【前週備忘】
まず、米国経済指標はこのところ、〇〇年ぶりの数値という好調な結果が続いています。
3日発表のISM非製造業景況指数は約26年ぶりの高い数値となりました。ISM製造業景況指数の方は、先月発表値が14年ぶりの高い数値となっていました。5日発表の雇用統計では失業率が46年ぶりの低い数値でした。これに先立つ9月21日の週次失業保険申請件数発表値は、1969年11月以来ほぼ49年ぶりの低水準でした。
こうした指標結果が示す通り、2日に行われたFRB議長講演では「中立金利を超えて利上げすることもあり得る」と発言し、米金利は7年ぶりに3.2%を一時上回りました。その他、FRB議長は「米経済が際立って良好」との認識を示し「低い失業率に伴う物価上昇に備えた段階的な利上げ継続が適切」と発言しています。
株価は大きく下げ、高金利+株安のリスクオフの動きに転じました。
ちなみに、1日・2日と日経平均は上値を更新(26年10か月ぶり)し、USDJPYは114円台に載せています(2017年11月以来)。その後、日経平均はリスクオフの動きを受けて下げたものの、USDJPYは113円半場に留まっています。
EUと英国は、ブリグジット問題での合意を11月17〜18日の臨時EU首脳会議までに目指している、と言われています。既に10月18日開催予定の定例EU首脳会議での離脱交渉の決着はほぼ絶望視されています。
4日、一部で両者合意が近いとの報道が行われると、EURUSDは9月25日以来の陽線に転じ、GBPUSDも陽線に転じました。5日、USDが弱い状況で迎えた米雇用統計は、前述のように失業率が46年ぶりの水準まで改善しても、その影響は2時間と持たずUSD売に戻りました。これもEUR買・GPB買の流れと、USDJPYの週末要因が影響したと思われます。
5日の日足での強弱は、GBP>JPY>EUR>USD、で週を終えています。
USDに次ぐEURの弱さは、伊国ポピュリスト政権による財政赤字予算がきっかけになっています。
EUの不良債権のうち約1/4が伊国で、最近の地価下落率はギリシャより悪くなっています。もともと、伊国にはEU域外との競争力を持たない中小企業が多く、その中小企業に資金提供する中小金融機関も多いのです。地価が下落していれば、巡り巡って銀行の貸出額が絞られるのも自然です。EU域内での競争には関税等の障壁がないのだから、定期的な投資ができない伊国中小企業がじり貧に陥るのも当然です。
伊国経済の悪化がECBの正常化プロセスを遅らせる懸念があったところに、同国赤字予算によってその問題が顕在化しました。顕在化というのは、どっからどう見てもこの問題が以前から存在し、今後一転・一気に解決するような話じゃないからです。
そんなことでEURが売られています。市場が飽きるか、もっと大きな話が生まれるまで、どーしようもないでしょう。
でも、失業率が10%を超えた状態が長く続く国に、国外からの圧力で倹約・緊縮を求め続ければ、第二次大戦前の独国だけじゃなく、ギリシャでも伊国でもポピュリスト政治家が強くなるのは歴史的道理なのかも知れませんよね。EUというのはそういう問題を抱えた連合体なので、加盟国でポピュリスト政治家が生まれやすい背景がもともとあるのです。
その他、前週の主な出来事は以下の通りでした。
- 1日、米加NAFTA再交渉が合意され(USD高材料)、日本メーカーは現地部品の使用率UPや現地従業員への賃上げが必要になったようです(JPY材料)。
そして、この合意に盛り込まれた中国との貿易協定締結を阻止する「ポイズンピル(毒薬条項)」を、米国は対日対欧貿易協定にも取り入れる可能性がある、と米商務長官が5日述べました。 - 2日、安倍改造内閣が発足し、次の政策主題は全世代支援型社会保障整備を挙げました。
- 3日、国際司法裁判所は、イランとパレスチナの申し立てを認め、米国に両国それぞれと合意した一部を履行するように求めました。ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は「国際司法裁判所の管轄権や国際合意の見直しに着手」し、「米国に対し根拠のない政治的主張が行われることを静観しない」と反論しました。
- 5日、米商務長官は「日本が自動車の対米貿易黒字を是正する最善の手段は、米国に製造拠点を移すこと」とロイターのインタビューに答えました。
ちなみに、同氏は憎らしいことを言うことが多いものの、東日本大震災後には被災地支援基金を設立し1400万USD弱の寄付金を集めてくれたそうです。 - 7日、菅官房長官は「リーマンショックのようなことが起きない限り、来年10月に消費税増税を実施」と述べました。
【今週主要経済指標】
さて、今週は米国物価指標中心の週となります。
ただ、その中心の中心たる米国CPIは、大きく反応するイメージがあるものの、そのほとんどは小売売上高と同時発表されたときのことです。2018年以降、本指標が単独で発表されたときの反応程度は、直後1分足の平均跳幅が11pips、同値幅が5pipsしかありません。
最近はそうですが、本来なら影響力が強い指標だけに気をつけておく必要があります。
過去の実績から最も大きく反応するのは、英国鉱工業生産指数・製造業生産指数です。直近の直後1分足跳幅を見てみると、前回は5・6pipsしか反応しなかったものの、6月(4月集計分)では指標結果悪化に対し陰線側に40pips強も跳ねました。
今は英国指標での取引を行うなら、指標発表前にニュース速報で何も起きていないことを確認しておいた方が良いでしょう。
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10月8日(月)注目指標なし、日米休日、中国国慶節明け、米国務長官ソウル→北京
10月9日(火)IMF世界経済見通し
- 08:50 8月集計分日本国際収支
10月10日(水)
- 17:30 8月集計分 英国鉱工業生産指数・製造業生産指数
反応方向は、鉱工業生産指数前月比の発表結果と市場予想の差の影響を強く受け、その鉱工業生産指数前月比が良すぎたり悪すぎたりすると翌月に反動が起きがちです。 - 21:30 9月集計分 米国PPI
本指標は発表直後もその後10分も最終的に指標結果の良し悪しに素直に反応しがちなものの、反応が小さく影響持続時間が短い。2017年以降は直後11分足跳幅が20pipsに達したことがありません。
10月11日(木)米10年債入札、G20財務相。中銀総裁会議
- 21:30 9月集計分 米国CPI
過去の傾向から言えば、指標発表後の反応方向は、コアCPI前月比の差異>コアCPI前年比の差異>CPI前年比の差異>CPI前月比の差異、の順に影響を与えています。
10月12日(金)
- 時間不明 9月集計分中国貿易収支
- 21:30 9月集計分 輸入物価指数
絶望的に反応しないことに加え、指標結果の良し悪しに対し反応方向の一致率も高くありません。 - 23:00 10月集計分 UM消費者信頼感指数速報値
この指標も2018年に入ってからはほとんど反応していません。
以上