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今回の普天間の交渉で、アメリカの新聞がどう報じたかというと、「交渉にアメリカ側が勝った。しかし、今後は日本人の意向に慎重に対処しなければならない」とあった。つまりアメリカがうまく日本の新政権をおさえこんで成功し、鳩山さんが交渉に負けた、というレベルの話である。もし日本の新政権が相当に手強くやってきたらかなり参ったところであるが、鳩山さんは安保の見直しというところに行かないで、くるりと反転してしまった。無様であるが、しかし日本中の人がアメリカの基地は要らないと考えていることをアメリカ側に知らしめたし、日本人自身に基地を沖縄だけに押しつけておいてよいのだろうかということを深刻に意識させたから、いいのである。今日の毎日朝刊「記者の目」で、政治部の古賀攻という人が鳩山さんは精神構造がおかしいから辞任せよ、と迫っているが、私はこの記者の方が精神構造がおかしいと思う。まず、過去の政府間合意を平気で白紙に戻すような政権は外交の世界では相手にされない、と書いているが、政権が変わったら、いや変わらなくても、自国民の負担を軽減するために見直しをもとめるのは当たり前なことである。この記者は、不平等条約を明治以来の政府が必死になって変えてきた歴史を習わなかったのだろうか。鳩山さんの欠点は5月末までにと言ってしまったことで、自縄自縛、これだけで外交テクニックの負けだった。いつまでもこの交渉をつづけます、とねばり、沖縄押しつけ論者である自民党や新聞に対して、それでいいんですか、日本中が基地はいやだといっているのをあなたがたは説得してください、とやればよかったのである。さきほどの記者は橋本龍太郎元首相に取材したとき、橋本氏が96年、アメリカとの交渉で「ノーと言われたら一発で終わる、だから本当に迷いに迷った」と聞かされて感じ入った話を書いているが、あれから14年もたって、いまだにアメリカには一指もさしてはいけないと思いこんでいる。こっちの方が精神構造がおかしいのである。 独立国は外国の軍隊をいつまでも置いてはいけないというのは、どこの国でも知っていることでサウジアラビアの王様でさえ、アメリカの基地をどいてくれと言っている。日本は60年、名軍港である横須賀や佐世保をアメリカに引き渡しているし、沖縄には60年も負担をかけている。相当な額の思いやり予算を払っている。ここまでしているのに、何でちょっとのことで日米関係の危機なのだ、決裂なのだ。鳩山さんがしたことは無様に終わったが、国民に実害を与えたわけではない。他にもいろいろいいことをしているのだから、政治部の記者は政治部の枠内だけで考えず、鳩山さんがやっている全体を考えて判断してものを書かなければいけない。
2010/05/26
新聞の限界昨日の毎日朝刊の社説もあいかわらず普天間のことで首相を非難している。それしか手がないみたいだ。あの子がわるいからみんなみんなこうなったのよ、とダレかのせいにしたがる女の子みたいだ。今日は論説委員のトップである岩見隆夫氏が「近聞遠見」で「佐藤栄作に学ぶべきだ」というエッセイみたいなものを書いている。沖縄が還ってきたのは佐藤栄作の対米交渉の努力だとたたえ、普天間が還ってきたのは橋本龍太郎氏の用意周到な執拗さだったと書いている。新聞記者をやってきた人がこんな単純な認識でいいのだろうか。たいていの政治記者は年をとると炉辺談話的なものを書いてとくとくとしているが、印象批評的で感情的なことを書いてもらっては困る。沖縄が還ってきたのは30年間におよぶ沖縄県民のひたむきで熱心で執拗な祖国復運動のたまものであった。毎日のようにデモをしていた。委任統治していたアメリカもとうとう無視出来なくなったからである。当時の祖国復帰運動のリーダーたちは賢明にも基地反対は避けていた。基地に依存して働いていた人も祖国復帰運動には熱心に加わっていた。佐藤栄作元首相もさすがに黙っていられなくなったのである。普天間の変換はアメリカのヘリ事故がおこったことと、アメリカの軍事戦略の転換のため、グアムに海兵隊の一部撤退を向こうがきめたからで、橋本元首相の努力ではない。政治家の力で還ってきたように書きたがるのはヨイショをしたがる政治記者のくせである。新聞は日米同盟が本当に大事と思うならば、全国の読者にむかって沖縄の負担を軽減するよう全国の県民がアメリカの基地を部分的にでも受け入れてくださいと社説で訴えるべきではないか。あるいはアメリカにもうすこし現地の苦悩を理解して対処してほしいと訴えるべきではないか。パッケージで考えてほしいとくらい言えばいいではないか。ところが新聞というものは、読者とアメリカに対してはまったく一指も染めない。それが新聞の限界である。だから、政治に関しては国民に客観的なデータを提供して4年ごとの選挙で国民が選択する上での参考に資する程度が新聞社の役割で、それ以上は不要である。
2010/05/15
12日毎日朝刊の10ページ異論反論欄に佐藤優氏の寄稿が載っていた。「沖縄との同胞意識回復を」。これを読んで私と同じようなことを考えている人がいることにうれしくなった。佐藤氏は、日本の陸地面積のわずか0.6%の沖縄に在日米軍基地の74%が集中している不公平を東京の政治エリート(閣僚、国会議員、官僚)たちが潜在的に持っている沖縄に対する差別感が沖縄に負担を押しつけていることにてんとして恥じないことを批判している。私はこの政治エリートの中に新聞社の編集委員、論説委員、評論家、テレビのコメンテーターなども入れるが、メディアで売れっ子の佐藤氏はそこは外したのであろう。 沖縄が佐藤内閣のときに還ってきたのは、30年間も祖国復帰運動を熱心にくりかえし、血みどろの闘いをつづけてきた沖縄県民の努力である。私は復帰前に沖縄に駐在してこのひたすらな沖縄の人たちの祖国復帰デモを見てきたが、これをみてアメリカは沖縄領有をあきらめたのである。しかし、当時のマスコミは沖縄はあたかも異民族であるかのように報じ、沖縄県から来た学生をアジア留学生の中にいれて恥じなかった。ついでにいうと、国後島が還ってこなかった大きな理由は、あの島から住民を引き揚げさせてしまった外務省の失策である。なぜこうしたか、このことを検証する必要がある。日本の歴代首相ではじめて沖縄にやさしい目をむけたのは鳩山首相で、なんだかんだ言っても沖縄の人はこのことを記憶するだろう。動機がよかったが、あとうまくいかなかった人をメディアはこれ以上責めるべきではない。メディアが抑止力が大事だというならば、そのことを紙面で立証して、日本国民に沖縄に押しつける不公平を訴えつづけたらよかろう。なぜそれをしないのかは、彼らにその気も能力もないからである。後世の人は、鳩山さんのときからすこしづつ変わってきたなと評価するだろう。
2010/05/12
浦賀に黒船が入ってきてからわずか15年で明治維新になった。よくこんなに早く実現したものだと思う。だがこの間の15年間の幕末のころは衆論、争闘がみだれてたいへんだったと思う。明治も20年くらいまでは、いろいろ不平不満、反発、反乱が絶えなかった。今、歴史小説や何やかやですべてよかった、すばらしかった、というふうになって、当時の不平不満はすべてきれいさっぱり消え流されて何も残っていない。でも明治になってからもちょんまげをいつまでもつけていた人がいたし、廃刀令にはすごい反発があった。汽車や電線を忌み嫌う人、西洋風をきらう人、特に農民は子供を学校にやると農作業に差し支えるといって反対や不従順が根強かった。 今、日本で初めて戦後60年もつづいていた一党支配から政権交代になり、いろいろなことが新たに試みられるようになり、一種の維新である。ところが、やはり不平不満、反対、反発が新聞であおられている。今度の政権交代はたんなる政権政党が変わったというだけでなく、官僚政治をやめる、政官財の癒着を絶つ、財政を再建する、国民の目線たった政治などやるべきことが山積している。日米地位協定の見直しなども大きなテーマだ。鳩山首相がすこしリーダーシップがないかもしれないが、明治政府は初めからリーダーシップがあったかどうか。新聞、テレビが内閣への攻撃ばかりして、また元に戻そうとするのは、ちょんまげ懐かし、廃刀令反対の気がないと言えるだろうか。ベクトルが違っているのではないか。とくに論説委員の古顔の人は、何十年か前の思い出話、印象主義的な文章ばかり書いて、感覚が古くなっている。封建時代の家老衆のような気がする。
2010/05/08
強者との交渉には自他を追い込むというやり方がある。鳩山首相にとっての強者とはアメリカであり、日本の国民である。またマスコミであり、野党である。鳩山さんはこの手を使って賭けを打とうとしている。まれに見る知恵者だ。まず、この交渉は、はじめからアメリカは簡単に呑むとは思えない。また県外に移設する可能性は日本国中みな反対だからまず不可能であることは予想ずみであった。沖縄ももうノーであることははっきりしている。ではどうしたらいいですか。鳩山さんは断られることは百も承知で沖縄にいった。当然、断られた。徳之島もすごい反対運動でもはや入り込むスキはない。60年代、砂川でも内灘でもアメリカの基地反対闘争がものすごく盛り上がった。アメリカは困って、演習地を沖縄に集中した。このことをアメリカと国民とマスコミにわからせるために鳩山さんは動いているのだ。メディアをつかって劇場型政治をしているのだ。5月末までに決着するとなると、アメリカにグアムに退いてもらう交渉をする以外にない。日本の国民にこれでいいのですか、そうしますよ、いよいよ安保見直しに一歩踏み出す時期がきたのですよ、とだめ押しをしようとしているのだ。沖縄に全部押しつけようとしているのはずるすぎますよ、と告発しようとしているのだ。反対運動が熾烈であればあるほど、マスコミがそれを伝えればつたえるほど鳩山さんにとってはやりやすくなるのだ。マスコミも反対ばかりしてもどうにもならない手詰まり状態にきて、筆が鈍っている。鳩山さんは5月末でまとまらなかったら辞任するだろう。あとの首相はどうするのか。まさか沖縄県民を警察力を使って弾圧してでもやれるのか。誰もそれはやれない。国民がそのときに決める以外にない。
2010/05/05
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