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2016.01.25
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カテゴリ: 政治
図書館に予約していた『日本戦後史論』という本をゲットしたのです。
まつこと半年か・・・
この本の論調は陳腐化してないどころか、ますます日本の病癖を指摘して止まないようです。
戦後70年の必読書!というキャッチコピーにも納得でおます♪



戦後

内田樹×白井聡著、徳間書店、2015年刊

<商品の説明>より
この国はなぜ今、戦争ができる国になりたがっているのか?
右傾化する日本と世界、親米保守という矛盾、領土問題の本質、反知性主義ともいえる現状……。この国が来た道、行く道を、『日本辺境論』『街場の戦争論』などの内田樹氏と『永続敗戦論』で大注目の論客、白井聡氏が縦横無尽に語りつくす。「敗戦の否認」という呪縛や日本人に眠る「自己破壊衝動」など、現代日本に根深く潜む戦後史の問題の本質をえぐりだす。戦後70年の必読書!

<読む前の大使寸評>
団塊の世代もこの歳になれば、「戦後史とは何だったか?」と思うわけです。

<図書館予約:(7/27予約、1/19受取)>

Amazon 日本戦後史論


この本の「はじめに」は白井さん、「おわりに」は内田先生が受持っています。
長文の「はじめに」の一部を以下に紹介するが・・・
なんか白井さんの決意表明のような厳しさがあります。

<はじめに> p4~7
 ところで、政治哲学の世界では、「愛国主義」とか「愛国心」と訳される言葉には、二つのものがあると言われてきました。一つは、パトリオティズムであり、もう一つはナショナリズムです。両者の違いについては盛んに論じられてきましたが、多くの場合、前者は「自然なもの」、後者は「操作されたもの」と受け止められています。言い換えれば、前者は「下から」、「民衆の生活から自然に湧き上がる郷土への愛」がそのまま拡大したものとして捉えられるのに対し、後者は「上から」、「国家のエリートが作為的につくり出し、民衆に押しつけることで彼らを時の政府に対して従順にさせ、他国民への傲慢な優越感を植え付ける企み」として捉えられます。

 ですから、簡単に言えば、パトリオティズムは善きものであるのに対して、ナショナリズムは悪しきものだとされます。「愛国心は、ならず者の最後の避難場所である」という有名な警句がありますが、これは後者の意味での「愛国」を指したものと考えられます。愛国心をかさに着たならず者が、政府に従順でない人々を非国民・売国奴呼ばわりし、したい放題をするという光景は、洋の東西を問わず、数多く観察されるものです。

 しかし、このように二つの愛国主義が概念としてきれいに切り分けられるとしても、両者を実際に区別するのは簡単なことではありません。誰でも、自分が慣れ親しんだ自然環境、風土、食べ物、そして人々等に対する愛着を持っているでしょう。こうした心情が郷土愛と呼ばれ、その拡大版がパトリオティズムだと言われます。
(中略)

 以上のような事情から、政治を学問的に取り扱う際に、愛国主義は大いに危険視されてきました。20世紀前半の二つの世界大戦においては、人々が熱狂的な愛国心に駆り立てられることで未曾有の規模での殺戮が行われた事実がある以上、こうした警戒感が強くなったのは当然のことでした。それゆえ、20世紀後半の人文・社会科学は、ナショナリズムとしての愛国主義に対する批判的解明の作業を進めることにもなりました。

 これらを踏まえたうえでなお、内田さんと私の対話は愛国主義を打ち出すものとなりました。その理由は、一つには、ならず者たちの愛国主義がしょうけつを極めているという事情があります。

 上は内閣総理大臣から下はヘイトスピーチの市民活動家に至るまで、郷土への愛着は何ら感じられない一方、幼稚な戦争趣味と他国民への攻撃性だけが突出した悪性のナショナリストたちが、愛国主義の旗印を独占しています。これらの輩が、愛国者面をした単なるならず者であることを徹底的に暴露しなければなりません。

 もう一つの理由は、先にも述べたように、私たちは今当事者として、この国で起きている問題(原発の問題はその筆頭です)に、正面から取り組まなければならない、ということです。それは、人類ないし地球全体といった普遍的なものに対する義務でもあります。
 私たちの国土に対して絶大な愛着を感じる存在は、例えばドナルド・キーン氏のような少数の例外者を除けば、日本に暮らしてきた私たち以外にはいません。私たちが当事者としての無限責任を負わないなら、地球の一部としてのこの国土は、ならず者たちによって使い尽くされた後、見捨てられ、最終的には打ち捨てられることになるでしょう。ですから、「この国土」に愛着を持つ「この私たち」こそが、その自然を、その社会を死守する主体にならねばならない。


内田先生が、安部政権の劣化をからめて、戦後史を見直すことの意義を語っています。

<戦後史を見直す動きは時代の要請> p19~21
 僕の父親たちの世代がそうですけれど、「負けてよかった」という気分がどこかにあった。馬鹿なやつが威張らなくなって、平和と民主主義の国になった。貧しいけれど、ずいぶん明るい社会になった。だったら、それはそれでいいんじゃないか。

 「なぜ負けた」という問いは、どこかで「次は勝つ」というマインドに接合します。「次はアメリカに勝つ」ためにという真剣さがなければ「なぜアメリカに負けたか」という問いは前景化しない。でも、戦中派には「次は勝つ」というような気分はまったくありませんでした。

 ナショナリストたちにさえまったくなかった。だって、右翼の巨魁たちは次々とCIAのエージェントに採用されてしまったんですから。「負けてよかった」という楽天的なマインドと、「なぜ負けたか」を追求する主体がどこにもいなかったという現実の帰結として、敗戦経験を正面からクールかつリアルに総括するという事業が70年にわたってネグレクトされてきた。そういうことだったと思います。「もう戦争の話はいいじゃないか。済んだことなんだから」という当事者たちの嫌気によって、ほんとうは何があったのか。どうしてこれほど負けたのか。日本人はこの戦争で何を失ったのかといった一連の問いが問われぬままに放置されてきた。

 でも、いくら「なかったこと」にしても、現に「あるもの」はそこにあり続ける。日本は敗戦の経験を正面から引き受けることを怠ったために、アメリカの従属国でありながら、主権国家のようにふるまっているという自己欺瞞から抜け出せないでいる。その事実を白井さんのような若い鋭利な知性が、「これはおかしい」と指摘するようになった。

 「身内の恥」を当事者たちはふつう言挙げしません。口に出して、ようやくかさぶたができた傷口をこじ開けて、塩を擦り込むようなことはしない。でも、当事者ではない世代は「これはおかしいでしょ」ときっぱり指摘してくる。これはある意味で自然な過程なんだと思います。

 ドイツでもフランスでもイタリアでも、敗戦の全面的な総括はやはり敗戦直後にはできなかった。かなり長い時間が経って、「その話はなかったことにしてくれないか・・・」という世代が退場した後に、はじめて「この負け方の総括、おかしいじゃないですか」という世代が登場してきた。「戦勝国」フランスでも、対独協力したヴィシー政府についての歴史学的な研究が始まるまでには戦後40年という歳月が必要だったんです。

 日本ではようやく戦後70年が経ってから、「あの戦争で日本は何を失ったのか。失ったものをどうやって隠蔽してきたのか」という問いが立てられるようになった。そういうふうにして見ると、集団の英知の総量というのは時代によって変わるわけではないと思います。ただ残念なことは、白井さんたちが登場してきたにもかかわらず、安部政権誕生以来の2年あまりで戦争責任や敗戦責任をめぐる政治的言説の質はますます劣化しているということですね。


内田先生と白井さんが対米従属を語っています。

<対米従属が生きる道と信じる人たち> p39~41
内田: 戦後日本の国家戦略は「対米従属を通じて対米自立を果たす」という大変にトリッキーなものでした。何度もあちこちで書いていることですけれど、僕はこれを「のれん分け戦略」と呼んでいます。丁稚が手代、番頭、大番頭と出世して、ある日大旦那さんに呼ばれてこう言われる。「お前も長いことよく忠実に仕えてくれた。ありがとうよ。これからはもう一本立ちして、自分の店を持ちなさい。明日からはお前も一国一城の主だ」。

 そういう展開を日本人はアメリカに対して期待しているんです。政治家も官僚も学者もメヂアも。みんな、そう信じている。

 これはあるいはかつて中華皇帝に朝貢していた華夷秩序の辺境国として、身にしみたマインドなのかもしれません。宗主国に対して「従順なふり」をしていると「いいこと」がある。臣下の礼を取っていると、中華皇帝からさまざまな下賜品が下され、「王」の位を賜り、自分のいるあたりの辺土は自治して構わないという一札が頂ける。そのコスモロジーがいまだに日本人の中にはしみついている。

白井: ところが困ったことに今はグローバル資本主義の時代になって、周縁的領域だからどうでもいいやというふうに放っておいてはくれません。やれTPPに入れとか、司法制度をアメリカ流に改革しろだとか、無茶なことを押し付けられる。

 日本の有権者を見ていてほんとうに唖然・呆然とすることが多いんですけれども、2年前の選挙のときもTPPについて「聖域なき関税撤廃ということになったら、われわれは交渉から撤退する」と自民党は公約した。こんなスローガンを信じる人間がこの国にはたくさんいるということにあらためて衝撃を受けました。

 今まで自民党が公約をどう扱ってきたかを見れば、公約が守られないのは自明です。かつて「大型間接税は導入しません」と言いながら、選挙が終わったとたんに「消費税をやります」とかありましたね。間接税は国内の問題に留まっているわけですが、TPPは国内に留まらない。アメリカの帝国主義のお先棒を担ぐことを自民党がやっているわけです。
(追って記入予定)






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Last updated  2016.01.25 00:42:42
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