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2019年07月18日

家族の木 THE THIRD STORY 純一と絵梨 <14 プロポーズ>

プロポーズ
roses-3570507_1280[1].jpg

姉が本当に僕と結婚する気があるかどうかを確かめたものは誰もいない。これが一番大切なことだった。だいたい姉は僕が聡一叔父さんの実子だということも知らない。僕と愛し合うこと自体を避けて、あの不幸な結婚をしてしまったんだ。それを誰が、どんなふうに説明するんだ?姉の気持ちを考えると胸が痛んだ。

僕は、それから度々東京へ帰るようになった。東京へ帰れば以前と同じような4人家族だった。姉もゆっくりだが元気になってきた。だが姉は以前のように無頓着ではなくなった。いままでのような弟扱いではない。距離を感じるようになった。そのことが嫌ではなかった。

両親に僕への気持ちを話してしまった以上、今までと同じ態度というわけにはいかないだろう。姉が僕に対して距離を置いていることが僕を男としてみてくれている証に感じた。なにか、今までとは違うウキウキした気分になった。

逆に姉は、いよいよ独立に向けて動き出しそうだった。僕が足しげく実家に帰ることが会社を継ぐ準備のように感じるようだった。話を早めなければいけないが、少し怖くもあった。もし姉が僕と結婚をする気がないのなら、僕はこの家に居てはいけない。もし断られたら再渡米しようと考えていた。

その日、両親は二人とも外出していた。姉が一人でいるときに僕が帰った。いつも通り、さりげなく距離を置きながらもコーヒーをいれてくれた。

「姉ちゃん、隆、結婚決まったんだよ。」というと姉は「あら、よかったわね。お祝いしなくちゃね。」といった。相手の人は、田原興産の専務の娘さんで、いずれは田原興産を継ぐらしいといった、普通の世間話だった。

僕が、「隆と一緒にいると、もう、その話しか出ないんだ。僕もそろそろ家庭を持ちたくなってきた。」というと姉は「純もいい人いないの?」と聞いた。「いるよ。」と答えると姉は少しさびしそうにした。「じゃあ、頑張んなきゃ。パパやママを安心させなきゃね。こっちも、そろそろ跡継ぎの話がでてよさそうなもんだよね。」と答えた。

「僕、でも、気になることがあってさ。そのことが解決するまで、跡継ぎの話はできないよ。」というと、姉は「私は心配いらないよ。ちゃんと正職員になれたし、この家から出ても大丈夫なぐらいの収入はあるんだよ。姉ちゃん、意外に甲斐性持ちなんだよ。そろそろ独立しようかと思ってもパパやママが怒るのよ。純の話がまとまるんだったら私も出やすいし。安心して、その人にプロポーズして頂戴。」といった。

「ありがとう、姉ちゃんにそういわれると、僕もやりやすいよ。すぐにでもプロポーズするよ。」というと、姉は部屋を出ようとした。あわててドアを押さえて、「結婚しよう。」といった。姉は、きつねにつままれたような顔をして、棒立ちになっていた。姉を改めてソファーに座らせて、「結婚しよう。」といった。


続く



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