I歯科医院の高楊枝通信。

I歯科医院の高楊枝通信。

2021/12/31
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カテゴリ: 虫歯の電気化学説
虫歯はどういうものか?歯科医師ですらその実態はよく知らない。触った感じ柔らかい、う蝕検知液で染まる、その程度だ。
もちろん一般人も同じようなもので、茶色は虫歯か?黒かったらもっとひどいのか?と思うかもしれないが、実は関係ない。
虫歯の見た目、黒かったり、茶色だったりしているのは着色で、ステインだったり細菌の代謝産物だったりしているわけで、虫歯の色があるわけではない。実際に色が付いていない象牙質と同じ色の虫歯もある。

茶色は茶渋等のステインで虫歯で開いた象牙細管内部が染まっている状態。う蝕検知液で染まっているのと同じだ。
黒色は硫酸塩還元細菌の最終産生産物のFeS(硫化鉄)だ。硫化鉄はイオン電導性がないので、黒い虫歯は進行しない。昔から黒い虫歯は進行が遅い、落ち着いているとか言われているが、そのメカニズムは電気化学的な見地以外では説明できないはずだ。

虫歯を触った感じだが、柔らかい。プロセスチーズ程度からカマンベールチーズまで様々だ。着色がない虫歯にスプーンエキスカベータ(耳かきより小さなスプーン状の先端が付いたステンレス器具)を当てるとごっそりすくい取れる。虫歯と虫歯になっていない部分の境界は明瞭だ。象牙質の虫歯はその70%を占めるハイドロキシアパタイトが溶出して、残り30%のコラーゲン繊維を中心とした有機物質だ。ま、プルプルの豚足みたいなものだと思っても良い。

境界が明瞭な理由は鉄の錆びと錆びていない本体との境界が明瞭なのと同じだと考えても良い。サビは擦って落とせば取れる。どこまでも境界不明瞭に続いているわけではない。これはサビは電気化学的な反応の結果であって、その境界は明瞭だということだ。

金属の錆びも歯牙の錆び(虫歯)も基本的には同じものであって、大きく分けると2種類ある。以下参照。

https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/200909300000/

実際には主に酸素が含まれているタイプの虫歯で、酸素が含まれていないタイプの虫歯は少ないと思われる。
後者はpH0〜1の強酸を歯に塗った時にしか起こらないだろう。実際にはボンディング時のエネメル質や象牙質の表面処理の時だけに経験する。口腔内でそのような強酸が発生しているとは考え難い。火傷する。
実際には炭酸飲料のpH3程度では歯牙は数週間漬け込んでも溶けないことからも判る。
また、歯質が酸で溶けるのなら、この症例のように残根の内部だけではなく、歯肉に接した辺縁部分も同時に溶けるはずだが、そうでもない。マージン部分は象牙質の薄皮一枚になっても残っている。
その理由は何度も書いているので、詳しく書かないが、電気化学的には水素イオンが象牙質を通らずに歯肉に流れていくので、歯質が崩壊しないからだと思っても良い。

申し訳ないが、ここで言っていることが解らないので、もっと詳しく教えてくれというのは勘弁してほしい。僕も電気化学の専門家ではないので、詳しく知っているわけではない。高校卒業程度の物理化学の知識で語っているだけだ。少なくとも「イオン化傾向」の意味や基本的な「イオン式」が理解できれば判ると思う。もし「イオン」ってなに?というレベルなら中学高校の教科書を勉強し直して欲しい。

具体的にどの程度まで虫歯なので除去しないとボンディング材が効かないかというと、茶色という色は参考にはなるかもしれないが、あまりあてにはならない。スプーンエキスカで取れるところは除去しないと接着しない。要するに象牙細管にタグができないと機械的に強固には接着しないということだ。

また接着面積は歯質の辺縁1mmの幅は欲しいので、そこは十分に硬い健全歯質は確保したい。逆にこれより内側には軟化象牙質(虫歯)は残しても良い。これは緊密な辺縁封鎖性が得られたのなら再硬化するからだ。α-TCPがあればこれは歯の原料そのものなので再硬化は速やかに起こる。
逆に言うと虫歯は細菌感染症なので、完全に除去しないと再発するというのはナンセンスで、歯牙を傷つけてしまうだけだ。再発するように見えるのは辺縁封鎖性が良くないからなので、元々辺縁封鎖性の良くないインレー・クラウン装着時にはそのことを十分に留意する必要がある。やってみるととても面倒だ。昔アップしたと思うが消えているので、探してそのうちアップしたい。

以上のことを念頭に前回アップした画像を眺めて欲しい。

最初の画像は処置前で深いところや磨きにくいところにはプラークが溜まっているこの直下では酸素が含まれているタイプの腐食が進行している。



タービンで少し削って綺麗にしたところだ。



マージン付近の健全歯質を確保するために硬い歯質を確保したところ。
薄皮一枚になっている象牙質でもまだ残せる。これは歯質を水素イオンがハイドロキシアパタイト中のCaイオンから電子を奪う前に歯肉に吸い込まれてしまうので虫歯にならないからだ。これは「オームの法則」を理解していないと解らないと思う。小中学生の理科からやり直して欲しい。



α-TCPセメントで再硬化を図り、同時に穴が開いたところや根管を塞いでいる。



あとはフロアラブルタイプのCRで塞ぐだけだ。うまくやればオーバーフローした部分のトリミングも必要ではない。
素人さんはこんなことは普通で、歯科医師なら誰でもできるだろうと思うかもしれないが、玄人さんで長年従来法の技を磨いた人程、何をやっているのか理解できないので、そんな馬鹿な、、と言って怒り出すだろう。






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Last updated  2021/12/31 11:04:39 PM
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