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2019年07月10日

家族の木 THE THIRD STORY 純一と絵梨 <5 変化>

変化

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暴力事件の後から僕はつまらない遊びをしなくなった。さすがに怖くなった。それに留学という解決方法を見出していたからだ。姉への恋心の呪縛から逃れられるかもしれないと思っていた。

留学のことを父に相談した。父はもともとは外資系のサラリーマンだった。留学を希望したことを喜んでくれた。僕の遊びが治まっていたことも、父から快諾を得る要因になったようだ。

その年の9月には、アメリカの大学に編入できた。もともと英語はある程度できたので、苦労はしたが不可能では無かった。

僕が住んだアメリカの街は留学生も多く東洋人にも住みやすい街だった。留学生仲間は大きく三つに分かれた。留学という箔をつけに来ているグループと、本気で研究目的で来ているグループ、僕のように資格取得が目的で来ているグループだった。そして、勉強するグループとしないグループに分かれた。僕は勉強するグループにいた。

僕が渡米して半年ぐらいして姉の結婚の連絡がきた。その半年後には妊娠の連絡も来た。
好きな女が金持ち男と結婚して妊娠したという連絡に喜ぶ男はいない。陰ながら喜ぶといった品のいい思考回路は僕にはなかった。おめでとうと返信するのがやっとだった。胸くそが悪くてしょうがなかった。

そんな僕にも部屋に遊びに来てくれるガールフレンドができた。彼女の名前はシンシアといった。アメリカ中部の街から来ていた。初めて経験する普通の恋愛だった。シンシアは毎日来ては一緒に勉強をして食事をして愛し合った。週の半分は泊って行った。試験が済んだら一緒に暮らそうと話していた。そのあとのことは決めていなかった。僕は結婚の可能性も感じていた。

明るくて何の屈託もない付き合い、周りの誰に言ってもみんなが認めてくれる普通の恋愛だった。両親には申し訳ないけれど、住む世界を変えてよかったと思った。姉が結婚して幸福になるなら、僕だって、ここで幸福になれそうな気がしていた。

食事が常にワンパターンで当たり前だが洋食ばかりなのには辟易した。それでも、慣れれば悪くないかもしれない。こういう場所へ移住してもいいかもしれないと思っていた。


続く



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