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荒野の棺桶 [ アンソニー・ステファン ]価格:1000円(税込、送料無料)「荒野」、「棺桶」とくれば、マカロニウエスタンの風情が漂うタイトルだ。 かの『続・荒野の用心棒(1966)』では、映画が始まるや否や主人公ジャンゴが棺桶をひきずって登場する。そして敵の大軍団に1人立ち向かい、棺桶の中からなんと機関銃を取り出して並み居る悪漢どもにぶっ放す。それら度肝を抜く演出によって、当方はマカロニウエスタンに深くはまり込んでしまった。 そして、『続・荒野の用心棒』のセルジオ・コルブッチ監督による『ザ・サムライ 荒野の珍道中(1975)』では、マカロニウエスタンのプリンス、ジュリアーノ・ジェンマが棺桶を引きずった。こちらは喜劇だったが。 『荒野の棺桶』は、棺桶好きのセルジオ・コルブッチの監督作品ではない。 さて、『荒野の棺桶』では、どんなふうに棺桶に脚光を当てるのか、興味深い。 この映画、タイトルだけでなく、中身も音楽もじつにマカロニウエスタン臭が強いのだが、どこかおかしい。コーヒーに、ミルクではなく豆乳を入れちゃったみたいに。 まず、タイトルバックに流れる主題歌で「復讐だけが俺の生きがい」「復讐だけが人生さ」と歌っている。「復讐」は、マカロニウエスタンの定番である。その割には、主人公テキサス・ジョーが何の復讐をしたいのかなかなか明かさない。 テキサス・ジョーは、ある目的があって、悪漢ルーペ・ロホの一味に加わる。 そして、映画が始まって35分くらいのところで、ようやく復讐の理由について、片鱗がうかがうことができる。 ジョーはルーペ一味のひとりを問いつめる。「2年前のオマハの駅馬車強盗だ。女を犯して殺したのは誰だ」という具合に。 かつてルーペたちが、オマハを襲ったときに、ジョーの妻が殺されたのだった(この時点ではまだそこまでの詳細は明かされていない)。 この復讐の理由については、どこかで回想シーンが出てくるかなぁと思っていたが、結局何回かセリフで説明されただけだった。 やっぱり、復讐を盛り上げる(というのも変な言い方だが)ためには、その原因となるできごとをビジュアルで示してほしいものだ。 例えば『女ガンマン / 皆殺しのメロディ(1971)』ーこれはイギリス製西部劇ーでは、映画の始めのほうで悪者三人組が牧場を襲い、牧場主を殺し、その妻である主人公ハニー・コールダーに暴行をはたらく。 もちろんこの場面は、映像である。そして、主人公の回想となって何回も見せられる。 ハニーは、屈辱をはらすために、臥薪嘗胆して銃の腕を磨き、女ガンマンとなって、悪者三人組を探して復讐を果たしていく。通常こういう形で復讐に説得力をもたせると思う。 テレビの『必殺』シリーズでも、町民などが不良旗本や悪徳商人から、かなりひどいめにあわされる。 場合によっては、そこまでせんでもいいだろう、と思えるような展開もあるが、不自然なほど許し難い所業を映像で見せて、これは仕事人だちが相手をぶっ殺してもいいと、見ている者に思わせる。 不自然なまでにする必要はないと思うが、この虐げられた状況が弱いと、復讐への高まりがなくなっちゃうんだよね。 つぎに、テキサス・ジョーは善玉なんだけど、いったん悪党一味に加わっているわけだ。悪党は、ある牧場を襲撃する計画を立てる。 これも、うん?と思うところがあるんだけど、その富豪牧場主は「金は家に置く主義でね」と公言しているのだ。こんなの、襲ってくれと言わんばかりなんだけどね。 それで、ルーペ一味が牧場を襲う前に、ジョーは知らせに走った。 そして牧場側が迎撃体制を整えているところで、ジョーは悪党一味のアジトに戻ってくる。 そこを、悪党一味のナンバーツーであるマーダーに見つかってしまう。 ジョーはなんとか言い逃れるが、マーダーは馬が汗をかいているのを発見する。つまり、急いで遠くまで行ってきたのがわかるのだ。 当方としては、ここからマカロニウエスタンの定番であるリンチに発展するのではないか、と思っていたら、ここではなかった。悪党一味は、ジョーも含めて牧場を襲撃に出かける。 そして、牧場側の反撃にあい、悪党一味はほうほうの体で引き上げてくる。 で、アジトに帰ってきてから、「出発前にお前はどこにいた?」「馬は汗をかいてたぜ」と尋問され、さらにそのほかの証拠もつきつけられ、そしてマカロニウエスタン名物のリンチに行き着く。 「疑わしきは罰せず」とはいうが、襲撃の前にジョーに対してきちんと説明を求めていたら、襲撃を失敗することはなかったのではないか。 ルーペ一味は危機管理意識が弱いといわざるをえない。 というわけで、『荒野の棺桶』は大まじめでマカロニウエスタン風味が満載の展開なのだが、このほかにもどこかおとぼけな展開が目白押しである。 そうそう、「棺桶」なんだが、映画の中で棺桶はビジュアルとしては姿を現さない。 テキサス・ジョーがリンチにあっているときに、ルーペが「パプロ、墓場に行って棺桶が余ってるか見てこい」とドスをきかせる。 この言葉だけだね、「棺桶」が出てきたのは。人気ブログランキングへクリックよろしくお願いします
May 15, 2016
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荒野の無頼漢(DVD)価格:1234円(税込、送料別) 当方、かつてのマカロニウエスタン・ブームの際には、大いにのめり込んだ。 クリント・イーストウッド、フランコ・ネロ、ジュリアーノ・ジェンマは、男としてのヒーローだった。 何に憧れたかといえば、凄腕ガンマンというところだ。 べつに当方が早撃ちを身につけたいというのではない。 ダークな主人公が、卓越した技を備え、むごいリンチを受けても、1人で大勢の悪党に立ち向かって勝利する、そのかっこよさに、少年は憧れたわけだ。 だからといって、その後の人生で何かを極めるということはなくここまできているのだが。 マカロニウエスタンとは、イタリア製西部劇のことだ。 西部劇は、本来アメリカの西部開拓時代の話である。 つまり、日本の時代劇を中国でつくるようなものだ。 そんなふうにイタリアで西部劇をつくったら、これがヒットしちゃったんだねぇ。 そして、1960年代から10年ほどにわたって、マカロニウエスタンは作り続けられた。 まあしかし、マカロニウエスタン・ブームも徐々に凋落を迎える。 そうこうするうちにブルース・リーという新たなヒーローと、カンフー映画が登場したりする。 時を経ても、クリント・イーストウッド、フランコ・ネロ、ジュリアーノ・ジェンマについては、我がヒーローだった。テレビの洋画劇場に、彼らの出演したマカロニウエスタンがかかれば、好んで見た。彼ら3人からはそれほど強烈な魅力を感じた。 だが、後期のマカロニウエスタンは、題名を知っていても見ることがなかった。 今回の『荒野の無頼漢』は、ブームが失速を始める1970年の作である。 このDVDを見るまで、名前も知らなかった。 マカロニウエスタンの全盛期、3大スターが活躍した時期は、ダークヒーロー的な早撃ちガンマンが、むごいリンチを受けても、1人で大勢の悪党に立ち向かって勝利する、というパターンだった。 しかし、長い間、多くの映画をつくっていれば、そのパターンもあきられる。 やがて、マカロニウエスタンに、様々な変種が出てくる。 この『荒野の無頼漢』は、そんな一本だ。 ストーリーは、メキシコ革命が舞台となり、主人公ハレルヤが、革命軍に雇われ、武器購入のために政府軍の宝石を強奪しようと暗躍する、というもの。 主人公の名前がハレルヤというからふざけている。 そしてハレルヤの武器がミシンガンなのだ。 マシンガンと書きまちがえたのではない。 ミシン(ソーイング・マシン)にマシンガンが仕込んであるのだ。 さらに、相棒となるロシア人のコサックは、バラライカという楽器に銃が仕込んである。 このコサック、登場するときは、バラライカを演奏しながら現れる。 人造人間キカイダーは、ギターを奏でながら登場したが。 そういえばアメリカ人とロシア人のコンビというと、テレビ番組の『0011ナポレオン・ソロ(1964〜1968)』(映画『コードネーム U.N.C.L.E.(2015)』)じゃないか。 さらに、アメリカの秘密諜報員である尼僧が宝石争奪戦にかかわってくる。この尼僧は、ガーターの下に小型のモールス信号送信機を隠し持っている。そして、電柱に登って、それを電線に繋いで通信を送り始める。 まあ、これは、マカロニウエスタンにおける『仮面の忍者 赤影(1967〜1968)』だね。 こんなふうに、マカロニウエスタンはなんでもありになっていった。 しかし、ミシンガン、台座の板がついているから、どんと地面に置いたら方向転換が難しい。台座にキャスターがついているわけじゃないからね。 にもかかわらず、ハレルヤがマシンガンを向けると、眼前に広がる敵がどんどん倒れていく。 ミシンガンが正面を向いているにもかかわらず、左右の敵が撃たれていきまんねん。映画(全般) ブログランキングへ
April 17, 2016
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映画を見る前から、「続荒野の用心棒」が、いかにかっこいい映画かについては知っていました。先に見ていた2人の友達(同じ小学校の数少ない映画小僧たち)から、何度も繰り返し見所を聞いていました。やつらがテンションを上げて喋るのは、きまって二つのシーンについてでした。 そのように「おもしろい」「すばらしい」との先行情報があると、期待が過剰になってしまいます。そして、実際に見ると意外につまらないと感じることがあるものです。スクリーンで表現できることには限りがありますが、イマジネーションはどこまでも広がるからです。例えば「荒野の用心棒(1964)」は、マカロニウエスタン・ブームの火付け役として評判の高い映画でした。もう映画館に行く前の晩から嬉しくて興奮して、ストーリーやらキャラクターやらを勝手に頭に描いていました。こんな場面やあんな場面があるんじゃないか。けれど、見てみたらそんな場面は出てこない(当たり前)。ちょっとがっかりしたりして。 けれど、「続-」は、レッドゾーンに振り切れそうな期待をも裏切らない、とびきりかっこいいシーンを堪能できました。 脳内フィルムに複写され、何度も脳内スクリーンに映し出されてきた件の二つのシーン、これらについては、“モンスターシーン”と呼びたいと思います。 冒頭、主人公ジャンゴは、どこまでも続くぬかるみの道を、棺桶を引きずりながら登場します。時代はアメリカ南北戦争後、勝ち組北軍の制服を着たジャンゴが、なぜ重そうに棺桶を引っ張って歩いているのか。映画の流れとして、観客にそう思わせたいでしょう。固唾を飲んで見守る観客席の大人たちは知らないんだろうな。しかし、見ているボクは、すでにその中身を知っているのです。密かに優越感を味わっていたりして。嫌味な子供だね。早く、その場面が見たい。大人達の驚く顔も見たいぞ。 一帯を仕切る南軍くずれのジャクソン大佐にケンカを売ったジャンゴは、その一味40人を迎え撃つことになる。多勢に無勢、にもかかわらず不敵に余裕を見せるジャンゴ。押し寄せる赤覆面の集団を向こうに回し、ジャンゴは棺桶の蓋を開けた。そこから取り出したのは新兵器、機関銃だ!ダダダダダ・・・・。シングルアクションのリボルバー拳銃かライフル銃の時代に、1度に150発の弾丸を連射する機関銃が出現したのだ。その衝撃やいかに。棺桶から飛び出す機関銃、なんという意外性。観客は大喜びです。こういった外連見たっぷりの演出は、マカロニウエスタンが得意とするところ。本場アメリカの正当ウエスタンにはなかったものです。 これが一つめのモンスターシーン。映画小僧の脳裏にしっかりと刻み込まれた超かっこいい場面です。 つぎなるモンスターシーンは、いよいよ映画のクライマックス。ジャンゴは、ジャクソン大佐一味につかまり、マカロニウエスタン名物の“残酷リンチ”を受けます。凄腕、早撃ちのジャンゴを無力化しようと、両手を潰すのです。銃床でガンガン打ち据えられるだけでなく、何頭もの馬に踏みつけさせるまでしてしまう。 もう、銃を握ることができないジャンゴ。しかし、命の恩人マリアに銃弾を浴びせたジャクソン大佐を許すわけにはいかない。「ジャクソンに言え。墓場で俺が待っている」ジャンゴに勝算はあるのか。どうやって銃を撃つつもりなのか。 墓場で、引き金を囲むトリガーガードを歯ではずそうとするジャンゴ。ようやくはずれる。さらに、十字架に拳銃を引っかけようとする。引き金を剥き出しにして、十字架に引っ掛けて拳銃を撃とうとするのか。しかし、両手が使えないので、うまく引っ掛からない。何度も取り落として拾い上げる、その繰り返し。そこへ現れるジャクソン大佐一味。 ジャクソン大佐「最後のお祈りか、ジャンゴ。じゃあ、私が手伝ってやろう」言いながらジャクソンは、ライフルをぶっ放す。十字架を盾にして弾丸をよけるジャンゴ。「父と子と、聖霊の御名において」 その瞬間ジャンゴの声が響く「土に還るべし」。火を噴くジャンゴの拳銃、ドギューン、ドギューン・・・・。これが噂のジャンゴ必殺十字架撃ちだ!一気に六人の敵を倒してしまった。拳銃を何度も落としていたのはフェイントをかけていたのか、ジャクソン大佐一味と観客に。 これもまた、トラウマを起こしそうなほどあくが強いガンアクションです。 これら永遠不滅の二つのモンスターシーンを繋ぐストーリーで、ジャンゴはメキシコ人ウーゴ将軍一味と金を強奪します。なんだ、ジャンゴはただの泥棒か。それに成功すると、ジャンゴは「おれの分け前をくれ」としつこく迫る。せこいぞ、ジャンゴ。将軍が承知しないと、こっそり金を持ち出して逃亡。機関銃の代わりに、今度は金を棺桶に詰めて馬車ですたこらさっさ。けれど、底なし沼の淵でうっかり銃を発砲させてしまう。驚いた馬が暴れ、荷台の棺桶が転がり落ち、底なし沼へ。金の入った棺桶を諦められず、追いかけ、底なし沼にはまり込むジャンゴ。あわや底なし沼に吸い込まれるというところで、マリアに助けられる。その直後に、マリアはウーゴ将軍一味に撃たれる。「ジャンゴは棺桶に葬って、生まれ変わるんだ」「できるなら、俺とやり直そう」ジャンゴは、瀕死のマリアに呼びかける。 なんだこのジャンゴは。スクリーンに登場してからしばらくは、ひたすらクールなガンマンだったはず。「とかくメダカは群れたがる。メダカは死ぬだけだ」と、あっという間に悪党5人を撃ち殺したジャンゴ。勝ち組の南軍を鼻にかけるジャクソンに「戦争は終わった。いつまでこだわっている」と言い放ち、取り囲んだ悪党どもを、やはり瞬時に撃ち殺したジャンゴ。あのニヒルな男はどこへ。情けないぞ、ジャンゴ。 孤独なガンマン、ジャンゴのヒーロー性ばかりでなく、人間的な部分を描いてドラマに深みが出たでしょうか。けれども当方は、スチーブン・セガールのような完全無欠、無敵のヒーローが好みなもので・・・。人気blogランキングに参加中。クリックしてね。ご協力、よろしくお願いします。
January 20, 2008
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