成定 竜一~高速バス新時代~
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昨日付けの『東京交通新聞』で、「ネット販売に活路 高速路線バス各社 楽天サイトなど出品」と非常に大きく取り上げていただいた。リード部分から引用すると<輸送人員の低迷を続ける路線高速バス各社が自社路線のウェブ販売に打って出ている。楽天バスサービスが運営する高速バスの予約サイトに登録し、首都圏発の新規需要掘り起こしに挑戦しているもの。若年層や外国人など従来の路線高速バスとは違う客層開拓に成功する会社も出始めた。ウェブ上の競争もあるが、「利用者に人気のライバル社を研究し、利用者に選ばれる商品を開発したい」と市場巻き返しに向け意欲を燃やしている>。私たちのサイトで既に取扱が始まっている高速路線バスのリストのほか、弘南バスと南海バスのコメントが紹介されている。弘南バスは<「利用者が他社との一覧から車両や価格など多様な情報からバス商品を選ぶ仕組み。路線バス会社は運賃的な魅力は弱い分、別の魅力を打ち出し人気商品を作りたい」と前向きだ。同社では近く、乗合部から高速バス部門を独立させ専門部署を設置する。人気のあるライバル商品を研究し自社の新たなサービス戦略を練るという>。南海バスも<「高速道路料金1000円、インフルエンザ禍…。マイナス要因が続いた。新しい販売方法にチャレンジするときだと判断した」><ウェブ上の競争にも「値段が高い分、安全性、快適性、自社のターミナルや待合室などアクセス性の高さなど他社にはない優れた点を押し出していく」と話す>。両社とも非常に前向きなコメントだ。なお記事では私たちのサイトについて「バス商品のカタログ販売に成功した」とし大都市圏の若年層掘り起こしに成功したことを紹介した上で<大手バス会社の高速バスウェブ販売は、地元路線沿線顧客中心の閉鎖的な市場だった路線高速バス市場を大都市部のオープン市場に一気に広げる可能性を持つ>としている。このような記事、特に事業者サイドのコメントなどを読むと、業界内の様々なバランスに配慮しながらも私たちの思いを理解した上で取扱をご決断くださった事業者の経営者、担当者の皆様にあらためて感謝したくなる。記事を読んでいて自然に頭が下がるほどだ。しかしそれ以上に嬉しいのは、彼らの決断の背景に、ちゃんと彼ら自身の現状認識と次への戦略が隠れていることだ。たしかに私は、一部の事業者にはもう4年ほども通い続けており、ストーカー並みの「片思い」だ。もし、その思いを意気に感じて「そこまで熱心に通ってくれるなら契約するよ」と言ってもらえるのなら、営業パーソンとしてそれはそれで嬉しい話ではある。しかし、私(あるいは私の会社)にとっては、高速路線バスの取扱をさせてもらえる事業者が増えることそのものが目的ではない。ましてや、私個人の意気込みの強さで泣き落としに成功すればいいなどとはぜんぜん考えていない。大切なことは、既存事業者の皆様が彼ら自身の問題として販路拡大に取り組み、まずは小さくてもいいからその成功体験を体で感じることなのだ。地域独占で平場の路線バス事業を営んできた既存事業者においては、販路拡大や認知向上がすぐには数字(輸送人員や売上)に繋がらない。しかし何度も繰り返すが高速バス(それが「路線」業態であろうと「ツアー」業態であろうと)は鉄道や航空など他の輸送モードに対する挑戦者の立場であり、販売サイドのちょっとした成否により数字が大きく変動する。まずは、小さくてもいいから「自ら数字を作り上げる喜び」を体感する必要がある。私たちの社内では「インターネットは自動販売機ではない」というフレーズをよく使う。インターネットという無限の広がりを持つ空間に無限ともいえる数の商品が並ぶ以上、受身の姿勢では何も売れないのが実はインターネットの世界である。これまで高速バスの存在や魅力を知らなかった人たちを中心に、一人でも多くのお客様をサイトに誘導するのは私たちの仕事だ。そこからは、各事業者や各企画実施会社と、当社側の担当スタッフ(インターネット・トラベル・コンサルタント)との二人三脚になる。病院でお医者さんが「今日はどうしましたか? 熱は? 痛みは?」とまずは尋ねそこから適切な治療法や薬を選び出し、後は患者と医師が一緒に病気に対処していくように、それぞれの事業者の強み弱みを把握し、サイトに訪れたお客様に適切な商品に辿りついてもらえるよう、サイト上の見せ方や新しい商品を一緒に作り上げていくのだ。ちなみに余談だが、上記記事のお隣は京成バス小田会長のインタビューだ。<各自治体はバスは民間の仕事で補助金・助成金を出せばよいと考え「地域交通は自らの責任」という考え方が伝統的に薄い。公共サービス感が文化的に欠如しているのだ。ニューヨークやワシントン、カナダ・トロントなど欧米各都市では逆。基本公営または5割程度を公が持つ半公営が常識になっている。日本では赤字の地方路線を民間が必死で維持し、都市部の黒字路線を公営が抱える逆転現象まで起きている。ローカル乗合路線は世界のすう勢として公営化に向かっている>。全く持って同感である。この種の「地域交通は本来的に公の仕事」という考え方は、国土交通省や日本バス協会などの公的な文書、あるいは大学教授など研究者の論文では普通に見られるが、小田会長のような民間バス事業者の経営者クラスからはあまり聞かれなかった。その点、乗合バスの世界で重要な存在感をお持ちの小田会長の今回のご発言は何かを揺らすかも知れない。あくまで私の個人的な捉え方だが、「赤字路線の維持に必死」な地方の事業者ほど、自らの存在意義を懸けて自らの領分を守ろうとしてしまう。「路線バスは公の仕事」と言ってしまえば最後、自分たちの仕事を取り上げられる気がするのだろう。しかし、バスを取り巻く環境が厳しさを増す中、これ以上、内部補助に頼った従来型のモデルでは、地域住民のためにバスという輸送モードを維持することも困難になるし、同時に企業としてのバス事業者も成立しなくなる。交通基本法制定をよき契機として、日本におけるバスサービスの維持のために皆で必死に考えるタイミングが来ているのだと痛感する。この、「高速バス拡販におけるウェブの活用」と「公共サービスとしてのバス」という相反する二つの話題が並んで掲載された今週の同紙の紙面は、我が国のバス産業を巡っては、様々な方面に大きな課題がまだまだ転がっていることを実感させるものだ。あとは、その課題の多さを重荷に感じるか(あるいは重荷ゆえにあえて目を閉じるか)、それとも戦い甲斐があると捉えるか。もちろん私は、後者である。
2010.08.10
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