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2024.07.18
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カテゴリ: メディア
ツチヤ教授初の自伝的エッセイというふれこみの『哲学者にならない方法』という本である。
この本で、アラン・レネ監督の『去年マリエンバートで』という映画を解説していたので・・・
以下のとおり復刻してみます。


*********************************************************
図書館で『哲学者にならない方法』という本を手にしたのです。
著者は週刊文春などメディアにたくさんのユーモアエッセイを連載している著名な学者なので、期待できそうである。




土屋賢二著、東京書籍、2013年刊

<「BOOK」データベース>より
寄天烈な寮生たち、麻雀、ジャズ、ドストエフスキー、『存在と時間』…。ツチヤ教授のバカバカしくもどこかせつない青春の1ページ。初の自伝的エッセイ!

<読む前の大使寸評>
著者は週刊文春などメディアにたくさんのユーモアエッセイを連載している著名な学者なので、期待できそうである。

rakuten 哲学者にならない方法


「第3章 読書」で読書や映画が出てくるので、見てみましょう。
p98~100
<理解できない>
 大学に入って最初に夢中になったのは読書だった。小学校を出てからロクに本も読まなかったの、どんなことを人類は書き、どんなことを感じ、考えてきたのかを知ろうと、片っ端から読んだ。

 当時、大学生の必読書とされていたのは、阿部次郎の『三太郎の日記』と倉田百三の『出家とその弟子』だった。大学生になったらどんなレベルを要求されるのかを知ろうとして読んでみたが、どちらの本でも主人公がしきりに悩んでおり、なぜそんなに悩むのかわたしにはどうしても理解できなかった。大学生の必読書が理解できないわたしは、大学生の資格がないのだ。それが入学試験でなくてよかったと思った。

 当時は悩みが流行っていたのかもしれない。そのころ評判だったベイルマン監督の映画を見たときも、主人公が深刻に悩んでいりのは分かったが、何に悩んでいるのか皆目分からず、当然ながらなぜ名作とされているのか、理解できなかった。テレビがなかったので、映画はたくさん見たが、わたしには難解すぎる映画が多かった。当時は実験的映画が数多く作られ、大半は理解できなかった。ゴダール監督の映画が大好きだったのが不思議なほどだ。

 ベイルマンの映画やフェリーニの映画も難解だったが、難解さにかけては、アラン・レネ監督の映画『去年マリエンバートで』にかなう映画はなかった。現在と過去、現実と夢が混在している映画で、どんなに強引にこじつけようとしても、どんなストーリーで何を言おうとしているのかまったく分からなかった。
 映画オンチのわたしも、これほど不可解な思いをしたことはない。それから30年ほどたったころ、深夜にテレビでこの映画をやっているのを見た。もう大人になったのだから分かるだろうと思ったが、結局、当時と同じくらい不可解な思いをしただけだった。最近、この映画の脚本家が気に入っていたというジョークを発見した。それはこうだ。
 警官「怪しい男だな。この辺りで窃盗事件が多発しているんだが、お前がやったんじゃないのか?」
 男「違いますよ」
 警官「本当か?昨日の夜も事件があったんだが、昨日の夜は何をしていた?」
 男「昨日の夜は、映画を見ていました。『去年マリエンバートで』って映画です」
 警官「嘘じゃないだろうな?本当に見たというなら、どんな話だったか説明してみろ!」

 こういうわけの分からない映画がヴェネチア映画祭で金獅子賞を受賞したという事実を知ると、自分には人並みの理解力もないという劣等感がわたしの中でふくらんだ。フェリーニやベイルマンが高く評価されていたのも不可解だった。大学生の必読書といい、評判の映画といい、高く評価されているものはあたしの理解を超えるものばかりだったから、自分には、当たり前の理解力もないことをいやというほど思い知らされた。
 その後も理解できない映画を色々見た結果、わたしは「実験的」と銘打った映画は見なくなった。もし薬の場合なら、だれが「実験的」を飲もうとするだろうか。映画でも十分に実験して検証してから見せてほしいものだ。


『哲学者にならない方法』3 :理解できない読書や映画
『哲学者にならない方法』2 :東大駒場寮にて
『哲学者にならない方法』1





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Last updated  2024.07.18 00:31:17
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