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2019年10月31日
THE FOURTH STORY 真と梨央 <71 機械のジャングル>
機械のジャングル
浜野興産は今は郁美の夫が経営の中心になっていて、俺はどちらかと言えば浜野不動産のクライアントのような立場になっていた。俺は相変わらず忙しかったが、特に可もなく不可もなく平穏無事な家庭生活だった。もう、53になった。梨央も45だ。世間的にはもう立派なおばさんだった。
義母は相変わらず義父の世話に明け暮れていた。梨央が時々庭掃除やバラ園の世話を引き受けるが家の中は一人で頑張っていた。梨沙ちゃんは株式会社えり兆の社長になって、こちらも多忙だった。最近は詩音が有名になって自宅にアシスタントが付くようになった。梨沙ちゃんが二人の食事の準備をして家を出るらしい。
会社の会議中に梨央から電話が入った。義母が倒れて救急車で運ばれた。脳溢血だった。俺が病院に着いたときには義母は手術中だった。梨沙ちゃんは気丈にふるまっていたが梨央は泣いていた。義父は病院の車いすに乗せられていた。相当ショックだったようだ。詩音も緊張した顔で何も言わない。
梨央を待合室に読んで容態を聞いた。生命の保証はできない、助かった場合には何らかの障害は覚悟してほしいといわれたらしい。手術がおわって義母は集中治療室へ移された。俺はこういう場所へ来るのは初めてだった。義母は何本ものチューブにつながれていた。
チューブの多さにも驚いたが、機械音にも辟易した。常にさまざまな機械音がなっている。俺たちは20分位その音を聞いていたが耳障りで不愉快だった。義母は外国人と間違えるような彫り深い美貌だ。それもチューブやテープでわからなくなっていた。全く知らない人のように見えた。仕切りはカーテンだけで常に人に見られている状態だ。義母は今は意識がないから気づかないだろうが意識があれば、あの環境で何日も眠っていれば精神的に参ってしまうだろうと思えた。
その夜は皆家に帰った。病院に居ても何もすることがないからだ。しばらくは見舞いに行ってもただ大きな傘の中にいて動かない義母を見るだけなのだろう。いつ、あの機械のジャングルの中から脱出できるのかもわからなかった。
続く
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浜野興産は今は郁美の夫が経営の中心になっていて、俺はどちらかと言えば浜野不動産のクライアントのような立場になっていた。俺は相変わらず忙しかったが、特に可もなく不可もなく平穏無事な家庭生活だった。もう、53になった。梨央も45だ。世間的にはもう立派なおばさんだった。
義母は相変わらず義父の世話に明け暮れていた。梨央が時々庭掃除やバラ園の世話を引き受けるが家の中は一人で頑張っていた。梨沙ちゃんは株式会社えり兆の社長になって、こちらも多忙だった。最近は詩音が有名になって自宅にアシスタントが付くようになった。梨沙ちゃんが二人の食事の準備をして家を出るらしい。
会社の会議中に梨央から電話が入った。義母が倒れて救急車で運ばれた。脳溢血だった。俺が病院に着いたときには義母は手術中だった。梨沙ちゃんは気丈にふるまっていたが梨央は泣いていた。義父は病院の車いすに乗せられていた。相当ショックだったようだ。詩音も緊張した顔で何も言わない。
梨央を待合室に読んで容態を聞いた。生命の保証はできない、助かった場合には何らかの障害は覚悟してほしいといわれたらしい。手術がおわって義母は集中治療室へ移された。俺はこういう場所へ来るのは初めてだった。義母は何本ものチューブにつながれていた。
チューブの多さにも驚いたが、機械音にも辟易した。常にさまざまな機械音がなっている。俺たちは20分位その音を聞いていたが耳障りで不愉快だった。義母は外国人と間違えるような彫り深い美貌だ。それもチューブやテープでわからなくなっていた。全く知らない人のように見えた。仕切りはカーテンだけで常に人に見られている状態だ。義母は今は意識がないから気づかないだろうが意識があれば、あの環境で何日も眠っていれば精神的に参ってしまうだろうと思えた。
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続く
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2019年10月30日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <70 父と息子>
父と息子
倖田真三氏と二人きりになった時に、「浜野さんは今おいくつですか?どちらのご出身ですか?」と聞かれたので「48になりました。出生は鎌倉です。鎌倉で不動産業を営んでいる家に生まれました。」と答えた。倖田氏は難しい顔をした。
「お母様はご健在ですか?」
「もう40年以上前に亡くなっています。私は祖父母に育てられました。」
「それはどうも。ちっとも知らなかった。それで、お父様は?」
「父は半年前に亡くなりました。祖父母がなくなってからは、父と継母の家で育ちました。」と答えると今にも泣きそうな顔をしてしばらく何も言わなかった。
「お寂しかったですな。お父様の家ではお幸せでしたかな?」これには仰天してしまった。こんな失礼な質問はなかった。父や継母が聞いたら怒り心頭だろう。
「まあ、兄弟の中で一人だけ先妻の子ですから何も無くはなかったんですが、それでも、私中学生でしたが既に資産家でしたから強かったんですよ。」と後半は冗談めかして話した。
「それは、それは」とまた絶句した。「それで今はお幸せですかな?」と聞かれたので、「はい、今は家庭も円満で生活も落ち着いております。」というと「そうですか。それはよかった。」少し目が赤くなった。
「奥様が田原さんのお嬢さんですかな?」
「はい、今は田原の父母の近くで暮らしています。上の男の子が真也、下の女の子は由梨です。」
「そうですか。お幸せそうで何よりです。」普通の知的な老人に戻っていた。
「一度息子と話してやってください。今、経営に四苦八苦しておりますよ。親が政治に夢中になってサッパリ役に立ちませんからな。」
「私も一度お話しさせていただきたいです。」
親とも子とも言わなかった。ただ、根無し草のような頼りない気持ちから解放された。驚いたのは俺が田原家の血縁だということだ。多分義父母も知らないだろう。
梨央は「パパとママには言わないわ。ただ、あなたが私と親戚だったって聞いて、私凄く納得がいったの。私達、やっぱり結ばれる運命だった。パパが真、真って可愛がるのも当たり前なのよ。」と感慨深げだった。
続く
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「それは、それは」とまた絶句した。「それで今はお幸せですかな?」と聞かれたので、「はい、今は家庭も円満で生活も落ち着いております。」というと「そうですか。それはよかった。」少し目が赤くなった。
「奥様が田原さんのお嬢さんですかな?」
「はい、今は田原の父母の近くで暮らしています。上の男の子が真也、下の女の子は由梨です。」
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「私も一度お話しさせていただきたいです。」
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2019年10月29日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <69 昔の縁>
昔の縁
その人は倖田真三といった。丁寧に、「T・コーポレーションの浜野と申します。」と名刺を出した。
すると、「おや、浜野さん?」と怪訝な顔をされたので「田原の娘婿です。今は社長を務めさせていただいております。」というと、また、「浜野さん?」と聞かれた。
「何か?」と言ってみた。「いや、お若いのにご立派なことですな。」といったまましゃべらない。しげしげと見つめる。ちょっと混乱しているようだ。
「こちらの施設は私ども創立者である、田原真一が自分が入居するために建てました。ペアブロッサムは彼の妻の名前です。梨花といいます。自分のための施設ですから細かい部分に気を配っております。」と言って笑うと、「その方に子供の時にお会いしました。梨花奥さまもお嬢様もご一緒でした。うちがペンションを経営しておりまして、田原真一さんには何度もご利用いただいてます。うちと田原家は深いご縁があります。あなた、田原真一さんと似ておられる。」と答えた。
「そのようですね。妻とはその縁もあって結婚しました。」自分でも営業活動の中でなぜ妻を紹介しているのかよくわからなくなっていた。「実は先程ご子息とエレベーターでお会いしたときに、お互いにとてもびっくりいたしまして。」
「そうなんです。これも田原真一さんに似ております。田原さんとは昭和の初めに私どもと一度ご縁がありまして、田原さんと倖田家は遠い親戚です。」といった。
梨央は「えっ、じゃあ私達親戚同士?」と驚いていた。俺の頭の中で血縁がつながった。多分梨央も自分の夫がなぜ自分の曽祖父と似ているのかわかったのだろう。「ええ、だから私、この施設で余生を送りたかったんですよ。」倖田氏は言った。多分この人の頭の中でも何かが結びついたのかもしれない。
「奥さんは田原真輔博士をご存知ですかな?」
「はい、名前だけは聞いております。」
「博士はこの島が観光で生きていけるようにしてくださった恩人です。市の図書館に博士の資料を保管しております。よかったら閲覧してみてください。真一さんのお父さんに当たる人ですよ。」といった。「ええ、ぜひ見てみたいです。子供たちのためにも自分たちのご先祖様の功績を見せてやりたいです。」梨央がいうので倖田氏の息子が案内してくれた。
梨央は「なんだか夫といるみたいです。不思議な感じ。」ととんでもないことを言って俺を慌てさせた。子供たちも「わあ、凄い!絶対みんな間違うよね。ねえ恵美おばちゃんに会おうよ。恵美おばちゃんパパの妹なんだ。絶対間違うよ。」と興奮した。倖田氏の息子が嫌がるのではないかと心配した。「よ〜し、パパの仕事中はおじさんがパパの代わりだ〜。」と一緒にはしゃいでくれた。その言葉通り彼は子供たちの実の叔父に違いなかった。
続く
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すると、「おや、浜野さん?」と怪訝な顔をされたので「田原の娘婿です。今は社長を務めさせていただいております。」というと、また、「浜野さん?」と聞かれた。
「何か?」と言ってみた。「いや、お若いのにご立派なことですな。」といったまましゃべらない。しげしげと見つめる。ちょっと混乱しているようだ。
「こちらの施設は私ども創立者である、田原真一が自分が入居するために建てました。ペアブロッサムは彼の妻の名前です。梨花といいます。自分のための施設ですから細かい部分に気を配っております。」と言って笑うと、「その方に子供の時にお会いしました。梨花奥さまもお嬢様もご一緒でした。うちがペンションを経営しておりまして、田原真一さんには何度もご利用いただいてます。うちと田原家は深いご縁があります。あなた、田原真一さんと似ておられる。」と答えた。
「そのようですね。妻とはその縁もあって結婚しました。」自分でも営業活動の中でなぜ妻を紹介しているのかよくわからなくなっていた。「実は先程ご子息とエレベーターでお会いしたときに、お互いにとてもびっくりいたしまして。」
「そうなんです。これも田原真一さんに似ております。田原さんとは昭和の初めに私どもと一度ご縁がありまして、田原さんと倖田家は遠い親戚です。」といった。
梨央は「えっ、じゃあ私達親戚同士?」と驚いていた。俺の頭の中で血縁がつながった。多分梨央も自分の夫がなぜ自分の曽祖父と似ているのかわかったのだろう。「ええ、だから私、この施設で余生を送りたかったんですよ。」倖田氏は言った。多分この人の頭の中でも何かが結びついたのかもしれない。
「奥さんは田原真輔博士をご存知ですかな?」
「はい、名前だけは聞いております。」
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梨央は「なんだか夫といるみたいです。不思議な感じ。」ととんでもないことを言って俺を慌てさせた。子供たちも「わあ、凄い!絶対みんな間違うよね。ねえ恵美おばちゃんに会おうよ。恵美おばちゃんパパの妹なんだ。絶対間違うよ。」と興奮した。倖田氏の息子が嫌がるのではないかと心配した。「よ〜し、パパの仕事中はおじさんがパパの代わりだ〜。」と一緒にはしゃいでくれた。その言葉通り彼は子供たちの実の叔父に違いなかった。
続く
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2019年10月28日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <68 似た男>
似た男
ペアブロッサムに前の市長が入居したいという。前市長という立場だしせっかく社長が来ているのだからということで、俺が挨拶をすることになった。午前10時ということなので9時30分ごろにはペアブロッサムについて打ち合わせをした。そして約束の3階の応接室へ向かった。
俺たち家族が乗っていたエレベーターに一人の男が入ってきた。俺は仕事で来ているのだから、即座にエレベーターボーイになって、「お降りの会は何階ですか?」と声をかけた。しっかり営業スマイルをした。が自分でもわかるぐらい顔が固まった。
向こうも「3階お願いします。」と言いながら驚嘆の声を上げた。似ている。その男と俺は、いわゆる瓜二つだった。子供たちが、こそこそ何か言いながら突っつきあっている。梨央は無言で目を見開いていた。
言葉を発したのは向こうだった。「あれっ、似てますよね。えっ親戚かな?私倖田といいます。」「びっくりしました。親戚ではないようですが何か不思議な感じですね。御面会ですか?」と聞くと「いえ、父がここへ入居したいというんで内覧です。」「それはありがとうございます。私、この施設の社長の浜野と申します。ご案内させていただきます。お約束の場所はどちらになっておりますか?」
「3階の第一応接室です。」
「どうやら、私がお会いする予定のお客様のようです。さっ、どうぞこちらに。」と案内するのだが、これは会社の営業活動だ。
なのに梨央がついてこようとする。さりげなく、あっちで待ってと合図するがオーナーの娘は社長よりも強気だ。一緒に応接室に入ってしまった。俺はエレベーターの中で、すでにこれが俺の弟だと気づいた。梨央も気づいていて離れる気になれなかったのだろう。ひょっとしたら、俺がまたピーピー泣くのではないかと心配しているのかもしれなかった。
その部屋の中で待っていた風羽田施設長も入居希望者も当惑している。彼らは二重に当惑していた。一つは、内覧という営業業務の席になぜか社長の妻と子供がいるからだ。施設のユニフォームを着こんだ俺の後ろに完全にリゾートウェアーの家族が付いてくる奇妙な景色だ。
もう一つは、その日の客である入居希望者の息子と俺がそっくりだからだ。施設長の風羽田は明らかに戸惑っていた。もう、なんだかわからんという顔で内覧希望者とその息子を紹介した。
続く
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向こうも「3階お願いします。」と言いながら驚嘆の声を上げた。似ている。その男と俺は、いわゆる瓜二つだった。子供たちが、こそこそ何か言いながら突っつきあっている。梨央は無言で目を見開いていた。
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なのに梨央がついてこようとする。さりげなく、あっちで待ってと合図するがオーナーの娘は社長よりも強気だ。一緒に応接室に入ってしまった。俺はエレベーターの中で、すでにこれが俺の弟だと気づいた。梨央も気づいていて離れる気になれなかったのだろう。ひょっとしたら、俺がまたピーピー泣くのではないかと心配しているのかもしれなかった。
その部屋の中で待っていた風羽田施設長も入居希望者も当惑している。彼らは二重に当惑していた。一つは、内覧という営業業務の席になぜか社長の妻と子供がいるからだ。施設のユニフォームを着こんだ俺の後ろに完全にリゾートウェアーの家族が付いてくる奇妙な景色だ。
もう一つは、その日の客である入居希望者の息子と俺がそっくりだからだ。施設長の風羽田は明らかに戸惑っていた。もう、なんだかわからんという顔で内覧希望者とその息子を紹介した。
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2019年10月27日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <67 榊島>
榊島
梨央が子供たちの夏休みを使って榊島への旅行を計画してくれた。最初の一日はペアブロッサムで少し説明を聞いたり会議に参加したりしたが2日目からは本当に遊びになった。
恵美や風羽田と会って夕食をした。こちらにも子供ができていて子供たちは大いに盛り上がっていた。父が亡くなっても特に大きな遺産は相続していないし、暮らしぶりは質素なようだったが恵美は幸福そうだった。あんなにブランド物に囲まれていた女が今はたくましいいい母親だった。かかあ天下という言葉は恵美のためにあるのかと思った。風羽田には楽な相手なのかもしれなかった。
宿舎はもちろん榊島グランドホテルだ。と言っても泊り客と社長が顔を合わせる機会などなかった。まして、前の市長などという人にはどうして会えばいいのかもわからなかった。わざわざ会いに行くわけにもいかなかった。旅行の日程も3日を過ぎた日に風羽田から連絡があった。
前の市長がペアブロッサムを内覧したいという話だ。2年前に夫人を亡くして、最近は足腰に不安があるらしい。ペアブロッサムなら地元で過ごせるので入居したいらしい。せっかく社長がいるのだから挨拶をしてほしいといわれた。俺は思わず金の仏様を思い浮かべた。かわいそうに思って会える段取りをしてくれたに違いない。
翌日の午前中にペアブロッサムに行った。仕事なのに梨央や子供たちも付いてきた。妙な感じではあった。ペアブロッサムのエレベーターの中で不思議な体験をした。
続く
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宿舎はもちろん榊島グランドホテルだ。と言っても泊り客と社長が顔を合わせる機会などなかった。まして、前の市長などという人にはどうして会えばいいのかもわからなかった。わざわざ会いに行くわけにもいかなかった。旅行の日程も3日を過ぎた日に風羽田から連絡があった。
前の市長がペアブロッサムを内覧したいという話だ。2年前に夫人を亡くして、最近は足腰に不安があるらしい。ペアブロッサムなら地元で過ごせるので入居したいらしい。せっかく社長がいるのだから挨拶をしてほしいといわれた。俺は思わず金の仏様を思い浮かべた。かわいそうに思って会える段取りをしてくれたに違いない。
翌日の午前中にペアブロッサムに行った。仕事なのに梨央や子供たちも付いてきた。妙な感じではあった。ペアブロッサムのエレベーターの中で不思議な体験をした。
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2019年10月26日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <66 父の告白>
父の告白
俺が50になった年に父の体調が悪化した。長い間、不仲の息子は本当に余命何カ月という状態になるまで、そのことを知らなかった。連絡をくれたのは恵美だった。大腸がんだった。
なんだか不思議な気持ちで見舞いに行った。悲しくないこともなかったが、涙が出るほどのこともなかった。縁の薄い親子だと痛感した。父は息をつぎつぎ長いおしゃべりをした。
「真は母さんの恋人の子供だよ。婚約したときにはもう妊娠していた。それを承知で結婚したんだ。本気で母さんが好きだった。生まれる子供を大事に育てようと思ってた。でも人間って難しいもんだ。周囲の人間が財産目当てだと爺さんや母さんに告げ口した。
最初は母さんは父さんを信じてくれていたんだ。でも、父さんが仕事で東京へ家を構えたのが間違いの素だった。母さんはだんだん疑心暗鬼になって、そのうち爺さんが父さんを疑うようになった。だんだん関係がこじれたよ。
そのうちに美也子と関係ができた。ここが父さんの甘いところだ。だから本当は浜野興産の社長なんかできる立場じゃなかったし、お前の財産を使って商売をしていい立場でもなかった。浜野興産はお前のものだ。恵美や郁美に気を使わなくてもいいんだ。家を貰ってありがとう。あれで十分だ。
ああ、お前の父親は榊島の前の市長だ。あの人はお前が生まれたことを知らないんじゃないかな。榊島グランドホテルの社長はお前の弟だ。恵美の相手が榊島に居ると聞いたときには驚いて言葉も出なかった。人間の縁は不思議なものだ。風羽田がホテルに就職していたらどうしようかと思った。老人ホームでよかった。」といった。
それから一度も見舞いに行かなかった。梨央にも行かせなかった。恵美は俺が一度父と会っているのを知っていた。だから、また見舞いに行けとは言わなかった。
俺は腹が立っていた。やっぱり覚悟の足りない男だと思った。なんで墓まで持って行けない?なんで、死の床でまで、つまらないおしゃべりをした?足元がぐらつく感じがしていた。
梨央は俺が父の見舞いに行って帰ったその夜に異常を察知していた。「何か嫌なこと言われた?」と聞いた。勘が鋭い。「あなた、すぐ顔に出るんだもの。」といわれた。俺は自分ではポーカーフェイスのつもりだった。
情けないことに、その夜は梨央の胸で声を出して泣いてしまった。「可愛い真君、誰の子供でも浜野真は浜野真よ。梨央のたった一人の男よ。他に誰もいないのよ。私はあなただけ。真也も由梨もあなたの子供。パパはあなただけ。それで足りない?」と言って何度も頭をなでてくれた。
しばらくはそのことを忘れようとした。今頃になってお前は他人の子だといわれても、なかなか切り替えの利くものではなかった。最近になって愛情を感じ始めていた妹たちが他人だといわれて、なんだか嫌な肩すかしにあった気がした。
足元がぐらぐらする思いがあった。嫌いな奴だと思っていても、ずっと父だと思って暮らした。あんなにけなし倒していたのも、肉親としての甘えだということを思い知らされた。全くの他人なら曲がりなりにも育ててくれた恩人かもしれなかった。
父が亡くなった。浜野興産の会長だ。葬儀は一応社葬になった。喪主は俺だった。ほとんどの手配は郁美の夫がしてくれた。遺産相続はスムーズだった。俺は父からもらうものはほとんどなかった。というより、父は自分名義の不動産をほとんど持っていなかった。
会社のものはほとんど俺の名義だった。父は、俺の資産を使って増えた資産は自分名義にはしなかったのだ。筋を通したということだろう。考えてみれば父も可愛そうな立場だったのかもしれない。
父が亡くなって半年もたつと、実父がどんな人か、自分の実弟がどんな男か気になって仕方がなかった。梨央が「深刻に考えなくても軽い気持ちであえばいいじゃない。先方はご存じないんでしょ。なら、知らん顔してお話してくればいいじゃない。今度一緒に旅行に行きましょう。軽く考えてもいいんじゃない?」という。
梨央の胸でピーピー泣いてからというもの、梨央は時々姉さん女房になった。顔と物言いがアンバランスで笑いそうになるのをこらえた。
続く
【POLA】インナーリフティア コラーゲン&プラセンタ
【POLA】女性に嬉しい美容成分がこれ1つで。インナーリフティア コラーゲン&プラセンタ
コラーゲン、植物プラセンタ、鉄、ヒアルロン酸、エラスチンを同時配合した美容サプリメント。
俺が50になった年に父の体調が悪化した。長い間、不仲の息子は本当に余命何カ月という状態になるまで、そのことを知らなかった。連絡をくれたのは恵美だった。大腸がんだった。
なんだか不思議な気持ちで見舞いに行った。悲しくないこともなかったが、涙が出るほどのこともなかった。縁の薄い親子だと痛感した。父は息をつぎつぎ長いおしゃべりをした。
「真は母さんの恋人の子供だよ。婚約したときにはもう妊娠していた。それを承知で結婚したんだ。本気で母さんが好きだった。生まれる子供を大事に育てようと思ってた。でも人間って難しいもんだ。周囲の人間が財産目当てだと爺さんや母さんに告げ口した。
最初は母さんは父さんを信じてくれていたんだ。でも、父さんが仕事で東京へ家を構えたのが間違いの素だった。母さんはだんだん疑心暗鬼になって、そのうち爺さんが父さんを疑うようになった。だんだん関係がこじれたよ。
そのうちに美也子と関係ができた。ここが父さんの甘いところだ。だから本当は浜野興産の社長なんかできる立場じゃなかったし、お前の財産を使って商売をしていい立場でもなかった。浜野興産はお前のものだ。恵美や郁美に気を使わなくてもいいんだ。家を貰ってありがとう。あれで十分だ。
ああ、お前の父親は榊島の前の市長だ。あの人はお前が生まれたことを知らないんじゃないかな。榊島グランドホテルの社長はお前の弟だ。恵美の相手が榊島に居ると聞いたときには驚いて言葉も出なかった。人間の縁は不思議なものだ。風羽田がホテルに就職していたらどうしようかと思った。老人ホームでよかった。」といった。
それから一度も見舞いに行かなかった。梨央にも行かせなかった。恵美は俺が一度父と会っているのを知っていた。だから、また見舞いに行けとは言わなかった。
俺は腹が立っていた。やっぱり覚悟の足りない男だと思った。なんで墓まで持って行けない?なんで、死の床でまで、つまらないおしゃべりをした?足元がぐらつく感じがしていた。
梨央は俺が父の見舞いに行って帰ったその夜に異常を察知していた。「何か嫌なこと言われた?」と聞いた。勘が鋭い。「あなた、すぐ顔に出るんだもの。」といわれた。俺は自分ではポーカーフェイスのつもりだった。
情けないことに、その夜は梨央の胸で声を出して泣いてしまった。「可愛い真君、誰の子供でも浜野真は浜野真よ。梨央のたった一人の男よ。他に誰もいないのよ。私はあなただけ。真也も由梨もあなたの子供。パパはあなただけ。それで足りない?」と言って何度も頭をなでてくれた。
しばらくはそのことを忘れようとした。今頃になってお前は他人の子だといわれても、なかなか切り替えの利くものではなかった。最近になって愛情を感じ始めていた妹たちが他人だといわれて、なんだか嫌な肩すかしにあった気がした。
足元がぐらぐらする思いがあった。嫌いな奴だと思っていても、ずっと父だと思って暮らした。あんなにけなし倒していたのも、肉親としての甘えだということを思い知らされた。全くの他人なら曲がりなりにも育ててくれた恩人かもしれなかった。
父が亡くなった。浜野興産の会長だ。葬儀は一応社葬になった。喪主は俺だった。ほとんどの手配は郁美の夫がしてくれた。遺産相続はスムーズだった。俺は父からもらうものはほとんどなかった。というより、父は自分名義の不動産をほとんど持っていなかった。
会社のものはほとんど俺の名義だった。父は、俺の資産を使って増えた資産は自分名義にはしなかったのだ。筋を通したということだろう。考えてみれば父も可愛そうな立場だったのかもしれない。
父が亡くなって半年もたつと、実父がどんな人か、自分の実弟がどんな男か気になって仕方がなかった。梨央が「深刻に考えなくても軽い気持ちであえばいいじゃない。先方はご存じないんでしょ。なら、知らん顔してお話してくればいいじゃない。今度一緒に旅行に行きましょう。軽く考えてもいいんじゃない?」という。
梨央の胸でピーピー泣いてからというもの、梨央は時々姉さん女房になった。顔と物言いがアンバランスで笑いそうになるのをこらえた。
続く
【POLA】インナーリフティア コラーゲン&プラセンタ
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2019年10月25日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <65 寄付>
寄付
真也は最近は俺と遊園地に行きたがらなくなった。急流下りが大好きな父親に付き合ってはいられないようだ。最近は大型のジェットコースターに乗りたがった。そういえば、俺も昔はああいうのに乗っては女の子をキャーキャー言わせて喜んでいた。ところが、今はあんな恐ろしいものに乗る人間の気が知れなくなっていた。年を取ったということなのだろう。
妹の由梨は6歳からバレエを習いだした。発表会は家族で見に行った。ところが、小学校を卒業するころには別のお稽古ごとに夢中になった。今はダンスに夢中だ。
俺は、去年T・コーポレーションの社長になった。義父はもう経営にかかわるつもりはなさそうだった。義母と二人旅行に出るのが何よりも楽しみの様だ。浜野興産は郁美の夫が継いでいた。風羽田はペアブロッサムの施設長になっていた。
俺の両親も円満な夫婦だった。母は俺にとっては嫌な女だが父にとっては大事な恋女房の様だった。もうどうでもよかった。最近は全く付き合いがなかった。郁美の夫は有能で浜野興産の経営も落ち着いていた。今が一番いい時なのかもしれない。
俺は体型も緩んで年相応に老け込んでいた。梨央はエクササイズジムにもうかれこれ15,6年通っていたが、それでも最近太り出していた。
ある日新聞を読んでいると「犯罪被害者の支援のために私財を寄付!」と見出しが見えた。あまり大きな記事ではなかったが寄付した人の顔写真も載っていた。見たことがあるようなないような、そんな写真だった。
「神戸市で喫茶店を経営する須藤律子さんが亡き夫の遺産を犯罪被害者の会に寄付した。」と書かれていた。須藤律子、聞いたことがあるようなないような、律子という名前には覚えがあった。
「須藤律子さんは15年前、夫を暴漢に殺され、そのショックで当時妊娠3カ月だったが流産した。その後、不動産業を営む須藤さんと再婚、昨年亡くなった須藤さんの遺産を全て犯罪被害者の会に寄付した。」とあった。
その、あとがきとして須藤さんは三宮の老舗喫茶店、「それいゆ」を経営しながら長い間犯罪被害者の支援に取り組んできたと書かれていた。須藤が「それいゆ」の大家だった不動産会社の社長の苗字だと思い出した。
梨央にその記事を見せた。梨央は手で口を覆って涙ぐんだ。「きっとお幸せだったんだと思う。」といった。人生は不思議だった。あの時、苦し紛れに「それいゆ」の大家だった須藤に律子さんのことを頼んだ。本当にちゃんとしてくれるか心配だったが、なんと結婚してしまったのだ。
律子さんの談話も載せられていた。「犯罪被害は理不尽です。突然大切な人を亡くしたり体に大きなダメージを追うことが珍しくありません。時には何もかも無くしてしまうこともあります。私は、犯罪被害にあってから、しばらくの間、幸福な人たちを恨みました。支援してくれた人まで恨んだんです。こんなに惨めな気持ちはありません。犯罪被害者の方に少しでもお役に立ちたいと思いました。」とあった。
梨央は「私達恨まれてた?だから、あなたを誘惑したの?私、思うつぼだったのね。」といった。梨央はとても複雑な顔をした。一生許さないといったのだから今でも腹が立つのだろう。それでも、律子さんが今も「それいゆ」を経営していることがうれしかった。
続く
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【POLA】女性に嬉しい美容成分がこれ1つで。インナーリフティア コラーゲン&プラセンタ
コラーゲン、植物プラセンタ、鉄、ヒアルロン酸、エラスチンを同時配合した美容サプリメント。
真也は最近は俺と遊園地に行きたがらなくなった。急流下りが大好きな父親に付き合ってはいられないようだ。最近は大型のジェットコースターに乗りたがった。そういえば、俺も昔はああいうのに乗っては女の子をキャーキャー言わせて喜んでいた。ところが、今はあんな恐ろしいものに乗る人間の気が知れなくなっていた。年を取ったということなのだろう。
妹の由梨は6歳からバレエを習いだした。発表会は家族で見に行った。ところが、小学校を卒業するころには別のお稽古ごとに夢中になった。今はダンスに夢中だ。
俺は、去年T・コーポレーションの社長になった。義父はもう経営にかかわるつもりはなさそうだった。義母と二人旅行に出るのが何よりも楽しみの様だ。浜野興産は郁美の夫が継いでいた。風羽田はペアブロッサムの施設長になっていた。
俺の両親も円満な夫婦だった。母は俺にとっては嫌な女だが父にとっては大事な恋女房の様だった。もうどうでもよかった。最近は全く付き合いがなかった。郁美の夫は有能で浜野興産の経営も落ち着いていた。今が一番いい時なのかもしれない。
俺は体型も緩んで年相応に老け込んでいた。梨央はエクササイズジムにもうかれこれ15,6年通っていたが、それでも最近太り出していた。
ある日新聞を読んでいると「犯罪被害者の支援のために私財を寄付!」と見出しが見えた。あまり大きな記事ではなかったが寄付した人の顔写真も載っていた。見たことがあるようなないような、そんな写真だった。
「神戸市で喫茶店を経営する須藤律子さんが亡き夫の遺産を犯罪被害者の会に寄付した。」と書かれていた。須藤律子、聞いたことがあるようなないような、律子という名前には覚えがあった。
「須藤律子さんは15年前、夫を暴漢に殺され、そのショックで当時妊娠3カ月だったが流産した。その後、不動産業を営む須藤さんと再婚、昨年亡くなった須藤さんの遺産を全て犯罪被害者の会に寄付した。」とあった。
その、あとがきとして須藤さんは三宮の老舗喫茶店、「それいゆ」を経営しながら長い間犯罪被害者の支援に取り組んできたと書かれていた。須藤が「それいゆ」の大家だった不動産会社の社長の苗字だと思い出した。
梨央にその記事を見せた。梨央は手で口を覆って涙ぐんだ。「きっとお幸せだったんだと思う。」といった。人生は不思議だった。あの時、苦し紛れに「それいゆ」の大家だった須藤に律子さんのことを頼んだ。本当にちゃんとしてくれるか心配だったが、なんと結婚してしまったのだ。
律子さんの談話も載せられていた。「犯罪被害は理不尽です。突然大切な人を亡くしたり体に大きなダメージを追うことが珍しくありません。時には何もかも無くしてしまうこともあります。私は、犯罪被害にあってから、しばらくの間、幸福な人たちを恨みました。支援してくれた人まで恨んだんです。こんなに惨めな気持ちはありません。犯罪被害者の方に少しでもお役に立ちたいと思いました。」とあった。
梨央は「私達恨まれてた?だから、あなたを誘惑したの?私、思うつぼだったのね。」といった。梨央はとても複雑な顔をした。一生許さないといったのだから今でも腹が立つのだろう。それでも、律子さんが今も「それいゆ」を経営していることがうれしかった。
続く
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2019年10月24日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <64 体調不良>
体調不良
家に帰って梨央に事情を説明すると表情がパッと明るくなった。夕食はごちそうだった。梨央は次の金曜日は朝から体調不良になると予言した。
貴方は仕事だし、ママはパパの世話で忙しいし誰か来てくれなきゃ無理なのよ。あなた、郁美さんに連絡してくれる?お母様は外した方がいいと思うの。きっと、こちらへ来ることには反対よ。自分の嘘がばれたら困るじゃない?」といった。
やっと浜野家の常識が分かってきたかと思った。それにしても父の存在感の薄いことを実感した。木曜の夜には梨央が翌朝起きにくいような、とても疲れることをした。普段よりももっと疲れるようにした。案の定、金曜の朝、梨央はとてもけだるそうだった。もちろん俺の方はもっとけだるかった。いつの間にか42になっていた。
朝、郁美に電話をして、恵美にこちらへ来てくれるように頼んだ。郁美はOLとして働いていたので平日は基本的には来られなかった。郁美は「お姉ちゃん、行くかなあ。このごろ、何をするのもめんどくさそうなの。」「でも現実に困ってるんだよ。何とか頼んでみてくれないかなあ。俺もできるだけ早く帰るようにするから。」と言って強引に頼み込んだ。
11時ごろに梨央から、恵美が来てくれたので今はゆっくりしていると連絡が入った。恵美は、元気にふるまってはいるが少しやせていたということだった。午後5時ごろには俺も家に帰った。風羽田が来た様子はなかった。
恵美に礼を言って、できることなら泊って行ってほしいといった。恵美は泊まっていくといってくれた。「ここのお手伝いさんになろうかな。」といった。「真ちゃんや由梨ちゃんがいると心が癒される。」ともいった。梨央が「恵美さんがいいなら来てほしい」といった。
俺は返事をしなかった。妹が毎日家に居ちゃ気まずいだろ、夫婦げんかしたときどうするんだ?いやいや、もっと妹に見せられない場面はいっぱいあるだろうと焦った。
そんな話をしているとインターフォンが鳴った。俺は心底ドキッとした。宅急便だった。そのころから俺も梨央も落ち着きを無くした。恵美が夕食の買い物に出ようか?と誘ってきたが断った。今日は出前でいいだろうと寿司を注文した。30分ぐらいしてインターフォンが鳴ったので俺が出た。皆寿司が届いたと思った。
玄関には風羽田がうつむき加減で立っていた。俺につれられて入ってきた風羽田を見て梨央は満面の笑顔だった。恵美がキッチンから、「お兄ちゃんビール?」と声をかけてきた。「おお、コップは4つだ」と返事をすると「オッケー、え、何で?」といいながらダイニングに入ってきた。
そして風羽田を見たとたんに、持っているものをすべて落として逃げようとした。俺が恵美を捕まえている間に梨央と風羽田が床を拭いた。恵美を無理やり席に着かせた。「風羽田君も座って。寿司多目に注文してよかった。」「ホント、いい夕食になりそうだわ。」と梨央も笑った。
「お姉さん、だましたの?」「ええ、私元気なの。」と梨央はけろっと答えた。「恵美、元気そうだね。」と風羽田が言うと「あんな電話もらって元気なわけないじゃない!」と泣き出してしまった。「ほんとよ、恵美さん今日騙してきてもらったの。私が調子悪くて、どうしても来てくれなきゃ困るってお願いしたのよ。恵美さん普段は寝たり起きたりの状態だったの。苦しくて。」と梨央が言った。
「嘘だ。」と風羽田が言った。「とにかく飯にしよう。風羽田君、ちょっとは飲めるんだろ?」とビールをついだ。梨央は飲まなかった。子供の世話が忙しかった。なにしろ、恵美が突然、ぼんやりして役に立たなくなったからだ。
風羽田は酒は弱いようだ。目のふちが赤くなって少し饒舌になった。「この前勤続3年の祝い金貰いました。来年度から係長に昇進します。だから社員寮出なくちゃならないんです。今ペアブロッサムの近所で賃貸物件を探しているところです。」と俺に向かって言った。
「結婚とか考えるんですけど共働きしか無理なんです。」とまた俺に向かって言った。「じゃあ、一緒に働いてくれる嫁さん探さなきゃならんなあ。」と俺が答えた。「今日は両方とも泊まってくれ。恵美、悪いがこの部屋だ。」と言ってリビングの横の納戸を示した。簡易ベッドを用意した。
夜、俺たち夫婦は寝室で耳を澄ましていた。夜2時を過ぎたころ、客間からリビングへ降りていく足音が聞こえた。俺が「簡易ベッドじゃ不安定だろう。」というと、「あなたホントにやらしいわねえ。」と言って笑った。梨央だって同じことを想像してるんじゃないか、足音が客間に戻ってくる前に俺たちは寝てしまった。
俺が安心したのは、忍んでいったのが風羽田だったことだ。おとなしい風羽田が自分から行ったことが嬉しかった。俺がはじめて田原の家に泊まった時客間に寝かされた。梨央が夜中にこっそり部屋に来た。「大丈夫?何か必要なものない?}と聞きに来てくれた。
おとなしい梨央が部屋に忍んできたとき俺は完全に舞い上がってしまった。女も同じだろうと思った。おとなしい風羽田に忍んでこられて恵美はきっと幸せをかみしめているだろう。
恵美と風羽田の結婚には母は大反対をした。恵美は母が嘘をついてまで二人の仲を壊そうとしたことを恨んでいた。恵美は今度こそ本当に駆け落ちをした。
続く
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やっと浜野家の常識が分かってきたかと思った。それにしても父の存在感の薄いことを実感した。木曜の夜には梨央が翌朝起きにくいような、とても疲れることをした。普段よりももっと疲れるようにした。案の定、金曜の朝、梨央はとてもけだるそうだった。もちろん俺の方はもっとけだるかった。いつの間にか42になっていた。
朝、郁美に電話をして、恵美にこちらへ来てくれるように頼んだ。郁美はOLとして働いていたので平日は基本的には来られなかった。郁美は「お姉ちゃん、行くかなあ。このごろ、何をするのもめんどくさそうなの。」「でも現実に困ってるんだよ。何とか頼んでみてくれないかなあ。俺もできるだけ早く帰るようにするから。」と言って強引に頼み込んだ。
11時ごろに梨央から、恵美が来てくれたので今はゆっくりしていると連絡が入った。恵美は、元気にふるまってはいるが少しやせていたということだった。午後5時ごろには俺も家に帰った。風羽田が来た様子はなかった。
恵美に礼を言って、できることなら泊って行ってほしいといった。恵美は泊まっていくといってくれた。「ここのお手伝いさんになろうかな。」といった。「真ちゃんや由梨ちゃんがいると心が癒される。」ともいった。梨央が「恵美さんがいいなら来てほしい」といった。
俺は返事をしなかった。妹が毎日家に居ちゃ気まずいだろ、夫婦げんかしたときどうするんだ?いやいや、もっと妹に見せられない場面はいっぱいあるだろうと焦った。
そんな話をしているとインターフォンが鳴った。俺は心底ドキッとした。宅急便だった。そのころから俺も梨央も落ち着きを無くした。恵美が夕食の買い物に出ようか?と誘ってきたが断った。今日は出前でいいだろうと寿司を注文した。30分ぐらいしてインターフォンが鳴ったので俺が出た。皆寿司が届いたと思った。
玄関には風羽田がうつむき加減で立っていた。俺につれられて入ってきた風羽田を見て梨央は満面の笑顔だった。恵美がキッチンから、「お兄ちゃんビール?」と声をかけてきた。「おお、コップは4つだ」と返事をすると「オッケー、え、何で?」といいながらダイニングに入ってきた。
そして風羽田を見たとたんに、持っているものをすべて落として逃げようとした。俺が恵美を捕まえている間に梨央と風羽田が床を拭いた。恵美を無理やり席に着かせた。「風羽田君も座って。寿司多目に注文してよかった。」「ホント、いい夕食になりそうだわ。」と梨央も笑った。
「お姉さん、だましたの?」「ええ、私元気なの。」と梨央はけろっと答えた。「恵美、元気そうだね。」と風羽田が言うと「あんな電話もらって元気なわけないじゃない!」と泣き出してしまった。「ほんとよ、恵美さん今日騙してきてもらったの。私が調子悪くて、どうしても来てくれなきゃ困るってお願いしたのよ。恵美さん普段は寝たり起きたりの状態だったの。苦しくて。」と梨央が言った。
「嘘だ。」と風羽田が言った。「とにかく飯にしよう。風羽田君、ちょっとは飲めるんだろ?」とビールをついだ。梨央は飲まなかった。子供の世話が忙しかった。なにしろ、恵美が突然、ぼんやりして役に立たなくなったからだ。
風羽田は酒は弱いようだ。目のふちが赤くなって少し饒舌になった。「この前勤続3年の祝い金貰いました。来年度から係長に昇進します。だから社員寮出なくちゃならないんです。今ペアブロッサムの近所で賃貸物件を探しているところです。」と俺に向かって言った。
「結婚とか考えるんですけど共働きしか無理なんです。」とまた俺に向かって言った。「じゃあ、一緒に働いてくれる嫁さん探さなきゃならんなあ。」と俺が答えた。「今日は両方とも泊まってくれ。恵美、悪いがこの部屋だ。」と言ってリビングの横の納戸を示した。簡易ベッドを用意した。
夜、俺たち夫婦は寝室で耳を澄ましていた。夜2時を過ぎたころ、客間からリビングへ降りていく足音が聞こえた。俺が「簡易ベッドじゃ不安定だろう。」というと、「あなたホントにやらしいわねえ。」と言って笑った。梨央だって同じことを想像してるんじゃないか、足音が客間に戻ってくる前に俺たちは寝てしまった。
俺が安心したのは、忍んでいったのが風羽田だったことだ。おとなしい風羽田が自分から行ったことが嬉しかった。俺がはじめて田原の家に泊まった時客間に寝かされた。梨央が夜中にこっそり部屋に来た。「大丈夫?何か必要なものない?}と聞きに来てくれた。
おとなしい梨央が部屋に忍んできたとき俺は完全に舞い上がってしまった。女も同じだろうと思った。おとなしい風羽田に忍んでこられて恵美はきっと幸せをかみしめているだろう。
恵美と風羽田の結婚には母は大反対をした。恵美は母が嘘をついてまで二人の仲を壊そうとしたことを恨んでいた。恵美は今度こそ本当に駆け落ちをした。
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2019年10月23日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <63 未練>
未練
翌朝早く田原の義父母に事情を説明して、梨央たちを今晩泊めてもらうように頼んだ。義父は「梨央がそんなことしたのか?変わったなあ。申し訳ないな。梨央のフライングで君に手間をかけて。」といわれた。
「いや、もともと浜野の話です。なんか浜野の人間がいろいろ、こちらを騒がせて申し訳ないです。梨央はフライングなんかじゃありませんよ。」というと「おっと、ごちそうさまだ。」と笑った。
結局、東京港まで詩音が送ってくれた。榊島に着いたのは午後4時ごろだった。早速ペアブロッサムに行くと風羽田は夜勤明けで休んでいた。社員寮は徒歩10分のところだった。
風羽田は部屋にいた。殺風景な何もない部屋だった。「急にすまんな。」といいながら風羽田の都合は無視して部屋に上がり込んだ。風羽田は明らかに戸惑っていた。「こっちに恋人ができたって?結婚するらしいな。」というと、何も言わなかった。
「この前、母が来ただろう?どんな話をした?恵美のことは聞いたか?」というと、「なんか、エライ金持ちと縁談があるって。恵美さん迷ってるようだから、電話入れてくれって。」
「母がそういったのか?」
「ええ、もう決まりかけてるのに迷ってるって。」
「それでいいのか?君は恵美に未練はないのか?」
「未練って、俺の立場じゃ、未練なんかあってもなくてもおんなじですよ。」
「未練はないのかって聞いてるんだよ。恵美がよそへ嫁入りしても構わないのかって聞いてるんだ。」
「そりゃ、未練がないって言うと嘘になるけど、俺がとやかく言えた立場じゃないです。」
「そんな話はしてないがね。未練はないか?ほかの男と結婚してもいいのか。これに答えてほしいんだよ」
「でも、もう決まりそうな話ですよね。金持ちで恵美さんのこと気に入ってるんですよね。」
「そんなことはどうでもいいんだ。君は恵美を無くして苦しくないのかって話をしてるんだよ。」
「いや、苦しいです。恵美さんと結婚できるように貯金をしてます。でも、結婚式を挙げる金もたまりません。いい生活なんてさせて上げれるはずもないんです。」
「母の話は嘘だよ。恵美はどんな縁談も受けてない。最近は縁談も来ないよ。君の電話を受けて恵美が寝込んでいる。そうじゃなきゃ、いいオッサンが恋愛がらみでここまで来るか?俺はこう見えても専務稼業が忙しいんだよ。施設長なんか、何が起きたかってびっくりして腰を抜かしそうになってた。君、もし恵美を無くして苦しいんだったら次の休みにうちへ来い。どうでもいいんなら、今まで通りだ。まじめに働いてくれ。次の休みはいつだ。日帰りは無理だ。わかったね。」と念を押して帰った。
次の金曜日に恵美をうちへ呼ぶことにした。来なければならない理由を梨央に考えてもらおう。
続く
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「いや、もともと浜野の話です。なんか浜野の人間がいろいろ、こちらを騒がせて申し訳ないです。梨央はフライングなんかじゃありませんよ。」というと「おっと、ごちそうさまだ。」と笑った。
結局、東京港まで詩音が送ってくれた。榊島に着いたのは午後4時ごろだった。早速ペアブロッサムに行くと風羽田は夜勤明けで休んでいた。社員寮は徒歩10分のところだった。
風羽田は部屋にいた。殺風景な何もない部屋だった。「急にすまんな。」といいながら風羽田の都合は無視して部屋に上がり込んだ。風羽田は明らかに戸惑っていた。「こっちに恋人ができたって?結婚するらしいな。」というと、何も言わなかった。
「この前、母が来ただろう?どんな話をした?恵美のことは聞いたか?」というと、「なんか、エライ金持ちと縁談があるって。恵美さん迷ってるようだから、電話入れてくれって。」
「母がそういったのか?」
「ええ、もう決まりかけてるのに迷ってるって。」
「それでいいのか?君は恵美に未練はないのか?」
「未練って、俺の立場じゃ、未練なんかあってもなくてもおんなじですよ。」
「未練はないのかって聞いてるんだよ。恵美がよそへ嫁入りしても構わないのかって聞いてるんだ。」
「そりゃ、未練がないって言うと嘘になるけど、俺がとやかく言えた立場じゃないです。」
「そんな話はしてないがね。未練はないか?ほかの男と結婚してもいいのか。これに答えてほしいんだよ」
「でも、もう決まりそうな話ですよね。金持ちで恵美さんのこと気に入ってるんですよね。」
「そんなことはどうでもいいんだ。君は恵美を無くして苦しくないのかって話をしてるんだよ。」
「いや、苦しいです。恵美さんと結婚できるように貯金をしてます。でも、結婚式を挙げる金もたまりません。いい生活なんてさせて上げれるはずもないんです。」
「母の話は嘘だよ。恵美はどんな縁談も受けてない。最近は縁談も来ないよ。君の電話を受けて恵美が寝込んでいる。そうじゃなきゃ、いいオッサンが恋愛がらみでここまで来るか?俺はこう見えても専務稼業が忙しいんだよ。施設長なんか、何が起きたかってびっくりして腰を抜かしそうになってた。君、もし恵美を無くして苦しいんだったら次の休みにうちへ来い。どうでもいいんなら、今まで通りだ。まじめに働いてくれ。次の休みはいつだ。日帰りは無理だ。わかったね。」と念を押して帰った。
次の金曜日に恵美をうちへ呼ぶことにした。来なければならない理由を梨央に考えてもらおう。
続く
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2019年10月22日
家族の木 THE FOURTH STORY 真と梨央 <62 フライング>
フライング
梨央は俺が一向に動かないことにいら立っていた。ある朝突然、「真君、例のミッションはどうなっとるんだね。」とお叱りを受けた。俺は悶々としていた。そして、その日の夕方には度肝を抜かれた。
普通に夕食を食べていると、「真君、君には悪いがね、例のミッションは他の人を抜擢したよ。悪く思わんでくれ。」といわれた。「誰に頼んだんだ?」と聞くと「お母様」「うん?お義母さんか?」「いえ、浜野のお母様。」「何勝手なことしてるんだ?浜野の母にそんなことできるわけないだろうが!」と思わず叱りつけてしまった。
「真君、君、そんなに気色ばんでいいのかね。」と梨央は自信満々だ。「君、今度は服も香水も指輪も全然断らないよ。全部買ってもらうから。あの時も、買ってもらえばよかった。」と最後は妙な後悔をしていた。
梨央は恵美に内緒で浜野の母を呼び出していた。浜野の母は恵美に度々縁談を持ち込んでは断られていたそうだ。ほとほと困り果てているところへ梨央から連絡が入ったというわけだ。
風羽田が恵美の相手だということは知っている。ただ、会ったこともない、どうせろくでもない男だと思っていたら、意外にもT・コーポレーションで働いている、ひょっとしたらT・コーポレーションがらみで出世するかもしれないと踏んだはずだ。
梨央はそんな下品ことは考えない。「やっぱり親よねえ。郁美さんが説得してくれたんだけど、内覧に行ってそこで世間話的に話してくださるらしいの。母親だもの、娘が好きになった人がどんな人か確認しときたいわよねえ。反対は反対なの、だって黙って娘を連れだした人だもの簡単には許せないわよ。でもね、もしいい人だったら考え直すっておっしゃってるの。」
梨央は自分がお人よしなので他人もいい人だと思っている。最近は俺もいい人になってきている。ひょっとしたら母が娘のために動く気になったのかもしれないと思った。
それから10日後の夜、郁美から電話がかかってきた。風羽田から恵美に電話があって「居所は言えない。こちらで好きな人ができたので結婚する。もう自分のことは忘れてほしい。」といわれたそうだ。恵美は寝込んでいるらしい。母がペアブロッサムの内覧に行った結果がこれだった。
もちろん、風羽田が榊島で恋に落ちることもその相手と結婚することもあり得る。ただ、一度もそういう雰囲気を感じたことは無かった。風羽田は年に1,2回俺に電話をよこしていた。俺は風羽田が恵美とのつながりを切りたくないためだと思っていた。
恵美のためにも風羽田の真意を確認しておきたかった。梨央はショックを受けていた。なんとなく風羽田が恵美を思っていて、これを機会に二人の仲が縮まると勝手に思い込んでいたようだ。
「私余計なことしちゃったのかな?風羽田さんが恵美さんに気がないとしても、わざわざ連絡しないと思ったの。自然に消滅する感じで恵美さんに新しいご縁を紹介すればいいと思ってたの。こんなにショックな方法で切ってくるなんて思ってもみなかった。」と落ち込んだ。
「梨央、梨央は悪くない。明日榊島へ行く。日帰りできないから田原の家に泊めてもらってくれ。」というとしょんぼりして、「わかりました。ごめんなさい。私軽率で。」と半泣きになった。「真也も由梨もいるんだよ。ママが半べそでどうすんだよ。梨央は軽率なんかじゃないよ。軽率は風羽田だ。何のためにそんな連絡してきたんだ。」俺はちょっと嫌な感じがしていた。
その夜、梨央はベッドでまた「ごめんなさい。私のせいで恵美さん泣かせちゃって。」と謝った。「梨央が悪いんじゃない。梨央、俺、結婚する時、ホントはどうでもよかったんだ。ただ、T・コーポレーションの娘と結婚したら何か得するんじゃないかと思ってたんだ。」というと、また、半べそになった。梨央は俺の胸を何度もたたいた。
「それなのにハワイで完全に惚れちゃった。たった一週間だぜ。梨央もそうだろ?よく知らない男と勇気を振り絞って結婚したんだ。それでハワイの最後の朝に離れたら死ぬって言ったんだぜ。覚えてる?」「覚えてるわよ。今でも離れたら死んじゃう。」といった。
「運命ってそんなもんさ。どういう状況でも結ばれるときには結ばれる。もし、恵美と風羽田が別れたとしても、それは誰のせいでもないさ。そういう運命なんだよ。」といった。本心だった。ただ、何もしないまま別れてしまったのでは尾を引くだろうと思った。動くだけは動こう、それでダメなら諦めも早いだろう。
続く
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コラーゲン、植物プラセンタ、鉄、ヒアルロン酸、エラスチンを同時配合した美容サプリメント。
梨央は俺が一向に動かないことにいら立っていた。ある朝突然、「真君、例のミッションはどうなっとるんだね。」とお叱りを受けた。俺は悶々としていた。そして、その日の夕方には度肝を抜かれた。
普通に夕食を食べていると、「真君、君には悪いがね、例のミッションは他の人を抜擢したよ。悪く思わんでくれ。」といわれた。「誰に頼んだんだ?」と聞くと「お母様」「うん?お義母さんか?」「いえ、浜野のお母様。」「何勝手なことしてるんだ?浜野の母にそんなことできるわけないだろうが!」と思わず叱りつけてしまった。
「真君、君、そんなに気色ばんでいいのかね。」と梨央は自信満々だ。「君、今度は服も香水も指輪も全然断らないよ。全部買ってもらうから。あの時も、買ってもらえばよかった。」と最後は妙な後悔をしていた。
梨央は恵美に内緒で浜野の母を呼び出していた。浜野の母は恵美に度々縁談を持ち込んでは断られていたそうだ。ほとほと困り果てているところへ梨央から連絡が入ったというわけだ。
風羽田が恵美の相手だということは知っている。ただ、会ったこともない、どうせろくでもない男だと思っていたら、意外にもT・コーポレーションで働いている、ひょっとしたらT・コーポレーションがらみで出世するかもしれないと踏んだはずだ。
梨央はそんな下品ことは考えない。「やっぱり親よねえ。郁美さんが説得してくれたんだけど、内覧に行ってそこで世間話的に話してくださるらしいの。母親だもの、娘が好きになった人がどんな人か確認しときたいわよねえ。反対は反対なの、だって黙って娘を連れだした人だもの簡単には許せないわよ。でもね、もしいい人だったら考え直すっておっしゃってるの。」
梨央は自分がお人よしなので他人もいい人だと思っている。最近は俺もいい人になってきている。ひょっとしたら母が娘のために動く気になったのかもしれないと思った。
それから10日後の夜、郁美から電話がかかってきた。風羽田から恵美に電話があって「居所は言えない。こちらで好きな人ができたので結婚する。もう自分のことは忘れてほしい。」といわれたそうだ。恵美は寝込んでいるらしい。母がペアブロッサムの内覧に行った結果がこれだった。
もちろん、風羽田が榊島で恋に落ちることもその相手と結婚することもあり得る。ただ、一度もそういう雰囲気を感じたことは無かった。風羽田は年に1,2回俺に電話をよこしていた。俺は風羽田が恵美とのつながりを切りたくないためだと思っていた。
恵美のためにも風羽田の真意を確認しておきたかった。梨央はショックを受けていた。なんとなく風羽田が恵美を思っていて、これを機会に二人の仲が縮まると勝手に思い込んでいたようだ。
「私余計なことしちゃったのかな?風羽田さんが恵美さんに気がないとしても、わざわざ連絡しないと思ったの。自然に消滅する感じで恵美さんに新しいご縁を紹介すればいいと思ってたの。こんなにショックな方法で切ってくるなんて思ってもみなかった。」と落ち込んだ。
「梨央、梨央は悪くない。明日榊島へ行く。日帰りできないから田原の家に泊めてもらってくれ。」というとしょんぼりして、「わかりました。ごめんなさい。私軽率で。」と半泣きになった。「真也も由梨もいるんだよ。ママが半べそでどうすんだよ。梨央は軽率なんかじゃないよ。軽率は風羽田だ。何のためにそんな連絡してきたんだ。」俺はちょっと嫌な感じがしていた。
その夜、梨央はベッドでまた「ごめんなさい。私のせいで恵美さん泣かせちゃって。」と謝った。「梨央が悪いんじゃない。梨央、俺、結婚する時、ホントはどうでもよかったんだ。ただ、T・コーポレーションの娘と結婚したら何か得するんじゃないかと思ってたんだ。」というと、また、半べそになった。梨央は俺の胸を何度もたたいた。
「それなのにハワイで完全に惚れちゃった。たった一週間だぜ。梨央もそうだろ?よく知らない男と勇気を振り絞って結婚したんだ。それでハワイの最後の朝に離れたら死ぬって言ったんだぜ。覚えてる?」「覚えてるわよ。今でも離れたら死んじゃう。」といった。
「運命ってそんなもんさ。どういう状況でも結ばれるときには結ばれる。もし、恵美と風羽田が別れたとしても、それは誰のせいでもないさ。そういう運命なんだよ。」といった。本心だった。ただ、何もしないまま別れてしまったのでは尾を引くだろうと思った。動くだけは動こう、それでダメなら諦めも早いだろう。
続く
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