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2022.09.26
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カテゴリ: 映画
砂漠を背景にラクダに乗ってロレンスが駆ける・・・巨大スクリーンで昔観た『アラビアのロレンス』が忘れがたいのです。

2013.01.14 『アラビアのロレンス』 より、以下のとおり復刻します。

***********************************************************
図書館で借りた「世界の民族地図」を読んでいて・・・昔見た「アラビアのロレンス」という映画を思い出した。

 大英帝国史から言えば、「サイクス・ピコ協定」という大英帝国末期のしたたかな帝国主義的謀略が描かれた映画であったとも言えるわけですね。
 1916年5月、イギリスは仏・露とともに、秘密裏に「サイクス・ピコ協定」というトルコ領の分割協定を結んでいた。


【アラビアのロレンス】
アラビア
デイヴィッド・リーン監督、1962年英制作

<goo映画解説>より
 1916年、英国陸軍カイロ司令部に勤務中のロレンス少尉(ピーター・オトゥール)は、3カ月の欠勤許可をもらった。理由は、現在トルコに対して反乱を起しつつあるアラブ民族の情勢を確かめることにあった。
 早速ロレンスは灼熱の砂漠の中を反乱軍の指揮者フェイサル王子(アレック・ギネス)の陣営に旅立ったが、途中、同じ民族が血を流しあうのを見て愛想をつかし、ハリス族首長アリの案内申し出を断った。
 陣営近くで英軍の連絡将校ブライトン大佐に逢ったが、陣営につくや突如トルコ空軍の爆撃を受けた。そこでロレンスは近代武力の前に暴露されたアラブ反乱軍の無力さをまざまざと見せつけられた。

 ブライトン大佐は彼らに英軍の武器による指導と訓練を提案したが、ロレンスはゲリラ戦を主張した。つまり、トルコ軍の重要地点アカバの反対側にいるアウダ(アンソニー・クイン)を首長とするホウエイタット族と手を結び、背後から敵連絡網などを叩いて撹乱させるという作戦だった。

 アカバでの戦いは苛烈をきわめた。燃えるものは全て焼き尽され、ロレンスが意識を回復したときにはトルコ兵の姿はなく、アウダが役にも立たない秘宝の箱を抱えているだけだった。ロレンスはアカバ攻略を告げるためカイロに向った。
 カイロに着くと司令官が変りアレンビー将軍になっていた。ロレンスは、新たな任務を与えられた。ゲリラ戦の指導者である。
 何回目かの鉄道爆破のとき、部下のファラジが重傷を負った。ロレンスは秘密のもれるのを恐れ、その場で射殺した。

 エルサレムに行ったロレンスは、すでに英仏両国間にアラブとトルコの土地を二等分するというサイクス=ピコット条約が結ばれているのを知り愕然とした。が、ロレンスのゲリラ部隊は再編成され、アリもアウダも参加していた。
 部隊がロレンス支持者の集落へ来たとき、すでに集落はトルコ軍の襲撃を受け燃え上り眼前に悲惨な光景が待っていた。怒ったロレンスはトルコ兵を最後の一人までも追って殺害した。

 アレンビー将軍の司令部でも、やがてシリアの王となるフェイサルにとっても、ロレンスは無用の者となりつつあった。彼は態のいい追放を受けた。その時はじめて彼の心に孤独感がしみわたった。
 大佐への進級と、英国への帰還船に個室が用意されたことだけが、ロレンスの砂漠での功績に対する感謝の印だった。軍用乗用車でダマスカスを発ったロレンスは、窓外に顔なじみを探したが、誰一人として彼に気づく者はいなかった。
 ロレンスを覚えているのは荒漠たる砂漠の広がりだけかも知れなかった。
  ◆
T・E・ロレンス自伝『知恵の七柱』からロバート・ボルトが脚色し、「戦場にかける橋」のデイヴィッド・リーンが監督した70ミリスペクタクル。撮影はフレデリック・A・ヤング、音楽はモーリス・ジャール。

<大使寸評>
イギリス、トルコそしてアラブ民族との歴史的情勢など無知のまま見た映画であったが・・・
この映画で、ただひたすら、ロレンスの格好良さと、沙漠の美しさに酔いしれたのである。

goo映画 アラビアのロレンス


「サイクス・ピコ協定」という歴史的知識は、もちろん「世界の民族地図」という本から得た後追いの知識である。この本では更に、次のような重要な指摘がありました。

《第一次大戦で示したイギリスの二重外交こそが、今日まで続く「パレスティナ問題」という悲劇の最大の要因である》





<東方問題>p389~390
 このオスマン帝国解体期の領内民族運動を巡って生じた国際政治上の諸問題を、ヨーロッパの政治家、外交官たちは<東方問題>と呼んだ。<東方問題>とは、19世紀のオスマン朝内外の問題を、あくまでもヨーロッパという外部社会から認識する概念であり、列強がキリスト教徒保護に名を借りて干渉をはかることを正当化する視点に立つものである。
 列強は、この寛容な多民族国家オスマン帝国に民族的対立を生み出し、その対立を利用して進出をはかった。列強の<東方問題>への介入は、パレスティナ問題に限らず、トルコ・アルメニア紛争、レバノン問題、キプロス紛争からバルカン半島の民族問題に至る今日の諸民族抗争に深い影を落としているのである。
 列強の<東方問題>への介入が、アラブ民族主義の強力な抵抗にさらされた19世紀末、列強の、とくにイギリスの中東進出に寄生しつつ、ユダヤ人の殖民運動を進めようとしたのが、シオニズムであった。また逆からみた西欧列強のシオニズム運動支援は、西欧社会が解決しえなかった<ユダヤ人問題>をアラブ社会に押し付けるものであった。

<イギリスの二重外交>p390~391
 第一次大戦中の1917年11月、イギリス政府は、シオニズムに対して初めて公式に支援を与えた。イギリスは外相バルフォアの名で、イギリス・シオニスト連盟会長ロスチャイルドに書簡を送り、そのなかで「パレスティナにユダヤ人の民族的郷土を設立する」ことに同意するのである。これがいわゆる「バルフォア宣言」である。バルフォア宣言は、イギリスが大戦を遂行するうえで、ヨーロッパやアメリカ在住のユダヤ人の支持を獲得し、あるいはユダヤ系財閥の財政的支援をとりつけるためのものであった。また、戦後、イギリスがシオニズム運動を通してパレスティナを単独支配するための布石でもあった。
 このバルフォア宣言は、1915年から1916年にかけてなされた対アラブ公約を破るものであると同時に、イギリスの帝国主義的意図に便乗したシオニストにユダヤ国家建設の糸口を与えるものでもあった。

 第一次大戦で、オスマン・トルコは独・墺側に立って参戦していた。イギリスは大部分がトルコ支配下にある中東での戦局を有利に運ぶため、アラブ勢力に接近し、アラブ人の対トルコ独立反乱と交換に戦後のアラブ人国家の独立を承認していた。これが「フサイン・マクマホン協定」と呼ばれる。アラブ人は同協定にもとづき1916年6月、トルコに対する反乱に立ち上がった。イギリスはこの「アラブ反乱」の最中にアラブ人を裏切り、アラブ人との協定と両立し得ない約束をユダヤ人に対して行ったということである。
 このような二枚舌を弄するイギリスの二重外交こそが、今日まで続く「パレスティナ問題」という悲劇の最大の要因である。

 パレスティナについてのイギリス政府の舌は、実はもう一枚あって、1916年5月、仏・露とともに、秘密裏に「サイクス・ピコ協定」というトルコ領の分割協定を結んでいた。この秘密協定は、1917年11月のロシア革命成就直後に、ボルシェヴィキ政権により暴露され、アラブ人を大いに憤激させた。

<アラブ人とユダヤ人の対立>p391~392
 第一次大戦後、パレスティナはイギリスの委任統治下に置かれた。そして、バルフォア宣言に鼓舞されたユダヤ人が欧米各地から各国政府の政策的後援をうけながら、パレスティナに移住してきた。ナチス・ドイツすらが、1941年春までは強力にユダヤ人のパレスティナ移住策を進めたこともすでに述べた。

 が、ユダヤ人のパレスティナ移住が進むと、それはたちまち現地のアラブ系住民の反発を招来する。現地アラブ人の抵抗は1920年代初めから始まってはいたが、当初は、イギリス政府の懐柔策が効を奏し、またアラブの地主層も土地代金の入手で潤い、大きな騒動にはなり得なかった。
 1929年、エルサレムの嘆きの壁を巡って、ユダヤ人とアラブ人の最初の大規模な衝突事件が起こり、30年代に入ると、入植者の急増やシオニストのアラブ住民排除策に抗してパレスティナのアラブ人の反乱が続発するようになる。30年代末以降、イギリスはパレスティナのアラブ住民の反乱には徹底的に弾圧を加える一方、周辺のアラブ諸国の支配層に働きかけ、シオニストの独走に対する牽制策を採りはじめた。また、パレスティナへの移住制限も始めた。

 このようなイギリスの「バランス政策」に失望したシオニストたちは、第2次大戦中に、新たな庇護者を求め、その役割をアメリカ合衆国に見出す。つまりシオニストは、最大のディアスポラ(さまよえるユダヤ人)を抱えるアメリカ合衆国をよりどころに、ユダヤ国家完成をめざすのである。
 第2次大戦後、こうしてシオニストの新しいパトロンとして登場したアメリカ合衆国が、パレスティナ問題を巡る国際政治の舞台で主導権を握るに至る。



【世界の民族地図】
世界
高崎通浩著、作品社、1994年刊

<「MARC」データベースより>
現代世界は、野放図に噴出する民族的エネルギーに覆われている。人種、民族、語族、宗教…これらの複雑な民族問題を一冊に集約した。 1997年刊の改訂版有り。

<大使寸評>
これ1冊で、世界の民族問題とか、紛争、テロ活動がわかる優れものです。
個人的にはチベット、内モンゴル、新疆ウイグル自治区、北アイルランド、バスク、パレスティナ、朝鮮半島に関心があるんですが。

Amazon 世界の民族地図


1冊の本とネット情報(goo映画解説)があれば、昔見た映画の背景を後追いで調べることが出来るわけで・・・・便利な世の中になったものです。
ロレンスの個人的魅力は、このあとwikipediaで読んでみます。


wikipedia トーマス・エドワード・ロレンス より
ロレンス

トーマス・エドワード・ロレンス(Thomas Edward Lawrence、1888年8月16日 - 1935年5月19日)は、イギリスの軍人、考古学者。オスマン帝国に対するアラブ人の反乱(アラブ反乱)を支援した人物で、映画『アラビアのロレンス』の主人公のモデルとして知られる。





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Last updated  2022.09.26 00:10:33
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