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神奈川県 横浜市~有隣堂本店、芳林堂書店 横浜関内店、平坂書房 戸塚店、 ブックスジョイ 妙蓮寺店、中根書店、紀伊国屋書店 横浜店、 リブロ港北店、リブロ東戸塚店、ブックピア。 鎌倉市~島森書店 鎌倉店、邦栄堂書店 横須賀市~平坂書房モアーズ店 高座群~三光堂 藤沢市~のばら書店 厚木市~石村集文堂 神奈川工科大学店 川崎市~伏見書店、ブックプラザ・タニ 小田原市~リブロ小田原店 海老名市~三省堂書店 海老名店新潟県 新潟市~北光社本店、紀伊国屋書店 新潟店、知遊堂赤道店 長岡市~文新堂書店 長岡店富山県 富山市~明文堂 新庄経堂店石川県 金沢市~ブックスふかざわ、紀伊国屋書店 金沢大和店、荒屋書店百坂店福井県 越前市~銀泉書店 勝山市~ブックス玉木長野県 小諸市~鷲湖書店 小諸店 松本市~リブロ松本店岐阜県 瑞浪市~サンジョルディ 大垣市~KOWA星野書店 大垣店、自由書房大垣店、 岐阜市~自由書房本店、カルコス本店 、栄進堂書店 大垣店 各務原市~カルコス 各務原店静岡県 袋井市~あつみ書店 富士宮市~富士戸田書店 富士宮店 静岡市~丸善 新静岡センター店 焼津市~焼津谷島屋 登呂田店 駿東群~すみや MEDIA NOW 三島店書籍愛知県 名古屋市~三省堂書店 名古屋テルミナ店&高島屋店、星野書店 近鉄 書林房五常、守山ブックセンター、リブロ名古屋店、栄進堂書店 イーズ店 泰文堂 日比野本店、白水書店、文京堂書店、ちくさ正文館ターミナル 一宮市~カルコス 一宮店、宮脇書店 尾張一ノ宮 北名古屋市~宮脇書店 北名古屋店 丹波群~つるや書店 海部群~ブックホール春峰堂 豊田市~本のメグリア 東南店&本店 尾張旭市~こみかるはうすベルコート店 春日井市~三洋堂書店 FCルネック店 岡崎市~けやき書店 光ヶ丘店 碧南市~いまじん 碧南店 3へ続く
2007/02/28
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皆様に応援をいただき、また出版社の方がたにも大変お世話になり明日~遅くても十日までの間に下記の書店の片隅に「奏でる時に」が陳列に加わります。 編集者のK.Yさんにも本当にお世話になり、感謝の思い出いっぱいです。 ありがとうございました北海道 札幌市 コーチャンフォー美しヶ丘店、紀伊国屋書店 札幌LOFT店、 紀伊国屋書店オーロラタウン店、丸善ら・がぁーる新札幌店、 蔦屋札幌インター店、ゲオ上野幌店 帯広市 ザ・本屋さんWOW店 釧路市 ブックシティナウ星ヶ裏店 函館市 TSUTAYA 函館鍛治店 小樽市 紀伊国屋書店 小樽店青森県 八戸市 成田本店みなと高台店 弘前市 紀伊国屋書店 弘前店岩手県 久慈市 BIz 久慈店 北上市 ブックスアメリカン北上店 盛岡市 東山堂 宮城県 仙台市 八文字屋書店 、 紀伊国屋書店 仙台店 気仙沼市 宮脇書店 気仙沼 大崎市 ブックガーデン古川店、 e-Books松屋大崎店秋田県 秋田市 加賀屋書店 本店山形県 山形市 八文字屋 本店福島県 郡山市 八重洲ブックセンター 郡山うすい店茨城県 水戸市 川又書店 駅前店、 大野書店 水戸店 つくば市 文洋堂栃木県 鹿沼市 文化堂書店 矢板市 落合書店 宝木店 宇都宮市 紀伊国屋書店 宇都宮店 、 リブロ宇都宮南店群馬県 前橋市 岡崎書店、 煥乎書店 本店埼玉県 さいたま市 ブックデポ書店、ふたば書店 大宮店、須原屋 本店 熊谷市 須原屋 熊谷店 東松山市 大東文化大学購買部 進明堂、 BOOK SITYぱぴるす 入間群 談・文教堂 みずほ台店 北葛飾郡 一清堂 所沢市 リブロ 新所沢店、芳林堂書店 所沢駅ビル店 川越市 リブロ川越店 春日部市 須原屋春日部店千葉県 松戸市 堀江良文堂 松戸店 柏市 浅野書店 スカイプラザ店 船橋市 旭屋書店 船橋店、 芳林堂書店、 津田沼店 東金市 多田屋 サンピア店 千葉市 多田屋 千葉中央店、 稲毛店、 三省堂書店そごう千葉店 アスカー書房 こたはし台店、 千葉Kマート 書籍部 三省堂書店 Bee-One 市川市 大洲堂 大関書店 茂原市 松本書店、文教堂書店 茂原店 四街道市 大和屋書店 鎌ヶ谷市 早川書店 鎌ヶ谷店 木更津市 ブックセンタサンワ、 博文堂書店 佐倉市 まき書房 旭市 ひたちや 君津市 石塚文化堂 習志野市 丸善 津田沼店 浦安市 三省堂書店 新浦安店 野田市 すばる書店七光台店東京 新宿区 三省堂書店 新宿西口店、末広堂書店、紀伊国屋書店新宿本店、 芳林書店 高田馬場店 目黒区 芳林堂書店 祐天寺店 墨田区 リブロ錦糸町店 台東区 りブロ浅草店、渓川書店 品川区 リブロ大森店、明屋書店 五反田店、 小山ブックセンター 芳林書店 大井町店 千代田区 旭屋書店 水道橋店、三省堂書店 神田本店、大丸東京店、有楽町店 丸善 お茶ノ水店、丸の内本店、ツキチ”書店 、東京堂書店 中央区 東京旭屋書店 銀座店、 丸善 日本橋店 杉並区 八重洲ブックセンター荻窪ルミネ店 、文公堂書店 町田市 三省堂書店 町田店 武蔵野市 リブロ吉祥寺店 豊島区 リブロ池袋店 北区 ブックス王子、 Books ミキ 江戸川区 パピルス江戸川、 銀河書房 大田区 くらや本店 葛飾区 ひかり書店、稲田書店、高砂書房、 太洋堂書房 八王子市 三成堂書店 南大沢店 町田市 リブロ町田店 文京区 NET21往来堂書店 千駄木店 足立区 富士ブックス、 良文堂 アヤセ店 調布市 リブロ調布店 練馬区 ブックセンター中村橋店 板橋区 日販WEBセンター 置いて下さる書店に心を込めて書いていきます。 お世話になります。
2007/02/28
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ダンスサークルのファミレスタイム。その日裕子は少々不機嫌になっていた。心の声に逆らえない。「あれはちょっとハズレくじ引いたわね!」「担任は選べないから、1年間はしかたないわ、実際」(教師もまた親を選べない?)「あら!指名制度なんか提案したら?高倉さん」 裕子は焦点の合わない空間で、このレストランの厨房にも手を止めることなく働く者がいるのだと、ぼんやりと考えていた。「香川さん、お子さんいらっしゃらないから、こういう悩みもないのね」「同時に歓びもないわけですから・・・・・・」「そうそう!香川さん、街路樹で働いているんですって? 」 メンバーの一人が甲高い声でいうと、好奇心のまなざしが飛んで来た。「は、はい」「うちの子、宮原洋介君と同級生だったの」 ああ、そういうことかと思いながら、慌てて心に仮面をした。同時に洋介の顔がアップで浮かんできた。「よく働く子ですよ、彼は」「ちょっと元気な子でね」 「元気」という言葉の裏に皮肉が込められていた。「ああ、ヤンキーって感じの? 」「いじめにあって転校したのよ。そういう子を率先して面倒をみる専門学校に移ったの。通信で高卒を認められるシステムがあるのね今。だからアルバイトなんかできるの」 裕子は軽く儚げに微笑み、黙って木製の椅子の背もたれに寄りかかった。初日にボタン式のタイムカードのやり方を教えてくれた、茶目っ気のある小柄な洋介。以前休憩室で小林と矢沢が話してくれた内容が、ここで語られる。それは予想外だった。 主犯格は洋介の中学の友人、そこに6人ばかりがグルになって、目立つ、チビ、等と取って付けたような理由を探し、洋介を殴る、蹴る。あげくにロッカーに閉じ込め転がしたという。 「犯罪じゃない! 」 裕子は確かそう言って、休憩室で二人を驚かせたと思う。「学歴じゃないっていっても、きれい事。でも小野さんの所はそれ以前の問題ね」「ああ、塾代が消えたってあの事件ね。髪を金色にして喧しい音楽に! 」 また話が飛んだ。(いないメンバーの話をするな!)「いじめより、マシかも」「担任が育児の経験なしっていうのも不安材料になると思うけど、どう? 」「男子生徒に人気があるらしいわよ、彼女」「ま、高倉さんの所はお姉ちゃんも優秀だったし、問題ないじゃない」 リーダー高倉は好ましい微光を浴びるように「いいええ、とんでもない」と笑ってコーヒーカップを握った。「目的がはっきりしていれば進学もいいんでしょうし、専門学校や通信やアルバイトや今は個人の状況で進めるから恵まれていますね」「そ、そうなのよ香川さん。でもやっぱり親はね、子供には立派になってもらいたいのよ」「うんうん、安全圏にいてほしいわね、こういう世の中だし。フリーターやニートはやっぱり・・・ねえ? 」 高倉の隣にいつも腰掛ける、そしてダンスにとても特徴のある一人が皆に同意を求めるような口調で言った。 裕子は顔を歪ませていた。(いい子の位置付けを決めつけようとする傾向に、子供達の人間としての価値は何処へ)「あのう・・・・・・」 裕子が唾をごくりと飲んた後、重い顔を上げた。「立派ってなんですか? 基準は? 塾に行きたくないのに言う場を与えない? 音楽結構!育児経験がなくて教壇に立つのも立派じゃないですか?」 普段おとなしい裕子に呆れた面々が、いっせいに隅っこの声に姿勢を正した。「香川さん!理想論よ。お子さんがいないから! 」「それはそうですけど・・・・・・」 裕子は、洋介の名前さえ挙がらなかったら、きっと足元から興奮の血流が心臓に向かってくることは無かったのだろうかと俯いた。この時「街路樹」の存在が、一年に満たない月日の中で裕子に安らぎを与え、わかちあいが乾いた心に浸透していた事を実感した。「香川さん、何か?」 この中には、空っぽの頷きをして波風を立てずに上手くやっていこうとする者がいる。それが誰と誰か、裕子には何となくわかるのだ。それが大人だとすれば、それはそれで、世の中のあちらこちらに転がる小石。今や当たり前の光景だ。「宮原君のことがひっかかっているのでしょう?いじめられる側にも理由があったのよ」「そうでしょうか?昔はよかったですね。学校が居心地悪くても、家に変えれば地域に楽しい集団があったりしました」「香川さん!昔は昔よ」「そうですが、一つ訊いて良いですか? 安全圏って傍観者ですか? それとパシリ? いじめの周囲にはいろんな形が存在するし、まあ、煽るよりはいいんでしょうけど」「パシリ?、煽る? 香川さん、随分慣れた言葉使いで」 顎を突き出した一人が含み笑いをしながら両脇の二人と顔を見合わせた。「もしかして香川さん、元ヤンキ―だったりして!あら、嫌だー冗談よ冗談! 」 どっと笑いが出た。 フロア―の店員がちらっとサークルの賑わいを見た。「私、ここ引退します! 」「引退って、女優じゃあるまいし。ダンスお止めになるの? 」「止めませんよ。このサークルをやめるんです。ここの話題は嫌いです! 暇つぶしに人のこと、お茶のツマミに(?)してんじゃねえよ! だいたいあんた等の方がずっと可笑しいんだよ!差別と偏見の固まりじゃん! 子供の受け皿になれる母親はいねえのかよ! ん? 」 闇の中へ差し込んだ光かトゲか?消えた敬語。感染した若者言葉。「ばれた素性」と誰かが囁いた。 撮影yuu yuuさん
2007/02/26
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矢沢は翌朝、厨房でファンの音がしていることで裕子の存在がわかった。「おはよう! 」ふたりはそう言って、まるで何事もなかったようにオープンスタンバイをはじめた。 去っても環境のせいにしている間は何処で働いても同じだということ、求人年齢ぎりぎりの裕子は「街路樹」にしがみ付いていた方が良いということ、そして何より、引き止めてくれる仲間の存在が、凍りついた心を限りなく解してくれた。もしかして以前のような仕事をし続けていたら、きっと出会えなかった幸運に分離することなく溶けていく自分が、一人の他人の為にそれを失うことはまるで馬鹿げているのだ。矢沢は知っていた。 裕子が再びこの厨房に立つということを・・・・・・ 小林太郎の風邪が全快すると、厨房は活気を取り戻し、いつものように回転し始めた。平日は学校帰りの竜也は制服を乱暴に脱いで、慌ててコックコートに着替える。 店の脇に止めてある竜也の自転車を横目で見ながら、奏が次のアルバイト先に向かう。奏は幼い頃、大きくて柔らかい手に引かれて行った多摩川や、西武遊園地を時々思い出す。秋の空は高く、去った父との思い出を風が運んでくる季節が好きだった。温もりを忘れられない奏。 19歳になっても未だ離婚の訳に触れることはできない。ただ、日増しに小さくなる祖母の介護をする母を見るにつけ、その母を支えることが今自分ができることだと思うのだ。 指紋のひだに染み付いた父への思いを感じながら、ペダルをこぐ。 街で偶然奏を見かけたのは、裕子が休みの水曜日の午後だった。裕子は「奏ちゃーん! 」と大きく手を振った。「気をつけて行くんだよー! 」「うん! 裕子さんも、ダンス頑張って! 」 爽やかな声、軽快なぺタル、わずかに違う知性、大きく違う若さ。 真夏の休憩室ではいろいろな事があった。語り、笑い、怒り、泣き・・・・・・時々頭をくっつけて、色気のないテーブルに置かれたピザを取り合いながら、グラスの氷が溶けるように夏は過ぎた。撮影 kitakitune05さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・次回の世代 「偏見」・・・・・・・・ 友達とこんなことをしていました。 ちぎり絵 初歩だなこれ今日は雨、車が濡れた路面を走り去る音、窓の外の静けさ、嫌いじゃない。
2007/02/23
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その口笛の真意がわからなかった。フロア―の千尋が倉田の向こうで皿を洗い始めた。「何が足りないの? 」「ライス皿です! 」 ご飯があっても皿がなくてはしょうがない。「香川さん、すみません! スープも足りません。 日替わりランチが出せません! 」 矢沢がカウンターの向こうで、すまなそうに言った。裕子は千尋にありがとうと言って、ライス皿ばかりをシンクから取り出しラッカーに並べる。コックコートの袖は三つ折。 作業し易いように肘の辺りまで捲くってあるが、シンクの底に沈んだ皿を取り出すうちに、袖がすっかり濡れた。ラッカーにたてて、ウォッシャーの取っ手を下ろす。(ガタン! シュー!)バックヤードから定量の水をいれてスープ鍋を抱えてくると、倉田がチキンの焦げ目を確かめながら言った。「ここは俺がオムライスの卵を焼くんだよ。 こんなでかい鍋を置かれたら困るんだ」「いいですか香川さん! デザートが途中です。 クリームが溶けますから、オーダーを優先して下さい」(昨日と逆のことを言っている! ) 洋介がやってきた。「どうしたの? スープ、急ぎの時はこっちの小さい鍋で作って」「水は通常の三分の一だよ。 卵は三個」「はい」 乾いたライス皿を千尋が取りにきてくれた。洋介が小林の休みを知るや否や、マグネットで何枚も張られたオーダーにとりかかった。 「皿が熱いままだとマズイからデザート皿冷やしておいた方がいい、今のうちに」 洋介の言うことはもっともだった。 小花が散った大きなデザート皿を氷水に漬けた倉田はいくつものオムライスを淡々と拵えていた。 西田はパスタを盛り付けていった。午後入りの洋介がきて、ランチタイムの混乱は何とかおさまった。 時計は既に2時半をまわっていた。嵐が過去った戦場は少しずつ落ち着きを取り戻した。ある時間帯に集中する嵐と、オープンと共に雪崩れ込む嵐と、一日を通して穏やかに吹く風と、それは誰にも予測がつかない。 「お先に失礼します」 裕子はゴミをまとめ、メンバーにキャップをとって頭を下げた。「え? ナイトの分の米、といである? 」「いえ、さっき炊いて前のジャーに入れたばかりですし」「じゃあ、シンクに残っている皿くらいは洗って帰れば」(私はあなたの別れた女房じゃない! 同世代だからってやつ当たり? )「それは、それは遅刻してきた方がやって下さい」 洋介が、またか? という顔でふてぶてしく西田を見ていた。「あんた、その言葉十年早いよ! 」 倉田が作業台を拭きながら、尖った顎を突き出して言った。「帰って下さい、香川さん。 もう定時を過ぎていますから、お疲れ様」 西田は凹凸のない文章を読んでいるようだった。 顔は僅かに歪んでいた。裕子が心を萎ませながら突っ立っていると、西田は意味不明に足の屈伸をしたり、腕をくるくる回しはじめた。「チーフさあ、募集かけてるんでよ? まだ決まらないのかい? 」「ええ、まだ」「この人使えないっしょ! 」 駐車場のコンクリートの照り返しは、これでもか! というほど攻めてきた。溜め込んだ熱で、車内もひどい暑さだった。「最低! 」それは自分に向けて言葉だったかもしれない。裕子は休憩室まで一気に走り、タイムカードを押すのも、厨房用の靴を履きかえるのも忘れ何をどう着替えたかわからないで店を出た。 出際に矢沢とすれ違った時、いいようの無い虚しさがこみ上げた。 矢沢が振り返り「あれ? もう帰るんですか? 」と訊ねた。真冬から無我夢中でやってきたこと、使えないのに言う事だけは黙っていられない自分。心のタンクが許容量を超えた。 エンジンをかけた車に、裏口から矢沢が走りよってきた。汗で滲んだ制服、眼鏡の向こうの小さな目、ギターが宝だというのにマメができた手。矢沢はコンコンと窓を叩いて何かを言っている。裕子は鼻水と涙を右手の甲で慌てて拭いて、窓をあけた。何を喋ったかわからない。 あるいはまともな言葉など無かったのだろう。ただ、照りつける午後の太陽をものともせず、「うん、うん」と包み込むような眼差しで裕子に頷く青年の顔だけがあった。 最後に矢沢が言った。「待っているからね! 待っているよ・・・・・・」 撮影しっぽ2さん
2007/02/21
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「リズム感、少しはあるのかな? 」 竜也はスノコの上でギターを抱えまま言った。「スティックにぎったことも昔はあるけど、今はね」「昔って? 」「うーん、25年位前」「俺、生れていないし・・・・ってか香川さんにも青春があったんだ」 この二人の会話がやがて「ジェネレーション」というバンド結成につながる事など、どちらも知らない。「竜也は恋をしているでしょう? 」「え! 何、突然? 」 竜也が座ったまま裕子を見上げた。 瞳が輝いて、もっと聞いて欲しいという素振りだ。「なんでわかんの? 」「ほーら! やっぱり」「ひっかけたの? 性格悪いよ、かなり」「奏ちゃんね。 見る目が違うし・・・・」「別に、ってか・・・もうバレテル?・・・・」 竜也は少し焦りをみせて、狭い更衣室で体制を変えたりしながら顔を赤らめた。「楽譜が逆さまだよ。 意外とわかり易い奴だ! あはははっ! 」「それ、女の勘ってやつ? 」「私だって昔、恋の一つや二つ、七つや八つしたことあるし」「一つと八つ、全然違うし。 見栄張らなくていいよ」「煩いなあ。 で、告白するの? 」「俺、臆病だからたぶんしない。 本当はけっこうヤバイんだよね、一目惚れ」「凄く気になるんでしょ? 恋愛の経過で今が一番いい時かもね」「そうかな? クリスマスとかデートしたいよ、キスもしたい」「女の子はお飾りと違うんだからね! 恋のヘロモンの出しすぎも駄目だよ。 でもね・・チョコシロップの借りを返そうか? 厨房では何かと世話になってるし。 奏ちゃんのこと、さりげに応援するよ」「できるの? 」「告白は自分でするのよ! 男なんだからさ」「俺のDNA,結構意気地なしだからな」「は? 」 その夜は熱帯夜で、裕子は隣の大イビキにイラつきながら殆ど眠れなかった。ベランダに出ると、元気過ぎる太陽が裕子をめがけて熱のシャワーを降りかけてきた。「うー! シミが増える! 」 朝食をパンから和食に変えたのは、街路樹での従食が高カロリーの洋食だったからだ。もうひとつ昨年と違う光景があった。クローゼットの奥に追いやられたスーツやシャツ、図面が入る大きめのバック。活躍の場を失った接客用のそれらは、息を潜めて小さくなっている。代わりに、デニムやラフなティーシャツ、チェックのコットンシャツ等が偉そうに並んでいた。 収入も減ったが、出費も減った。 健康を取り戻せば、どこからだって再出発は可能だ。そんなことを思いながら、今日も小林がいない街路樹の厨房へと勇んで出かける。 流れをつかむとスムーズに身体が動く。クーラー、ファン、ガス、ウォッシャーの順に立ち上げて、大量の野菜を切る。スープができる頃、10分間の朝礼、整えた食材をホテルパンに入れてラインに持っていく。 この日の午後も納品された食材を冷凍庫と冷蔵庫に振り分けていく。冷凍のものは、おさまるポジションを覚えていないと冷気と重さに腰が悲鳴をあげる。「香川さん! こっちをお願いします」 西田が早口で裕子を呼んだ。今日のランチは満席だと矢沢が言った。 そういえば、ライスチェンジもスープチェンジもいつもより早かった。「香川さん! 生クリームの量が多いです! 」「はい」「ケーキの向きが反対です」「はい」 その時、チキンを焼いていた倉田の口笛が聞えた。~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ お知らせ 既にアマゾン、楽天での申し込みが可能となっておりますが、明日20よりクロネコヤマトのブックサービス(0120-29-9625)セブンアンドワイ(http://www.7andy.jp)書店でのご注文受付開始もされます。 (ただ、全国300書店以外には著書は置いてありません) 文芸社 タイトル「奏でる時に」 恵 香乙(めぐみかおと)で書店受付にてm(--)m なお著書を取り扱っていただけるオンライン書店(300)のリストは今月末にこのページに掲載いたします。 こちらでは3月初旬より、ご購入可能とのことです。 100数ページ、意外と薄いです。 皆様にはたくさんの励ましや応援を頂き、本当に感謝の思い出いっぱいです。また、きっかけを作ってくれた友人、背中を押してくれた旧友、パソコンでのアップを薦めてくれた職場の仲間、書く事の意味を深い眼差しで見届けで下さった先輩、表紙写真やあとがきで助けて下さった仲間。 そうして影で支えてくれた家族。 あ り が と う まだまだ未熟です。 たくさん勉強して、感性のアンテナを磨いて いきたいと思っています。 これからも、天然香乙をどうか宜しくお願い致します。トップ撮影 kitakitune05さん
2007/02/19
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イラスト、だんだん肉付きがよくなってきて、これ以上書くとくびれがなくなるのでこれで最後。 がっせきを組むと言うんだけれど、このポーズ。 両足の裏をくっつける。両手でつかんで、曲げた足を無理をしない程度に床につけるように小刻みに動かす。 こんな感じに手を使って、あまり強くしないで。 両足を前に出して、片足をあげる。 膝を曲げないように、猫背にならないように。 上げた足をもう片方の足の上から交差。 足はできるだけ遠くへ。 身体と顔は反対側を! ウエストがねじれて細くなるらしい。 同じことを、反対の足で繰り返す。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おしまい 故郷へ帰りたい・・・・・中央アルプスと南アルプスに囲まれ、天竜川が悠々と流れる。季節の花や果実、あたたかな方言。 いいな 「ほい! まめでおるかな?」・・・「ねえ、元気でやってる? 」 「どいれー、えらい事かな!」・・・「凄く、大変なことだね! 」 「ちいっと、やるでね」・・・・・・「少し、あげるからね」 「だだくさもねえ! 」・・・・・・「こんなにたくさん!」 「おやすみないしょ」・・・・・・・「おやすみなさい」 「ぬくといら? 」・・・・・・・・「温かいでしょ?」 では おやすみないしょ! TOP 撮影 kitakitune05さん
2007/02/18
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成長する組織には良きリーダーの存在がある。従業員は上司である店長やチーフと距離をおいて働くことは難しい。レストランのフロア―で働く者は客と直接かかわる為、オーダーが遅い、冷めている、溶けている等の苦情に時には頭を下げなければいけない。 そして彼らの為に、厨房では常に呼吸を合わせて、フロア―のオーダーに機敏にそして確実に応えなければならない。 縦と横、どちらの歯車も大切なコミニケーション。 職場にいる時間は長い。人間関係が錆びていれば、そこはストレスの温床になりかねない。縦横、互いにわかちあい感謝しつつ、同じ目的に向かって和を保っていった時、売上げは自然と後ろから付いてくるのかもしれない。 真夏の陽を浴びた入り口の寄せ植え。 奏が水をさすと、葉の上で雫が輝いた。そうしてレストラン「街路樹」の扉は開く。何かを吹っ切ったように意思のある瞳で奏が言う。「オーダー入ります! 」 その日はベテラン小林が夏風邪で休んでいた。「香川さん、後ろ終わったらこちらを手伝って下さい! 」「はい」 裕子は、チーフの西田に「後ろ」と呼ばれるのはあまり好きではなかった。ラインに入ると、倉田の視線が湯気の真ん中をくねくね曲がりながらやってきた。「大丈夫かい? 」 不安が増した。 「香川さん、チョコパをつくります。 さっきから探しているんですが、シロップ」「チョコレートパフェですね。 チョコシロップは朝、スタンバイしましたよ」「今日の日付シールを貼って、ここに」 ラインの作業台下の冷蔵庫をあけて裕子が言った。「忘れたんじゃないの? 」 倉田がハンバーグを焼きながら、まるで包容力の無い男を出した。 倉田への免疫はできていない。 「忘れましたか? 香川さん」「いえ」 カウンターの向こうから矢沢が「お客様お待ちしています」と何気に言うと裕子は、しゃがみ込んでシロップを必死に探しはじめた。「チーフ、急いでいるので、バックヤードから新しいのを出してきます」「そういうことを言っているのではないです! あるべきものがない。問題はそこです」「じゃあ、もう一度探しましょう」「探しましょう!って、あんたが探すんだろう? 」(わかっているけれど、今はフロアーが待っている! 優先はそっちでは? )キッチンのやり取りを気にしながら、矢沢が言った。「あのう、チョコレートパフェ、未だですか? 」 険悪な空気の中、緊張感のない足跡がした。「あったー! こんな所にほら」 竜也がサロン(前掛け)の下から、シロップをそっと出して裕子に手渡した。冷蔵庫にピザ生地を取りにいった彼が、新しいものに今日の日付シールを貼った形跡が見えた。 機転をきかせたさりげない行動。 配慮のない言葉。 年齢とは別の次元で何かが動く。 「借りができたね」 裕子はすれ違い際で、竜也に小さく囁いた。小林の存在の大きさを思い知らされながら、ピークのランチタイムをなんとか切り抜けた。 午後からのシフトでやってきた洋介とチェンジして、裕子と竜也が休憩に入った。「さっきはありがとう、シロップ」「何でわかった? 」「日付シールが斜めに貼ってあった」「小林っちがいないと、駄目だな、あそこは」「チーフが遅刻してこなければ、スタンバイの確認もできたのに」「社員は30分前には入るんだよ、本当は」「そうなの? 1時間も遅れてくる時もあるじゃない」「それでやたらと理屈っぽいから、イライラするんだ俺」「洋介だけかと思ったけど、やっぱりそう思う? 人、募集してくれないかな? 」「無理」「うまく回転しないと、ヤバイよ、店」 しばらくすると、竜也は更衣室の床にお粗末に敷かれたのスノコの上で、ポロポロとギターを弾きはじめた。 「うーん! 繊細な心のメロディー」 瑞々しい音色に思わずそう言って、ほど良く筋肉がついた腕の辺りを見た。「香川さんは何かやってるの? 」「ダンスを少し」「盆踊り? 」「失礼な! 」「俺相手にすぐムキになるしー」 TOP 写真 SOUさん 小麦のささやきです。 仕事のない土曜日は、空気が抜けた自転車をこいでいるようでつまらん!リズムって大事。 明日は塗って(笑)、胸を張ってしゃきっと行こう!
2007/02/17
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奏は透明感のある歌声と声量で、音楽大学を薦められたが家庭の事情で断念。今は福祉施設や老人ホームなどで歌を歌えたらと,「街路樹」にきた頃裕子に嬉しそうに話していた。 「大変だよね、フロア―は。 いつも違うお客様がみえるんだからさ。 いろんな人がいるし、笑顔は欠かせない。 わかるよ! 」「こいつでさえ、少しは社会の役に立っているんだから、大丈夫っすよ! 」 矢沢が童顔の竜也の方を見てそういうと、奏がクスッと笑って涙がを拭いた。明るさを取り戻した休憩室に小林は戻ってくると、裕子がアンチョビのピザを真ん中に置いて、竜也と奏と食べ始めた。「ああ! 美味い! 労働の後の飯は美味いな! 」 竜也が労働と言った後、小林が「生意気な奴だ」と空かさず口をはさんだ。頑張っている人が落ち込んでいる時は、励ましより共感。 太陽により近く、心が向かうのはきっと「わかってくれた」という実感なのだろうと裕子は思った。「裕子さん、私のパパはね」 奏が口をもぐもぐさせながら、そう言って白い手で胸を叩いた。「大丈夫? 咽ないでよ・・・・・・うん、それでなあに? 」「北海道にいるの。 釧路なんだけどね」「そう・・・・・・」「パパに会いたいのね」「うん。 ママに内緒で一度は会いたい」 離婚して母親側についた竜也がそうであるように、やはり奏も父親に会いたいと言う。「その言葉、倉田さんが聞いたら喜ぶな、きっと」 矢沢がそういうと、隣の小林が小さく頷いた。「そういうことか・・・・・・倉田さん」 裕子はそれぞれの事情を思った。 「世の中うまくいかないな」 19歳の竜也が最後のピザに手を伸ばしながら、そう言った。 裕子は離婚より、もう少し残酷な両親との死別によって、竜也や奏の歳よりずっと幼い頃親戚の家に引き取られて、一夜で五人兄弟の長女のなった。16歳も離れた弟もいて、「よいお姉さん」に力を入れタリ、抜いたりしながらやってきた。 時折吹き込む心の隙間を小さな両手で塞ぎながら。 そうやって幸運にも生きてこられた[生い立ち]という深鍋。そこに遺伝子やら、突飛な細胞やら、五大栄養素なんかが入り込んで、裕子というおかしなスープができたのだ。 熟したスープは大小どんな器を選ぶことも、何故か好まない。 器に水が添うように、馴染む。 馴染んでさらに熟して美味しいスープになりたい。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・photo by kitakitune05さん リフレッシュ体操 3 膝を曲げてこんな感じで座る。 両足は少し開く。 正面から見るとこんな感じ。 足を曲げたまま床に、右、左と倒す。 何度か繰り返す。 股関節にはたらく。 足を肩幅くらいに開いて、両手を腰に。 上半身をムリなくゆっくり右へひねる。 左へ・・・・脇腹の脂肪をしぼりだすつもりで。 うまく書けなかったおまけの一枚。 膝を左右に倒したところを書いたつもりが 図工が2だった息子が書いた「両親」 大掃除の時に出てきました(笑)
2007/02/16
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遅咲きの桜が風に追いやられ、空からは定規で引いたような真っ直ぐな雨が降り続いた。 景色はまるで裕子の忙しさに合わせるように過ぎ去ってゆく。やがてひっそりとしていた木々の緑が夏の陽を浴びて、うれしそうに光りはじめた。「夏の匂い」 窓際の裕子を見ながら、秀明は「俺はこれから手錠をはめられた犯罪者のような体制で通勤ラッシュへ・・・・・・」と、ぼやく。「女性専用車両ができたでしょう? 」「それでも女性がいなくはない」「じゃあ両手はつり革? ポケット? 」 秀明の背中に「覚悟」というより「あきらめ」の文字が見えた。 夏は毎年暑くなる。 巨大な母体の温暖化と加齢による体力低下か。千尋がヤングママ数人と、カウンターも向こうでティーカップを並べながら先日の公園デビューの話をしている。 「こっちも集団で乗り込めば? 」という突飛なアドバイス。裕子は無責任な発言に少し不安を抱きながら、残りの野菜を洗った。 灼熱地獄の真夏の厨房。 パスタをゆでる小林、チキンを焼く竜也、フライを揚げる洋介。ラインの面々は無言だから、ジージーという鉄板や油はねの音、オーブンタイマーのブザーがバックヤードにやけに響く。 立ち上がる湯気、慣れすぎた匂い。 天井が高く、カウンターの存在でクーラーの冷気が逃げる。「ねえ、ラインは熱いでしょ? 」「夏は禁句だよ、その言葉。 熱いって一回言う度に罰金1000円だよ」 小柄な洋介がそう言って裕子を見た。「冷蔵庫でたまに涼めるからいいねえ、バックヤードは」「でもウォッシャーは熱湯がでるし、重いハンドルの上げ下げの繰り返しで私なりに熱い」「みんなバックヤードを経てラインにくるんだよ。 大変なのはわかるよ、ってかさあ、水分だけは摂らないと、夏の終わりにミイラになるよ」 汗が目に入りそうな竜也が、力のない声で言った。(きっとここでも痩せられる!) 厨房での汗はダンスの汗の数倍だし、あそこのお喋りタイムは政治討論会のように、いつも本筋から話題が反れていく。 リセットの場があれでは疲れる。いっそうの事、おしゃべりも贅肉もシンプルな夜のサークルに移ろうかと最近思うのだ。体調改善、ライフスタイルが変わった今は、昼のサークルにしがみ付く理由はない。 「香川さん、口あいてるよ。 手を止めちゃ駄目」「あ、はい! 」 裕子は洗剤液を入れたシンクの方に向かった。 奏の表情が暗い。 (そろそろ疲れが出る頃か・・・・・・)皿をラッカーに並べながら、配膳台にたくさんに皿を置いていった奏。 裕子は時々、新米の奏を目で追った。 遅い時計の針がようやく2時を指した。奏は既に更衣室で着替えている。 色気のないテーブルに小林と矢沢が従食をもってやってきた。 「お疲れっす! 」 フロア―の矢沢は思い出したように、ロッカーからマイルドセブンを取り出した。「あれ? ライター知らない? 」 白板のあたりにいつも転がっている100円ライターを探している。「はいよ」 小林がジッポライターを出した。 「へとへとなんだから、いきなりタバコって身体に悪いんじゃない? 」 裕子は持ってきたアルカリイオン水を飲みながらふたりに言ったが、すでに壁際によりかかる彼らは、大きな疲れを煙と一緒に吐き出している。 奏が着替えを済ませて更衣室から出てきた。裕子は人形のように整った横顔に見惚れながら、流行のレースがついたキャミソールに目を移した。 素肌は綺麗だからこそ着られるヒラヒラが羨ましかった。「今日は食べていかないの? 」 奏は夕方から別のアルバイトに向かう。 立ち止まって何かを言おうとしているのが裕子にはわかった。 矢沢は、昼前に慣れない奏がミルクポットをこぼして、女性客の膝を汚した事を知っていた。 店長瀬川の対応がよく、客も渡された瀬川の名刺と会計時の配慮で機嫌よく帰っていったものの、奏はその事でとても落ち込んでしまった。 小林は素早く状況を読み取ったらしく、トイレに立った。 こういう雰囲気が苦手な小林。 優しさの種類の一つだ。 「ここに掛ければ? 」 裕子が隣の椅子に触れながら微笑むと、奏の唇が震えはじめた。「私、駄目なんです! 皆に迷惑かけて」 奏が両肩を微かにピクピクさせながら感傷と感情の心を口にした。「お疲れ!」 竜也が頭にくるほど元気よく入ってきた。奏は慌てて涙を拭いている。 裕子は竜也に目配せしたが、ウィンクと勘違いした竜也はスタスタと歩きながら小林がいた席に腰掛けた。(ああ! もう勘違い男! ここに座るな! )「自分も最初は同じでしたよ。 今でもいっぱいいっぱいの時あるし、見えないところで皆、同じ思いをしてるもんだよ」「矢沢さんでもそうなんですか? 」「あのね、私もそうだけどー、最初は自分に自信がなくて周りが皆、優れて見えるもの」「・・・・・・」「俺は、実際すぐれているよ! 」 竜也はそう言った後、裕子に頭を小突かれた。 photo by kitakitune05さん 次回 世代 「共感」
2007/02/15
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小説より面白いといわれたイラスト。 少し進歩しました~これでも一生懸命かいたんですが・・・使わないカレンダーの裏を使って。 簡単にできるリフレッシュ その2 (足は肩幅くらいに開く) 両手を後ろで組む(左右の指を絡めるアレ)、そのままひっくる返して手の平が外に向くように。 そうして、両手をそのままグーっと引き上げる。 ゆっくりムリなく。同時に首を後ろに倒しながら息をスーッと吸う。 ゆっくり戻すながら息を吐く。 こんな感じ。 次は組んだ両手を上に。 その時絡んめた両手はひっくり返して天井向き。そのまま上にゆっくり伸びて、伸びて・・・呼吸を整えて戻す。 そのまま右へ倒す。 左脇をストレッチ。 左へ・・・・・・・右脇をストレッチ。 同時に縮んでる方の贅肉を搾り出す感じ。 最後にもう一度上に伸びて、脱力(両手をはなしてストン! ぶらぶらリラっクス)息も吐く。今日は終わり いよいよ今月20日より~ (書店では3月1日~10日)詳細は後日お知らせいたします。 kaoto Mebumi
2007/02/14
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畳半畳あればできる超簡単ストレッチ&健康体操 その1 畳とか布団に上の下手な絵のように、足を伸ばしてすわる。 つま先を上に向け(アキレスけんを伸ばす感じ)次に足の甲を伸ばすようにつま先を下。 次につま先を内側に、その後外側に向ける。 (ムリなく) 足首を柔らかくすると肩や首すじのほぐれるらしい。数回やったら、両足をバタバタと左右交互に。 ? わかるかなあんまり絵が下手で、書いていて可笑しくなったから、絵なしで・・・ 正座する。 ユッタリとした気分で、両手を膝の上におく。 首を右にゆっくり倒す。 (左側の首筋が伸びるように、息を吐きながら) 同じく左に・・・・ 次に姿勢を正したまま、やはり首をゆっくり前に倒す(首の後ろが伸びる感じ) 次に後ろに倒す。 天井を見るように、ゆっくり(甲状腺の病気防止含めて)数回やったら、首を左からゆっくり回す。1,2,3,4、反対回しも1,2,3,4 両肩を上げる、(息を吸う)、ストンと降ろして脱力。(フー!息を吐く)何度かやったら、両肩を外に数回、内に数回まわす(よくやるアレ)そろそろ足がシビレルから、両足を伸ばして最初の体制。 開脚する。 最初はムリなく開く。 足の長さは関係なし 右手の平で右足、左手の平で左足の上部をパタパタ叩く。 2往復位(強すぎず) 体が柔らかかったら、できるだけ遠く(膝下方面へ)まで身体を前に倒してもいい。 次に足の内側、大腿部から膝の内側くらいまで。 次は足の外側。足の付け根から膝下まで。叩かれている足と叩いている手の毛細血管にも働くらしい。 それから握りこぶしでお腹を狸のようにポンポン。 おへそ辺りから、下腹部、左右骨盤の上。 そのまま両手を後ろに持っていって、手の甲で お尻をバタパタ、尾てい骨から徐々に上にあがる。(ムリなく)両足をゆっくり閉じて両足をパタパタ。 息を吐きながらゆっくり前屈。(お腹の脂肪をつぶすような感じで気楽に)この時、膝は曲げない方がいい。 息を吐きながら。 もどして、両足パタパタ。今日はここまで~:~:~:~:~:~:~:~:~:~:~: 息子に取られた宝物 そう、ギター型の木のケースに入った腕時計。 ビートルズ息抜き! 仕事仲間が夕飯をと!誘ってくれた。 そこは都内のライブ~ ご招待だから無料、ビール100杯までただ。 食べ物も沢山。パスタも・・ 「世代」 未来線の車窓より 真夏の休憩室 奏ちゃんの涙 恋してるでしょ? 偏見 キレた裕子 後追い退職 デートの下見 ヒーロー バンド名「ジェネレーション」 他・・・(今月完結します) かおと
2007/02/13
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入卒式のこの時期は、店に活気と華やかさがある。服装や会話、それに笑顔から仄々とした幸せが僅かに零れる。 静かなるベテラン小林太郎は、季節の移り変わる中で客層のサイクルやら賑わいを毛穴から吸収していた。 以前の会社の後輩、雄二と近い世代の二人はどこか似ていて、時折小林の後ろ姿に雄二が被る。 現状をおとなしく受け入れ、どこか内省的。 多くを語らない、人のことは干渉しない、されたくない。 イギリス留学から帰国した雄二の手紙にもあったように、どこか漂流しているようで案外、生真面目。「俺たちひょうきん族」を見て育った彼らは「漂流族」にならないように、自分探しをしているのか。 「 前略 裕子さん、体調が戻って『街路樹』の厨房にいるんだってね。驚いたな。 けど、俺もそうだったように人の気持ちは変わる、状況もね。思いもよらない現実に立っている自分に、自分で驚いているんだからね。 帰国してすぐに仕事が決まらなくて焦った時期もあったけれど、俺らを囲んでいたメディア環境、ゲームやネットに翻弄されたり役立ったり、何だかわからないうちにこの歳になったよ。 今の職場は留学中に学んだ家具、生かせるように頑張れると思う。ただ、何か『これでいいのかな?』って思うんだ。 人生のイメージがいまいち掴めないって言うか、正直わからない。 こんな時代だしな。 親父がもうじき退職。 『団塊の世代の技術者たちは埋もれない!』なんて気張ってる。「黄金の手」・・・・・・確かに今の日本を作った手だと思うには思うよ、漠然とね。 裕子さん、以前の仲間は派遣やフリーになってるらしいね。 また皆で会おう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・雄二 」 いまだ社員を拒む小林。 研修やら、売上げやら、そういうのがめんどくさい。型にはまりたくないと言う。 「もったいない! 」と仲間が言うが、そもそも結婚だって「そんなにいいものだとは思わない」 周囲の現状を見ていて、まるで最もらしく言う彼らに裕子も言葉がない。 裕子が小林と並んで従食をとっていると、汗を拭き拭き千尋が入って来た。「ああ、美味しそう! グラタン! 」「フロア―は落ち着いた? 」「ピークは過ぎたみたい。 裕子さん、警報機大変だったね! 私もいずれは当番。大丈夫かしら? 鍵を抜くタイミングが微妙らしいけれど」「ああ、もうそのことは言わないで。 落ち込んでくるから、また・・・・・」「ゴメン! あのねえ、毎週同じ時間にやってくるご高齢の夫婦がいてね」 裕子は小林が吐くタバコの煙をよけながら、グラタンのスプーンを置いた。「へえー、毎週同じ時間? ここの明治風のインテリアがそそるのよ、きっと」「オープンとともにドアが開くの。 品がよくて、仲むつましい二人はねえ」 千尋が、アップにしていた艶のある髪を解きながら裕子の前に腰掛けた。「エスプレッソを静かに飲みながら、ポツリポツリと話すのよ。たまに笑いを浮かべて。 いいなあ、ああいうご夫婦って」「きっと尊敬から感謝の時に入ったのね、そのご夫婦。 千尋ちゃんは30代ね? ラブラブでしょう? 」「子供のことに負われて、日が暮れる毎日」「ここが休みの日は下の娘とお出かけ? 公園とか? 」「うん・・・・・・越してくる前は近所の公園に行ったけど、それに大きな公園でバトミントンやったり、バスケットのリングもあって小学生もいたからね。 自然に入れたんだけれど、今は駄目なの」「どうして? 」「小さい集団を作っていて、入りづらいって言うか、結局公園の前を娘の手を引いて行ったり来たり。 狭い公園は縄張りみたいなものがあってさ」 小林が、落ちた灰をナプキンで集めながらチラッと千尋を見た。「公園デビュー?」 小林が低い声で訊ねると、千尋が体制を変えて「そうそう! 」と人差し指を向けて弾んだ。「何それ? デビューってジャニーズ事務所じゃあるまいし! そもそも公園って公共の場でしょう? 子供が可哀相じゃない」「今日こそ! 今日こそ!って思うんだよ。 砂場に行って凄く嫌な思いをした友達がいてね。 何気なく手を振ったら、親達が手を引いてさーっと去ってしまったんだって。 どうして○ちゃんと遊べないの? って聞かれて困ったらしいよ」「新顔にはそうやっていじめをするの? 」「そういうのもあるらしいけれど、彼女は社宅で目立っているから、綺麗だし」「親のいいなりに手を引かれてった子達だって不思議に思うでしょう。 大人のそういうのが子供に繁栄するんだわ! そういう子が小学生に入って仲間を無視したり目立つ子を仲間外れにする可能性もあるよね。 結局母親じゃん! ムカツク! 」「あら、裕子さん! 若者言葉、あれほど嫌がっていたのに、感染してる! 」 千尋はそういって明るく微笑み、更衣室の扉の向こうに消えた。小林が「うちの姉ちゃんも、公園で遊べるまで半年かかったらしい」と呟いた。「普通に挨拶して、皆で仲良く遊ぼうね!って時代は何処へ去ったの? 」 冷めたグラタンを口に運びながら、着替えをしている千尋の方を見て裕子が言った。「こっちが単独だから嘗めるのね! きっと近所で他にも同じ思いをいているお母さんいるよね。 手を組んでこっちも集団で潔く入ればいいのよ! 『こんにちわ―!』って大きな声を出して、飛び切りの笑顔でね。 相手の子供達はこっちも複数なら、たまには違う子と遊びたいとか思うでしょ、ね? 」「圧倒させちゃう」 そういう自然な融合を応援するような小林の一言。 瞳から広がった光彩を、ドアの向こうの千尋に見せたいと、裕子は思った。
2007/02/12
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おおらかで少しアバウト。 必要なものとそうでないものを見分けながら店のムードメーカー的存在の竜也。 裕子や慣れない奏が、訊けなくて迷っている時に案外頼りになるのが彼だ。裕子が重たい皿を運ぶ時でも「下、滑り易いよ、気をつけて」とかなかなか点火しないガススイッチにムキになってカチカチやっていると「コツがあるんだよ」と言ってやってくる。奏がお冷グラスを割った時も、彼はホウキと塵取りを持って何時の間にそこにいた。「ケガ、してない? 」 と、こんな調子だ。 竜也も奏も事情は違うが母子家庭。 大きく道を踏み外す事なく、何故か夢が音楽に向けられていた。夢を熱く語る若者の瞳は真っ直ぐで、それだけで勲章をあげたくなる。竜也は「街路樹」でアルバイトをして、楽器を買い、高校の学費の補充もし、あげくに弟に小遣いなんかもあげている。 路上ライブでも、学校の文化祭でもけっこう人気があるらしく、ひっきりなしにくちばし(携帯)が鳴る。 やかましい着信音が、更衣室で野放しにされ、凄く疲れる時もある。 その日、竜也はヤングママの命令と裕子の脅しで、携帯電話を買う為街に出た。「この道よね? 」「うん、ってかさあ、さっき来た道を帰ればいいだけじゃん! 」「あれ? さっきこの道通らなかったよね? 橋なんか渡ったっけ? 」「ああ、橋だー、渡っちゃったし。 もしかして香川さん、方向音痴? 」(ドキ! ) 裕子はブレーキを踏んでハンドルを抱えた。 信号ではスモールランプをつけた車が列を作っている。 「ああ、日が延びてきたねえ。 ちょっと前ま今頃、暗かった」「とぼけてるね。 うー、あのさあ、俺きもい! 」「きもい? 」「そう、気持ち悪いんだけど」「私の顔? 」「違うよ! 車酔い・・・・・・」「え! 」 青い顔をして、まつ毛の詰まった瞼を下ろし、助手席で竜也が斜めに傾いていた。「ごめん! どっかで止まるね」 車は、「街路樹」東口店に着いた。「宿題とか大丈夫? つき合わせちゃって、車酔いさせて悪かったね」 裕子が「よいしょ!」と腰掛けた後、本質は臆病な二人は初めて向かい合った。「別にいいんじゃん! 携帯買ったし。 俺、腹減ったな」 竜也の車酔いはあまりに回復が早い。「え! もう治ったの? じゃあ夕飯食べようか。 ここは少し割引効くもんね」「夕飯ねえ? 久しぶりに聞いた言葉だ」 その後、夕飯はほとんど家族とは食べないのだと俯き加減で竜也は言った。数箇所切れたジーパンと、流行のジャケットの下から薄手のTシャツを覗かせている若い竜也に合わせて、保護者裕子はジーパンと少し無理がある短めのジャケットを着ていた。 けれどジーパンの下は厚手のタイツ。 若い姉ちゃんのように素足にソックス、そこまで無理はきかない。 「何食べる? 」「俺、から揚げとアンチョビのピザと、それからプリンアラモード」「え! 知らないよ、また酔っても。 じゃあ私、鮪丼とチョコレートパフェ! 」「ええー、鮪はわかるけど、チョコパ? オバサンはあんみつにすれば? 」「煩い! オバサンがいないとあんたは生れてこなかった! わかるか? 」 客層が高齢化してきたこの頃では、「街路樹」のようなイタリアンレストランでもパスタやピザの他、ご飯ものをメニューに加えていた。 まぐろ、いくら、蟹等にとろろやら刻み海苔、針ネギをのせ、ワサビを加えたものだ。「香川さん、子供いるの? 」 ピザの上で溶けたチーズの糸をクルクル巻きながら、竜也が言った。「いないよ、いない」(生れていれば、きっと目の前にいる君と同じ位よ) 夫秀明の忠告を無視し、仕事に舞い上がって健康を過信した事で生じた悲劇。裕子は、二度と子供が生めない身体になった。やがて夫婦は幾つものボタンを掛け違え、「悲劇」は二人の絆を深くすることを選ばなかった。 そう、不況という波が押し寄せ、健康を害して落ちるその時まで・・・・ その晩、初めて新しい「くちばし」が鳴った。受信中「大沢竜也 今日はゴチになりました(笑)」 竜也からだった。 (うるさい着信に勝手に説定したな。 しかも何で笑の文字?)「あのさあ、店長に教えてもらってたけど、明日初めての鍵開けだよね。 あれコツがあるから。 頑張ってね! んじゃ」返信「あ」返信「ん? 空メールだし(笑)」返信「あのね、店の鍵開け大丈夫だよね。 皆やってるしね、言われた通りするよ」返信「大丈夫だよ、普通にやれば警報機はならないよ。 泥棒じゃないんだし、ガンバレ」 高校生に励まされた。 あくる朝、竜也の予感は的中した。緊張は失敗の元。 あまりに大きく鳴る警報機は店内はおろか、外まで響いた。「何! どうして? なんで? ちょっと消えて止んで! お願い~」 警備会社の車がやって来た。「どうされましたか? 」 金のボタンをつけたお巡りさんより立派な制服、まさかの事態が起きた。そこには怖いけれど、案外イケメンが立っていた。そして裕子を上から下まで警戒の眼差しで見た。「私、私はここの・・・鍵開け当番の人ですー 人なんですー 人」「?・・・・・・」 次回 世代 「公園の事情」
2007/02/11
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たて続けに受けた皿の補充をすませると、小林の動きが慌しくなった。デザートが混み始めた。 裕子はマイナス32度の冷凍庫に入る。(息を吸って! それ! )気合いを入れないと、薄っぺらなコックコートのオバサンには堪える空間。生クリームやケーキ、マンゴーなどを冷蔵庫に移動させ、いつでも小林に渡せるように整える。 さっきのように、あれもこれも略語で羅列する西田より、静かなるベテラン小林の方に意識がいくものだ。 (黙っているだけに大丈夫かな? と・・・・・・嫌な性格、そして私はかわいそう!) やがて2時になった。 朝の30分が時給の半分として認められないことを知り、せめて帰りは定時で帰らないとと決めていた。(人が足りない・・・・・・誰か一人休んだら、ここはパニックになる)疲労がピークに達した裕子は、6箇所のゴミを白い大きな袋に入れる。「後ろ、通ります! 」「前、ちょっと失礼します! 」と声を掛け、腰を屈めながらビニール袋に詰めていく。「節約」とあちこちに貼られているから、袋も二枚は使えない。 後ろの通路にコンクリートで囲まれたゴミ置き場がある。 裕子はズルズルと袋を引きずり、バックヤードの後ろのドアをやっとの思いで開けた。「よいしょっ!と。 ふー、終わった・・・・・」 体重をかけて袋の空気を抜き、ついでに自分の疲れも抜きながら、腰を降ろした。「時給の重たさ、ありがたさ」 白いゴミ袋の脇で、裕子は暫く枯れたサンタクロースになっていた。 交代で休憩に入る者、裕子や千尋のように帰る者が休憩室に集中する2時から3時。各々が従食(従業員用の食事)を持ってやってくる。 裕子は30分ずれてやってきた竜也を見た。「お疲れー」 竜也は少しも疲れているようには見えない。「今日は何を食べてるの? ああ・・・・・ほうれん(ほうれん草とベーコンパスタ)ね」 竜也は1時間の休憩の後、またあの戦場に戻っていく。裕子の隣で我武者羅にごはんを口に運ぶ矢沢も同じだ。 更衣室で着替えをはじめた千尋が「今日は奏ちゃんと一緒だったから少し疲れた」と言っている。 「私に仕事を教えてくれた人も、きっと疲れたんだろうね」「うん、覚えが悪いし」 竜也がそう言いながら、裕子のお冷グラスの横の携帯を持った。「何これ? 」「くちばし」「ええ? オバサンは携帯をくちばしっていうんだー」「これ、機種古すぎてプレミアつくね」 裕子はほうれん草が咽喉につかえた。「おまえ、黙って食えよ! 一言多い奴だな、まったく! 」 矢沢が兄貴のように言った。「新しいの欲しいんだけどね」「あら、香川さん! それなら竜也君につき合わせて買いにいけば? 」「別にいいけど・・・・・・ってかさあ、使いこなせんの? 」「おまえ! 冷めるぞ、ランチ。 さっさと食べてギターでもやってろ」 矢沢が竜也の頭をちょこっと叩いた。早番の夜は路上ライブをやっているという竜也。 色んな面で怖いものなしだ。「あのさあ、大沢竜也君! 」 裕子が突然立ち上がった。 そして竜也の前に数歩近づいた。千尋が更衣室の扉に寄りかかって興味深く二人を見た。「忘れていないよねえ、あの晩のこと? 」「んー? あの晩? 」 矢沢が「ん? 」とか細い声を出して裕子を見上げた。裕子はサロンの紐を解きながら、一歩一歩竜也に近づく。「言ったわよね? あの晩、仕事の説明会の時。 私を見るなり・・・・・・『なーんだ、オバサンじゃん! 』って! 」 竜也は少しずつ後ずさりをして、引きつった笑いを浮かべた。「だって、だって本当のことじゃん! 」 笑いを堪える矢沢。 クスクス笑う千尋。 あまりに正直過ぎる竜也の言葉に裕子も風船の空気が抜けるように、身体がしなしなと崩れていった。そして多くの笑いは脳に反応して免疫力をアップし、疲れを飛ばしてくれた。 次回 世代 「鳴り響く警報機」 撮影yuu yuuさん
2007/02/09
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レストランの朝は同じ音と導線が繰り返される。立ち上がる湯気、漂う匂い、あがる温度と調理人が和合する。次第に読める阿吽の呼吸、一瞬の視線の送り合いは現場を知り尽くした配慮の行き来。フロア―もキッチンも手際よく料理と笑顔を提供する為に、多くの機転を発信させる。 先週入ったばかりの池田 奏は、店長の指示でヤングママの千尋に仕事をおそわっていた。 不安な面持ちで大きな目をパチクリさせて「はい! はい! 」と千尋の後をついていく。 裕子が数ヶ月前そうだったように、のみ込めない事でも取り合えず「返事をしなければ!」と無我夢中。 周りが皆ベテランに思えて、自分にはとうてい不可能と思いながら素直さだけを頼りに頑張るスタートライン。 奏(かなで)も竜也と同じ母子家庭だった。「街路樹」が小さな社会の縮図とすれば、裕子の年齢に多くなった離婚や、増えるであろう熟年離婚の影に凛と存在する綺羅星かもしれない。 そして彼らは何故か「普通」と言う言葉をよく使う。「それって普通じゃん」 離婚を含め、世に起きているいくつかの事が「普通」という麻痺に犯されているなら何を見つめ、見直せば未来の星がきらりと輝くのだろうか。 最初の一歩はきっと、さほど変わらない。自分で踏み出した一歩。 心のすれ違いや価値観のズレ、ある時は心無い仕打ちに出会いある人は先刻承知の覚悟を受け入れ、時に予測不可能に転倒しながら人は各々の歩幅で最終章まで歩き続ける。 仕事も結婚も生きるパーツの殆どが世間という厄介な外野と絡んだり、手を繋いだりしながら、そうして不安定な行政に立ち向わず、傍観せず共感もできず、時だけがちょっと早や歩きすることに誰もが焦る。 奏がバクヤードに氷をとりにやってきた。「はじめまして。 池田奏です」「香川裕子です! 私も新米、おまけに天然! よろしくね」 奏は色白で素顔が美しい二十歳。 透き通るような声と素肌が裕子には眩しい。奏が去った後、途中になっていた大根の千切りを続けた。「こっちで聞いていると、音だけは早いね! 」「音だけ? ムカツク」 竜也がラインからスタスタとやってきた。 足が長いから白いズボンから派手なソックスが見えている。 「どれー? 」 竜也はそう言ってまな板を覗き込んだ。「んー、まあまあじゃん! 」(こいつ! 母親ほどの年配者み向かって生意気な! ) 真っ赤なソックスがラインに戻っていった。「香川さん、オニスー取って下さい! 」 チーフの声だった。「スープチェンジですか? 」「違います。 オニスーです! 」 ここにきて一番困る業界用語、省略用語。 リーダー西田が先駆を切って当然のように使うから、洋介や竜也が格好をつけて真似をする。「オニスー? 」 わからないことは素直に聞くしかない。 自分の為だ。「オニオンスープ。 冷凍庫の右奥のパック」 小林が助け舟を出してくれた。倉田がいたら、皮肉のおまけが飛んできただろう。 「すみませーん! ライス皿が足りません」 フロア―から矢沢の声がした。(つまりはパンやパスタより、今日はライスが出ているという事、御飯を炊かないと)「はい! 今持っていきます! 」 裕子は50センチ程積み上げたライス皿を運んだ後、早速二度目の米をといだ。「香川さん、スパ皿とスープボール洗って下さい。 ポジションに気を配って不足ぎみの物を補充して下さい」 西田が言った。(五分たりとも遅刻してくるリーダーの言葉に素直になれないよ)「はい、ただいま・・・・・・」 次回 世代 「だって本当のことじゃん! 」
2007/02/08
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太陽はそ知らぬ顔で、東から西へせわしく移動した。過去と他人は変えられない。 ならば、希望のかけらをポケットに入れてオバサンの誇りを口ずさみ、図々しさとグルになって歩いていこう。 シフト表に倉田と西田チーフの名前がないだけで、食欲が倍になる。そんな自分がどこか虚しい。「おまえ、よく食べるなあ」「体力勝負! 」 秀明が新聞をずらして裕子の二杯目の「こんもり御飯」を見た。裕子は少しやつれた夫の横に「自殺者2万人を超える」という新聞の見出をみた。夫と同年代の倉田を想う。 訳ありの料理人、なぜか家族の気配が見えてこない。「来年あたりは3万なんて数になるのだろうか」と、ぼそぼそ話しながら朝食を終えた。 ひっきりなしにやってくる苦手のハードル、不況のハードル、越えても温和なんて甘い。ただ、次のハードルが多少高くなっても、勇気という剣が味方になる。 一年あまりの病の中で、天井を見つめながら「平凡」の贅沢さを知らされた裕子は二膳のごはんに心から感謝をする。 2月最初の土曜日。 気温2度。 外の元栓、温度チェックを終え、中の仕事にとりかかる。 12時を回った頃、ヤングママの一人古川千尋の一声があった。「9名様、お入りです! 」 切れのいい爽やかな声が響いた。 キッチンの面々はコンピューターから出てくるオーダーを待つ。 「何ですか、このレシートみたいなの? 」「フロア―の子がオーダーをハンディーターミナルに入れて、ここに打ち込むと・・・」「ハンディーターミナルっていうんですか、あのリモコンの複雑化したの」「そう。 とにかくしっかり頼みます! 香川さん」 9名の集合体はどうやら中高年の女性らしい。 オーダーの前からお喋りは忙しい。ダンスサークルの面々を思い出すと同時に、明後日はダンスの日だと言い聞かせる。浮腫みがちな下半身をストレッチ。 リズムに乗って血行促進、振り付け覚えて脳の衰えにブレーキをかける大事な日。 次々とドアが開く。 隣のグランドで野球があるらしい。 今日は混むと朝礼で言われた。美味しい料理をいかに素早く提供するか。 店長瀬川の口癖、もうひとつ「売上げ」腕とテンポと阿吽の呼吸。 チーフ西田の口癖、もうひとつ「節約」小林が帯びのようなオーダーを卒なくこなしている姿に、ついつい見惚れる裕子。口が開き、手が止まり、フライパンを自在に使いこなす姿に感心する。 倉田の視線がないから緩む。 ついでに知ってしまったリーダー西田の遅刻常習。 ありえない弛み。 「すみませーん! ルッコラ取って下さい」 竜也が言った。「はい! 」 我にかえった裕子が冷蔵庫に入る。 2月の冷蔵庫は氷河期の若者より寒い。左に並ぶ多くの野菜やハーブ類。 それらの指定席を今だ覚えられない。 クレソン、パセリ、バジル・・・「ない!」というより、正直探せない。 なぜならクレソンを知らないからだ・・・・・・「すみません! どのへんですか? みんな同じ葉っぱに見えるんですが! 」「上から2段目の手前」 ベテラン小林は、自分の仕事をしていても周囲の動きにアンテナを張り、機転が効く。「ありました! ありがとうございます」 裕子はルッコラを覚えた。 (今日の収穫その3だ)スープに卵を落とすタイミングをこの歳で知った。(その2)「3番(トイレ)、行って来ます」 小林がトイレに向かう途中、バックヤードの作業台に準備したホテルパンをチラリと見た。そうして控えめに微笑んだ。 そこには、裕子がスライスしたレッドオニオンが入っていた。(その3としておこう) 撮影 pooh0529さん
2007/02/07
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1月21日 日曜日 タイムカードが一人で押せた。 「進歩じゃーん! 」と洋介が笑った。 茶色の前髪をキャップからちょっと出してチーフや店長の視線のスレスレを楽しむかのように立ち回っている。 裕子は昨夜夢にまでみたシフト表の前に張り付いた。 {キッチン} オープン~ 10時 小林太郎、宮沢洋介、香川裕子 ランチ~ 12時 大沢竜也、倉田茂夫 ナイト~ 18時 西田チーフ、・・・・・ やはり倉田の名前があった。 「ああ・・・・・・まるで受験の不合格発表を見たようだ」 裕子の胸は漬物石がのったように重くなった。「急がないと! 」 キッチンへの入り口脇に下げ台がある。 通るついでにラッカーを並べる。お冷グラス、ジュースグラス、ジョッキー、ワイングラス、デザートカップ用。深さが微妙に違う、が順番通りに何とか並べた。次にシルバーと呼ばれるナイフやフォ―ク、スプーンを漬け込む洗剤入りのかご、灰皿用生ゴミ用のザルを配置する。 真ん中はパスタやピザの皿用に広いスペースを確保しておく。とりあえず、フロア―には迷惑をかけない最低のことをやった。自分がどの流れに通じる作業をしているのか、掴めるようになったら仕事も楽しくなるのだろう。 そんなことを思いながら昨夜キッチン全体の平面図を書いたりもした。朝一番の機能を作動させてから6箇所のゴミを出して帰る最後までの手順、内容、注意事項、を書き止め、カラフルなマーカーを使って冷蔵庫、冷凍庫の食材の置き場も整理してみた。ただ、宅配便や材料の納品、ゴミ収集車が来た時に裏口を開けに走るのも裕子の仕事となると、マニュアルより実践、つまり場数がものをいう。 「何があっても、休まず行くこと」 結局最後はこう結論つけてノートを伏せてしまう。 そしてその通り、こうして時計の針と競争しながら、スタンバイ表と睨めっこ。 済んだもから鉛筆でチェックをしていく。新米の様子をうかがう視線に、僅かに血圧があがる。感情がストレートで、イエスかノーでわかり易い洋介、キッチンに立たせたら下手な主婦(裕子)よりはるかに使える静かなるベテラン小林太郎。 8年のキャリアに誰もが一目置いている。 「朝礼でーす!」 誰かの一声があると、皆は駐車場に素早く向かう。通りの面した駐車場での朝の集い。 接客基本用語の唱和、街路樹の七つの心得、30期スローガン、引継ぎなどを行う。 一種のパフォーマンスとも思える朝礼は気持ちが引き締まり、チームワークという勘違いを与えられる。 11時、オープンと共に客が入って来た。日曜日は出足が遅いと思ったが、朝食と昼食を一緒に摂る家族連れが多い。1時間もすると、早くもライスチェンジ、スープチェンジの指示が出された。「後ろ、通ります」 裕子は両手で重たい鍋を持って、大きな声をかけていく。その掛け声は、大火傷や怪我を防ぐ大切な一言なのだ。 1日何度も交わされる言葉「後ろ、通ります! 」機敏な動作を必要とされるフロア―のメンバーもトレンチ(トレー、おぼん)に触れて料理を落としたり、食器を割ったりしない為に欠かかせない。 活気があった。 彼がくるまでは・・・・・・。ひとりで戦う孤独な兵士に、仲間は透明の翼で包んでくれていた。 「こんにちは」 小林がその声に少し反応した。 12時入りの倉田が入って来た。裕子まな板の上にコロコロ置かれたレッドオニオンを切っていた。「これは何だ? 」「レッドオニオンです」「見りゃわかるよ、そんなもの」 倉田は緊張した裕子の脇に来て、オニオンの欠片をつまんだ。「スライスになっていないな。 透けていないじゃないか! 」 キッチンの空気が重くなった。 小林は黙々とパスタを作っている。シフト表を見て覚悟はしていたものの、倉田には五感が特別な化学反応を示すらしい。たぶん血液なんかも逆流する。 「主婦を何年やっているんだ・・・・・・」 倉田がそう言ってラインに向かった。 裕子の包丁の音が止まったその時だった。「チワ―っす! 」 空間がすーっと軽くなるような声とともに、大沢竜也がやってきた。(なーんだ、オバサンじゃん!) 裕子にあの一撃をくらわせた声、おまけの顔がそこにあった。「どもー! はじめまして、大沢っす! 」(はじめましてじゃないだろう!) 竜也の緊張感のない声、まるで素のままありのまま。「ああ、オニオンスライスね。 ってか香川さん泣いているの? 」「おまえ! いいから早く前にきて手伝えよ。 めっちゃ混んでるんだぞ」 洋介が竜也を呼んだ。「玉ねぎが目に沁みただけです! 」 誰も聞いていない。 その夜裕子は、ス―パーで大量に買ったレッドオニオン(赤玉ねぎ)をシンクに転がしていた。夫の秀明がいつものように不景気な顔で帰宅した。「おまえ・・・・・・大丈夫か? 」 裕子はひたすら切った。 まな板の上でストン、ストンと玉ねぎが透明になるまで切り続けた。「今に見てろよ、倉田のオッサン! 嘗めるなよ高校生!・・・・・・」 夜が静かに更けていった。 次回 ブレイクタイム。いつかどこかで
2007/02/05
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1月20日 土曜日 9時着。 車内で店の鍵が開くのを待つ。やがて太陽の陽を浴びながら一台の車がやって来た。 リクライニングシートを戻した裕子は、今朝の鍵開け当番が小林太郎だとわかった。小林は車からゆっくり降りると、裕子の軽自動車をちらり見てから意味もなく空を見渡しアクビをしている。 手にはいつもの缶コーヒーのBOSSを持って、羨ましいほどおっとりとした歩調で裏口へ向かった。 裕子が着替えを済ませ休憩室に出ると、小林はタバコの火を消して「どうも」と言った。「おはようございます。 私は30分前にキッチンへ入らないといけないので」 裕子は眉毛もまつ毛も濃い立体的な小林の顔を見た。 そして軽く頭を下げて厨房へ向かった。その日タイムカードの前で立ち往生している裕子に、優しく声をかけてきたのは矢沢だった。23歳。 小林と洋介の丁度間の年齢らしい。 はじめてダンスサークルの面々とこの店に客としてやってきた時、ほど良い接客対応と久々に見る爽やかな青年に関心したものだ。 それが今、彼の声をすぐ後ろで聞いている。(ドキ!)「ごめんなさい。 なかなか覚えられなくて」 矢沢の指は長くて綺麗だった。 ギターを弾いていると誰かの話の中で知った。「自分も最初は同じでした。 何度かやれば覚えますよ」「ありがとうございます」 矢沢は広いフロア―に向かっていった。 厨房へ入り、丁寧に手を洗う。温度チェック、元栓チェック、換気扇、暖房、チーフに教えられたことを指先確認しながらひとつひとつ行う。 順番は11時オープンには必ず準備されていなければいけないことから始める。つまり、そういうことなのだ。不慣れな手つきで米をとぎ、同時にスープの準備をして、シンクに水をはる。レタス、水菜、サニーレタス、ロメインレタス、レッドキャベツ、を切る。大根とたまねぎは千切りとスライス。 ブロッコリーも忘れずに・・・・・・。 10時になると、小林がゆっくりと自分のポジションのラインに立った。(さすが、ベテランは慌てない。 貫禄だわ、あのアクビも余裕の呼吸としておこう。 ゆとり教育か、弛み教育か、受験戦争かgoing my way(わが道を行く)か彼は世代の流れなど、まるでどうでもいいかのように、歩き、話し、黙々と働く)「ウォッシャーいつ立ち上げるの!」 聞きなれない太い声がした。死角になっているオーブンの向こうから、裕子より10歳位年配の男性が現れた。コックコートが馴染んでいた。 ネームプレートの「倉田」の文字に目が行くと「はじめまして」 と思わず頭を下げた。 「聞いてないとか、チーフから? ランチのピークにどれだけの皿やグラスを洗うか、早くスイッチ入れて! 」 立ち上げる・・・・・・そういうことかと裕子は気づく。 その投げやりな口調と、てんてこ舞いの裕子のやりとりを、淡々と準備をしながら小林は聞いている。 見ない振りをして意識が見ている。 先日の洋介と同じようにそうやって何人かの新米が、辞めるか伸びていくかを見てきたのだろう。小林は、点火の遅いガスのスイッチをカチカチと何度も押し始めた。「大丈夫ですか? 元栓は開けたのですが」「人のことはいいんだよ! ほら、ブロッコリーがしなっちまう! 」 倉田が大きな声を出した。「あ、はい」「食材をホテルパンに準備してくれないと、ラインがオーダーに迅速に応えられないんだぞ」「ホテルパン? 」(ホテル用のパンに、ブロッコリーを突っ込む? そんな物があるわけない)裕子が緊迫していると、後ろを通りかかった小林が、銀色の容器を裕子の横に置いていった。言葉もなく、極自然に、彼は裕子に「ホテルパン」を教えてくれた。(ありがとう。 これがホテルパン、ここに食材を入れておく。 ラインに並んでいるアレ) 小林や矢沢のような若者の恩着せがましくない優しさ、ダンスサークルのオバサンパワー、倉田のような直線的な厳しい視線。 これらがひとつの鍋に入れば、きっと美味しいスープができるだろう。 たぶん世の中も・・・・・・ 次回の世代 「少しは成長したじゃん! 」 撮影kitakitune05さん
2007/02/03
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薄暗かった厨房の照明が点くと、換気扇やエアコンの音が響きはじめた。ガスの元栓を開け、食器洗い機のスイッチが入る。 何もかもが大型、業務用は家庭の台所とはすべての音が違う。同時にフロアーでは、掃除機の音、テーブルのセッティングの音と同時にまるで一分をも惜しむかのように従業員が動き出す。 こうしてレストラン「街路樹」の朝がはじまった。「香川さん! 」 チーフの西田の声だった。「おはようございます」 裕子は幾分緊張の面持ちで挨拶をした後、西田がワイン色のタイをしていることに初めて気づいた。 チーフカラーなのだと思い、自分のタイの結び方、サロンの掛け方を思わず点検した。 なぜなら、西田の視線が空かさずそれらのチェックに動いたからだ。「香川さん! タイが曲がっています。 結び目は逆三角形になるようにと言いました」「は、はい」「それから、バックヤードの方は30分前には厨房に入って下さい。 ガスも水道も元栓は外にあります。 それから中の各箇所、換気扇も忘れずに・・・・・このスイッチです」 今朝はタイムカードを教えてくれた洋介が、全てやってくれたらしい。「あのう、ノートに書きたいんですが」「それは後にしましょう。 11時のオープンまでに全てが整っていないといけないので」 西田はそう言うと、A4サイズのレシピ表を裕子に見せた。見慣れない業界用語がずらり並んでいる。裕子がわかったのは、大根千切り、ブロッコリー、パセリアッシェ、海老、カツ。「香川さん! とにかく御飯を炊きましょう。 それからスープ鍋にお湯を沸かします」「はい! 」 西田が手際良く米を洗い、大きなガス釜のスイッチを入れた。「タイマーをかけます。 50分に合わせます・・・・・こうです! 」 大きなスープ鍋のお湯が沸騰する。 隣でブロッコリーがゆであがる。「ブロッコリーは2分、直ぐにザルにあけ、氷水で15分しめます」 裕子はだんだん目が回ってきた。「あのう、やっぱりノートに書かないと、後では思い出せませんし」 裕子はポケットから小さなノートを取り出した。「えーと、御飯、ブロッコリー冷やす、スープ鍋をふたつ沸騰・・・それから何だかんだ・・」「やりながら覚えます。 スープは日替わりです。 今日は中華、明日はオニオンと三種のスープを回していきます。 水の量も全て異なります、ここに書いてあります」「え! そうなんですか? 」 ラインと呼ばれる調理台やガス台があるポジションで、洋介がにやにや笑いながらたぶん、いつもの段取りをしていた。 パスタとアフターと呼ばれるデザートを作る者。ピザ、ドリアなどオーブン使用の料理と、ハンバーグ、ステーキなどの鉄板使用の料理を出す者。 日替わりランチを作る者。 ラインの前方はフロア―とのカウンターになっており、出来上がった料理をカウンターに置き、合図ボタンを押してフロア―に知らせる。後方はシンクを真ん中に右にガス台、パスタをゆでる専門スペースがあり、バックヤードとの物のやり取りがし易いように、やはりカウンターになっていた。 つまり裕子が働くバックヤードからは、ラインの面々も、フロア―に運ばれていく様子も見えることになる。 裕子の後ろは大型の冷蔵庫と冷凍庫、倉庫と裏口へのドアがあった。 ここの平面図と導線もしっかり書いておかなくては・・・・・・と朝一番に思ったことがどこかへ追いやられた。 それどころではなくなったのだ。「すみませーん! チーフ、ラッカーをならべてくださ―い」 フロアーの若い女性の一人が大きな声で言った。「香川さん! ちょっとこちらへ」「はい!」「お冷グラスを下げてきた時、この棚の真ん中にこうして置くんです。 ですからラッカーを前もって並べておきます。 グラスやお皿が溜まったらウォッシャーをかけます」「あのう、ちょっといいですか? このレシピ表はどうするのですか? それからラッカーって何ですか? ウォッシャーってどれのことですか? 」 レシピ表の左縦に並んだ多くの文字。 業界用語、スープの水の量、タイマー。窮屈に耐えられなくなった脳細胞が、裕子の頭で暴れ始めた。 不安げに西田を見ながら裕子が、多くの音と動作の中で、一人動きを止めた。 「あのう・・・・・これ全部私がやるんですか? 」 湯気の中で西田がめがねを曇らせていた。「はい。 バックヤードの仕事です」 小林太郎がボサーっとガス台の前にやってきた。「スープ、煮立ってますよ~」 次回の「世代」 人のことはいいです!撮影 kitakitune05さん
2007/02/02
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