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高論歩刑事事件帳 2 山里の奥、最後のコンビニ。村にセブンイレブンが出来た時には、みんな喜んだ、町までいかないとスーパーもない村だったので、大抵の者は便利になったと、歓迎した。 地域の高齢者もコンビニで買い物をすることが多くなっていたし、此処へ来れば、誰かと会える、店横に置いてあるベンチで、一服したり、饅頭や煎餅をたべながら、世間話をしている風景が日常になっていた。 山を越えて隣の町まで続く県道に沿っていたので、ドライバーやサイクリング、観光客も立ち寄り、結構賑わっていた。 そのコンビニから、万引き犯捕えました。という、通報を受けて、丁度手の空いていた、高論歩刑事と駐在の丸田丸吉が出向くことになった。 高論歩刑事は万引き犯に対しては厳しい態度で臨むのが常であった。村外の者には特に厳しかったが、地元の住民に対しては配慮していた。小さな村なので、万引き犯だと解れば、村八分になりかねない。 だから、村人の万引き犯を逮捕すると、コンビニの女オーナーに、ウインクをして、人目を避けて分署へ連れて行き、三時間も説教し、必ず、家族を呼んで引き取らせる。大概は、中学生か高校生だったが、「今度、やったら、村中にばらすぞ!お前だけじゃない、家族もここに住めなくなるぞ!」と、脅しもした。考えようによっては優しい対処だったともいえる。 チッチッチッと、舌を鳴らして、高論歩刑事は店内に入った、レジの横を通り抜け、六畳ほどの、事務所に入った。オーナーの鈴木清美と白髪まじりの親爺と、そのかかあらしき女が対座していた。「よっ!」と、高論歩刑事は軽く左手を挙げて、その初老の男の前に椅子を引き寄せて座った。「義春さんがやったのか?」 オーナーの清美は濃い化粧の匂いを部屋中に撒き散らしながら、「そうねんですけどねえ、店の者が捕まえたわけじゃないんですよ、自首してきたんです」 その男は山田義春で高論歩刑事も見知っていた。この辺りには山田という名字が多く、皆、屋号と、下の名で呼んでいた。爺さんが桶屋をやっていたから、桶屋の義春が通称だった。 桶屋の義春は、セブンイレブンに二日に一度はやってきて、若葉という煙草二箱と、ゴボウサラダが定番で、そのほかにも、あんぱん、煎餅などを、買う常連さんであった。「何を万引きしたんだい」「へえ、たしか、向こうから勝手にあっしのポケットに入って来たらしいんですがねえ、ワンカップとライターと、菓子とガム、多分、そんなところで」ぼやっとした濁った眼で老人は答える。「刑事さん、よく覚えていないのが問題なんですよ、買い物をして家に帰ってくる、すると、ポケットからレシートに記載されていないワンカップやライターが出てくる、饅頭がでてくる、この間はガムでした」女房のウメが困り果てた表情で高論歩刑事に訴える。「刑事さん、呆けて商品を持ってきても、万引きになりますよね、罪になりますよね、このひと、このごろ呆けてきたんですよ、この間は、メガネをしたまま顔を洗って、パンツは見えないからいいんですが、セーターも裏返しの後ろ前に着たりしてましてね」「ウメ、おれは呆けちゃいねえよ、そりゃあ、もの忘れも、ドジをふむことも増えたが、まだまだ、頭はしっかりしてる。なんてたって、公民館の俳句では金賞もらったんだ」 チッチッチッ、高論歩刑事の前に大きな難問が降りかかってきていた。オーナーの鈴木清美も、どう対処したらいいのか、迷っていた。「じつわね、高論歩刑事さん、今回と似たような万引き事件がつい、この間あったんですよ、あっ、こちらで解決したので、警察には連絡しませんでしたけれど、そこの傘屋の聡子さんの二歳になったばかりのお孫さんがね、両手にお菓子を抱えて、にこにこしながら帰って来て、ばあちゃん、お菓子いっぱいあるよ、ばあちゃんの大好きなえびせんもあるよ、食べようね、と嬉しそうに言っだけどね、それ、どうしたの?と聞いたら、セブンイレブンにいっぱいあったもん、と( ^)o(^ )して、答えたそうよ、私も、怒れませんでしたねえ、自首してきて、弁償してもらえれば、私どもは充分なんですけど」 桶屋の義春はぺこぺこ頭を下げて「弱ったもんだね、ほんとに万引きしたんだろうか、よく覚えてねえしねえ、ガムの方から、かってにポケットに入ってくることもねえだろうしな、とにかく、刑事さん、コンビニに出入り禁止にされちゃ、みんなと会えなくなっちまうし、煙草を買いに行くのも遠くになるし困っちまうんだよな」「なに呑気なこと言ってるんだい、あんたは犯罪者なんだよ、立派な泥棒さ、刑務所で頭を冷やしてくるがいいさ」ウメは情けないやら悲しいやらくやしいやら、涙を浮かべていた。「本当はね、立派な犯罪なのだが、どうやら、少しは呆けが混ざってるようだ、罪には問えないなあ、今回は無罪放免だ」 チッチッチッ、高論歩刑事は納得できていないような舌鳴らしをしながら、コンビニを出た。「丸田丸吉巡査、義春さんねえ、呆けたふりして、またやるかもしれないから注意してくださいね」「ボケ万引きには注意ですね!」 丸田丸吉巡査は敬礼をして、高論歩刑事を見送った。つづく 朽木一空※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.30
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しとしとと霧雨煙る 湯の宿で君を想えば揺れるにごり湯作:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.27
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ぶよぶよの残り柿皺皺の柚子鳥さえ見向かず寒風に晒され揺られ朽ち落ちていくそれを見て 老人が嗤っているよいしょっと腰上げ歩き出す寒気が頬を叩いて萎んでいた身体をしゃきっとさせる襤褸布のような ぼろぼろの汚れた過去 つたない思い 借り物の考え 拾い集めて 継ぎはぎしても散葉が「恥」と言う字を書いて冬空で嗤いわあああ、頭を掻き毟って喚いてみても 嘘の臭い 嘘の臭い作:朽木一空※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.23
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幼いひろし君が祖母と一緒に住んでいた杉並の実家はとても古かった。もちろん戦前の建物なのだが、二階建ての二軒長屋で、正面が甲州街道に面していて、裏側は低い斜面になっているため地下室も備えていた。もっとも正面から見れば地下室でも裏側から入れば一階なのかもしれない。従って観る方角によっては、三階建ての建物と言っても間違ってはいないだろう。 この地下室もどきは、戦争中に米軍の空襲があると、防空壕代わりの隠れ場所になっていたという。また一階にある台所の屋根は、一部がくり抜かれてガラス張りになっていた。この天窓は家の中から空襲の様子を観るために必要だったらしい。 すでに戦争はとっくに終わっていたので、この天窓を塞げばよいのだが、お金がかかるのでそのまま放置されていた。そのために大雨の時はその天窓の隙間から雨漏りがひどく、天窓の真下に洗面器やたらいを置いたものである。 当然古い家なので、地下室はネズミの巣窟で、天井裏はいつもネズミの運動会状態。ひろし君はときどき、台所の棚の上や流し場の中ではしゃぎまわっているネズミに遭遇したことがある。小さなひろし君にはネズミはそれほど怖くはなかったが、だからと言って余り好きにはなれなかった。だが祖母は全く気にしない。「枕元に置いた入れ歯を、夜中にネズミが舐めていたとよ」と言って笑っていたものである。150cmにも満たない小さな祖母だが心臓は豪傑級であった。 ネズミよりもっと怖かったのが、物干しのある屋根と便所の床だった。物干しのある屋根とは前述した天窓があるトタン屋根で、その上にボロボロの物干しが乗っかっているのである。物干しの高さは実質三階なので、墜落したら大怪我することになる。それにこのボロボロの物干しは、危険だということですでに使っていないのだ。だから新しい物干しは、陽当りの良い甲州街道沿いの屋根の上に新設されていた。またこちらから落ちても二階なので裏のボロボロの物干しのように大怪我には繋がらない。 だからひろし君はいつも祖母から、裏にあるボロボロの物干しには乗ってはいけないと注意されていた。だがダメだと言われると乗ってみたくなるのが子供心であった。それに二軒長屋の隣の家に住んでいる年上のしげちゃんの部屋に行くには、この屋根を伝ってゆくのが一番便利なのだ。 そのときに直接屋根を歩くと、バリンバリンという音がして、屋根が抜けそうになる。それがとても怖かったのである。恐ければよせばいいのだが、怖いもの見たさだったのであろうか。しげちゃんの家にはこの屋根伝いルートが定番になっていた。 それからもうひとつ。便所の床もミシミシと音がして、今にも床が抜けそうで、安心してゆっくりと用が足せなかった。何と言ってもこの便所は実質二階にあるのだから、便壺に落ちたら大変なことになる。それに祖母からは「古本屋のまあちゃんは、小さいときに便壺に落ちて、一階にある汲み取り口から助けられたけれど、誰も気が付かなければウンコの中で溺れて死んだかもしれない」と言う話を何度も聞かされた。だからこの便所が怖くて怖くて仕様がなかったのである。 なんとこのボロボロ実家は、今でも甲州街道沿いに存在しているのだ。ひろし君が住んでいた時でもボロ屋だったのに、それから半世紀以上も経過しているのだから、存在していることそのものが奇跡である。だから、遠くから来てこの珍しいボロ屋を撮影してゆく人々が後を絶たないという。作:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.18
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山道歩く、避けてきたのか ただ歩く峠を越えて 山割れて視界良好 春がきていた青い草、膨らむ蕾、赤ん坊の葉山道歩く、なにも考えない てくてく歩く山、山、山の緑の奥に憎たらしいほど落ち着いて いつもいつも変わらぬ姿の真白き富士よ山道歩く 空しくはない ひとりで歩く 朽ちた倒木 蹴ってみるせせらぎに 足を浸して冷たさに 生きていたんだ山道歩く 鶯鳴いてる 泣かずに歩くあれをごらんよ 霞む新宿 東京タワー下界の悩み 問答無用山はなんにもいわないけれど作:朽木 一空※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.15
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気ままな風に誘われて桜色が宙を舞う遠くの木陰からフルートのメロディーが風に溶けて漂ってくる芝生のうえでは子供たちが嬉しそうにお弁当を頬張っている心が和む ひとときまさにこれこそ春爛漫の小春日和だきっと今年こそはと秘めた思いを胸にしまい桜色の絨毯を踏みしめる作:湯川和泉※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.12
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苦い風が頬を叩くセピア色になった風景を風が壊していく生きてきて なにがあったのだろうか生きてきて なにかをのこせたのだろうかこれからも 生きていくんだろう生きていけば なにかがあるというが生きていけば なにかがあるんだろうかまだ、そんなことを言っているのかと風が嗤う 風が哭くレットイットビーなすがままにレットイットビーあるがままにレットイットビーなるようになるさ風がビートルズを唄っている作:朽木 一空※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.10
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なぜこんなにイライラするのだろう病気でもないのにどうして怠いのだろうやりたいことが 山ほどあるのだか何もしないで ただ疲れてしまうのだ一体ぼくは どこへ行きたいのだろうか作:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.08
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縁側に新聞紙に包まれたぜんまいが置かれていた丁寧に灰まで添えられてあるしげ婆さんかな、じゅんぞうさんかなあ、だれだろう 春のおみやげ、すなをかけてから、さっとお湯をかけてしばらくおく油揚げと一緒に炒めて召し上がるうーん、春のごちそうだ蕗の薹 たらの芽 土筆 かんぞう セリみつば セリ よもぎ タンポポの葉まだまだ食べられそうな春が地面の下から待っているいずれも、苦み走った野草たちあしたは のびるをとりに出かけよか春をいっぱい食べよとおもう老いた頭のてっぺんから新芽がでてきそうな気がする作:朽木一空※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.05
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大人になってからは全く女性にモテなくなってしまったひろし君だが、少年時代いや幼年時代と言うべきか、とにかく小さければ小さい時ほど女性たちに人気があった。ことに杉並区の甲州街道沿いにある祖母の家で、おばあちゃん子として暮らしている時は、たった一人の男の内孫ということで、祖母や叔母をはじめとする一族郎党はもとより、近所に住む女の子たちにもちやほやされたものである。 ことに隣の古本屋のまあちゃんと、その一軒先にある味噌屋のみっちゃんは、ひろし君より二つお姉さんだったが、二人とも弟が居ないせいか、ひろし君が可愛くてたまらない。銭湯に行くときは、必ずひろし君を誘って女湯に引っ張り込んでいたものである。 ひろし君の初恋の相手は、幼稚園で同じすみれ組の園児でぽっちゃり顔をした、クリーニング店の高原直子と、隣のさくら組だが、お洒落でおしゃまな酒屋の本川千代子の二人だった。この二人の女の子が住んでいた家は全く方角が逆である。そこでひろし君は、一日おきにこの二人と一緒に帰ることにしたのだ。この頃のひろし君は結構プレイボーイだったんだね。でもこんな両天秤を掛けていたのでは、女の子に好かれるはずがない。結局この初恋は、不完全燃焼で成就しなかった。 また家の近くの長屋に、羽田かおるという、いつも泥んこ顔をしたお転婆な少女がいて、なぜかひろし君を見るとまとわりついてくる。面食いのひろし君は、どうもこの泥んこ顔が好きになれない。だからいつも邪険に扱っていると、このかおるの兄貴がやってきては、ひろし君の首を絞めて「妹と仲良くしろ!」と命令する。それが怖くて、かおるの姿を見ると逃げ出すことにした。 さらにひろし君の家と、甲州街道を挟んだ向かい側にある自転車屋には、ちいちゃんという可愛い女の子がいた。このちいちゃんとは気が合って、いつもお互いの家を行き来して、家の中で遊ぶことが多かった。それはそれで良いのだが、目の前の甲州街道を渡るのに、信号のある場所まで行くのが面倒で、いつも信号のない場所から、甲州街道を走り抜けては祖母に叱られていた。 まあ当時は車と言っても、路線バスとルノーのタクシーとオート三輪車くらいだったし、甲州街道も今のように広くはなかったので、交通事故に遭う確率も少なかったようである。それにしても、これこそ命がけの逢引きだったのかもしれないね。作:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2014.04.02
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