疲労感
律子さんに経営を完全に任せたいという話をした。律子さんは少し戸惑っていた。「まあ、心配いりません。いつでも相談に乗れるような段取りは付けますよ。」というと「まあ、なんかお世話になりっぱなしで、こんなことでいいんやろか。そやけど、たまにはお寄りくださいね。」と笑った。
「もちろん、家内も気になるでしょうし。また一緒に伺いますよ。おいしいコーヒーを味わいにね。」と言って帰った。それが夕方の4時ごろだった。
その日は夜も接待があったので大阪へ帰って大阪の家に泊まった。その夜、1時を過ぎたころにインターフォンが鳴った。接待から帰ったばかりで少し酔っていた。「はい」と返事をするとインターフォン越しに「夜分すみません。前田です。前田律子です。」と聞こえた。
何事かと思って門を開けると律子さんはいきなり倒れ込んできた。「酔っぱらってしもて。」と言ってその場にへたり込んでしまう。いくら何でも人に見られてはいけないと思った。とにかく家に入れてソファーに座らせたがそのまま寝てしまった。
どうしようもなかった。もううんざりした。「なんだ、このざまは。前田が悲しむぞ。」と腹が立った。俺は律子さんに毛布を掛けてそのまま寝室へ戻った。
それでもほったらかしにするわけにもいかないので、1時間ぐらいたってから様子を見に戻った。
律子さんはソファーに座ってひどく泣いていた。「目が覚めましたか?お送りしますよ。」
「いえ、遅いですから、このままタクシーで帰ります。」
「いや、美人が酔って夜中に一人で動くのは危ない。お送りします。とにかく、タクシーを呼びましょう。」内心腹が立っていた。
「お水、飲みますか?」とコップをテーブルに置いた手を律子さんが両手で包んで放さない。
「いや、困るな。何の真似です。」というと「何で梨央さんは何もかも持ってて、私は何にも持ってないの?」と聞かれた。何を言っているのかわからなかった。
「あの人には、あなたがいて子供がいてお金持ちで、美人でなにかもあって、私の夫は亡くなって赤ちゃんも亡くなって親もいなくて、毎日寂しくて。今だけ、ちょっとだけ、あなたに抱きしめられたいって思ってもいいやない。この瞬間だけ、ちょっとだけ抱きしめてもらったらいけないの?」
可哀そうだった。いくら生活のめどがついたといっても、それだけで寂しさが癒えるわけもなかった。「今だけ、今だけよ。」と腰に手を回されて理性を無くした。
律子さんは、朝方タクシーで一人で帰った。俺は梨央と前田を裏切った。不快な疲労感に襲われていた。
続く
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2019年10月04日
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