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シーン 2 「暗号」 1945年、第二次世界大戦の中、日本は敗戦の色を濃くしていた。やがて運命の日がやってきた。それは、敗戦から僅か10日前のことだった。8月6日、広島市。 人々は晴天の下、いつもと変わらぬ穏やかな朝を迎えていた。 その頃、アメリカの偵察機は他のニ機と共に広島上空に到達した。 7時09分、偵察機からエノラ・ゲイ号に「暗号」が送られた。 「原爆投下可能」 午前8時15分17秒、原爆「リトル・ボーイ」が投下された。 43秒後、広島上空高度580mのところでリトル・ボーイは爆発、一秒後に高温、高圧の火球が発生。 爆風先端の衝撃波は30秒後、爆心地から11kmの距離に達し、広島市の6割が壊滅した。死者およそ20万人。 * 林 茂夫は、この日広島市から10km離れた海上にいた。志願兵となり、軍港の兵隊として駆逐艦に乗っていた茂夫は、10cm余り積もった灰を目のあたりにした。 こうして茂夫は生まれ故郷の長野県を離れ、過酷な運命の波に乗った。 それから3日後の8月9日、もう一つの悲劇が襲った。11時02分、長崎市北部に2発目の原爆「フォット・マン」が投下された。 上空約500mのところでフォット・マンは炸裂、コンマ2秒後に半径200mの火球を作った。火球の表面温度は太陽の表面温度に匹敵する8千度に達した。この原爆は、当初の目的地小倉が曇天だった為、急遽長崎に変更されたといわれている。 死者は七万人を超えた。 * 高峯英治は生まれ故郷の福岡県を離れ、学徒勤労動員として長崎にいた。 そして不運にも2発目の被爆者となった。 林 茂夫と高峯栄治。 生涯出会うことがないふたり。やがて被爆者二世として、この世に生を受ける多希子。 誰も見ることができない宿縁の糸。それらは、運命の名を借りた「宿命」であることを、ずっと後になって大切な人から教えられた。 抱えきれない感謝を使命に変えて、伝える日がきっとくると・・・その人は言った。 *「戦争が世界に残したもの」長澤順治氏 photo by SOU 次回 「紬」つむぎ
2007/09/29
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シーン 1 「まなざし」 「お母さん。 はじめまして・・・・・多希子です。 数日前、お母さんのことを知ったの。 すごく遅くなっちゃったけれど、生んでくれてありがとう! それから、お父さん。 お母さんと一緒に眠っていたんだね。 真実を知った時、私の中のアルプスがひっくり返ったよ。 ねえお父さん、私達似ている? だって私、お母さんと同じ二十四歳だもの」 澄みきった青空とアルプスの嶺々。 辺りの木々は陽を浴びて輝き、添えられた花はやさしくほほえむ。 壮大に流れる天竜川を見下ろすと、伊那谷の風が心地よく頬に触れた。 多希子は色褪せた一枚の写真を抱きしめ、再び目を閉じた。 縁あって同じ地球に生まれながら、人はなぜ戦うのか。限りある命の争奪に、宇宙は戸惑い、地球は残虐におののき、国は悲嘆と憎しみに満ちて輪郭を失う。 次回 「暗号」
2007/09/27
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シーン 2 「俺が逃がした悪魔」 午前0時。 酔いの中で夜を引きずっていても、この時刻になると俺の脳の一部が冴える。イブも0時を過ぎれば、日めくりカレンダーを破って捨てたような普通の日が顔を出す。 けれど、街はまだ眠っていない。 「やっぱり来たね・・・・・」 優は窓辺に腰かけ、足をぶらぶらさせている。 榛名湖で俺を手招きした少女が、深夜0時に睡魔を退けてやってきて、俺を苦しめた。それは、優と最後に会ったあの晩からはじまった。 「夕舞」で正体をばらした優は様々な女優を演じた。復讐に牙をむく女、誘惑に満ちたコクのある女、湖のほとりですすり泣く女。 足首を抱くパープルのベルト、深いスリットからは形のいいふくらはぎが見える。「もう驚かないのね」 まゆをひそめて透かし見る優から、俺は目をそむけなかった。 「いつもと違う」 優の視線はわずかに宙をさまよった後、再び俺を見つめていた。 そして意味深な笑みを浮かべて言った。「お別れにきたのよ、それだけ・・・・」「別れ? 優、俺は誤魔化されないよ」 俺は別れという言葉を耳に止めながら、悪夢からの開放と虚しさを一度に浴びた。「誤魔化すって何?」 優が珍しく突っかかった。 虚しさが増した。 子宮に抱かれながら、母体への暴行を生き抜いた女。船底に仕掛けをされて沈んでいった女。 彼女は心を乱すことなく底知れぬ強さを持っていた。「果たせなかった復讐へのエネルギーを、男に向けてきただろう」「何のことだか?」「バレてるよ。 随分前からはじまってる。 味をしめた女は怖い」 優はドレスの肩紐に指を絡ませ、動揺を隠すように俺から目を背けた。 その先に神秘な紫色を放つクリスマスローズがあった。 「かわいい・・・・いつも俯いてる、この花」 俺はその時、優が大事そうに抱えている木彫りの人形に気づいた。 イブを一緒に過ごした男の影に、俺は初めて嫉妬した。 俺のような悪党を狙って、夜ごと誘いをかけ、鮮やかに事をやってのけてきた優。 自分の欲望に火がついたことを見落とし、満たされぬ心を埋めようとした優。 そんな優をどこかで許し、俺なりに罰を受けてきたのに、木彫りの人形は俺の心をむらむらと燃やす。今夜の優がいつもと違う訳に、俺は目を背けた。 すでに俺は、血縁関係が恋をくい止める効力を発揮しないことも知っていた。 それは相手が優という神秘に満ちた小悪魔で、彼女はそれに気づかない自然を有しているからだ。 「復讐も、恋も夢の中?」「人が人を裁けない、投げたブーメランは帰ってくる。 恋? 月に帰ってするわ」「地上に舞い降りた訳は? 」「さあ・・・・」「魂だけが生き返った、そう思ってるね?」「だから?」 優は俺に背を向け、夜空を見上げ窓を開けた。 「最後の恋はね、初恋に戻るの。 来世、恋人の契約を交わして」 優は再び夜空を彷徨い、耳もとでささやくのだろうか。 遊泳する小悪魔の誘惑は夜ごと色を濃くして、復讐以上の罪を犯すのだろうか。 それとも木彫りの人形に込めれらた思いを抱き続け、本当に消えるのか。 俺は冷静を失った。「さようなら」「優! 忘れ物だよ」 俺は、フロア-に落ちた優の影を指さした。 完 photo by kitakitune07さんさん
2007/09/23
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シーン 1 「僕が追いかけた天使」 日は暮れかかり、夜は大地から浮き出ようとする。 意外にも僕はそんな調和の中にいた。「ゆずり合ってるね、昼と夜が。 こういう空のぎりぎりが好き・・・・・」「どんな夜景も敵わないな」「そう、自然には奏でるリズムがあるから」 僕等は東京タワーの下で、まるで普通の恋人を営んでいた。 行列がざわめく川のように流れ出すと、木彫りの人形を抱いた優は、甘味な眼差しで僕を見上げた。「ん? 」 君はその眼差しの奥で、一体何を考えているんだい? おもわくは、微笑と吐息に紛れてまたも巧に身を交わす。 それが、優が犯したたった一つの過ちだとしても、僕はずっとまみれていたい。 けれど、別れはすぐそこにいる。 真夜中の禁断を遮った天使がいる。 2006年 12月24日 20時。 音と光のライトダウンショー。展望台では消灯直前を迎えたカップルが、ときめきと興奮に体温を上げ、肩をよせ合う。 タワーの下では、ロウソクの炎に見立てたキャンドルライトが消える瞬間を、今か今かと待ちわびる恋人達の姿もある。 その瞬間を見とどけたふたりは、永遠の幸福を手に入れるという伝説。「ねえ、伝説の恋人にはなれないの? タワーの中と外、選べないよ」「無理言うなよ、からだは一つなんだからさ」 ついさっきまで駄々をこねていた優に、僕ははじめて強引を貫いた。 優は白いセーターに隠れていた腕時計を見た。「あっ・・・・・サプライズ? 」 灯りが消えた。 恋人達は密やかに寄り添い、流れはじめたクリスマスソングにうっとり酔いしれている。 闇になったフロアーは静まり返った。 僕は僅かに震える優の肩を、汗ばんだ手でそっと抱きよせた。 すると優は、頑な(かたくな)だった身体をしなやかに馴染ませてくれた。「浩樹・・・・・あのね」 その後の言葉を聞くのが、僕はとても怖かった。 1200秒。 僕にとってこんなに幸せな束の間があっただろうか。足早に時を刻んだ秒針が、1200をカウントした瞬間、優は腕の中からするりと消えた。 羽毛のように揺ら揺らと、ガラスの向こうの夜景にまみれ、みるみる小さくなっていく。そして放った光は宙を舞って星に絡んだ。 やがてそれは月に吸い込まれて消えていった。「優・・・・・」 明るくなったフロアーが再びざわめき、あちらこちらで笑顔が零れていた。肩越しの温もりを失った僕は、ふと我にかえった。 そして人込みを掻き分け、愛しい人がしなやかに去った空に、少しでも近づきたいと強く思った。 僕は最上階の特別展望台に向かっていた。 ただひたすら、一心不乱に、空へ空へと向かっていた。 photo by pooh0529さんさん 次回 最終章 シーン 2 「俺が逃がした悪魔」
2007/09/22
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いつもありがとうございます。m(__)m 昨日の 「真夜中の小悪魔」 34で 今夜の完結をお知らせしましたが、予定変更させてください。 申し訳ありません。 恵 香乙
2007/09/20
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「この子は亡くなったんだね」「ああ」「名前は?」「優子」「ゆうこ・・・・」 優を失った母の後追い自殺は、榛名湖に居合わせた父との運命的出会いで未遂に終わった。 そして今、僕がこの世に存在するのは、「優の死」が導いた皮肉な定めであることに僕は苦しむ。 巡り巡る命。 とてつもない宇宙の不可抗力を知りながら、人は争い、生きる権利を奪い合う。 そんな愚かを、天はいつか見放すだろう。僕は、生きたくても生きられなかった命の無限を、優を通して思った。 叶うならば優を返してもらいたい。 「信じる? 優のこと・・・」 父は、母が逝った夏からの出来事を、悲しげな面持ちで聴いていた。 「ああ・・・・」 甦った優は、今この瞬間をきっとどこかで見つめている。 僕は約束の明日、どんな優に会えるのだろう。あるいは、正体を知られた優は、既に真冬の月に帰ったかもしれない。 ただ僕は、できることなら見届けたい・・・・月に帰る優の最後の声を聴きたい。「浩樹、あのね・・・・」 こんなふうにさりげなく。 明日、夜 「真夜中の小悪魔」 最終章 photo by しっぽ2さん
2007/09/19
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見慣れた天井、窓と遮光カーテンの間から入り込む微かな光、朝の気配を刻む数々の音。優は地上に降りた訳を明確に語らず去ったけれど、僕の腕につつまれた優は、まぎれも無く僕ひとりの優だった。 そして、抱かずに抱きしめた愛しい人との束の間を、僕は一週間も引きずった。 日々繰り返される仕事の流れに溜め息をつくこともなく、時は過ぎた。 水曜日に優からメールが入った。それはイブの待ち合わせの時間と場所を確認する内容だった。 そんな事はもうどこかに飛んでいた。 夢はそれほど強烈に僕を遮った。 イブを目前にしたその日、僕は横浜に向かった。仕事の合間に拵えた木彫りの人形は、優に会えた時のクリスマスプレゼントで、花篭を抱えて微笑む優だった。僕はとりたて頭脳明晰でも、何かに長けているわけでもなかったし、器用と言うに足らないけれど、手先を使うことが好きだった。 金曜の夜、車窓から見下ろす都内。 クリスマスイルミネーションが点や線を描きながら煌めきの面をふわっと浮き上がらせていた。 街行く人の数だけ扉があって、恋があって、生き様がある。 宇宙のほんの片隅で僕等は、瞬間瞬間変わり行く心に従い、従えているのだと、そんなことを漠然と考えていた。「ただいま・・・」 横浜の家では、背中をまるめた父が中庭を見つめていた。「親父、風邪ひくぞ!」「ああ・・・来たか。 飯は食ったか?」 丸いテーブルには、泡のついたグラスと食べかけの惣菜に箸を添えた小皿があった。「親父・・・俺、厚木工場に移動願いを出そうと思う」「寮を出るのか? その話で来たのか?」「それもあるけど・・・。 ここから通えるし、どう? 」「現役のようにはいかないが、あと5年は働ける。 介護なんて縁がないぞ!無理するな」「お袋が女の子を生んでくれていたらな。 こういう時、俺も親父も助かったよな」 僕は父の目をじっと見つめた。 父は真冬の中庭で、街灯に映し出されたウインターコスモスに目を移した。その発色は闇に映える豊な黄色で、まるで優が健気に佇んでいるように見えた。「ところで親父・・・・この写真でお袋がつけている簪(かんざし)、どうした? 」 僕は寮から持ってきた写真を、さっそく父に見せた。「ほら、これだよ」 老眼鏡を外した父は、古くなった桐のタンスから牡丹の柄の風呂敷包みを出した。「母さんが残した物だ。 ほら、これだろう」 僕は父が手にした簪の下で、父が隠そうとしたB5サイズの茶封筒に反応していた。「この簪とそっくりなのをしている人を見て、懐かしくなったんだ」「そうか・・・」「親父、その封筒は? 」「つ、つい先日、母さんの鏡台の引き出しから出てきて」「見てもいいかな? 俺・・・」 父は俯き加減で口を噤んだ後、封筒から一枚の写真をゆっくり出した。 荒れた指先が戸惑いを漂わせ、覚悟までの数秒を痛々しく感じさせた。「この子は? 」 僕は東京タワーを背景にしゃがんでいる母が、細い腕で抱きよせる可愛い少女を指差した。父は、僕が心のどこかで待っていた風景を現実のものにしてくれた。 「母さんの娘だ。 お前の姉さんだ・・・生きていれば」「親父と結婚する前の、その・・・誰かの子だね?」 僕の脳裏で、母の過去と優の復讐の相手が漠然と重なった。「可愛そうに・・・ 12歳の時、榛名湖で溺れて亡くなった」 優は髪をおさげにして、首を母の方に傾け、白い歯を見せて笑っていた。 photo by kitakitune07さんさん
2007/09/16
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「大丈夫だよ・・・・・優」 揺らぎはじめた月灯りのように、僕の声は震えていた。 伝わる鼓動を鎮めようと、うつ伏せになった優の背中に、僕は胸をそっと重ねた。濡れたまつ毛、やさしいフェイスライン、色のない唇、耳たぶの小さなほくろ、長い髪へと指を這わせ、戯れる水滴をまどろみの底へ導いた。 既に僕の中の男は去った。 優の口から漏れた言葉が真実かどうか、僕にはわからない。 わかっているのは、優は心を鎮める為に僕のところにやってきた。 そしてもし、僕が優を抱いたら、もう二度と現実の優には会えない。 そういう兆しが、色濃く僕を支配した。「浩樹・・・」「どうした? 」「ごめんね」「ん?」「私、私、あの人を殺せなかった・・・・ どうしても、で き な か っ た」 大きな溜め息をついた優は、横を向いたままそう言った。「・・・・疲れているんだね。 このまま眠っていいよ」「地上に降りた訳を知りたい? 」 あてつけがましく散らばった不可思議を、繋ぎ合わせてできるシナリオ。 優が優である限り、果たせなかったもの。 それは「復讐」・・・僕にはこの言葉以外浮かんでこない。「これが夢なら、聞いてもいいけど」「人はね、闇に葬られていく悪行を、どこかで誰かに見られているの。 そして罰せられる。 愚かな人間達はそれを知らない」 優の口調は一定のリズムの中で、色も形も無い魂を含ませていた。 photo by kitakitune07さん
2007/09/11
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僕が眠りについたのは、隣室のにぎわいが去った頃だと思う。訪れた静寂を見はからって優が現われた。 だから僕は、それを「眠り」と自覚する。 大きなコーナー出窓からは白い月が覗き込み、夜景は仄かな灯りだけを選んで瞬く。ベッドに腰掛け、髪をほどいた優は、簪(かんざし)をスタンドの下に置くと、しばらく窓辺のサザンクロスを見つめていた。 青白かった優の顔は、月の光を浴びながら少しずつ赤みを帯びていく。 首筋から胸元へと僕の視線が流れる。 バスローブが交差する辺りでシャワーが残した雫が光る。 けれど、めちゃめちゃになる手前を、夢はわきまえていた。「こ、この簪は? 」 僕はベッドから起き上がり、その簪を手にした。「これはね、大切な人から頂いたの。 あそこで・・・」 優は平然と月を指差した。 「月? やっぱりこれは夢だね、残念だけど・・・」「浩樹・・・」「ん?」「癒してくれる? とても疲れているの」 その誘惑は、妖艶過ぎて僕を冷静に戻した。「優は勝手だな。 『抱くって、抱きしめたいから入る抱くならいいよね・・・』そう言ったくせに。 男心を玩ぶのが優の快感? 焦らして焦らして、夢で果たすって何?」 いつもは言葉が途切れ途切れになって、満たされずに諦めて、多くを語らなくなる僕の習性が、いきなり弾けた。 優の呼吸が乱れはじめた。 「ごめんね。 仕事を終えて、壊れそうで、それでここに来るしかなかった。 だから・・・」「仕事って? 優、大丈夫?!」 月が雲に覆われ、僕等が月の光を失うと、優は溶けるようにベットに体を馴染ませた。「私・・・今、人を殺してきたの」 photo by pooh0529さん
2007/09/07
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高崎に着いたのは8時過ぎで、外はひどく冷えていた。 仕事で荒れた指先をいたわりながら、黒革の手袋をはめて、寮に向かう。途中、どうしようかと迷いながらコンビニを通り過ぎ、シャッターが下りかけた花屋で自転車を止めた。 ふっくらとした愛想のいい店員から花鉢を受け取り、再びペタルを漕いた。 寮に着くと、隣の部屋から仲間達の声がした。 (また呑んでるな・・・) 僕は足を忍ばせて部屋に入り、暖房のスイッチを入れた。 「ふー・・・・・」 テーブルに置かれたサザンクロスは薄紅色で、妖しげに揺らいで僕を見つめる。「冬に咲く花は健気でしょう。 サザンクロスはね、星型の花で、南十字星を思わせるからそんな名前がついたみたい」 優が耳もとでささやいているようだった。 花言葉 「遠い記憶」 サザンクロスは、出会いから今日までの僕等の仕組みに首をかしげる。 僕を胸騒ぎにかき立てるのは、単なる男の影ではなく、もっと謎めいた何かで、今それは潜伏期間に息を潜めているだけだ。 僕は革ジャンを脱いで、クローゼットを開けた。 寮に入る時、横浜から衣類と一緒に持ってきたアルバムを探すためだ。 そこには、さっきスライドショーに現われたワンシーンがある・・・・きっと。 僕は衣装ケースの奥からそれを見つけた。 アルバムを手にした時、心臓に圧力がかかった。 その勢いを借りて、僕はおそるおそるページをめくった。「あった!」 まだ小学生だったある年の始め、僕が父を写した時に偶然入った母の後ろ姿。 拡大した写真の右下に、和服姿の母がいた。 そして、うなじの上で黒髪を留めている簪(かんざし)を捕らえると、僕はゆっくりアルバムに顔を近づけた。「やっぱり・・・・・」 その簪は、さっき優が付けたものと、とてもよく似ていた。 母が好きだった簪は、僕の記憶に残っていた。 photo by しっぽ2さん
2007/09/06
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~ とても不安定なお天気 ~ 雷と太陽が空の奪い合いをしている 更年期=好年期 原 日出子さん~ 体を動かす事が、脱更年期への早道 橋 凡子さん~ 心のデトックスを経て新しい自分へと生まれ 変わる。 お二人はこう語る 「 家族に話しかけられるのも面倒に感じた時期 」 「 心の不協和音に悩まされた時期 」 夏の風景 これで少しは涼めたような気がする なんかダルイよね~、蒸し器の中にいるみたい。 こういう時、読み返す本がある。 スカッ!っとするのも大切なのかな~ 心身がオンラインになる「豊な教養、溢れる美貌にこぼれる脂肪・・・・」 「昔は喋り足らず、夜中まで・・ あれから40年。今、口を開けるのは薬を飲む時と歯を磨く時だけです。 たまに話す時も、お互い顔を見合す事もなく、あれこれそれで事足りて・・・・」「昔は口紅を塗っただけで、パーッ!と明るくなりました。 あれから40年。 今、口紅を塗ったために唇だけが若返り、あぜ道に彼岸花、やきそばに紅しょうが・・・・」 これは実感しています~ By Kimimaro.A あれから1年。 今年も、彼岸花になって弾けます! あと1ヶ月・・・勝負! Power of woman Hold on me Someday Fall in love 季節の変わり目。 皆様もお体を大切にして下さいね。 m(--)m
2007/09/05
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優と会うたびに気配が変わっていく。 それは漠然としているけれど、口ぶりや瞳に潜んで僕を手招きする。 好きになれば徐々にに相手を知りたくなる。 現われたバックボーンに捕らわれなければ付随する感情や多くの行き違いが少なくて済む。 ただ僕には自信がない。訊く事も知ることも実は怖い。 遮られた感情は、気配ばかりが充満して行き場を求める。 僕は浅草から高崎に向かっていた。 甘い節度に引き寄せられ、突き放されては余韻を引きずる。 優の仕掛けは一定の距離を保ちながら、時を稼いでいる。 用事があると言って銀座に向かった優は、僕に手を振った後、バックから簪(かんざし)を出して髪に留めた。 僕は目を見張った。 それは黒に金粉が散りばめられ、下がった紐の先で小さな雫が揺れていた。 しかも、優がお気に召して眺めていた物ではなかった。(何時の間に買ったのだろう?) 僕は別れたばかりの優に電話をしようと、携帯を耳にあてた。「何か言い忘れたことがあったような気がして」「びっくりするじゃない!」 優は本当に驚いたようだった。 「どうしたの? もうホームなの。 言い忘れたことを思い出したらメールしてくれる?」「あ、ああ、そうするけど・・・・」 僕は夕暮れにけじめをつけ、銀座に向かう優がちょっと気になった。 別れ際のひとコマは、それまで心に張り付いていた無形と組んでゆっくりと宙に浮かんだ。 そのスライドショーは、僕を取り巻く気配を深い闇色に染めた。 photo by kitakitune07さん
2007/09/03
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