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先週、南部バスとウィラー・トラベルから大きなニュースが発表された。南部バスが、それまで国際興業、十和田観光電鉄と共同運行してきた八戸-東京線「シリウス号」から撤退し、同時に、ウィラーと提携するというものだ。7月以降は、ウィラーが企画実施(催行)する高速ツアーバスについて南部バスが運行を請け負うという形になる(もっとも、ウィラーの青森-東京線については4月から既に南部バスが運行をしていたけれど)。なお私のサイトはウィラー全便の席の販売を手伝っているので本商品もまもなくサイト上に登場する。以前から、「高速路線バス=既存事業者、高速ツアーバス=新規参入組」という固定観念を捨てるべきと繰り返し書いてきたが、この提携がその「答えの一つ」であることは間違いなく、ウィラー側の粘り強い交渉と、南部バス側の勇気ある決断に心から賛辞を送る。昨年3月に『運輸と経済』の「特集・新時代の高速バス」に詳しく書いたので詳細は図書館ででも読んでいただきたいのだが、「心情的」な部分をいったん横に置けば、高速路線バス、高速ツアーバスそれぞれの長所短所は、大きく「制度」的な側面と「営業面での事業者の特性」という側面に分けられる。制度的には、「路線」の長所はわかりやすい停留所を設置できることであり、また予約や発券行為そのものは簡便な点(「ツアー」の場合は旅行条件書の手交などが必要で、行為そのものの簡便さでは「路線」に分がある。ウェブ予約→決済の場合はそれほど大きな差には感じられないが)であり、特に車内発券が可能な点はまさに「路線」最大の強みである。逆に「ツアー」の長所は、商品設定が簡単なことであり、その運用(価格変動や繁忙日の傭車など)も自由度が高い点である。また営業面では、あくまで一般論だが、「路線」は主に地方部において高い認知度を持つのに対し、「ツアー」はウェブの活用に代表される新規需要の掘り起こし力に強みを持つ。車内発券こそ「路線」最大の強みと書いたが、したがって、多頻度で運行されフリー乗車の比率が高い比較的短距離の高速バスについては「路線」業態が圧倒的に有利である。逆にほとんどの乗客が事前に予約・決済をする長距離夜行路線では、どちらかというと「ツアー」の方がやりやすい。もっとも、「路線」的なフリー乗車や当日発券を望む利用者もいないわけではないし、レベニューマネジメント概念に基づくリアルタイムな価格変動やグレード別の多様な座席タイプの品揃えはまさにウェブ予約の申し子で、紙の時刻表と電話予約、窓口発券ではオペレーションが煩雑になるため、全ての利用者が「ツアー」になじむとも思えない。それを前提に地方の既存事業者(例えば南部バス)の強みや弱みを因数分解すると、彼らの最大の財産は八戸側での圧倒的な認知度である(それと、もちろん充実した運行ノウハウも)。一方、ウィラー(と、その販売のお手伝いをする私たちも)は、首都圏に代表される広範囲なマーケティングでは自信があるが、八戸地区といった狭域マーケティングでは地元の既存事業者に劣る。その意味で今回の提携は営業面ではお互いに十分な補完関係を構築している。商品の性格を見ると、上記のとおり「ツアー」の柔軟さは活用できるものの、南部バスの窓口で発売しようとするなら窓口ごとに旅行業の営業所として届出が必要で、そのための前提条件整備など「路線」を発券するより煩雑となるなど、メリットデメリット双方あることがわかる。もっとも、もしこれが全くの新規参入なら、「路線」業態での参入には障壁が山ほどあるので、多少のデメリットには目をつぶり「ツアー」を選択するのが現実的だが。また業態の選択とは別の話として、ウィラーやオリオンなどが企画実施しその運行を請け負う形に切り替えれば、乗車率が上がらなかった際に赤字となるリスクは企画実施会社側に全て任せ運行業務から上がる最低限の利益は確保できる反面、乗車率が高くてもバス事業者側が手にする利益は低いままで「ローリスク・ローリターン」だ。つまり、既に「路線」として運行してきた実績があるなら、あえて「路線」から撤退しウィラーやオリオンと組むことにはメリットもデメリットも存在する。ざっくり言うと、多頻度昼行路線では「ツアー」に転換する必然性など全くなく、長距離夜行の場合は該当路線が置かれた環境しだい、となる。同じ青森県の弘南バスが「津輕号」でそうしたように、首都圏側で立派な停留所を使える「権利」を持ち、かつ単独運行のため(または共同運行先と意思疎通がうまくいっていて)意思決定が簡単な状態であれば「路線」のまま運行を続け、売り余らせそうな座席だけを私のサイトに登録して乗車率の向上を図ればいいし、南部バスのように既存の共同運行スキームから飛び出すとか新しい区間に参入するとかの場合はウィラーやオリオンに任せてしまうのもテだ。もちろん、「津輕号」と並行して弘南バスが自ら高速ツアーバスにも参入したように、自社ブランド・自社企画実施による高速ツアーバスも一つの選択肢である。ちなみに私のサイトをはじめとした「総合予約サイト」は、事業者自身が売れ残りそうだと判断した座席だけを管理画面から登録し、その結果予約につながればその実績に応じて手数料が発生する形なので、登録する座席数は事業者側が乗車率やコストを勘案しながらリアルタイムに増減させる必要があり(もちろん「出しっぱなし」でも結構だが、余計なコストが発生してしまう)、そのノウハウは高速ツアーバス企画実施会社が十分に持っているのでウィラーやオリオン企画実施にしてしまえばその分の手間とノウハウはバス事業者には不要で済む。つまり、今回の南部バスの決断“だけ”が「正しい答え」というわけではなく、それぞれが置かれた環境に応じて複数の選択肢がある、ということだ。先週書いたホテルの例をここで思い出して欲しい。自社ブランドにこだわった京王と、ハイアットのブランドを掲げた小田急は、それぞれが置かれた環境によって別々の戦略を選びそれぞれに成功した。高速バスも同様だ、と考えるのである。本日は、既存事業者の皆様の「心情」についてはあえて無視して理屈から導かれることだけを書いたが、実際にはこれに「過去の経緯」「心情的な背景」が加味されることはもちろんやむをえないかも知れぬ。ただ大切なのは、自分たちの目の前にあるあらゆる可能性に常に門戸を開き、あらゆる選択肢を比較検討することだけは、手を抜いてはならないということである。
2010.05.31
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新宿西口に並ぶ高層ホテルのうち「京王プラザホテル」と「ハイアットリージェンシー東京(旧名称:センチュリーハイアット東京)」は、京王と小田急という大手私鉄が経営するホテルとして、私はなんとなく親しみを感じる。特に京王プラザは、開業した1971年当時、新宿の街自体のプレゼンスが今よりずっと劣っていた(なかでも西口方面は淀橋浄水場の跡地で、噂では「幽霊が出る」とも言われていたらしい)状況の中、思い切って47階建ての超高層ホテルを作り、従来の「御三家(帝国ホテル、ホテルオークラ、ホテルニューオータニ)」とは異なるアプローチで事業として成功させた点、日本のホテル業界に新しい風を吹き込んだと業界で評価が高い。車内吊りや駅貼りポスター、『京王ニュース』などの自社媒体による沿線マーケティングによって、例えば沿線の主婦が3~4人の小グループでホテルのランチを楽しむ、あるいは沿線の若者が同ホテルで結婚披露宴を行なうといったように新しいホテルの使い方を提案したのだ。当時はまだ敷居が高かったホテルという世界を、京王沿線に住む主婦や若者にも開放した、といってもいいかも知れない。京王がすごいのは、そういう沿線マーケティングを単にホテル事業の成功のためだけに使ったのではなく、同時に沿線イメージの向上にもつなげた点だ。それまで京王といえば、東急や小田急など周囲の私鉄と比べると事業規模も小さく、箱根のような有名観光地も持たないため、企業としても路線としても地味なイメージだった。そこで、「気軽にホテルライフを楽しむ」というホテルの需要喚起策そのものをイメージリーダー的に使いながら、電車の清潔そうなカラーリングなどもあいまって(さらにバブル期にはトレンディドラマのロケが多く行なわれたことなども加わり)、「超高級ではないけれど、ほどほどお洒落で上質な生活ができる」という京王線の沿線イメージを定着させた。同ホテルは、海外でのマーケティングこそインターコンチネンタルホテルズの力を借りたとはいえ日本語名称では「京王」を冠に据え、京王沿線の需要を喚起するとともに京王沿線に対し沿線価値の向上でお返ししており、いわば私鉄によるホテル経営の鏡とも言える。一方、京王より9年遅れた小田急は違う戦略を採っている。世界的ホテルチェーンのハイアット・インターナショナルと提携し、小田急名義よりはハイアットブランドをオモテに出し続けてきた。この提携はフランチャイズ契約(他に「運営受託契約」など複数の提携方法があるが細かい話をすると本筋から離れるので、近所の酒屋さんが突然ローソンに変わるというようなフランチャイズ契約を、取りあえずここではイメージいただきたい)であり、ブランドと運営マニュアル、(特に海外での)マーケティングはハイアットのものを活用するものの、ホテルで働くスタッフは小田急子会社の社員であるし、土地建物も小田急のもの(ただし生命保険会社と共同所有)であり、誤解を恐れず極めて短縮して言うと「小田急のホテルにハイアットの看板をかけたもの」である(実際にはもうちょっと複雑だが)。ホテル経営が黒字でも赤字でもそれは小田急側の問題であり、ハイアット側は売上高(契約によっては営業利益)の金額に応じて小田急から運営フィーを受け取る形だ。経営主体は小田急だから、京王プラザ同様に小田急沿線で様々なマーケティングが行なわれ(一例として、小田急グループの会員制ポイントプログラムは同ホテルのほか鉄道やタクシー、百貨店などと共通)小田急沿線において需要が大きく喚起されたと同時に、「外資系」のブランドを冠したことで海外を含むより幅広い顧客を集めることができた。近年、至近距離にある「パークハイアット東京」(こちらの経営は東京ガスだ。そういえば京王の新宿高速バスターミナルで、出庫回送中の車に無線で「現在地は?」と問うと、よく「ガスタンク前」と返ってきていた……あのころ既にガスタンク跡地に同ホテルが建設中だったはずだけどなあ)が成功し日本国内でハイアットブランドの価値が向上したことを受け、2007年には、ダブルネームとして使用してきた小田急側のブランド「センチュリー」さえ捨て、「ハイアットリージェンシー東京」と改称している。大切なことは、どちらのホテルも事業として成功していることだ。つまり、どちらが上、という話ではないのだ。前者のように自社ブランドにこだわればグループ内の他サービス(鉄道本体はもちろん、流通や不動産など)とのシナジーはより大きくなるし、後者のように「ホテルのプロ」と組めば、その分のコストは発生するものの世界中から容易に集客できたり、高いブランドイメージをすぐに手に入れられたりする。関西においては、時代は下ってバブル期に上記2ホテルを大きく上回る超高級ホテルが私鉄によって開発されたが、もともと高級イメージが十分な阪急は自社ブランド「ホテル阪急インターナショナル」で、高級イメージに乏しかった阪神は、「ザ・リッツ・カールトン大阪」を運営受託方式で開業している。ホテルを経営しようとする者は、自分たちが既に持つリソース(土地/建物/ノウハウ/ブランド/顧客など。私鉄の場合「土地」はもちろんだが、沿線住民という「顧客」を持っている意義は実は大きい)を正確に自己分析し、それぞれの事情にあった形の経営形態を選ばないといけないし、ハイアットなどに運営やブランドを委託するのであれば、お互いを高めあうことを義務付ける契約内容にするため綿密な交渉をしなければならない(例えば運営委託費が極端に安ければコストが浮くように見えるが、それでは委託先が本腰を入れてくれず、結果としてお互いに得にならない)。ただし、冠が自社であれ外資系チェーンであれ、自分たちが経営するホテルである以上、サービス向上にも集客強化にも自分たちが真剣に努力しないとならない点は変わらない。本日あえてこのようなことを書いたのは、今後の高速バスビジネスにとって何かの参考になると考えるからだ。地方部の既存路線バス事業者にとって、高速ツアーバス各社が地方路線に攻めてくる脅威は明白な一方、十分すぎるほどの運行ノウハウと、地元での認知度という大きな二つの「売り」を持っている。従来からの「直営方式」にこだわらなければ新しい可能性もまた見えてくる。「既存事業者=高速路線バス、新規参入=高速ツアーバス」という固定観念を自分たちの中で認めてしまった瞬間、全ての成長がストップする。既存事業者の皆様にはもっともっと先を見ていて欲しい。彼らの高速路線バスを私たちのサイトで代売するという流れは、足元においてはようやく加速し始めたばかりだが、あくまでそれは一つのきっかけに過ぎない。既存事業者各社が自分たちの事業のあり方を自身で真剣に考え始めることが、私たちが目指す一つのゴールだ。そして彼ら自身が、自分たちの強みと、自身の弱みや今後想定される脅威を冷静に自己分析することこそ、そこへの第一歩である。
2010.05.24
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ある人がこんなことをおっしゃっていた。<普通の企業、普通のビジネスパーソンだと、ある事業のポテンシャルが“100”なら“100”を目指してがんばるでしょ? もっと言えば、ちょっとしたミスや環境変化で急に落ち込むことも考えられるから、いったん“105”とか“110”までがんばって、最後に“100”で落ち着くことを目指すよね。でも、バス事業者ってそうじゃないんだよ。あえて“80”しか目指さない。それをよしとするのがバス事業者なんだ>言葉の主は、老舗路線バス事業者に長く籍を置きながら新しい事業を社内で立ち上げ、今では全国を駆け回って業績面でも社会的意義でもいい結果を出しておられる方である。路線バス業界から見れば、半分ナカ、半分ソトのお立場ということになる。高速路線バス取扱拡大に向けた、既存事業者への私の提案営業活動にも陰からご協力いただいている。この言葉を聞いて、「そうそう。正にそんな感じ」と私は正に膝を叩いた。誤解しないでいただきたいのは、文字にしてしまうと“80”しか目指さないことを非難しているように聞こえるかも知れないが、ご本人も「僕自身も路線バス事業者にいるから、むしろそれを誇りと思う気持ちはよくわかるし、成定さんもわかるでしょ?」というつもりでしゃべっているし、聞いた私も「わかりますわかります。私自身もそうでしたから」というつもりで同意していることだ。“100”を目指すか、それとも“80”しか目指さないかは、事業のタイプやその時の環境によって、それぞれの企業が選べばいい話だと思う。その事業が短距離走タイプかマラソンタイプかによって違うだろう。今日の試合に負ければ明日がもう無いトーナメント的な事業か、今日負けるなら負けるで戦力を温存したり失点を最小限に止めたりすれば次につながるリーグ戦的な事業かによっても異なるだろう。その意味では、既存路線バス事業者にとってのビジネス(「平場」の路線バスはもちろん、高速バスや沿線での不動産や流通事業なども含めて)は、あえて“80”を超えないよう自らを律することで、免許秩序の元で長く事業を継続させることが求められるタイプの事業だといえよう。少なくとも従来は。そこまではよく理解したうえで、現在の環境においてどうか、は、別途考えていかないといけない。これには二つの観点が挙げられるだろう。まず一つ目は、従来なら、流通業などの副業を含め「既存事業者のビジネス」と一括りに考えられたが、今日でもそのように一括りにすることが許されるのか、という点である。たしかに「平場」の路線バスはやはり地域に根付いて長いスパンで取り組まないといけない事業である。事業そのものの公益性に加え(形の上では規制緩和が行なわれたといえ)事実上の独占状態であることで、あえて“80”を超えず無理をしないことを求められ、その代わり“100”に達しなくても許してもらえる状況がある。それに対して、流通(グループ内の百貨店やスーパー)、高速バスなどの事業では、従来は環境的にその地域では路線バス事業者くらいしかプレーヤーがいなかったものの、既に環境はそうではない。中央資本の百貨店やスーパーが地方部にもどんどん進出していることはもちろん、そもそも百貨店やスーパー(厳密に言うとGMS)といった業態自体が、ヨドバシカメラやユニクロといった新業態さらにはEコマース(ウェブショッピング)などに侵食され続けている。高速バスについても、高速ツアーバスという業態に賛否はあれど、起こっている変化の本質は同じである。さらに「平場」の路線バスについても、一歩踏み込んで考えれば、本当に“80”でいいのか、疑問もある。我が国の路線バス輸送人員は、ピーク(昭和42年ごろ)に比べ約4割にまで落ち込んでおり、減少傾向は今も続いている。いくら戦力をうまく配分し長期的に結果を出すべきリーグ戦型の事業だとしても、「J2(二部)落ち」寸前の危機であれば、今日の試合では“100”を出し切るべきではないのか。あるいは全く逆に、既に「二部落ち」して久しいにもかかわらず、華やかだったJI時代の体制から変革できていない事業者も多い気もする。観客動員数もスポンサー収入もJ1時代から大きく減っているのにかかわらずチームも組織もスリム化できていない……「サッカーが好きだから一生サッカー選手をやりたい」という個人の思いも、「地元を代表するチームとしてがんばって地元を元気づけたい」というチームの理念も、チームが赤字では実現するはずもない。チームが経営破たんしてしまえば、二部落ちしたにもかかわらず以前と変わりなく応援してくれるコアな観客の声援にさえ、応えることができなくなってしまう。上記の言葉の主は、こんなこともおっしゃっていた。<コストや手間をかけて売上や乗客数を伸ばすアイデアを路線バス事業者に持っていくと、だいたい断られちゃうよね。でも、いったん預かって考えてから断ってくる会社と、考えずに最初からNGの会社があるのが面白い>AバスとB電鉄は前者、C鉄道とD自動車は後者だよね、などとお互いに面識のある既存事業者の名前を挙げあってみると、おおよそ認識が一致していて笑ってしまった。そうなると、私はまだ面識がない会社で「後者」として名前が挙がった事業者を、私は今後の営業先リストから、やっぱりはずしてしまう。いくら「覚悟の営業」とはいえ、こちらが不愉快になることは明白だからだ。逆に「E交通さんは社内にツアーバス対策チームを立ち上げて、なぜ乗客がウィラーやオリオンのバスを選ぶのか、実際に乗ってみたりして研究を始めたようだよ」などとお聞きすると、ぜひその事業者の経営者や対策チームの面々にお目にかかってお手伝いしたくなる(もちろん最大の「お手伝い」は、サイト上でその事業者の高速路線バスを予約できるようにすることだが、それは置いておいても、だ)。ちゃんと情報を集め分析し次の戦略を考えようとする会社なら、出てくる答えが正しいかは別としてなるだけ応援したくなる。残念なのは私の知る限り「後者」の方が多いことだが、それゆえ「前者」と出会えると嬉しいものだ。来週アポイントが入っている、初めてお邪魔する数件の事業者とその担当者さんが「前者」だと期待しながら、当日持参する提案資料を、さあ、がんばって準備しよう。
2010.05.21
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最近ちょっと、既存事業者やその高速路線バスについてネガティブなことを書くことが続いている。3年間、どの事業者でも、会社名を伝えただけで「おたく、ツアーバス会社でしょ?」というような反応と戦いながら、なんとか数社、高速路線バスの取扱がスタートした。おぼろげながら、大手私鉄系の事業者数社の高速路線バスの取扱も見えてきて、一営業パーソンとしてはこれまで無心に高い壁に挑み続けていればよかったのが、ゴールが見えてきてちょっと気が緩み、周りを見渡す余裕が出てきたということかも知れない。何度も繰り返すが、私自身、既存事業者にとって私のサイト上で自社の高速路線バスを高速ツアーバスと並べて販売することがどれだけ勇気がいることか、よく理解している。あちこちの既存事業者にお邪魔し、まずは私のサイトの立ち位置のご説明から入り、最初は営業課や企画課といったスーツ組と打ち合わせを重ね、ある日から急にその打ち合わせに制服組が同席してくださったりするようになると、営業、企画サイドが根気強く社内を調整した上で、契約を前提とし実務的なオペレーションの打ち合わせをする段階まで進めてくださったのだと、制服組(予約センター所長さんとか営業所の助役さんとか)と名刺交換をしながらも、その隣にいる営業や企画の面々に感謝の気持ちでいっぱいになっていたりする。「いちおう社長まで話をしましてね。前向きに検討しようかということになりまして」などとさらっと言われたりするが、社内の調整がどれだけ大変だったかを想像するとついつい頭が下がる。業界内で各事業者が置かれた立場は様々だから上記のような目に見える進捗は未だない事業者でも、帰り際に「次に営業に来るときには夕方に来いよ。ビールでも飲みに行こう」などと声をかけてもらえたりすると、ただただ深々と頭を下げる以外、感謝の気持ちを伝えようがない。一方で、昨日も書いたが悲しい出来事も多い。何も、私の会社と契約をしてくれないとか、私の説明を理解してもらえないといった点を言っているのではない。彼らが(高速バスに限らず)バスの将来を真剣に考えているのか、疑問に感じることが多いということだ。以前にも書いたが、既存事業者およびその関係者でお酒を飲んでいたとき、私はいつもの調子で「50年後のバス業界を考えると」と切り出した。そのとたん、周りからいっせいに否定的な言葉が飛んできたのに私は本当に驚いた。「遠い将来のバス業界」の姿をなんとなく描きそれをゴールと設定しつつ、足元の大小さまざまな現実の課題を一つずつつぶしていくというのは、何もバスに限らず、仕事というのはそういうものだと私は信じていたからだ。それが、「“将来”を語る」ということそのものがまるで罪悪かのように一斉烽火を浴びたのだ。私が仲間たちと職場で、飲み会の場で普通にしゃべっている日本語がどうも通じない……その瞬間、私の中で何かが壊れた気がした。この国では、高度経済成長の終焉とともに「戦後」という時代が幕を降ろした。人口の増加と円安による事実上の国内産業保護の元、右肩上がりで拡大するマーケットを皆で平等に分け合えば皆で平等に成長する時代は、終わったのだ。江戸時代が終わって明治の代が来たように、戦争に負けて「戦後」という時代が始まったように、「戦後」という時代が終わって新しい時代が既に始まっている。その時代の流れの中で、行政主導による護送船団的な「業界の秩序を維持しつつ業界全体で成長し、それが国全体を成長させる」という一つの経済システムが崩壊しつつある、いや崩壊したと言っていいだろう。ひとりバスに限った話ではなく、それはこの国全体の変化であるのだ。さらにバスの場合には、特に「平場」の路線バスについては、モータリゼーションの進展や、通学需要の源であった中学・高校生の減少という固有の逆風まで吹いているのだ(補助金が削減される、という話は、逆に上記時代の変化の結果であってバス固有の逆風ではない。「戦後日本の経済システム」がうまく回っていた間は平場の路線バスも儲かっていて補助金がいらず、時代が変化し始めてからバスが補助金に頼るようになっていったことは、ずいぶんと皮肉な話だ)。もう一度繰り返すが、私はバスが好きだ。一人でも多くの人にバスを使ってもらいたいし、少しでも長く、バスが「現役」の交通手段として人々の役に立つようサポートしていきたい。蒸気機関車やボンネットバスが観光資源として人々を集めることは素晴らしいことだと思うが、かといって日本中のあらゆるバスが「昔懐かしいことをウリにした乗り物」になってしまうのは絶対にイヤだ。これ以上、業界全体が「マッチ売りの少女」にならないよう時には厳しいことを言うのが私の役割だと(勝手に)任じている。高速ツアーバス各社(直接的にはライバルに当たる他の予約サイトを含む)にしても、既存事業者各社(私の会社との契約の有無にかかわらず)にしても、個人レベルでは私の考えに賛同してくださる方も少なからずいらっしゃるし、いや賛同してくれない人がまだまだいるからこそ、もっともっとがんばらないと、と思う。原点に戻って考えれば、将来への危機感も足りず変革を拒もうとする圧力が大きい業界であることがわかっていたからこそ、それを変えたくてこの業界に戻ってきたのだから。(最近ちょっとネガティブなことを書きすぎたのでその反省をこめて)
2010.05.18
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ホテル勤務時代に私はウェブマーケティングとレベニューマネジメントに出会い、この二つの新しい概念を高速バスに持ち込めば高速バスはさらに拡大するだろうと感じた。大学を(すなわち高速バスターミナルでのバイトを)卒業するに当たって高速バスを一生の仕事とすることをあきらめて(理由は簡単。いくら私がバスを好きでも、規制に強く守られた業界に就職すれば私自身がその「枠」に収まりきらないだろうと危惧したから)から10年が経過していたが、忘れられない高速バスへの強い思いと、ホテルの仕事を通じて出会ったこれら二つの新しい概念とが私の中で何となく焦点を合わせ始めたその時、まるで誰かが見ていたように今の私の会社が高速バス予約に参入することを決め、それを聞いて私は転職を決めた。当時私は筋金入りの「アンチ・ツアーバス」論者。迷いに迷ってそれでも転職を決めたのは、当面は高速ツアーバスのみを取扱うとしても時間をかければ、それがどんなに困難でも必ず高速路線バスも取扱をさせてもらえると信じたからだし、逆に、いったん高速ツアーバスという「敵」を育て上げて既存事業者の危機感を醸成することこそ、既存事業者の重い腰を上げさせる唯一の方法だと思えたからだ(一時は、「ウチの会社もあえてツアーバスを相手にせず最初から高速路線バス一本に絞っておけば」と考えたこともあるが、仮にそうしていたら高速路線バスを未だ1路線さえ扱えていなかっただろう)。その後、仕事として高速ツアーバスの企画実施会社と付き合う中で、あれほどバカにしていた高速ツアーバス各社の、非常に強い成長意欲とそれ故の実は非常に真摯な仕事ぶりを見るにつけ、「当面は我慢して高速ツアーバスの連中と付き合う」というネガティブな感情は消え、「路線かツアーかといった業態を問わず、既存か新興かといった事業者の性格は問わず、ウェブマーケティングを通して高速バス市場全体を大きくする」という現在のビジョンへと私自身の考えも変化した。ただ、それは必ずしも既存事業者や高速路線バスへの思いが小さくなったことを意味するのではないつもりだ。だからこそ、足元の収益を上げるためだけなら成長率の大きい高速ツアーバスだけを徹底的に育て上げるという選択肢があったにもかかわらず、経営陣に了解を得て3年間も結果の出ない既存事業者への営業を続けてきたのだ。その、高速路線バスにもウェブマーケティングを持ち込めば彼らもまた高速ツアーバス同様の成長を成し遂げることができるという信念(当然、そうなれば私の会社の成長にもつながる)を、理屈として間違っていたとは思わない。感情としても、関西出身の私がいま東京に住んでいても阪神タイガースを応援するのと同様、学生時代以来の高速路線バスへの思いが急に消えるはずもない。そして、「敵」呼ばわりされて最初は名刺を受け取ってさえもらえないといった状況から3年間営業を続け、昨年末、わずかな会社数ながら高速路線バスの取扱を開始することができた。来月にかけ、さらに新しくご契約いただく事業者たちもいる。業界を知る関係者は「ここまで来たら、あとは時間の問題だよ」と声をかけてくださる。契約してくださった事業者の担当者たちは社内外の調整が本当に大変だっただろうし、経営者の方もよくぞご決断いただいたし、ここまで来られたのは様々な関係者のご協力があってこそだから、その皆さんにはいくら感謝してもし足りることはない。一方、悲しいことも多い。「ここまで来たら時間の問題」とおっしゃってくださる方がいる一方で、今日の高速バスを巡る環境を一切理解せず、未だ「ツアーバスは違法だ」と(それもかなりの屁理屈で)主張しておられる事業者があるのは事実だし、そうやって目の敵のように言う割には「敵」である高速ツアーバスのことを何も把握、分析していない事業者とはしょっちゅう出会う。彼らは本気で自分たちの事業を守ろうと、それを育てようとしているのか、正直なところ疑問に思えてしまう。自分たちの成長を望んでいない人たちのために、なぜこちらが一生懸命にならないといけないのか。そんなことを思い始めたのは、これまでは「高速ツアーバスは大都市間路線では成長できても地方路線では(条件が揃った宮崎~福岡などを除き)苦戦するだろう。結果として両者はおおむね住み分けるだろう(ただし、高速ツアーバスが地方路線での勝ちパターンを見つけるより先に高速路線バス各社が本気になればさえ)」と考えていたにもかかわらず、このままだと高速ツアーバスの勝ちパターンが地方路線でも確立しそうな気配がしてきたからだ。営業的な側面だけではない。関係諸機関が、従来では考えられなかったくらい高速ツアーバスの存在を前提に各種対応を行なってくれる(こればっかりは、国土交通省にご協力いただき高速ツアーバス連絡協議会を設立して本当によかったと満足している)。私もマーケティングにたずさわる者の端くれである。もしも「高速ツアーバスをさらに成長させるには」というお題であれば、その回答はいくらでも用意できる。販売手法はもちろん、事業そのもののあり方まで踏み込んで「ここをこう変えれば」「この点をもうちょっときちんと対応すれば」と伝えたい点がたくさんある(その意味では高速ツアーバスの課題は山ほどある)。逆に言えばこれまで私は、高速ツアーバスの成長支援に「本気」だったか。もちろん、人並み以上のパワーを彼らの成長のために(単に販売面のサポートのみならず、業界全体の「黒子」として)割いてきたつもりもある一方、私の意識はどこかで常に「高速ツアーバスを大きくして既存事業者に危機感を与えることで彼らの目を覚まさせる」というように高速路線バスの成長だけを願ってきたのではないか。そしてこの状況で、一部の理解ある事業者や(会社としてはダメでも)理解ある担当者を除き、昨日までと同じように毎日を過ごそうと市場環境の変化に目を背け続ける既存事業者やその高速路線バスのためにがんばらないといけない義理は本当にあるのか。「ミイラ取りがミイラに」と嗤われるならそれも結構。会社としても私としても進むべき道を決める基準は「高速バスマーケット“全体”の成長、最大化」につながる道かどうか、という点のみ。その原点に戻って今後進むべき道をもう一度、イチから考え直す時期に来ているのかも知れない。
2010.05.17
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『トラベルビジョン』で、ゴールデンウィークの送客実績について報じていただいた。全体で対前年38.9%増という数字は、このところ30%程度の成長率が続いているのに比べるとまあ好調だったと言えるだろう。4月30日の夜が出発のピークだったこともあり、4月については取扱高で久しぶりに目標額を達成することができ、ほっとしている。この種の話題を取り上げるたびにいつも同じコトを書いている気がするが、上記記事を読んでいただいてわかるとおり、成長率だけで見ると大都市と地方都市を結ぶ路線の方が、大都市同士を結ぶ路線よりも成長率が大きい。首都圏~京阪神が2割増、首都圏~名古屋が3割増、首都圏~仙台が4割増だったのに対し、首都圏~北東北(青森/秋田/岩手)が5割増、首都圏~四国や首都圏~九州は2倍以上といったくらいだ。記事には無いが、首都圏~山形県も約3倍、福岡~鹿児島も約2倍と地方路線の伸びが大きい。これまで、そのような成長率の差について「地方路線がまだまだひよっこだから」とご説明してきたが、さあ、そろそろ既存の高速バスに本気で影響を与えるレベルには成長してきただろうか。何度も書いているが、これまで高速ツアーバスは大都市間路線を中心に成長してきた。中心に、というよりは、ごく一部の例外を除けば大都市間路線“だけ”だったと言っていいくらいだ。大都市と地方都市を結ぶ夜行路線(例えば東京~青森、大阪~鹿児島など)で既存の高速バスに全く影響が無かったといえば嘘になるが、本当に既存の高速バスに大きな打撃を与えたのなら、高速ツアーバスがある程度の存在感を得て以降でも高速路線バスの便数が増えた東京~鶴岡/酒田や東京~岡山のような例は生まれなかったはずだ。もちろん、地方の既存バス事業者が「ツアーバスに乗客を奪われた」と主張する気持ちはよくわかる。これまで無風だったところに、微風とはいえ風が吹いたことは事実だからだ。地方の事業者は(何らかの「不条理感」がそれを増幅させることもあり)、「ツアーバスに攻め込まれている」という相応の危機感というか被害者意識を既に持っているだろう。しかし、高速ツアーバス全体の数字を見ることができる私の立場からすれば、とにかく高速ツアーバスの地方都市路線などこれまで本当に「ひよっこ」に過ぎなかった。一方で高速ツアーバス各社は、大都市間路線の成長率が上記のとおり鈍化していることを受け、これから本気で地方路線を攻め始める段階にある。そこに、私は何かしらの危惧を感じている。地方の既存バス事業者は、もしかしたら「ツアーバス慣れ」してしまっているのではないか。もちろん彼らの被害者意識は相当なものだろうし、政治的なアピールも含め既存バス事業者が「ツアーバスに乗客を奪われ困っている」と声高に主張していることは、その矢面に立つ私自身がよく知っている。しかし現実には上記のように、高速ツアーバス各社が(一部の例外を除き)地方路線に本気だったというか、地方路線において「勝ちパターン」を把握していたわけではない。いや、首都圏~京阪神のような大都市間路線においても、(もちろん、高速ツアーバスの乗客の一部が既存の高速バスから転移した乗客であることを否定はしないものの)おおむね、既存の高速バスと「戦って」乗客を「奪った」わけではない。ウェブマーケティングを本格活用してきたのが高速ツアーバスだけだったから、ウェブマーケティングによって高速バスの存在を知った「新しい乗客」は、既存の高速バスについてはその存在さえ知らず高速ツアーバス“だけ”を高速バスだと思い込んで利用していただけだ。「がっぷり四つ」に組んだことは実際には無いのだ。だがこれからはそうではない。大都市間路線と異なり、地方路線においては既に高速路線バスが一定の存在感を持っている。高速ツアーバス各社が地方路線での事業拡大を本気で考えるなら、新しくマーケットを拡大する余地はさほど大きくなく、これまでから高速バスを利用していた乗客を奪う方が簡単なことは目に見えている。これから、本当の意味での競合関係が生まれるのだ。しかしながら既存の各社は、従来からの「かりそめの競合関係」をもって、高速ツアーバスと競合してきたと勘違いしているのであれば、それはよろしくない。これから本気の競合関係が生まれたときに対応できない……本音を言うと私は、大都市間路線で高速ツアーバスが主流になっても、地方路線では高速ツアーバスは苦戦するだろうとタカをくくっていた。それなら、(大都市路線を運行していた一部の既存事業者には申し訳ないが)大都市間路線で高速ツアーバスを徹底的に育て上げればそれに比例して既存事業者各社に危機感が生まれ、地方路線において高速ツアーバスが本気を出す前に、既存の高速バスがちゃんと「武装」を始めるだろうと、そして結果としてそれが既存の高速バスの成長につながるだろうと、そう考えてきた。だが、これから起ころうとしている現象は残念ながらそうではなさそうだ。もしも(私が愛してやまない)既存の高速路線バスが長距離夜行路線から順にズタズタになっていくとすれば、A級戦犯は私、かも知れない。一つだけ言い訳をすれば、(高速ツアーバスの成長が私の予想より早かったわけではなく)既存事業者が危機感を持ちそれに真摯に対応することが、私の予想より遅かった、という点だ。もっとも、彼らの速度感がどれ程なのか、理解していたつもりで結局はわかっていなかった私自身が悪いのだ、きっと。
2010.05.12
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先日のブログに対して、大手路線バス事業者の管理職の方から<路線バス事業者が高速バス全体の将来を考えた行動をとらない理由の一つは…>と、極めて合理的?な感想をいただいた。その理由をここで紹介することはしないが、たしかにそうだと納得してしまっただけに私の迷いはむしろ深くなるばかり……このままだと本当に私は、高速ツアーバス各社の新興高速バス(将来それが乗合許可に移行しようが、最終的に統一された新制度が生まれそれに基づいたものになろうが)を本気で支援することになってしまう。4年前私は、突然やって来た「黒船」の姿に憧れて異国に渡ったつもりはない。<あれだけの黒船を作ることができる異国は、自分の国に比べ何が優れているのか(もちろん荒っぽいところは多々あるのは事実だが)、まずはこの目で見てやろう。そして、そこで学べることは学び盗めるものは盗んで、いつかは祖国に戻って祖国の発展のために働こう>そう思って黒船に乗り込んだのではなかったか。体制側にいる人たちが自ら黒船に乗ることはさすがに無理だろうが、いったんバス業界を離れ、かつそこでたまたまウェブマーケティングに出会った私こその役割だと考え、意を決して異国に向かったのではなかったか。だが、その「祖国」がいつまでも目を覚まさず太平の眠りを貪るのであれば、果たしてその祖国に何を恩返しすればいいのだろう。一方で、大砲でも持ち込んで「外圧」をかけなければいつまでも眠り続ける国であることは、私自身がよく知っていたはず。それでは人生が面白くないだろうと、大学を卒業する際にバス事業への強い思いを断ち切って異業種を選んだわけで、自らその「大砲」となれば彼らの目を覚まさせることができるはずだと、それが祖国への最大の恩返しだと、そう確信したからこそ今の会社に転職をしたはず。ここであきらめれば、独り相撲のドンキホーテ。祖国への恩返しをあきらめ異国のために働いてたとえ成功を収めても、それは自分の信念に合うことなのか。という個人的な思いはさておき気を取り直して前向きなことを書くと……ぜんぜん話は変わるが、いつも繰り返しているように私の原点は<地方都市に住む人は“普通に”高速バスを使ってくださっているのに、大都市に住む人はなぜ高速バスを使わないのか?>という1点である。原風景としては、地方側在住のビジネスマンはもちろん年配のご夫婦や、東京にショッピングを楽しみに(というか東京の空気を吸いに)やってくる高校生を満載して上ってくる都市間路線(多頻度昼行路線が基本だが、長距離夜行も含め)の姿と、反対に低い乗車率で東京を午前中に出発する便の対比であるが、逆説的に、たまに大都市から高速バスに乗り込む観光客を見かけると、そういうシーンでもっともっと高速バスを使っていただきたく、しかし実現していない現状を思い「がんばらねば」と思うのだ。いま「観光旅行でバスに乗る」と言えば、多くの人がイメージするのは(学校や会社の団体旅行を除けば)いわゆる「旗持ち」のバスツアーだろう。添乗員やバスガイドが同行し観光地を巡るツアーだ。観光地だけならまだしも土産物屋など「市中引き回し」の印象が強い。あるいは、おおるりグループやスパリゾート・ハワイアンズが先鞭を付けた温泉直行の無料送迎バスだ。自ずと、そういったバス商品の参加者の平均年齢は高い。では、より若い層は温泉やリゾートに行かないのかと言えばもちろんそうではない。先日、出張に合わせて九州産交の九州横断バスに乗ってみた際も、若い女性の二人連れあるいは若いカップルが黒川温泉までの足として使っていて失礼ながら驚いた(私のサイトから入る予約も「女性2名」が多い)。黒川のような山あいの温泉地やリゾート地へ直行できるのはバスの強みのはずである。若年層のクルマの保有率は軒並み下がっているとも聞く。しかも人気の黒川だ。がんばれば、若い女性の二人連れやカップルで九州横断バスの座席をもっともっと埋めることができるはずだ。しかし、友人と「温泉にでも行ってゆっくりしよっか」と考えているOLだとか、恋人の誕生日に海か高原のリゾートに行ってお祝いしようと考えている若者だとかの立場を想像してみて「じゃあ、高速バスで行こう」と思わせるようなトリガーは、正直、皆無といっていい。いつも言っているようにウェブ上やパブリシティ上の露出についてもそうだし、商品それ自体についてもそうだ。バスのカラーリング一つとっても、バブルの頃に京王が「ハイウェイ・エクスプレス」カラーを導入したのを機に松本電鉄や富士急行がスマートなカラーリングに変えてリゾート色を打ち出したが、私には新鮮に映ったそれとて考えてみればもう20年以上も前の話だ。20年前のお洒落なファッション、20年前のお洒落なクルマ、20年前のお洒落なレストラン……他業種なら「懐かしい」という感想さえ持つかも知れない。だが、仮に高原のリゾート(高級なリゾートホテルではなくとも、小さなペンションでも)に出かける若いカップルが乗り込むシーンが「絵」になる高速バスのカラーリングをあえて挙げれば、未だに松電か富士急か、あとはどこがあるだろう?高速バスの車窓から海の見える気の利いたレストランや若い女性に人気であろう洒落た美術館が見えることも多いが、「高速バスは二地点間輸送」という原則によって通過するほか無く、かといってバスツアーだと、旅行会社でのパンフレット販売に頼るために年配の人向けの「コテコテ」の内容となってしまいそのようなスポットには立ち寄らない。しかしそれらの駐車場は多くの自家用車で埋まっている……ウェブでの集客が生まれた今こそ、もっともっと大都市マーケットに住む若年層の旅行の足としてバスを使ってもらえるはずだ。イメージとしては、20~30代のOL女性をターゲットとする月刊誌『OZ magazine (オズ・マガジン) 』や、そのウェブ版「OZ mall(オズ・モール)」で紹介される高速バス、という感じ。もちろん「オズ・モール」が高速バス予約事業に参入などすれば私たちにとっては直接的には競合が増えるわけだが、販路が拡がり、それに合わせ商品のウィングも拡がることこそ今の高速バス全体にとって有効なはず。なお、今のところ富士五湖にしても箱根にしても南紀白浜にしても、色々な意味でこの種のデスティネーションを握っているのは高速路線バス各社である。彼らが本気を出すのが先か、別の勢力(高速ツアーバス各社か、それともバスツアー企画各社か)がそこに攻め込むのが先か、楽しみに見ていよう。
2010.05.07
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既存の路線バス事業者や彼らと深い関係がある方々(愛好家の方も含む)とお話しする度に、今日の高速バスが置かれた環境を、失礼ながらきちんと認識なさっていないことに失望する。何度も繰り返すが、彼らが高速ツアーバスのことをまるで親の敵のように見る気持ちは私には嫌というほどよくわかる。4年ほど前まで自分自身がそうだったからだ。しかし憎さあふれるばかりに、汚いものに蓋をするように目を背け、「なぜ、こうなったのか」「今後、どうなって行くのか」を正しく理解することを怠ってしまえば、既存事業者の高速路線バスの将来に影響してしまう。例えば<新規参入に対する捉え方>である。たしかに高速ツアーバスという業態は、あまりきれいではない生まれ方をした。高速バスは「乗合」の制度で動いていたのに、先にお隣の「貸切」事業の規制緩和が進み新規参入が増え供給量が増加したことを受け、まるで「屋上屋」のように「旅行」の制度を活用することで擬似的に高速バス事業への新規参入を容易にしたのだ。このことは一体何を意味し、何をもたらしたのだろう?上で「貸切事業の規制緩和」と書いたが、制度的には1年遅れて乗合事業も規制緩和(需給調整と参入規制の撤廃)が行なわれた事実は、二つの意味で大きなキーになろう。まず忘れてはいけないのは、そのような規制緩和が行なわれたのは何もバス業界だけでないことである。「日本版金融ビッグバン」が行なわれた金融業界を筆頭に、我が国のサービス産業の多くで同様の制度変更が行なわれている。次に考えないといけないのは、そのような考えで乗合バス事業でも制度変更が見られたにもかかわらず、様々な事実上の参入障壁が残り、貸切バス事業に比べほとんど新規参入が見られなかったことだ。となると、歴史に「もしも」をあえて持ち込むとすれば、高速ツアーバス業態誕生までに起こりえた「もしも」は二つである。一つは「もしも、バス業界でそもそも規制緩和が行なわれていなければ」であり、もう一つは「上記事態(貸切では新規参入が続いたのに乗合では進まなかった)を踏まえ、募集型企画旅行という別のルールを当てはめることで余剰となる貸切バスを高速バスとして運用するというアイデアが実現していなければ」である。まず最初の「もしも」については、「もしも」という仮定自体が成立しないと言っていいだろう。昨今、「事業仕分け」などで行政機関やそれに準じる組織の非効率さが問われているが、その行政も含めた広い意味での「サービス産業」の非効率さが日本経済の癌であり、それまでの護送船団方式を改めることで彼らの競争力を回復すべきと言う考え方はほぼ定着しているからだ。もしもある政権がバス業界の規制緩和を行なわなくとも、次の政権がそれを行なっただろう。バスにたずさわる人は、バス業界の中だけを見て規制緩和がよかった悪かったと自分の意見を言いたくなるだろうが、そもそも他の産業も含め国全体で同じことが行なわれているのだ。バスの運賃(に限らず、電気代や物流コストやら法人税やら)が高止まりすれば、それが日本製品の価格に転嫁され、結果として日本製品の競争力ひいてはこの国全体の競争力に影響するのだ。次の「もしも」は<高速ツアーバスという業態が定着(第一段階としては関係者がそれを「思いついた」ことであり、第二段階としては行政がそのモデルを容認したことである)していなければ>、という仮定であるが、その「もしもの行方」を、このブログをお読みの方はどのようにお考えだろうか。「もしも高速ツアーバスが定着していなければ、既存の高速路線バスに大きな変化は無く(一歩譲って、成定がよく言っているように成長のチャンスはフイにしているとしても)、少なくとも従来どおりの市場規模を保っていられた」とお考えだろうか。私には、そうは思えない。高速バス事業は収益性が比較的高い(わかりやすく言えば「結構おいしい」)ため、参入を希望する事業者はかなりの数に上る。一方、事実上の参入障壁が多く残り新規参入が難しいとなれば、何が起こっただろう。数少ない「高速路線バス業態での純粋な新規参入」ケースである仙台~福島線(富士交通/桜交通)において公正取引委員会が動いたように、いや、ヤマト運輸が何度もの裁判を通して既存の運送業者や郵政省の既得権と戦ってきたように、全国あらゆる所で、参入障壁を巡る裁判沙汰が多発したことだろう。その意味で、高速ツアーバスという事業モデルが生まれたことは、新規参入希望者への「ガス抜き」としてちょうどよかった。何度も書いているように、全く異なるルールが生まれたことで、全く異なる事業者が全く異なる市場(つまりこれまで既存の高速路線バスが苦手としてきた大都市間路線)を相手に、「高速バス」事業を展開することができたからである。既存の高速路線バスに影響が全く無かったとは言えないが、ここまではほぼ、老舗の事業者は高速路線バス業態で大都市と地方都市、あるいは地方都市同士を結ぶ路線、新興事業者は高速ツアーバス業態で新規参入し、大都市同士を結ぶ路線(ほんの一部のみ、大都市と地方都市を結ぶ長距離夜行路線)という風に、おおむね住み分けをできてきた。しかし、これは機会があれば別途詳しく書きたいが、大都市間路線について高速ツアーバスは市場の開拓をほぼ終えつつあり、つまりは、彼らの成長率が鈍化しているということである。ということは、高速ツアーバス各社にとって次のターゲットは明確に、大都市と地方都市を結ぶ長距離夜行路線に他ならない。実はこれまで、高速路線バスと高速ツアーバスが、本当の意味で競合するケースはほとんど無かった。少なくとも高速ツアーバス各社にとって、高速路線バスと競合していると言う意識はほとんど無かった。「高速路線バスが耕し忘れていた、放棄された土地」を勝手に耕していたに過ぎない。しかしこれからはそうではない。既存の高速路線バスが既に定着している地方都市路線に、その高速路線バスをスナイパーターゲットとして狙い撃ちしてくるのである。従来の高速路線バスと高速ツアーバスの関係とは全く異なる本当の意味での「競争」「競合」が、これからスタートする。本当の意味での競争、競合だから、当然、落伍者は出るだろう。だが、その競争が高速バス全体を大きく強くすることもまた、事実である。
2010.05.03
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