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ひろし君の家に限らず、この時代の便所の殆どが汲み取り式だったため、便器の下には大小便を貯めておく便壺が埋めてあった。そしてその大小便を外から汲み取るために壁面に汲み取り口が設けられていた。また換気と清掃のためか、足元に小窓が設置されていた。従って便所そのものも、やや高い場所に作られていたのである。 従って小さい子供が便器の間をすり抜けて、便壺に落ちてしまうことがたまにあった。家の中でかくれんぼをしていた近所の女の子も、便所に隠れた拍子に、便器の隙間から便壺の中に滑り落ちてしまったという。 鳴き声は聞こえるものの、どこにも女の子の姿が見えないので家族中で探しまくった結果、やっと便壺の中で体半分浸かって泣いている女の子を発見し、汲み取り口から助け出したらしい。ひろし君はそんな話を何度も祖母のたねから聞いていたので、便所に入るときは用心深くなっていた。ことに戦前に建てられたたねの家の便所の床は、いつもギシギシと嫌な音を立てるので落ち着いて用が足せなかった。 またときどき近所で畑を耕している農家の人が汲み取りに来るのだが、なんと汲み取り代金として1回5円をおいてゆくのである。現代なら逆に汲み取り手数料として、支払わなければならないはずだが、当時は人便を野菜畑の肥やしとして使用していたので、肥料代として5円もらっていたのである。 余談だが、ひろし君が近くの農家のキャベツ畑に行くと、キャベツの葉の上に新聞紙のカケラが張り付いているではないか。そう当時は便所紙の代わりに新聞紙で尻を拭いていたのである。作:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2020.05.28
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2020.05.24
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知らぬ間に枯れた躑躅が痛ましい心折らぬぞ病み上がりの朝人いない雑木林で黄昏て名もなき鳥の声を聞きつつ作:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2020.05.19
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2020.05.16
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北岡が自宅近くの、うす緑に染まった雑木林の中を散策していたときである。急に目の前でガサガサという音と、激しい鳥の鳴き声が聞こえた。なんと目の前の草むらで、ムクドリと大きなアオダイショウが死闘を繰り広げているではないか。よくみるとその近くにムクドリの雛がウロウロしている。多分巣から落ちた雛を狙ったアオダイショウから雛を守ろうと、親鳥がアオダイショウに襲いかかったのだろう。 自然の法則に任せればよかったのかもしれないが、何となく蛇は悪者と思い込んでいる北岡は、持っていた杖でアオダイショウを一撃してしまった。驚いたアオダイショウは、さっと一瞬のうちに何処かへ逃げ去ってしまった。一方ムクドリのほうは、サッと雛に近寄ると、クルリと振り返って北岡の顔を睨みつける。北岡はにっこり微笑んで、手を振るとすぐにその場から離れて散策に戻った。 北岡が定年退職したのは去年の3月末で、現在は毎日が日曜日だ。しかし定年後に囲碁と短歌を習い始め早や1年が過ぎ、やっとその面白さに惹き込まれていたのだが、新型コロナウィルスという目に見えない怪物が全世界に蔓延し、囲碁も短歌も全く見通しの立たない休会状態が続いている。残念だが、仕方がない。それで毎日やることのない北岡は、自宅近くにある雑木林を散策することが日課になってしまったのである。 ムクドリとアオダイショウの死闘を見た日の翌日のことである。今日は何となく雑木林には行きたくなかった。それでいつもは車で行くドラッグストアまで、散歩を兼ねて歩いて行くことにした。もしそこでマスクや除菌グッズを見つけられれば一石二鳥だと張り切って家を出たのだが・・・。 そのドラッグストアまでは、徒歩で往復1時間かかるうえに、今日は太陽がカンカン照りだった。運良くお目当ての除菌グッズを購入出来て、ルンルン気分で帰り道を戻るまでは良かったのだが、自宅に辿り着いたときは汗びっしょり、熱中症寸前の状態だった。 それでも夜になるまでは特に体調に変化はなかったのだが、風呂に入って髪を洗うと左のこめかみが腫れていて、ズキズキ痛むのである。それですぐに風呂から出て体温を測った。北岡の母は60代前半で風呂あがりに脳出血で倒れ、そのまま帰らぬ人になっている。北岡もまた高脂血症に悩まされ、医者からは遺伝性のものだと伝えられ、ずっとクレストールを飲み続けていた。 体温は36度9分で微熱だったのだが、血圧を測るとなんと上の値が170を超えていた。また急に動悸が激しくなり、脈拍数も150を超えているではないか。 北岡の平均血圧は120で、未だかつて135以上になったことがない。また平均脈拍もいつも60前後で、ちょっと低くて元気が出ないとこぼしていたくらいである。それがなんとこれは一体どうしたことだろう。測り方が悪かったのかもしれないと、もう一度測ったのだが殆ど数値は変わらない。3回、4回と測り直したが、さらに悪い数値が出るばかりで一向に下がらない。恐怖感に憑りつかれ、血圧計を見るだけで激しい動機に襲われてしまうのだった。 まだ午後9時前だが、もうこれ以上起きていることに耐えられないので、入眠剤を飲んで無理矢理眠りに就くことにした。そして翌朝、体温は36度2分と少し下がってきたのだが、起床前の平熱は35度8分なのでまだ微熱が続いているのかもしれない。そして血圧計を手にした瞬間、「ドキ・ドキ・ドキ・ドキ」と胸の太鼓が鳴り響くのだ。案の定、昨夜同様、血圧は170で脈拍も150を超えていた。 病院に行きたいのだが、まだゴールデンウィークの中日で、医療機関が開くにはあと4日待たねばならない。休日にも対応している緊急医療施設があることは知っているが、循環器専門の医者が当直とは限らない。またこんな時に受診する者には、もしかすると新型コロナ患者が紛れ込んでいるかもしれない。 そんなことを考えると、緊急医療施設に行く気にもならなかった。それで翌日も翌々日も、またその翌日も、ただただベッドの中で蹲っているほかはなかった。三日三晩、トイレと食事をするとき以外は、朝も夜も眠り続けた北岡だったが、血圧も脈拍も全く改善されなかった。 「もうダメかもしれない・・・」、いよいよ明日は連休が明けて病院に行けるのだが、北岡の心の中は真っ暗闇であった。そして連休最後の夜を迎えたのだが、なかなか寝付かれない。昨日まではあれだけ眠り続けたつけが回ってきたのだろうか。入眠剤を飲んだのだが、全く効果がない。そして体中が火照り、時間ばかり経過してゆく・・・・。やっと少しウトウトし始めたとき、突然携帯電話のアラームが猛烈な音を響かせるのだった。 地震だ、地震だ!!地底から「ゴーッ」という恐ろしいうめき声が湧きあがり、家全体が大きく揺れ始めた。恐怖に打ち震えた北岡は、ヨロヨロしながらパジャマのまま、やっとの思いで玄関の扉を開き外に出た。揺れはさらに激しくなり、もう立っていることが出来ない。 そのとき二階のベランダにある物干し竿が落ちてきた。慌てた北岡が這うようにして道路に出ると、今度はもの凄い轟音とともに道路がヒビ割れしてゆくではないか。 もうどこにも逃れられない。もうすぐ家も倒壊してしまうかもしれない。まるで大蛇のように地割れが北岡を取り巻いてくる。このとき北岡は生まれて初めて「死」を直感した。 真夜中のはずである。だがそのとき突然空が明るくなり、大きな羽音とともに光り輝く物体が舞い降りてくるではないか。それは大きな鳥?、いや背中に羽の生えた人間? 「一度だけ助けてやろう。一度だけだぞ」それは掠れた声でそう囁いた。そして北岡の目の前に、オレンジ色の脚を突き出したのである。その者の顔は眩しくて良く見えないのだが、オレンジ色の唇だけが確認できた。 「早くつかまれ」北岡が恐る恐るそのオレンジ色の足首を掴むと、バサバサバサと音を立てて、その者が急上昇してゆくではないか。もちろん北岡も一緒に・・・・。「助かったかも」・・・・。 目が覚めたときは汗びっしょりだった。北岡は自宅のベッドに蹲っていたのである。あれは夢だったのか、それにしてはかなり生々しかったではないか。 彼はゆったりと起床し血圧を測った。血圧は150で脈拍は130だった。なんと4日間ずっと高止まりしていた血圧と脈拍が、少しだけ下がっていたのである。もちろん下がったと言えども、まだまだ安心できる数値には程遠い。だが4日振りにやっと下がったことで、心理的にはかなり楽になっていた。 早速着替えて、循環器専門のクリニックへ出かけることにした。そしてそこで3日間に亘って、内診・心電図・血液検査・24時間ホルター心電図検査・レントゲン・心臓エコー検査を受けることになった。 診断結果は「不整脈」で、もう少しで「心房細動」になりかけていたとのこと。心房細動とは、心臓の上の方の部屋(心房)が不規則に細かい拍動を繰り返している状態だという。 単に心房細動があるだけでは命に別状はないのだが、脈がきわめて速い状態が持続すれば、心臓に負担がかかりすぎて「心不全」を起こすことがある。さらに怖いのは、心房細動の合併症である「血栓症」だ。その代表格で一番怖いのが、脳の血管が詰まる脳梗塞ということになる。 とりあえず不整脈を改善する薬を処方してもらい、今は毎日朝晩欠かさず服用し続けている。もし北岡がクリニックにくるのがあと一週間遅れていたら、かなりヤバイ状況になっていたかもしれない。だがまだ安心はできない。暫くは薬を飲みながら、おとなしく様子を見続けているしかないだろう。 それにしてもなぜ、急に血圧と脈拍が異常に高くなってしまったのだろうか。北岡には全く心当たりがないし、医師にもよく分からない。ただいつも不幸とは、ある日突然にやって来るものなのだ。作:五林寺隆※下記バナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ。またこのブログ記事が面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。にほんブログ村
2020.05.12
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2020.05.08
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