男女交際
その日以来、僕は毎日深夜に姉に電話を掛けた。姉がベッドに入る頃を見計らって電話するのだ。今日は何をした。誰にあったなどと他愛もない話をしてうれしかった。「男女交際」という言葉を思い出した。
中学生や高校生の時に一度くらいは体験していそうなことを僕たちは経験していなかった。
僕も姉も自分が不純だと思って自分の恋心と戦っていた。今、青少年期からやり直しているような不思議な感じがした。
翌週には両親に結婚したいと報告した。絵梨は始終うつむいて恥ずかしそうだった。初々しいと思った。その日は家族でレストランに行ってささやかなお祝いをした。その席で用意していた指輪を贈った。その指輪は、夜中の電話で絵梨の好みを聞いて選んだものだった。絵梨は僕の懐事情に気を使って小さな石をリクエストした。
絵梨と母は少し涙ぐんだ。高校生の時から悩みに悩みぬいた初恋だった。やっと、手に入れたと思うと、僕は思わず安どのため息というものをついてしまった。「ああ、長かった。
もう無理かと思ってた。」と口をついて出てしまった。
父は心なしか不満そうだった。もし僕たちがもっと早く相談していれば、姉の不幸な流産はなかったかもしれなかった。僕は父の思いが痛いほどわかっていた。心の中でなんでもっと早く出生の話をしてくれなかったんだと反論していた。
母はきっと心の中でまさかあなたたちが恋に落ちるなんて夢にも思ってなかったんだからしょうがないじゃない。と反論し多に違いない。
絵梨はきっと亡くした子供を思いやったに違いなかった。誰にも言わず人知れず小さな命を哀れんだことだろう。僕は、亡くした命が僕たちの子供としてよみがえる日があると信じた。
続く
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2019年07月20日
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