神戸
梨央が東京の実家で暮らしている間に、とにかく掃除機をかけた。寝室や洗面所や浴室の掃除もした。
シーツも全部掛け替えた。たった三部屋だからそんなに時間もかからない。ゴムも捨てた。ほかに何かないか。
毎晩梨央に電話をかけた。あの家は居心地がいい。やはり親のそばがいいといわれないように、こちらのいいところをアピールした。おいしい中華料理屋、素晴らしい夜景、毎晩抱き合って眠れる、もっと気持ちよくしてあげられる、港町の散歩は最高だ、といろんなことを言った。金曜日の朝には、今夜迎えに行くと連絡していた。
田原の家では土曜日に送り出すつもりをしていた。それは当たり前だった。しかし、金曜日の午後には迎えに出発していた。夜遅くに田原の家に着いた。今から連れて帰るというと義父は激怒した。「君が泊まれ。土曜日という約束じゃないか。」とその夜は帰してもらえなかった。翌朝は、しっかりした朝食と丁寧なあいさつで送り出してもらった。
神戸に着いたのは夕方だった。部屋に荷物を置いてすぐに買い物に出た。なにしろセミダブルベッドが一つだけしかない。一日二日眠れないことは無いだろうが狭いのは分かっている。ベッド、食器、簡単な家具など買い揃えた。新婚の夫婦らしい幸福感が押し寄せてきた。
その夜、梨央を抱きしめるとなぜか涙があふれてきた。「やっと、やっと俺のうちに来た。今俺の領分はここだけなんだよ。実家は俺の領分じゃないんだ。あそこは財産の争奪戦をする戦場だよ。あんなとこに梨央を暮らさせるわけにはいかなかったんだ。時期が来たら家を建てるから、それまでこの部屋で我慢してくれ。ごめんな。」といいながら梨央を見ると涙ぐみながら笑っている。
「どうした?」と聞くと、「あなた何だかかわいい。」といった。こんな時女は可愛いという言葉を使うのかとおどろいた。いつの間にか梨央は大人の女になっていた。つい2週間前、ホテルの化粧台の椅子に所在なげに座っていたのに今夜は腕の中で夫を可愛いといった。
その夜は酒を用意していなかった。しかし、酒はいらなかった。一度目覚めた女神は意外なほど簡単に燃え出した。
続く
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2019年08月28日
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