氏:月刊誌「選択」がイオンの金融子会社の不祥事を報じているのに大手メディアは沈黙しているのは、イオンの一千億円を超える広告宣伝費や、新聞のチラシ収入の影響だという。 私:メディアを沈黙させるという点で、イオンの広告戦略は優れていると、広告収入のほとんどない「選択」誌は皮肉っているね。 とにかく相場英雄氏による社会派長編警察小説を今後も期待したいね。
2016.05.05
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私:このシリーズでは、護憲VS.改憲でなく、立憲VS.非立憲という視点で、日本の現在に目をこらしてみてきて、「上・中」と続いて、今日は最後の「下」。 「上」では、小選挙区制導入後、数の力で「決められる政治」に突き進んでいく軌跡をたどり、「中」は、昨日のこのブログでふれたように経済のグローバル化が、国民の権利を守る立憲主義と衝突する現状を描いていたね。 A氏:今日の「下」では、「非立憲的な政治、世界に拡散」と題して、上智大教授・中野晃一氏と「国家運営、ビジネスとは違う」と題して神戸女学院大名誉教授・内田樹氏にの2氏へのインタビュー記事だね。 私:戦後日本では、立憲主義という言葉は忘れられ、憲法論争はもっぱら、9条を中心に護憲か改憲かで行われてきたが、安倍政権のもと、改憲勢力が非立憲ないし「壊憲」勢力に変貌したことで、立憲主義が再び見いだされてきたという。 そもそも近代的な立憲主義は、国を単位として、政治や経済の秩序をつくる中で出てきた考え方だが、立憲主義の危機は日本だけではなく、冷戦後、経済や安全保障のあり方が、国という枠組みを越えてしまったため、憲法秩序が極めて成立しづらい状況になり、非立憲的な政治が世界中に広がっているという。 米国や西欧で対テロのために市民の人権が制約されるようになっているのもその一例。 非立憲化と同時に、ナショナリズムなどの情念を喚起して人々を動員する政治も世界的潮流で、国の財政はどこも厳しいので、もう、金をばらまいて国民をまとめられないなか、国としての一体感を保つために、情念を使った動員への依存が進んでいて、各国で極右政党が選挙に勝利しているのはそのためという。 日本では靖国参拝はその1例。 A氏:氏は小選挙区制はやめるべきとしているね。 私:内田氏は、グローバル企業の論理は、国民を主権者とする国家のあり方とは、基本的に相いれないし、国家の運営は、ビジネスとは全然違い、株式会社はつぶれたら、出資した人間が損することが責任のすべてだが、国家は失政をおかせば、その責任は無限に続くという。 自民党の憲法草案は「公益」や「公の秩序」により私権を制限できるようにするもので、企業が活動しやすい国をつくると言っているようで、経済成長を重視し、事実上の一党独裁で国の方針を決めるシンガポールのような国をめざしているとしか思えないという。 「成長より分配」という議論が先進国を中心に出てきているのも、経済のグローバル化が格差を広げている実感があるからで、憲法を守りたいと思うならば、行き過ぎたグローバル化には「待った」をかけるしかないと内田氏は指摘している。 内田氏の持論だが、的を射ているね。
2016.05.04
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私:今日は憲法記念日だが、テレビで新聞各紙の扱いを比較していたが、朝日は世論調査結果を掲げ、改憲不要55%、必要37%で9条改正68%と一面トップに掲げている。 毎日、東京、日経も似たような世論調査のデータをあげているが、読売、産経は何故か数字を出していない。 A氏:明らかに、憲法改正についての姿勢が2極化しているね。 私:朝日は、このところ、憲法記念日にあわせて憲法についての記事を連載している。 今日、興味があったのは「グローバル企業、法と衝突」と題した記事で、特にそれに関連して編集委員・堀篭俊材氏の「視点」欄の「憲法の力借り、政治動かす覚悟」という記事だね。 A氏:経済のグローバル化は、それぞれの国を市場を通して結ぶが、国のかたちをつくる憲法は越えていくという視点だね。 私:国境を行き交うお金や人を呼び込むには、同じルールで結ばれた市場が必要だが、魅力ある市場にしようと、国は他の国より有利なルールをつくろうとする。 その過程で、国民の権利を守る立憲主義と時に衝突するというわけだ。 A氏:TPPが日本の国民健康保険を脅かすというのがその一例かもね。 私:日本より早く金融市場の開放などを進めた英国では1990年代、保守党政権下で最低賃金制度を廃止した。 最賃制度という規制があると、企業の自由な競争を妨げるという考え方からだが、賃金の低下を招き、労働党政権によって復活しているという。 日本では昨年改正された労働者派遣法はこれまで、国際競争にさらされる企業に都合のいいように変えられてきて、中国など低賃金の国に対抗するあまり、日常で格差を感じる水準にまで、賃金は低く据え置かれてきている。 A氏:自民党の憲法改正草案前文には、「活力ある経済活動を通じて国を成長させる」とあるが、政権は「世界で一番企業が活動しやすい国」を掲げ、憲法改正もまた、その延長線上にあるようにみえるという。 私:行き過ぎたグローバル化から、国民を守るのは政治の役割で、憲法にはすでに、働き手の権利や最低限度の生活を保障する規定がある。 われわれは憲法の力を借り、政治を動かす覚悟を持ちたいと堀篭氏は言うが、その政治がグローバル化に対応して憲法を変えようとしているのかね。 「国敗れてグローバル企業栄える」となる方向にね。
2016.05.03
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私:このコラムの記事は、ナイジェリアの作家、チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ氏の2009年、「シングルストーリーの危険性」という素晴らしい講演をベースにしているが、興味深い考えだね。 その考えで今の米国の大統領戦をみると、米国の政治は常に、「シングルストーリー主義」に傾きがちで、(選挙の)候補者は複雑な問題を簡単な寓話に単純化する。 (共和党の)ドナルド・トランプ氏と、(民主党の)バーニー・サンダース氏はその代表格。あらゆる問題を異質な侵略者のせいだというストーリーに置き換えるという。 A氏:彼らによると、すべての問題は、腐敗し、抑圧的な集団を見つけ出すことで解決でき、米国が賃金の伸び悩みに苦しんでいるとすれば、それは複雑な構造的問題によるものではなく、国境を越え忍び込むメキシコ人犯罪者のせい、あるいは「銀行」と呼ばれる邪悪な存在のせい、だというわけだ。 ヒラリー・クリントン氏は元来、シングルストーリーを語る人間ではなかったが、次第にサンダース氏のやり方に同調するようになってきて、米全土で最低賃金を時給15ドルとする主張に歩み寄ったね。 私:最低賃金に関する一つのストーリーは、企業は未熟練労働者の賃金を減らすことで記録的な利益を得ているというものだが、最低賃金を引き上げると、未熟練労働者が不当な扱いを受けるというストーリーもある。 重要なのは、これらのストーリーのバランスを見いだすことなのだね。 問題はシングルストーリーではない。 A氏:米国の刑事司法制度は、奴隷制と人種差別のシステムの中で築かれた、という一つのストーリーがあり、それは事実だが、このことが警察の人種差別的な蛮行を許し、過剰な投獄も行われ、個人や家族、隣人たちに打撃を与えてきた。 だが、これらと相反する別のストーリーもあり、これらもまた事実で、投獄は犯罪を減らし、警察活動の積極性の低下は犯罪の増加を意味することにもなる。 私:どの政策にも、美徳の裏には不徳があり、一方を追い求めれば、片方が犠牲になる「トレードオフ」から逃れる道はない。 前進するための唯一の道は、相反するストーリーを念頭に置く能力がある人を選び、それができない人を拒むことだとコラムは言う。 けだし、名言だが、そういう政治家がいるかが問題だね。
2016.05.02
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私:今週の日曜書評では、あまり興味を引く本はなかったが、付属する「売れてる本」コーナーと「ビジネス」コーナーには興味を引く本があった。 「売れてる本」コーナーでは例のタックス・ヘイブンを扱った志賀櫻〈著〉「タックス・ヘイブン 逃げていく税金」、「ビジネス」コーナーでは黒川清〈著〉「規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす」があげられている。 A氏:タックス・ヘイブンは例の「パナマ文書」のニュース以来マスコミで報じられていて、このブログで最初に「タックス・ヘイブンの知的街道」でふれたのは、10年前で、イグナシオ・ラモネ著杉村等訳「グローバリゼーション新自由主義批判事典」 、高橋篤史著「粉飾の論理」で登場しているね。 そして、今年になって、「世界の権力者が寵愛した銀行・タックスヘイブンの秘密を暴露した行員の告白」が登場し、「『パナマ文書』米司法省が調査 各国首脳ら、租税回避か」というニュースとなる。 私:この志賀櫻〈著〉「タックス・ヘイブン 逃げていく税金」は2013年に岩波新書で刊行されているから「パナマ文書」以前の刊行だが、最近、また売れているという。 世界経済の規模は七千兆円程度で、ある推計では、タックス・ヘイブンに秘匿されているお金は二千兆~三千兆円に及び、この膨大な金が資本市場に流れ込み、実物経済の10~20倍とも言われる巨額のマネーゲームを動かし、それがリーマン・ショックのような破綻を引き起こし、実物経済さえも破壊する。 A氏:一方で日本国内では、無駄な公共事業や租税特別措置によって莫大な税金が消えていっていることが、続編『タックス・イーター 消えていく税金』で克明に描かれ、これが巨額の財政赤字を生みだしたという。 まさに「内憂外患」そのものの状況を、日本は乗り越えられるのか。 かなり暗澹となる内容だが、まずはこの現実を正確に認識することが重要で、その意味で本書がベストセラーとなったことは第一歩といえるだろうと評者の佐々木俊尚氏(ジャーナリスト)は言う。 私:「ビジネス・コーナー」の黒川清〈著〉「規制の虜 グループシンクが日本を滅ぼす」は、福島第一原発事故後、政府や東電など四つの事故調査委員会が立ち上げられ、このうち海外の評価が高かったのが国会事故調で、ネットで調査の様子も公開し、報告書では事故を「人災」と記した。 本書はその国会事故調の元委員長による警告の書だという。 原子村の異論を排除する日本的な体質を指摘しているという。
2016.05.01
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