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2013.01.13
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カテゴリ: 気になる本
ミステリー小説といえば、フィリップ・マーロウものぐらいしか読んだことがないのだが・・・


この本では、歴史的背景、政治的背景もアクションもしっかり描いてあるので、なかなかマッチョというかハードボイルドなわけです♪
特に、中華の闇で揺れる日米英の政府中枢など、もろに大使のツボを突いています。

だけど、この小説に、やたら《5》とか《6》が出てきて、「何のこっちゃ」なわけで・・・スパイ小説を読む素養が足りないわけですね。
それから、後半にはCIAとMI5が撃ち合う複雑なお話に変わってきて、登場人物の名前や相関をメモしておかないと訳が分からなくなってくるわけで・・・・こんな複雑な話を紡ぐ高村さんの緻密さが罪というか、すごいのです(笑)



【リヴィエラを撃て】
リビエラ
高村薫著、新潮社、1992年刊

<「BOOK」データベースより>
国際政治の楽屋裏を発狂させた男〈リヴィエラ〉。夥しい諜報戦士たちの血を吸込んだこのコードネームは、一人の天才ピアニストに死を賭した東京公演を決意させる。顔のない東洋人スパイをめぐって、東京・ロンドン・ベルファストに繰り広げる、流血の頭脳ゲーム。

<大使寸評>
この本では、歴史的背景、政治的背景もアクションもしっかり描いてあるので、なかなかマッチョというかハードボイルドなわけです♪
特に、中華の闇で揺れる日米英の政府中枢など、もろに大使のツボを突いています。

Amazon リヴィエラを撃て



著者の語り口を味わう意味もあるので、一部を転記して紹介します。

p373~374
 「私たちは手榴弾を投げ込まれたんです!CIAが投げ込んできたんだ!」
 出ない声を振り絞って、キムは苦痛のため動かない身体をよじった。潤んだ目が剥き出しの怒りでさらに潤んでいた。M・Gは、静かに応えた。
 「私たちもCIAの現職の男を、卑劣な手段で拷問した。これはおあいこだ。彼らには彼らの守るべき国益があり、私たちには私たちの守るべき国益がある。君とジェンキンズが危険をおかして得た情報は、事態の把握になくてはならないものだ。起こることを正確に掴んでおくことが、今私たちに出来る最大の仕事だ。手を出して、事態をぶち壊すことではない」
 「モーガンはどうなります・・・・」
 「彼がケリーと別行動を取るなら、警察の出番もあるだろうが、この八日間モーガンを見つけられなかった警察が、今日明日に何が出来る?彼のことはひとまず忘れよう」
 M・Gは、先刻カーゾン・ストリートの上司に話した自分の言質とは、あえて少し異なったことを話した。
 「・・・そうそう、こういう事情だから、ケリーの電話はもう待つ必用はない。君の携帯電話は回収したから。そのつもりで」
 「ケリーは、モーガンを逮捕させるために電話をかけてくるんです・・・」
 「ケリーとの接触は厳禁だと言ったろう?」
 M・Gは、自分自身、突然糖尿病を宣告された男のように肩を落としているのを知っていたが、長年の習性になってきた無表情な喋り方は、他人にそれと分かるほどの変化は受けていなかった。だが、その無表情こそ、部下を教え、鍛え、守ってきたもの、そのものだった。そいいうことを、キムが分かる日もそう遠くはないだろう。
 そういうことを考えながら、M・Gは、憤慨に満ちた目で天井を睨んでいるキムの顔を眺めた。
 「キム。私たちはそれぞれ、人生のそれぞれの時点で、最終的に何を優先するかを決めていかなければならない。だが仮に今、君がどういう形であれ職場を去るようなことがあったら、《リヴィエラ》の追求は誰がやる?僕はもう歳だが、君にはまだ山ほどやることが残ってる」
 M・Gはそう言い残して腰を上げた。短いノックとともに、ちらりとモナガン警視監が顔を覗かせたからだった。天井を睨んでいたキムの目が、今は自分の背に向かっているのを感じた。「M・G」とキムが呼んだ。M・Gは振り返り、ウィンク一つ返して病室を出た。

《リヴィエラ》を追うジャックがあえなく亡くなり、ヒーローがキム、手島へと変わっていくことにやや驚くけど・・・・
《リヴィエラ》というアンチ・ヒーローが主題なんでしょうか。それとも組織をも上回る誇りを描こうとしているのか。


これではあかんと、孫崎亨さんの新刊の新書『日本の「情報と外交」』を買ってきて読み出したところです。
この新書には<CIA・MI6(スパイ)とFBI・MI5(防諜)>という章があったりするので・・・・・
よく読んでスパイ小説を読む土台を築くことにいたしましょう(汗)

スパイ小説を紡ぐには国家観とか、現実の防諜組織に関する知識とか、外せない制約が多いわけだが・・・・
女性作家で、この制約に挑戦した蛮勇というか、作家魂がすごいですね♪


amazon高村薫
1953(昭和28)年、大阪市生れ。
1990(平成2)年『黄金を抱いて翔べ』で日本推理サスペンス大賞を受賞。1993年『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。同年『マークスの山』で直木賞を受賞する。1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞を受賞。2006年『新リア王』で親鸞賞を受賞。2010年『太陽を曳く馬』で読売文学賞を受賞する。他の著作に『神の火』『照柿』『晴子情歌』などがある。

フィリップ・マーロウがつなぐ輪

『リヴィエラを撃て』1
『リヴィエラを撃て』2





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Last updated  2013.01.13 01:36:40
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