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かなり、遅ればせながら、ようやく「ごくせん」の第2回目のレビューである。旅空の下、宿のテレビで観たのだが、色々忙しかったので、書くのがだいぶ遅くなってしまった。 相変わらず、3-Dはバラバラ。やっぱり緒方と風間は張り合っている。ヤンクミがクラスをまとめようとして発案したカンケリも生徒たちから無視されてしまう。ヤンクミ、どうしてそんなにカンケリにこだわるんだ? 今回は、緒方が、街の不良どもといざこざを起こし、助けに行った風間たちといっしょにボコボコにされているところに、ヤンクミが救出に出てくる。これで、何とか生徒のうち6人の調教いや教育の見通しがついたようだ。でも、まだまだ、3-Dには問題児がいっぱい。毎回不良どもといざこざを起こさせ、ヤンクミが助けに行くのか?第一シリーズから、いろんなワルたちが出てくるが、この街には、いったいいくつの不良グループがあるんだろう。 ところで、大江戸一家って、子分が4人しかいないようだが、「目高組」以上の弱小一家なのか。 一番おいしい役だったのは、かっての生徒役の中で、シリーズを通じて唯一のレギュラーになっている熊井。いつの間にか、かわいい奥さんをゲットしている。でもヤンクミに世話になったのなら、結婚の報告くらいしておけと思ったのは、私だけ?(原作)・森本梢子:「ごくせん」(出演)・仲間由紀恵(山口久美子)・星野亜希(鮎川さくら)・生瀬勝久(猿渡五郎) ほか○応援クリックお願いします。 ○「ごくせん」の公式HPはこちら「ごくせん」(森本梢子:集英社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 30, 2008
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斎王(さいおう)とは、かって、天皇の代理として、伊勢神宮に使えた皇女である。天皇の代が変わるごとに、皇族の姫君の中から選ばれ、伊勢に派遣されたと言う。この斎王が住んでいたのが、三重県多気郡明和町にあった斎宮(さいくう)寮である。 斎王となる皇女は、大極殿で、発遣の儀を行った後、葱華輦(そうかれん)という輿に乗って、5泊6日の行程で、伊勢に向かった。この途上で、宿泊した仮の宿が頓宮であるが、ほとんど実態は解明されていない。唯一、その存在が確認されているのが、滋賀県甲賀市土山町にある垂水斎王頓宮跡で、現在は国指定史跡となっている。 この、垂水斎王頓宮を舞台にした浅見光彦シリーズの旅情ミステリーが「斎王の葬列」(内田康夫:新潮社ほか)である。光彦の高校時代の友人白井の主催する劇団である、「東京シャンハイボーイズ」が、この斎王をテーマにした映画・「斎王の葬列」の撮影のため、土山町を訪れていた。ところが、もと劇団員で、木材会社の役員である長屋明正が青土ダムで死体で発見される。さらに、撮影に使う輿野中で、劇団の経理を担当している塚越綾子が殺されていた。二つの死体の近くには不気味な人型代があった。光彦は、白井の依頼で事件を調べ始める。事件の背後には、三十年以上も前の悲しい因縁と、これがが原因で起きた悲恋があった。 この作品も、内田氏の好きな?、過去の因縁が、現代の殺人事件につながっていくというパターンである。最初は、どういう関係か分からなかった登場人物の間を結ぶ因果の糸が、次第に明らかになってきて、最後は、いつもの光彦流の解決を促している。○応援クリックお願いします。 「斎王の葬列」(内田康夫:新潮社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 29, 2008
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昔から、「知的生活」というものにあこがれがある。現実は、仕事や日々の雑事に追われて、なかなか思うようにならないのだが、少しでも自分の生活を「知的」にしたいといつも願っている。このブログも、少しは、そんな期待を込めて続けているのだが、まだまだの感がある。大分前に、哲学者・梅原猛氏の本で知ったニーチェの言葉によれば、人間は最初はラクダのように、ひたすら思い荷物を背負って進む。次に人はライオンとなり、ドラゴンに戦いを挑む。最後に人間は赤子となって無邪気に想像を続けるということだ。この歳になっても、未だに、ラクダの状態が続いているが、せめて、ライオンの段階くらいにはなりたいと色々と模索しているところだ。 そんな訳で、「知的生活」という言葉は、ちょっと気になる。たまたま、古書店で「365日の「超」知的生活」(野口悠紀雄:三笠書房)という本を見つけて、買ってみた。 内容であるが、第1章は「仕事の技術」で、整理法や情報収集の方法、メモの技術などが述べられている。第2章は「『超』整理手帳の活用法」で「『超』整理手帳」のPRのようなものだ。第3章は「時間をめぐる3人の哲学」で、「哲学」というと大げさだが、スケジュール管理や整理法などについての座談会風景である。第4章は、「日本の『知』の最先端をゆく」で、要するにインターネットの活用についてであり、第5章は「無敵の『超』用語辞典」で、要するに用語集である。 この手の本は、結構読んできており、また発行も10年前ということで、そう目新しいことは多くなかったが、「押し出しファイリング」の考え方などは、仕事でも、日常生活でも活用できそうだと思った。○応援クリックお願いします。 ○「超」整理手帳 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 28, 2008
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東京都立木場公園に咲いていた八重桜。普通の桜の盛りは過ぎたが、八重桜は、まだまだがんばっている。「いにしえの 奈良の都の八重桜 けふここのへに 匂ひぬるかな」(伊勢大輔) という歌があったが、現代の東の都でも、八重桜は同じように咲き匂っている。 ○応援クリックお願いします。
April 27, 2008
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某ビルの9階から見た、東京都江東区木場あたりの風景である。木場の地名は、あちこちにあるが、貯木場があったことから付けられたようだ。ここは、隅田川の河口に設けられていた貯木場に由来している。また、宮部みゆきの時代物の舞台によくなっている深川の一部でもある。 ○応援クリックお願いします。
April 26, 2008
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メールで暫定更新していたものの正式版。暫定版にいただいたコメントは、まとめてコメント欄に貼り付けています。東京駅を丸ノ内側に出たところの風景。夕暮れ時で、ビルの明かりが綺麗。 ○応援クリックお願いします。
April 25, 2008
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不在中、メールで更新したものを正式にアップ。暫定版にいただいたコメントは、まとめて、コメント欄に貼り付けています。 以前「讃岐まんのう公園」で撮った写真だが、マリーゴールドにとまるタテハチョウの仲間である。裏側が分からないので、正確な種類は不明であるが、ツマグロヒョウモンのオスではないかと思う。ちなみに、このチョウは、メスの方が美しく、昆虫としては変わっているのではないかと思う。○讃岐まんのう公園の記事はこちら○応援クリックお願いします。
April 24, 2008
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かなり変わったミステリーを読んだ。「長い長い殺人」(宮部みゆき)である。なにしろ、語り部の役を担っているのが財布なのである。 宮部みゆきのミステリーは、これまでにも「パーフェクトブルー」のような、人間以外動物を主人公にした作品があった。しかし、今回は、生き物でもない財布である。題名から分かるように、この作品は殺人事件を扱ったミステリーであるが、犯人、刑事、被害者といった事件の関係者の持っている財布が語り部となって物語を作っている。小説で無生物が喋ると言えば、大体がコンピューターか、年月を経て付喪神になった物と決まっていたのだが、この作品では、普通の財布が、当たり前のように、物語を語っている、 しかし、財布の視点から物語を語らせるというのがどんな意味を持つのか、文学性に乏しい私には、必然性が良く分からない。この当たりは、評価が大きく分かれるところかもしれないが。 ところで、この作品のテーマは、最初は保険金殺人だと思ったが、そうではないことが次第に分かってくる。すると、結局何がテーマなのか。単に、世の中に危ない人がたくさん居るということだろうか? 犯人のめぼしは、早くからついているが、決定的な証拠がなかったり、新たなアリバイが出てきたりで、逮捕されそうで、なかなかそうならないというもどかしさがなかなか面白いのではあるが。○応援クリックお願いします。 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 23, 2008
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行政書士とは何かを知らなくとも、街で「行政書士事務所」の看板を目にした方は多いと思う。行政書士と言うのは、官公署に提出する許認可申請書類等だとか契約書や遺言書などの「権利義務、事実証明に関する書類」の作成などが仕事として(すなわちお金をもらって)行える、行政書士法という法律に基づいた、国家資格の一つなのである。実は、私も、かなり前に、この試験に合格している。昔はそうでもなかったと思うが、最近は、合格率も低く、結構難関の試験になっているようだ。 この行政書士を開業しているキャバクラ嬢が、身近に起きたトラブルを、その法律知識でうまく治めていくというのが、「「キャバクラ嬢」行政書士の事件簿(1)」である。キャバクラ嬢で行政書士という意外な取り合わせが面白い。表紙の著者紹介によると、作者の杉沢氏は、行政書士資格を持った、キャバクラ嬢ならぬバーのママでとのことなので、もしかすると、主人公に自分が投影されているのかなとも思ったりする。 さて、この作品、「事件簿」と銘打っているものの、別に殺人事件などは出てこない。お店で調子に乗ったお笑い芸人を懲らしめたり、債務整理を手伝ったり、遺言状を書いたりといった、法律が関係したエピソードを描いたものである。 法律についての知識が身につくだけでなく、キャバクラについても用語集がついており色々参考になるのではと思う(どんな点がと聞かれると、私も困るが(汗))。内容は、結構、明るく楽しく読めて面白かった。○応援クリックお願いします。 「「キャバクラ嬢」行政書士の事件簿(1)」(杉沢志乃/浅野幸惠:ゴマブックス) ) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 22, 2008
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法隆寺は、奈良の斑鳩にある、聖徳宗の総本山であり、世界最古の木造建築物としても有名であり、1993年には「法隆寺地域の仏教建造物」としてユネスコの世界遺産(文化遺産)にも登録されている。また、聖徳宗という宗派名からも分かる通り、聖徳太子ゆかりの寺としても知られている。 かって哲学者の梅原猛氏が「隠された十字架」で、この法隆寺が、聖徳太子の怨霊を祀った寺であるという説を発表して、大きな議論を呼んだことは有名である。事の真相は、未だ定かではないが、明治初期に岡倉天心とフェノロサが、夢殿に秘仏として保管されていた救世観音の封印を解いたエピソードに代表されるように、多くのミステリアスな謎に満ちた寺であることは間違いない。 この法隆寺に伝わる謎について解説した書が、「法隆寺の謎」(邦光史郎: 祥伝社) である。この本で提示されている謎は、1.法隆寺の中門の柱は怨霊封じのためか2.なぜ、五重塔の相輪に鎌がささっているのか。3.なぜ、金堂に、本尊が3体もあるのか。4.夢殿の救世観音は呪いの人型か。5.法隆寺の伏蔵には何が隠されているのか。6.なぜ、法隆寺の回廊は左右対称ではないのか。7.法隆寺は、誰がなぜ再建したのか。などである。本書には、これら謎が紹介されており、更に著者の考察が加えられている。また、聖徳太子天皇説や藤ノ木古墳についても章が割かれている。法隆寺へ旅行する際には、あらかじめ読んでおくと、一層興味を持って見物ができるのではないかと思う。○ジグソーパズル「法隆寺」 *おかげさまで、今朝は「にほんブログ村」の「本ブログ」部門の中の「読書日記」部門で1位になっていました。また、「本ブログ」部門全体でもベスト10に入りました。応援ありがとうございました。○応援クリックお願いします。 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 21, 2008
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昨日の土曜日の夜は、待ちに待った「ごくせん」を観ていた。日本テレビ系で、2002年の第一シリーズ、2005年の第二シリーズに続いて、3年ぶりに始まった第三シリーズの第1回である。仲間ファンとしては、絶対に見逃せないところだ。 今度の生徒たちは、赤銅学院高校のやっぱり3年D組。第一シリーズが白金学院、第二シリーズが黒銀学院だから、金銀銅と続いていることになる。ちょっと普通すぎてつまらない。金銀とくれば、次はパールと続けて欲しかった。(このネタが分かる人、いるかな?)○「ごくせん」DVD 今度のシリーズでは、赤銅学院高校の教頭に納まった猿渡が、自らの首のかかった3-Dの生徒対策のため、南の島からヤンクミを呼び戻すところから始まる。 ヤンクミの南の島での生徒、みんな外国人ばかりで、「いったいどこまで南に行ったんだ、ニュージーランド辺りまで行ったのか?」と思ったら、どうもインターナショナルスクールだということらしい。案の定、その学校も首になって、猿渡の誘いに、渡りに船といった感じで、東京へ戻り、赤銅学院の3-Dの生徒たちの担任になる。 相変わらず、ヤンクミは熱い。第一シリーズから数えて6年の歳月は、ヤンクミに一層の風格を与え、パワーアップさせている。タイトルのときに出てくる着物姿は、かなりの貫禄だ。ごくせんでなく極妻をやらせても良いくらいである。 ただ、基本的なストーリーはなんとなく読めるので、いかに前作、前々作と差をつけていくのだろうか。私は、別に仲間由紀恵が出ていればそれでいいのであるが、ファンとして、このドラマがこけないか、ちょっと心配である。 それにしても、仲間由紀恵や星野亜希が先生なんて、なんてうらやましい高校だろう。ところで、トリックの新作は無いのか?(原作)・森本梢子:「ごくせん」(出演)・仲間由紀恵(山口久美子)・星野亜希(鮎川さくら)・生瀬勝久(猿渡五郎) ほか○応援クリックお願いします。 ○「ごくせん」の公式HPはこちら「ごくせん」(森本梢子:集英社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 20, 2008
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判官びいきという言葉がある。ここで言う判官とは、源義経のことであるが、このような言葉が出来ることから分かるように、義経は、歴史上の人物の中でも、その人気はトップクラスであろう。 戦の天才で、平氏妥当を果たしたものの、兄の頼朝と反りが合わず、奥州衣川で悲劇の死を遂げる。しかし、義経の人気は、様々な伝説を後に残している。一番すごいのは、義経ージンギスカン説であろう。義経は、衣川を逃れて大陸に渡り、ジンギスカンとなったというのだ。高木彬光は、「成吉思汗(ジンギスカン)の秘密」で、名探偵神津恭介に、この説をうまく証明させている。 しかし、義経には似たような伝説がもうひとつある。やはり大陸に逃げ延び、清朝を起こしたヌルハチの祖となったというのだ。「義経幻殺録」(井沢元彦 :角川書店)は、この義経ー清祖説をモチーフにした歴史ミステリーである。義経ー清祖であることがはっきり書かれているという「玉牒天おう世系」を巡って、殺人事件が相次いで起こる。(「おう」の漢字が拾えなかったのでかな書きにした) この作品に出てくる登場人物がすごい。なんと主役を務めるのが、芥川龍之介なのである。そう「羅生門」や「蜘蛛の糸」などで有名なあの作家である。そして、龍之介と共に活躍するのが、江戸川乱歩の小説に出てくるあの人物である。中国読みにすると、ミン・ヂイと言う名になるらしい。さて、いったい誰か推理してほしい。その他にもロシアのロマノフ王朝生き残りとされるアナスタジア皇女も登場し、スケールの大きなミステリーになっている。「玉牒天おう世系」に関する謎解きは、まさに、「逆説の日本史」などの作者である、井沢氏の真骨頂発揮といったところだ。しかし、高木彬光の「成吉思汗(ジンギスカン)の秘密」のように、壮大な歴史上の謎を解明するのではなく、単に「玉牒天おう世系」の真偽についての謎解きとなっているのは残念であった。○「成吉思汗(ジンギスカン)の秘密」(高木彬光)の記事はこちら○応援クリックお願いします。 「義経幻殺録」(井沢元彦 :角川書店) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 19, 2008
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またまた、面白い漫画を見つけた。「ロザリオとバンパイア」(池田晃久:集英社)である。私の好きなコミックスの特徴をまとめてみると、中には例外もあるが、大体こんな感じだ。1.妖怪や超能力が出てくる。2.ヒロインがかわいいまたは凛々しい。3.ヒロインが強い。4.絵柄が綺麗。 今回は、この4つの条件がすべてそろっているので、一気に10巻まで揃えてしまった。徐々に紹介していくことにして、まずは第1巻である。 この物語の主人公は青野月音(つくね)という15歳の少年。高校を全部落ち、たまたま父親が拾ったチラシに書いてあった、私立陽海学園という高校に入学することになった。ところが、そこは、妖怪たちが、人間と共存するために勉強している学校だったのである。 月音は、入学早々、赤夜萌香という美少女とお友達になる。おっとりとしたかわいい少女だが、その正体はバンパイアで、胸のロザリオを外すと、もうひとつの人格が表に現れ、無敵モードになるのだ。このモードになると、姿かたちも銀色の髪、赤い瞳の凛々しい美少女に変わってしまう。どういうわけか、月音だけが、このロザリオの封印を外せるのだ。 学園生活は、サキュバスの黒乃胡夢に見初められたり、水泳部の人魚たちに襲われたり、入部した新聞部の部長である森丘銀影(実は狼男)に覗きの濡れ衣を着せられたりと、妖怪の学園ならではのエピソードでいっぱいである。しかし、中には、かなり危ない妖怪もいるようだ。果たして月音は、無事に学園生活を送れるのだろうか。○応援クリックお願いします。 「ロザリオとバンパイア1」(池田晃久:集英社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 18, 2008
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「願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」(西行) 「蓮丈那智フィールドファイルシリーズ」を読んで以来、北森鴻の小説が気になっている。冒頭に掲げた歌は、西行法師が詠んだものとして有名であるが、この歌から表題をとった北森氏の作品が「花の下にて春死なむ」(北森鴻:講談社) である。この作品は「香菜里屋(かなりや)」というビアバーに集まる常連客の身辺で起こった出来事を、マスターの工藤を中心に解明していくという連作短編のミステリー小説だ。1999年に第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞を受賞している。 表題作の「花の下にて春死なむ」では、フリーのライター飯島七緒が参加していた自由律俳句結社の同人である片岡草魚こと片岡正がひっそりとした死を遂げた。ところが彼の名前は偽名であった。彼は故郷である山口県下関市長府を離れ、40年も本当の名前を隠して生きてきたのだ。故郷に帰りたくても帰れず、本名を隠して生きなければならない。はたしてそこには、どんな事情があったのだろうか。七緒は、草魚の魂を故郷に返そうと長府を訪れる。 この作品では、草魚の人生の謎のほかにもう一つの謎が提示される。残された句帳に、窓際に置いた桜の小枝に花が咲いたとに記述があったが、その日付は、開花宣言よりだいぶ前であった。そこから、もう一つの別の事件の真相が導き出される。 孤独な草魚の人生の謎と、その孤独な人生の中に、偶然にも絡んできた別の事件の謎。この作品は、うまく二つの謎を調理して非常に読み応えのある短編にしている。 ところで、この草魚であるが、作品中では西行を思わせると書かれている。しかし、作者がイメージしているのは明らかに種田山頭火だ。西行は歌人であるが、山頭火は草魚と同じく自由律俳句の俳人であり、放浪の生活を送っていた。この作品中にも、山頭火風味の句がちりばめられている。表題の提示するもう一つの謎との関係であえて西行としているのだとは思うが。 この表題作の後も、以下のような謎が提示される。「家族写真」:地下鉄の駅の善意の本棚の小説に挟まれていた家族写真の謎。「終の棲み家」:写真家の個展のため、街中に貼ったポスターがすべて盗まれる。「殺人者の赤い手」:「赤い手の魔人」が小学生を襲うという伝説の謎。「七皿は多すぎる」:回転寿司屋で鮪ばかり7皿も食べる変わった客の謎 いずれも、面白く、決して途中で止められなくなるような傑作である。そして、最後の「魚の交わり」では、またしても、草魚の人生に絡んだ話となり、うまい締めくくり方になっている。○応援クリックお願いします。 「花の下にて春死なむ」(北森鴻:講談社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 17, 2008
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もう先週の日曜日になるが、近所の公園にお花見に行ったときの写真を遅ればせながらアップしよう。わんこのスーちゃんの散歩がてら、一家で弁当を買って出かけた。 桜は、ちょうど見ごろで、結構花見客が弁当を広げていた。それほど有名なところではないので、花見客でごったがえすというような状態ではなく、落ち着いて花見ができる。「公園の桜」 ついてでに、近くの県立広島大学の桜も撮ってみた。ここは元々は女子大だったのだが、県立大学が再編成され、新しい「県立広島大学」のキャンバスの一つとなった。「県立広島大学の桜」 ところで、スーちゃんのほうは、「花より団子」のようで、あまり桜に興味は無いようであった。「花より団子のスーちゃん」 ○応援クリックお願いします。 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 16, 2008
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ちょっと変わった小説を読んだ。恩田陸の小説としても珍しいが、通常の小説としても異色である。「ドミノ」(恩田陸:角川書店)という作品だ。なんと主役級の登場人物が27人と1匹も出てくるのだから。ちなみに1匹とはある登場人物のペットである。 この27人と1匹の登場人物に関するお話が次々に切り替わりながら、全体としての物語が進んでいくようになっている。題名をドミノとは良く付けたもので、まるで、ドミノ倒しのように、物語のピースが次々と倒れていき、最初は無関係に思えたそれぞれの人物に関する話が、しだいに互いに関連を持ちだし、やがて、一つの大きな事件に収束していく。 恩田陸というと、どうしてもミステリーやホラー風味の作品を思い浮かべてしまう。最初に珍しいと言ったのは、この作品が、どたばた風味のコメディタッチで書かれているということである。出てくる人物は、8000CCで500kgはあるバイクのバファロー号を操る、元暴走族のピザ屋の店長、彼が姉さんと慕う元レディスの保険会社OL、ミステリーファンの大学生たち、ホラー映画の監督、神社の神官の娘で「気」を操る映画配給会社のOLなど、個性的な連中が目白押しである。 それにしても、「・・ほんの少し前まで、腸や胃袋が裏返って肛門から出てきてしまうのではないかと思ったくらい断続的な激しい下痢に襲われて・・・」なんて表現、他の恩田作品には出ないだろうな。 ○応援クリックお願いします。 「ドミノ」(恩田陸:角川書店) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 15, 2008
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この時期は、愛犬のスーちゃんとお散歩に出ていても、色々な発見がある。こんな街中でも、良く観れば、色々な野草(雑草?)が綺麗な花を咲かせているので、いつものようにケータイで写真に収めてきた。 まずは、近所の空き地の縁の部分に生えていたキンポウゲ科の花。たぶん「キツネノボタン」だと思うのだが、違っていたらゴメン。「キンポウゲ科の花」 次は、タンポポに似ているが、「ハルノゲシ」。タンポポと違い、茎が長く伸びるのが特徴である。花も、タンポポよりはだいぶ小さい。「ハルノゲシ」 菜の花だって咲いている。さすがに都会では、一面菜の花畑というわけにはいかないが。「菜の花」 最後は、春の花の定番である。「スミレ」。時々、コンクリートの隙間などで成長しているど根性野菜がテレビで放映されることがあるが、都会では、スミレは、昔から、コンクリートやアスファルトの隙間で成長して花を咲かせる、ど根性植物である。「スミレ」 田舎では、ごくありふれた植物ばかりだが、ビルだらけの街中で見かけると、なぜかほっとする。 ○応援クリックお願いします。 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 14, 2008
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月曜日の夜は、TBS系の月曜ゴールデンで、「姫島殺人事件(浅見光彦シリーズ25)」を観ていた。沢村一樹が主演の方である。なにしろ、出張中のホテルで観たので、記事を書くのがすっかり遅くなってしまったが、ファンの義務?として、遅ればせながらも書いてみた次第である。 このドラマの原作は、内田康夫の同名小説である。原作の方は、当ブログの2007年09月13日付け記事に書いているので、そちらも参考にして欲しい。 ところで、姫島とは、大分県国東半島の沖に位置する孤島である。古い歴史の島で、かっては、車えびの生産日本一であったという。基本的なストーリーは、原作の方と同じで、姫島に代々続く庄屋の家のどら息子・属(さっか)優貴雄が殺され、更に、光彦の知人のカメラマン浦本智文の死体が島に流れ着く。どうも政治がらみの利権を巡ってきな臭い動きがある。光彦は、この二つの殺人事件の謎に挑むのである。ただ、原作の方は、利権が米軍基地移転問題がらみであったが、ドラマの方は、産廃物処理場問題に変えられている。利権のネタは色々とあるということであろうか。 このドラマのテーマは、利権を巡る不正と親子の情愛であるが、旅情ミステリーらしく、姫島の風物や耶馬溪、湯布院なども登場し、興味深く観ることができた。特に、番組で光彦が泊まった宿で出される車えび尽くしの料理は、よだれが出そうになる。 ところで、今回も光彦は、ヒロインにふられている。ヒロインの親が嫁にもらってくれと頼んだり、周りが勝手に盛り上がったが、肝心のヒロインには、まったくそんなふうに意識されていなかったようだ。(原作)・内田康夫 「姫島殺人事件」(監督)・ 山内宗信(出演)・沢村一樹(浅見光彦)・加藤治子(浅見雪恵)・村井国夫(浅見洋一郎)・浅見れいな(中瀬古朝子)・小野武彦(中瀬古大志) ほか○原作「姫島殺人事件」の記事は こちら○応援クリックお願いします。 「姫島殺人事件」(内田康夫:新潮社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 13, 2008
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東京の目黒に「目黒寄生虫館」という施設があるのをご存知だろうか。世界で唯一の寄生虫の博物館だそうだ。その名の通り、たくさんのグロテスクな寄生虫が展示されて、思わず身体が痒くなるような思いをするところだ。特に、長い長いサナダムシの標本は見ものである。私も昔1回だけ訪れたことがある。その頃は、閑散としていたのだが、近年は、少し様子が変わり、怖いもの見たさのカップルが、デートスポットとしてよく利用しているとも聞く。 この寄生虫館を建設したのが、寄生虫の世界的権威として知られた故亀谷了(かめがい さとる)博士である。「おはよう寄生虫さん」(講談社)は亀谷博士が、不思議な寄生虫の生態について、虫たちへの愛情たっぷりに書いた本である。 この本を読んだ後は、たとえば川魚を決して生では食べようとは思わなくなることだろう。肝臓ジストマを持っている場合があるのだ。美食家として知られた北大路 魯山人の死因も肝臓ジストマによるものだということは良く知られている。柳の葉のような肝臓ジストマが肝臓にびっしりと張り付いているさまは想像するだけで身の怪我よだつ。また、雷魚の刺身は美味だそうだが、これは顎口虫という寄生虫を持っており、体内に入ると、身体にこぶの様なものができて、それが動き回る。これも背筋が寒くなるような話だ。 寄生虫に興味を持つ人がいるというのも、なかなか理解できないことではあるが、このような人々の研究によって、昔は恐ろしい風土病とされたいた寄生虫病の解明が進み、多くの人が救われたのである。中には、自ら寄生虫の卵を飲み込んで実験を行った人もいるとのことであり、ただただ頭が下がる思いである。○応援クリックお願いします。 「おはよう寄生虫さん」(亀谷了:講談社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 12, 2008
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先般紹介したコミック版が案外面白かったので、原作の小説版を買ってみた。「精霊の守り人」(上橋菜穂子 :新潮社)である。主人公は女短槍使いのバルサ。小説の冒頭に、このバルサの風貌を描写した部分があるので、引用してみよう。「バルサは今年三十。さして大柄ではないが、筋肉の引き締まった柔軟な身体つきをしている。長い油っけのない黒髪をうなじでたばね、化粧一つしていない顔は日に焼けて、すでに小じわが見える。」 かなり異色のヒロインである。普通ヒロインは、見目麗しい美女と相場が決まっている。小じわのあるヒロインなんて始めてだ。(笑)しかし、読んでみると、そんなことは、まったく気にならないほど面白い。 この作品は、壮大なサーガを織り成す「守り人」シリーズの第1巻に当たり、元々は児童文学として書かれたものらしい。それをまず、年長者向けの軽装版にし、更に大人向けの漢字が多い文庫版にしたということであるが、読んでいて、児童向けの物語と言う感覚はほとんどしない。 少し内容について触れよう。舞台は、新ヨゴ皇国。用心棒を生業とする女短槍使いのバルサは、たまたま皇子チャグムを助けたことから、彼の母親であるヨゴ皇国の二の妃から、チャグムを守るように頼まれる。新ヨゴ皇国の建国者が倒したはずの水妖がチャグムに取り付いたために、父帝から命を狙われているというのだ。バルサはチャグムをつれて逃げるが、皇国の聖導師によって差し向けられた「狩人」たちが彼女らを追う。しかし、その建国物語には大きな誤りがあった。本当の脅威は別のところにあったのである。歴史とは、常に強者に都合が良いように伝えられるということであろうか。 また、この物語は成長の物語でもある。ひ弱な皇子様だったチャグムは、バルサとの暮らしの中で大きく成長する。また、バルサ自身も、チャグムを鍛えることによって、かっての師の気持ちが理解できるようなる。 ところで、バルサは、小じわはあるが(こだわるな!)、魅力的な女性ではあるようだ。その証拠に、彼女が小さい頃からの友人であるタンダはバルサのことを好きなようで、チャグムにからかわれているのが面白い。○応援クリックお願いします。 「精霊の守り人」(上橋菜穂子 :新潮社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら○関連ブログ記事・苗坊の徒然日記・Bookworm・香桑の読書室
April 11, 2008
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広島から益田に向かう道は、途中から高津川に沿って続く。高津川は水源までダムのない珍しい川だ。「今日今日とわが待つ君は石川の貝に交じりてありといはずやも」 歌聖柿本人麿の妻依羅娘子が、高津川に沈んだ人麿を偲んで詠んだと言われる歌である。 なお、この高津川は、水質日本一に選ばれているとのことである。 ○応援クリックお願いします。
April 10, 2008
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(先般メール更新したものをベースに変更を加えたものです。)益田駅付近の夜景。高いビルも無く、煌めくネオンも無いがそれなりに綺麗。 ちなみに、まだ明るいうちは、こんな感じ。○応援クリックお願いします。
April 9, 2008
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(先般メール更新したものをベースに若干変更を加えたものです。)今日はメールで更新。写真は、JR益田駅。山陰本線から山口線が分岐する駅だ。益田市は、島根県西部に位置する人口約5万人の地方都市である。歌聖柿本人麿のゆかりの地としても知られ、雪舟作と言われる庭園もある。 ○応援クリックお願いします。
April 8, 2008
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金曜の夜は、日本テレビ系列の金曜ロードショーで「トゥームレイダー2」を観ていた。2003年のアメリカ映画である。元々はコンピュータゲームであったが、2001年に第1作目が映画化され、今回放映だれたのが、その続編にあたる。 今回、ララ・クロフトが追うのは、ギリシア神話に出てくるパンドラの箱。開けると、この世のあらゆる災厄が出てくるというあれである。 内容をかいつまんで説明すると、ララ・クロフトは、海底に沈んでいたアレキサンダー大王の神殿で、パンドラの箱のありかを示す地図となるオーブを発見したが、突然の襲撃でそのオーブを奪われてしまう。ララは元恋人の傭兵・テリーとパンドラの箱の行方を追って、中国からアフリカへと、壮大な冒険を繰り広げるというもの。 それにしてもララは強すぎる。海底神殿から脱出するときなど、襲ってくるサメをワンパンチでひるませ、背びれにつかまって脱出しているくらいだ。そのぶん色っぽさには少し欠ける。なにぶん、最初から最後まで、派手に銃をぶっ放しているシーンだらけなのである。 ところで、余談ではあるが、ララとテリーが、敵から逃れるため、高いビルの上からムササビスーツを着てダイブするシーンがあったが、あの空中を滑降する形が、時々テレビで話題になるUMA(未確認動物)の一つであるフライング・ヒューマノイド(Flying humanoid)に良く似ているんじゃないか。もしかするとフライング・ヒューマノイドの正体はムササビスーツで空の散歩を楽しんでいる人だったりしてとついつまらないことを思ってしまった。。 最後の方は、エイリアンもどきのようなものがたくさん出てきて、それまでのアクション物から、一転モンスター物に趣が変わっていたが、あのモンスターの正体は、一体なんだったんだろう。(監督)・ヤン・デ・ボン(出演)・アンジェリーナ・ジョリー(ララ・クロフト)ほか ○応援クリックお願いします。 ○「トゥームレイダー」のDVD (追伸)○本日から出かけますので、コメントのお返事等は帰ってからになります。宜しくお願いします。風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 7, 2008
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益田駅付近の夜景。高いビルも無く、煌めくネオンも無いがそれなりに綺麗。
April 6, 2008
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今日はメールで更新。写真は、JR益田駅。山陰本線から山口線が分岐する駅だ。
April 6, 2008
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「ながむとて花にもいたく馴れぬれば散る別れこそかなしかりけれ」 西行法師 広島市でも桜がいっせいに咲き出した。外を歩いていても、楽しい季節である。近所の桜をケータイで撮ってきた。 まずは公園に咲いている紅白の桜。片方は普通の淡い桜色で、もう片方は濃いピンク色なのだが、ケータイの写真では分かりにくい。 遠くからだと、何の花か分からないので、花だけのアップも載せよう。この通り、確かに桜だ。(場所は違うところだが) ついでに、フラッシュを焚かずにケータイで夜桜を撮ると、こんな感じになる。 でも、この桜、あっというまに散ってしまうんだろうな。はかないことだ。 ○応援クリックお願いします。 ○桜の苗色々 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 6, 2008
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タキオン(tachyon)と言う言葉をSFファンなら、一度は聞いたことがあるだろう。光よりも早く動く粒子のことであり、1960年代にアメリカの物理学者ジェラルド・ファインバーグが提唱したものである。光より早く動くのであるから、SFの世界では格好の材料になるのだ。このタキオンについて解説した講談社のブルーバックスのうちの一つが「超光速粒子タキオン」(本間三郎)である。 しかし普通の物質は、相対性理論によれば、決して光速を超えることはできない。なぜなら、通常の物質は光速に近づくにつれ、質量がどんどん大きくなり、遂には無限大になってしまうからだ。タキオンは、発生したときから光速以上の速度で動いてる粒子なのである。そのうえ、マイナスのエネルギーを持って時間に逆行して進み、エネルギーを失うほど速度が速くなるという、色々変わった性質を持っているのだ。 ところで、科学の世界には、因果律というものがある。因果律と言うと難しく聞こえるが、原因があって、初めてその結果があるという、当たり前の話である。決して結果が起きてから原因が発生することはない。しかし、タキオンが過去に向かって進むと言うことは、因果律を破る可能性があり、再解釈原理というものが考えられた。再解釈原理とは、マイナスのエネルギーを持って時間に逆行するタキオンは、プラスのエネルギーを持って時間を順行する反タキオンとみなせるというものだ。少し苦し紛れという気がしないでもないが。 タキオンの検出には、これまでのところは成功していないようだ。結局のところ、タキオンとは、光速という鏡に映った、虚像のようなものなのかもしれない。○応援クリックお願いします。 「超光速粒子タキオン」(本間三郎 :講談社)(追伸) ネットで調べてみると、このタキオンが、どういうわけか健康にいいという説があり、グッズもでているようだが、上記の通り、未だ存在を証明できていないものである。あるかないか分からないものに対して、健康にいいとか悪いとか言うことは、ナンセンスとしか言いようがない。風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 5, 2008
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今日は久しぶりに「灼眼のシャナ5」(高橋弥七郎:メディアワークス/角川GPメディアワー)である。やっと5巻まで来たが、このシリーズ本編だけで16巻まであり、更に番外まであるので、果たして最後まで読めるかどうか・・・ それはさておき、この物語は、人間の存在の力を食らって世界のバランスを乱す紅世の徒(ぐぜのともがら)”と戦うフレイムヘイズのシャナの物語である。フレイムヘイズとは、紅世の徒が世界を乱すことに憂慮した強大な力を持つ「紅世の王」と契約して強大な力を持つようになった者たちである。 第5巻は、シャナがいかに「炎髪灼眼の討ち手」たるフレイムヘイズになったかの物語、そして、いかに、愛用の大剣「贄殿遮那」(にえとののしゃな)を手にするようになったかの物語である。おっと、もう一つ、いかにしてシャナがメロンパンを好物とするようになったかの物語でもあった。 今回は、色々な登場人物が出てくる。敵である、紅世の徒”琉眼”ウィネ、紅世の王”千征令”オルゴン。味方である、紅世の王”夢幻の冠帯”ティアマトー、シャナの養育係だったフレイムヘイズ”万条の仕手”ヴィルヘルミナ。そこに、紅世、フレイムヘイズに関わらず強者を襲う最強のミステス”天目一個”がからんできて、その戦いの中で、シャナがフレイムヘイズとして生まれ変わるのである。 この巻では、シャナには前任の「炎髪灼眼の討ち手」たるフレイムヘイズが居た事が明らかになる。そのフレイムヘイズをヴィルヘルミナやシャナに戦いを教えた紅世の王”虹の翼”メリヒムがいかに愛していたか。そのフレイムヘイズとの約束を果たし、シャナとの最後の戦いで存在の力を使い果たし消えていったメリヒムには感動する。 ○応援クリックお願いします。 ○「灼眼のシャナ4」の記事はこちら「灼眼のシャナ5」(高橋弥七郎:メディアワークス/角川GPメディアワー)風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 4, 2008
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最近は、あまりニュースを聞かなくなったが、狂牛病という病気が、世界を騒然とさせたのは記憶に新しい。元々は羊の病気であったが、羊の肉骨粉を飼料にしたことで、牛にも感染した。そして、そのした牛を食べた人間にも感染する可能性があるという。発症すると、脳がスポンジのようにスカスカになって死に至るというのだから、わが国でも大騒ぎになった。 この狂牛病の病原体は、現在のところ、異常型プリオンタンパク質であるという仮説が有力視されている。プルシナーという学者はこの説を唱え、ノーベル賞を受賞している。これに対して、真っ向から疑問を投げかけているのが、「プリオン説はほんとうか」(福岡伸一:講談社)である。著者の福岡氏は、青山学院大学の教授であり、大ベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」を書いた人としても有名である。 私は、この方面の専門家ではないが、異常型プリオンタンパク質が病原体であるということには違和感を感じていた。プリオン説によれば、異常型プリオンタンパク質が脳内に入ると、正常型プリオンタンパク質を、次々に異常型に変えていくという。しかし、遺伝子情報を持っていないタンパク質が、どのようなメカニズムで、自分と同じものを複製していくのだろうか。そのイメージがまったく想像できないである。 ところで、病原体を特定するには、「コッホの3原則」という3つの基準があると言う。本書中から引用してみよう。1.その病気にかかった患者の病巣から、その病原体が必ず検出できる。2.単離精製された病原体を健康な個体(実験動物)に接種すると、その病気を引き起こすことができる。3.病気になったその個体の病巣から再びその病原体を検出できる。 このうち第2条項も第3条項も未だ証明されてはいないとのことだ。最近の知見によれば、むしろ未知のウィルスが病原体だと仮定した方が、プリオン説だと説明ができないことをうまく説明できると言う。確かにこの本を読む限り、ウィルス説に納得のいくことが多く、それは、先に述べた私の素朴な疑問に対しても、うまく答えてくれるのである。 病原体が何かを完全に特定できなければ、狂牛病の本当の対策はできない。どんなに権威があろうと、完全に証明されるまでは仮説にすぎないのである、今後の食料政策にも大きな影響を及ぼしかねないことであり、最優先で解明しなければならないことの一つではないだろうか。○応援クリックお願いします。 「プリオン説はほんとうか」(福岡伸一:講談社) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 3, 2008
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以前このブログで、全部で3巻からなる「蓮丈那智フィールドファイルシリーズ」を紹介したが、その作品中に、冬狐堂という美人旗師が登場していた。旗師というのは、店舗を構えない古物商のことのようだが、その旗師・冬狐堂こと宇佐見陶子を主人公にした小説が「緋友禅 旗師・冬狐堂」(北森鴻:文藝春秋)である。 この作品も短編集であり、4つの話から構成されている。蓮丈那智のシリーズでは、民俗学とミステリーが融合した作品だったが、この「緋友禅」は骨董とミステリーが結びついた作品である。もっとも、骨董の世界と民俗学の世界は、関係が深いためか、蓮丈那智シリーズと大きく味わいが変わっているものではない。ただし、陶子は色々な人の協力はあるものの、基本的には一人で行動するので、蓮丈那智シリーズの三國のような下僕キャラは出てこないのがちょっと寂しい。(笑) 収録されている作品は以下通り。●陶鬼 陶子の師匠ともいえる弦海礼次郎が自殺する。彼は、萩焼の無形文化財の保持者久賀秋霜の遺作を壊してしまったという。彼のようなプロが、どうしてそのような不始末をしでかしたのか。●「永久笑み」の少女 堀り師・重松徳治が陶子の元に持ち込んだ、完全無欠な少女像の埴輪。その重松が亡くなった。重松の孫娘は2年前に失踪していた。重松が埴輪を持ち込んだ意図とは。●緋友禅 陶子がたまたま入った久美廉次郎という男のタペストリー展。その緋色に魅入られた陶子は、すべての作品を買い込む。ところが久美が死亡し、作品は陶子の元に届かなかった。ところが、久美のタペストリーと同じ模様の友禅の作品展が開催される。●奇縁円空 陶子のところに持ち込まれた円空仏。かって円空仏を巡って起きた事件の因縁による殺人事件。果たして鬼炎円空とは。 こちらも、蓮丈那智のシリーズと同じく色々面白い話題を提供してくれる。「緋友禅」での「かけはぎ」の知識や「奇縁円空」での円空の正体に関する考察など、非常に興味を持って読むことができた。もちろん肝心のミステリーの方も良く練られていて読み応えがある。○「蓮丈那智フィールドファイルシリーズ」の過去記事・「凶笑面」の記事はこちら・「触身仏」の記事は こちら・「写楽・考」の記事はこちら○応援クリックお願いします。 「緋友禅」(北森鴻:文藝春秋) 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 2, 2008
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土曜日の夜は、テレビ朝日系で「クレヨンしんちゃん」に続いて、土曜ワイド劇場で「100の資格を持つ女」というドラマを観ていた。通常ドラマは特定のものしか観ないのだが、題名が題名だけに、資格についての専門家を自認する風竜胆としては、これは観なくてはと思ったわけである。 警察の事務職員である西郷美千花はバツイチで2人の子持ちのため、リストラにあってもあわてないように不動産鑑定士を初めとした色々な資格を持つ資格マニアであった。刑事課への配属早々、時刻表検定の知識を活かして犯人のアリバイを崩して小山田を初めとする刑事課の面々を驚かせる。ある日、小山田が乗ったことのあるタクシーの女性ドライバーが不審な死を遂げる。果たして他殺か、自殺か?彼女は、娘を歌手にするため、資格を取ってもっと収入の良い仕事に転職を目指していたのだ。彼女が最後に電話していたのが、娘がオーディションを受けたレコード会社の専務であった。美千花は、秘書検定の資格を持っていたため、秘書としてそのレコード会社に潜入するように頼まれる。 最初のエピソードを観て、資格を活かして事件解決する話なのかと期待が持てたが、この後は、資格はお飾り程度の扱いで、必ずしも期待していたものとは違った。資格を持っていることが、事件の活躍に明確に役立っているようなストーリーの工夫が欲しいものだ。 しかし、出て来る資格、不動産鑑定士以外には、かなりマニアックなものが多い。どう見ても、時刻表検定や音楽検定などは、あまりリストラ対策には役立ちそうにないと思う。不動産鑑定士も、不動産と関係のない職業にフルタイムで従事していては、資格取得に必要な実務などができないので、制度上まず取れないと思うのだが。 また、公務員は兼業禁止のはずである。公に出来ないからといって、事務職員である美千花に、「有給にしてやるから給料が両方からもらえる」と言って潜入操作を頼んでも良いのかとも思ったが、いちいち突っ込んでいたら、大半のドラマは観れなくなるだろうのでこの辺でやめておこう。 (監督)・吉川一義 (出演)・渡辺えり(西郷美千花) ・草刈正雄(小山田雄策) ・伊藤かずえ(水島みゆき) ほか ○応援クリックお願いします。 「すごい検定258」(中村一樹監修:テクスト/興陽館)風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら
April 1, 2008
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