昔のこと
叔父夫婦が遊びに来て、さっそく例の文箱の話になった。美奈子叔母さんは自分の祖父の家から田原の家の身上書が出てくることにずいぶん驚いていた。「昔から田原の家と浅田の家は関係が深かったんやねえ。お会いしたことないけどおばあ様はずいぶん浅田の祖父のこと頼りにしてくれてはったんやねえ。昔の事やから地元のものはみんな深い付き合いしてたのかもしれんねえ。」と感慨深そうだった。
美奈子叔母さんがしきりに感心する中で叔父は一人黙りこくって、祖父の身上書をにらんでいた。僕は叔父も風羽田真由美に気が付いたのだとわかった。
翌日、叔父に電話を掛けた。「風羽田真由美ってあったよね。」と話しかけた。叔父は「お前のひいおばあちゃんやな。」と答えた。「お前を引き取ってくれって声かけてくれた人や。お前が可愛そうやから引き取ってくれってこの人に言われた。お前が香織の兄さんの家で、ちゃんと構ってもらえてないって声かけてくれた人や。水商売で成功したひとや。ちゃんとした人や。」と教えてくれた。
「ねえ、うちのママがこの人の子供ってことないよね?」と確かめると、「年齢的に無理やな。この人と真一叔父さんが付き合ってたのは叔父さんが25、6のときの話やから全く年齢が合わん。心配ないよ。」という返事だった。僕はしばらく、ボーっとなっていた。運命ってこういうものなのかと思った。
その夜、絵梨が「風羽田真由美さんのこと、どうだった?」と聞いてきた。絵梨も気づいていた。「僕のひいおばあちゃんらしい。僕が可愛そうだから引き取ってほしいと叔父さんに言った人らしい。僕、風羽田の家で構ってもらえてなかったらしい。それで、田原の家で引き取れって言ってくれたんだって。」
「ふうん。いい人なんだね。よかった。風羽田真由美さんのおかげで私は純と結婚できたんだよね。なんか運命感じるよね。」といった。
続く
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2019年08月03日
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