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久しぶりに、最近読んだ本から。『ネオ階級社会はここから始まった』(共著:林信吾、葛岡智恭)。副題に「1974年、見過ごされた転換点」、帯には「私たちは何に浮かれ、何を見失ってきたのか?」とある。「ネオ階級社会」という言葉そのものについては、林氏の前著『しのびよるネオ階級社会』に詳しい。両作とも、研究者が書く本格的な書物ではないので文体も平易で非常に読みやすい。戦後の日本社会を戦前(または戦中)から連続した「戦時体制」と捉える考え方そのものは、野口悠紀雄氏の『1940年体制』などで紹介され定着している。我が国は「総力戦」体制であったがゆえに高度経済成長を成し遂げた。しかし、最大の危機であったオイルショック(あるいはその直前にあったニクソン・ショック)さえ乗り越えてしまったがために、本来なら社会のあり方を変革すべきであったターニングポイントを見逃し、旧来の体制を延命させてしまった。そのことが今日の我が国の閉塞感を招いているという論だ。本書もおおむねその考えをベースに展開する。<欧米の経済学者は、官僚主導の経済政策ばかりに目を向け、日本のことを「世界史上、唯一成功した社会主義国家」と評したりもした。もちろん、本当は違う。官民一体などというのは表層的な話で、本当は、企業と従業員、経営者と労働者を、いずれも運命共同体だと考える「会社主義」なのである>そして筆者は、「会社主義」の具体例として、「野球」の例を紹介する。我が国では「スポーツ=野球」という時代が長く続いたが、野球が日本人の生活に浸透していくきっかけになったのは、企業の労務対策がきっかけだったのだという。昭和初期の話であるが、労働運動の高まりに手を焼いていた企業の労務担当者が、左翼の闘士として目をつけていた労働者が野球の同好会の試合ではチームの勝利に喜ぶ姿を見て、愛社精神を植えつけるには野球が有効だと考え、それがやがて今日の実業団野球にまでつながった。あるいは女性の労働者に対しては、行儀作法、華道や習字といった花嫁修業を施すなど、かならずしも業務効率の向上にこだわらない福利厚生を提供することで労働者の企業に対する依存度、帰属意識が高まり、労使関係が安定し、結果として業務効率も向上したとしている。さらに、住宅(社宅や企業内住宅ローンなど)の提供といった、社会保障的な役割まで企業が担ってきたのだ。筆者は日本の社会保障政策を<本来は国家が責任を持つべき、財政と福祉のバランスをとる総合政策を、企業に代行させて事足れりとする、非常に無責任なもの>としている。と、ここまで読んではっとする。<本来は国家が責任を持つべき>政策を、<企業に代行させ>てきたのは、社会保障のみでなく、「平場」の路線バスをはじめとした「公共交通ネットワークの維持」という役割においても同じではないか。もちろん、それを「無責任」と非難するのは、あくまで今日の状況を踏まえての結果論でしかない。仮に戦後ずっと、日本中の路線バスを「公共」が担ってきたとしたら、バスにおいても「国鉄」と同じ非効率な運営が行なわれ全国的に破綻状態に追い込まれてきたことは間違いないし、全国の路線バス事業者は、いつも書いているように強い使命感を持って立派に地域の公共交通ネットワークを維持してきた。人口密度が高く輸送効率が大きいなど運用面での恵まれた環境と、間接金融や株式の持合をベースに短期的な利益を求められない経営面での恵まれた環境があったことも有利に作用し、地域の交通、いや地域経済さらには地域文化にさえバス事業者は責任を果たしてきたと言っても過言ではない(私自身、「地域文化」というものに興味を持って勉強していたら、気づいたらバスへの関心に変わっていたのだ…)。だから私は、世界に類を見ない「私鉄/民バス文化」、全国に展開された「ミニ阪急」について、十分な敬意を持っている。戦後の長い間、<本来は国家が責任を持つべき>地域の公共交通ネットワーク維持という社会的に重要な役割を、民間企業に過ぎない路線バス事業者が立派に果たしてきたことは、十分に誇りうることだと考えている。ただしそれは、環境が許せば、の話だ。本書が取り上げた「1974年」という年は、平場の路線バスにおいても、輸送人員が急速に低下し始めた時期と合致する。既に、全てがうまくまわっていた古きよき時代は遠く離れつつあるのだ。本書のあとがきにはこうある。<「昔はよかった」というように往時を懐かしむだけでは、なにも生まれない。どうして1974年に、政権交代なども含めて、この国の進路を変えることができなかったのか。色々なことが言い得るが、とどのつまりは大多数の国民が、「国のあり方が抜本的に変わることなどということはあり得ない」と思い込んでいたからだろう> バスの世界においても同じことが言えるだろう。まずは皆で事業のあり方を議論し始めないといけない。輸送人員が右肩上がりであったわずか20年の間に出来上がった事業モデルの貯金でなんとかメシを食っているバス業界。輸送人員が減少し始めてから既に40年が過ぎているのである。
2010.10.31
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バスの話ではないが、JR東日本との提携により「新幹線または特急列車+宿泊+レンタカー」の準ダイナミックパッケージ(DP)の取扱が昨日スタートした。交通機関との大型提携としては、ANA、JALに続いて3社目である。過去、もう少し簡易な形でテスト展開したこともある商品だが今回あらためての本格スタートとなった。旅行業界の新参者がJRの取扱を始めるのは決して簡単ではなかった。私が高速路線バスについてストーカー的?な提案営業を重ねてきたのと同様、鉄道について異常なほどの知識と情熱に溢れた担当メンバー達の長期間にわたる努力の賜物である。まずは東京地区から東日本エリア全域への観光客の送客を念頭に置いてのスタートだ。従来、試行的に販売した際は新幹線のみの取扱だったが、今回は特急列車も対象に加わっている。私個人としては、学生バイト時代から「ライバル」だと感じてきた特急「あずさ号」「かいじ号」を自分たちのサイトで取扱っているのはなんとなく不思議な感じ。もっともそんなことを言うと、あれだけ「アンチ・ツアーバス」論者だった私が高速ツアーバスの予約を担当していることの方が何倍も不思議だと、当時の仲間たちから突っ込まれそうだが。高速道路の新料金制度は未だ決まらないまま「休日1000円」は継続されているが、鉄道事業者はおそらく、高速道路料金の下落傾向に大きな危機感を持っているだろう。昨年、「休日1000円」が導入された際、高速バス事業者からはその影響による乗客減について様々なコメントが出された。もちろん影響は小さくはなかったとはいえ、現実問題としては、利用者にとって「バスに乗るかクルマで行くか」という選択はそれなりに大きな選択であるのに対し「バスにするか電車にするか」という選択は気軽である。つまり高速バスにとって最も危惧すべきなのは、高速道路料金の下落そのものではなく、直接のライバルである鉄道側がそれに触発され様々な施策を打ってくることの方だと思う(もちろん明石海峡ルートのように、鉄道と競合はなく高めの高速料金のおかげで自家用車からバスに乗客が流れていた路線では、高速料金そのものの影響も大きい)。今回、JR東日本は、観光需要喚起の場を、従来型の旅行会社だけではなくウェブに対しても広げる決断をしたわけだが、今後、サービス(車両設備などを含む)や価格を多様化させるなどより積極的な施策を展開してくると、なにせテレビCMなど大規模なプロモーションを展開させる体力が彼らにはあるだけに高速バスへの影響は大きいだろう。東北、九州における新幹線の延長も同じことが言え、新幹線延長そのものの影響とともに、それによってこれまで圧倒的な市場シェアを背景に高止まりしてきた大阪~鹿児島などの航空運賃が実質的に低下することも高速バスに影響を与える。私たちで販売を手伝ってきた九州産交バスの「トワイライト神戸」も残念ながら運行休止となるが、高止まりした航空と、乗換が必要な鉄道しか選択肢がなかった頃に比べ競合環境が悪化することは明確であり、やむを得ぬところか。もっとも同社の場合、もう少し積極的な営業施策を行なう余地はあったように思え残念ではある。全国的に見ても、平日のみ適用される割引運賃を設定するなど簡易とはいえレベニューマネジメントが導入されつつあるのにそれは見送られているし、私たちのサイトでの販売も毎日3席ずつ決め打ちの登録だった。他の高速路線バス事業者が、予約の入り具合に応じてリアルタイムに座席の出し入れを行ない(なので、サイト上の空席カレンダーを見て「空席5」となっていても、それが5席登録して1席も売れていないのか、それとも15席登録して既に10席売れているのかは判断できない)、さらに多少の運賃施策を行っているのに比べるとちょっと物足りないのは事実。高速路線バス取扱第1号だけに、私たちの側にも若干遠慮があって積極的にご提案しなかった点を大きく反省である。ただ、状況が厳しい路線について私たちのサイトの活用を試みるという選択はもちろん間違いではない。私たちは何も、全国の高速バスをただただ全て羅列したサイトになる気もないし、高速バスのインターネット予約を集約して、ウチでしか予約できないという独占状況を作ることなど望んでいない。JR東日本が、「えきねっと」(高速バスで言えば、自社サイトである「発車オーライネット」や「ハイウェイバスドットコム」などに当たる)とは別に、まずは首都圏からの観光需要の喚起を目論んで東京発の商品のみで外部サイトと提携を始めたように、販路しだいで「伸びしろ」が見込める分野や、各社の集客力の弱点に当たる部分のお手伝いをする立場なのだ。バスで言えば、観光客の喚起が見込める、大都市を午前中に出発する便や、満席にはなりえない平日の便、実質回送になりがちな続行便の復路など、事業者の判断でリアルタイムに席を出し入れしてもらえばいい。そして初期費用や固定費がかかるわけではなく、予約が入った分についてのみ手数料を頂戴する。「このままの乗車率だと撤退もやむを得ないかなあ」という路線を手伝わせてもらうのは一つの立派な活用法だし、私たちも喜んで受け入れるパターンなのである。話は戻って、JR東日本との提携が実現したというニュースは、会社としては非常に喜ばしいことだ。ただ個人的には、石和温泉や上諏訪温泉、那須高原や南房総に旅行を考えているお客様が、高速バスの存在など知りもしないまま鉄道を選んでしまう姿を想像すると、やっぱりちょっと悔しいのは事実である。
2010.10.21
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『日本経済新聞』朝刊、経済教室面の連載「ゼミナール」、今月は「新時代の公共交通」というテーマで財団法人運輸調査局が担当なさっている。局のお立場柄、また媒体の性格柄、好き勝手に書くわけにはいかず大変だろうが、適度な政策提言も盛り込まれている。本日のお題は「国際展開」。まずは海外(先進国)の公共交通サービスの経営形態の紹介から入っている。つまり、公共交通は赤字であることを前提に地方自治体がサービスに責任を持ち、運営は地域ごとに事業者を選定しその事業者に独占的に委託する形が一般的とのことだ。<運賃を収入の柱とする従来型の公共交通サービスに比べ、事業者にとっては収益性は低いが低いリスクで事業を展開できる>メリットがあり、一方で地域や自治体にとっては<事業者同士が運賃引き下げなどで過度な競争に走ることを回避し、交通サービスを確実に提供する>というメリットがある。本稿では「自治体主導・1社独占・運営専業」モデルと名づけている。ここであらためて日本の(路線)バス業界の歴史をざっくりと振返ってみる。【1】戦前においては乱立状態だったが、いわゆる「戦時統合」を経て一地域一社の体制ができた(地方銀行や地方新聞社など我が国の多くの産業で同様の現象が見られる)【2】戦後、急激に路線バス事業の重要性が高まる中、地域独占認可の制度によることで、競争的参入を制限することと引替にユニバーサルサービスの提供を事業者に事実上義務付けた。バス事業におけるユニバーサルサービスとは、内部補助理論に基づき赤字路線も事業者の責任で黒字路線と同様のサービスレベル(具体的には運賃水準)を維持することである。なお維持すべき路線網や利便性(運行本数)までレギュレーションで規定されているわけではなかった(撤退手続きのハードルの高さと各事業者の使命感により自主的に路線網を維持する努力がなされた)。【3】1960年代まで路線バスの輸送人員は順調に伸び、各事業者も企業として大きく成長した。越後交通の田中角栄を筆頭に保守系政治家と関係が深い事業者が多く、地域開発など様々な側面で「地域を代表する名士企業」「地元経済の牽引車」としての役割を果たした。【4】1970年代から路線バスの輸送人員は下降を始め、従来の「多数の黒字路線で少数の赤字路線を維持する」モデルから「少数の黒字路線で多数の赤字路線を維持する」モデルに代わり路線バス事業が赤字化する事業者も生まれたが、【3】で挙げた付帯事業(既に「付帯」の枠を超えていた)における利益がその赤字を相殺しても余りあったため内部補助によって乗り切り、従来のモデルが維持された。また1980年代後半から高速バスを路線バス事業者が自ら運行する例が一般的となり新しい「内部補助の原資」となった。そして現在、である。各種統計を見ても路線バス事業の収支はますます悪化している。付帯事業の多くも、時代の変化に対応しきれず収益力は低下している(地方のバス事業者の経営による都心部のバスターミナル併設のショッピングセンターで、郊外型店舗に客を奪われテナントの空きが目立つ例は全国共通の現象だ)。民間企業であるにもかかわらず使命感を持って過疎地の赤字路線をなんとか維持しようとする努力には大いに共感するが、事業者側ではなく地域、自治体の側から見た場合、事業者の「美学」によって公共交通がなんとか維持されているという現状が健全と言えるかどうか(現実に、ショック療法かのように一気に路線撤退が進んだ鹿児島県のような例がある)。さらに「運営」のみならず「経営」という側面にも大きなインパクトが広がりつつある。「バスの乗客が減る」「テナント収入が減る」など事業そのものの不調に加え、ファイナンス面でのハードルが上がりつつあるのだ。各事業者は地元金融機関との間で間接金融による「長期的視野に立った」共同体的関係を築いてきたが、その金融機関の側に、長期的に物事を考えるだけの余裕がなくなってきている。またこれまで日本企業の株主は「物言わぬ」ことが前提だったが、かといって事業者の株主や、事業者の生殺を事実上握っている金融機関の株主らが足元の利益のため赤字路線の撤退を叫ばないとは限らず、株式会社である限りそれを断れる理由はどこにもない。さらにやがて国際会計基準がバス事業者にも適用されれば、会社存続に影響する事業者さえ少なくないだろう。内部補助を背骨とした従来のバス事業者の経営モデルは、特に地方部においては限界に見える。かといって、現業部門まで官が丸抱えすれば「国鉄」の二の舞は必至だ(各地の公営バス事業が民間事業者に管理委託または譲渡されることで多少ながらも効率性を取り戻していることがそれを示している)。すなわち、公共交通のネットワーク維持に誰かが(足元の利益を抜きに)責任を持ち、一方で効率性を担保するため多少の競争原理を導入することが求められているのだ。必ずしもそれは、欧州や北米で一般的な「自治体主導・1社独占・運営専業」モデルではないかも知れぬ。我が国の実情を鑑みれば異なるモデルがあるのかも知れない。しかしこのまま何も議論をしなければ、皆で座して死を待つようなものである。いずれにせよ「経営(設計)」と「運営(運行)」の分離は必要だろう。「赤字であっても安全性とネットワーク維持を担保する」役割と、「売上最大化とコスト最小化により利益を生む」役割は明らかに相反する。事業者の社内でその二つをうまくバランスさせることができた間は目に見えなかったが、内外での様々な環境変化が課題を表面化させている。お金を出す(その代わり、安全性やネットワークに瑕疵が無いか口出しする)立場と、走る(売上増やコスト減をうまく実現すれば利益が出て従業員にも還元できる)立場とを、うまくつなぐ制度の設計がいま求められているのだ。なお本日の「ゼミナール」欄は以下のように結んでいる。<日本でも今後、こうした「自治体主導・1社独占・運営専業」のビジネスモデルは成立しうると考えられる。そうなれば、海外資本による事業者が参入する可能性も高まろう。これは同時に、日本の交通事業者の海外展開の可能性も示唆する。国際的に見て良質な公共交通サービスを提供している日本のノウハウは海外でも通用すると思われる。相手国での人材教育などができれば、日本の事業者が国際的に事業展開をすることも不可能ではないだろう>
2010.10.18
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先週末に取扱開始した東北急行バスだが、さっそく全国450万通配信のメールマガジンで大きく取り上げたこともあり滑り出しは好調だ。乗車対象日が1週間以上先であるにもかかわらず続々と予約が入っている。一例だが、往路(夜行)は東北急行で復路(昼行)は高速ツアーバス、あるいは何度も高速ツアーバスを繰り返し利用しているリピータが今回は東北急行、という使われ方が目立ち、従来から東京と仙台の間をバスで移動していたが、高速ツアーバスの存在しか知らなかった(あるいは、東北急行バスやJRバスの存在は知っているが、予約の利便性その他の理由でそちらを選んでいなかった)利用者が今回の移動からはサイト上での比較検討の結果、東北急行バスを選んだ構図がはっきりと出ている。さて、では利用者はどのような基準で高速バスを「比較」「検討」しているのだろうか? 様々な基準があろうが、例えば、「3列シート(2列を含む。以下同じ)」か「4列シート」か。皆様はどれくらいの割合と想像するだろうか? 首都圏-京阪神(「フライングスニーカー」号登場前のデータなので全て高速ツアーバス)で言うと、平日に関しては、人数ベースで約45%が3列、残りが4列だ(ここではトイレなど付帯設備やアメニティグッズなど付帯サービスの有無などは除外して、座席タイプだけの切り口のデータだ。また金額ベースでは3列の方が上)。ちなみに週末は3列が35%まで低下するが、これは、一般的な貸切バス車両が4列であるため週末には4列でどんどん続行便を設定できるが3列は続行便を用意できず早々に満席となり、結果として3列のシェアが低下しているのだ。逆に言うと週末には、本当なら3列希望だが満席で、やむを得ず他の交通機関(高速路線バスを含む)を選んでいるか、あるいは4列で我慢している人が約1割存在することを示している。高速路線バスの場合、従来は乗車時間によって事業者側が車両タイプを決めてきた。2時間を超えるならトイレ付き、6時間を超えたら3列シートというあたりが平均的だろう。私が「第2フェーズ」と呼ぶ時期の初期はいわゆる「高速バスブーム」であり全国に高速バス路線が雨後の筍のように新設されたが、そのきっかけとして3列シートなど居住性に優れた専用車両の登場が挙げられる(共同運行システム導入により既存事業者が自ら高速バス運行に参入したことによる地方側での認知向上と、高速道路延伸という背景も大きい)。それゆえ、4列シートの貸切車で夜行運行することにネガティブな意見も多い。私自身、学生バイト時代、さらに実は今の会社に転職した時点でもまだかなり否定的だった。もっとも、帰省ラッシュなどの繁忙日において4列シートの貸切車で続行便を設定するかどうかは事業者によって対応が分かれていた。高速バス繁忙日は貸切バス閑散日にあたるため各社ともできれば続行を設定したいのが本音で、私見だが、大都市側事業者のポリシーの違いによって夜行の続行に貸切車を持っていくかどうかの判断が分かれているようだ。ポリシーと言っても、その大都市側事業者が、夜行便よりも収益性が大きい短・中距離の高速バス路線を持っていれば続行便はそちらを優先するので夜行路線は専用車のみ、という程度であり、共同運行ペアの組み換えが続く今日、そのポリシーを巡って新しい共同運行先と意見が合わないとの愚痴も聞く。片や<続行便を設定し多くの方の役に立つのが我々の責任>と言い、片や<「高速バスは快適」というイメージを覆すリスクがあり目先の利益にはなっても長期的にはマイナス>と主張する。しかし上記のデータを見る限り、その論争は終焉させるべきと言えそうだ。要するに<お客様自身が選べばいい>のだ。従来の「路線独占」認可時代は、誰からも不満を持たれない「最大公約数」的商品作りが、独占認可と引替にして強い責任感の元で進められた。首都圏-京阪神で言えば「片道約8時間だから3列独立トイレ付き」が標準とされ、どうしてもその枠をはみ出す繁忙日の続行便について、上記議論が事業者のプライドを賭けて行なわれたのは決して間違いではない。しかし、高速ツアーバス業態はもちろん高速路線バス業態においても座席タイプ別に価格設定が可能になり、かつウェブ上で乗車日と区間を指定するだけで空席便の詳細情報(画像やコピーワーク)と価格を一覧的に表示させることができるようになった以上、自身のニーズに合った商品をそれぞれの利用者がチョイスすればいいようになっただけのことだ。<高いけど快適だから3列シート><安い方がいいから4列シート。でも路上の集合場所よりは待合室のあるターミナルから乗りたいから少し高いけど「路線」を選択>といった判断を利用者自身が行なう環境が整ったのだ。以前、酒販免許ががちがちに運用され、自宅でビールを飲むには近所の酒屋さんからラックで配達してもらうしかなかった頃、ビールの銘柄は限られ商品の個性も乏しかった。消費者が自ら選べない以上、極端に苦いとか軽いとかのビールが届けられれば不満を招くリスクがあったからだ。しかし酒販免許の運用が緩和されコンビニの冷蔵ショーケースから一人ひとりの消費者が自分の意思でビールを選ぶようになった今、価格の安い発泡酒や逆に高級なプレミアムビール、女性向けや健康志向などそれぞれの消費者のニーズに寄り添った多彩な銘柄が並ぶようになった。ウィラー・トラベルと平成エンタープライズを筆頭に高速ツアーバスの世界に起こっている商品の多様化は正にこの流れにあり、むしろ「所要8時間だから3列シート」などは事業者のお仕着せとされるリスクがある。先日、学生時代の友人が<学生時代、遠距離恋愛していて、よく入場券だけで新幹線に乗り込みトイレに隠れて彼女に会いに行っていた>と思い出話をしていた。酒の席での話だからその行為の真偽もわからないし事実なら犯罪ではあるのだが、少なくとも「遠距離恋愛中の学生」という利用者には、少しでも安く移動を提供することこそ、一つの「責任」である(安全性の維持という別の責任との兼ね合いがあるとしても、だ)。そして私たち予約サイトとしては、利用者一人ひとりが自らのニーズに最も近い商品を選べるよう、サイトの導線やデザインを工夫することにその責任がある。しいていえば、高単価の商品が売れた方が満足度が上がり、かつ手数料収入も増えるので、上級車両から優先して売れるような工夫も忘れてはいないが。
2010.10.04
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本日より東北急行バスの取扱を開始した。打ち合わせの当初は東京-仙台線のみの取扱のつもりでいたのだが、結局は山形線、京都・茨木線も同時スタートとなった。要するに同社が単独運行する路線全てということだ。では共同運行の路線は……となるとハードルもなかなか高いのだが、西東京バスの取扱が、まずは単独運行である金沢線昼行便から始まりその後共同運行路線の高松線へと拡大された経緯もあるので、こちらについても引き続きご説明を続けていきたい。同社の前任のご担当に初めてお目にかかったのは、もう3年以上も前になるだろうか。当時私にとっては高速路線バスの取扱など夢のような話で、東北急行クラスの事業者と会うことができるだけでとりあえず嬉しかった。高速路線バス事業者の方とお会いする日は、わざわざ、その事業者のバスの色のネクタイを選んで着けていたほどだ。アポイントの日の朝、紺のスーツに合わせるため、自宅のネクタイ掛けの中からオレンジのネクタイを選び出した瞬間を今でも覚えている。ようやく、その時の思いが実現する。何度も書いていることだが、首都圏-仙台線は高速ツアーバスが圧倒的に強い路線だ。その路線が事業の根幹である(というより会社の成り立ちそのものである)東北急行バスにとって、私たちのサイトへの思いは複雑なものがあるだろう。「楽天さえ無ければ」という感情もあったかも知れないのだ。もちろんいつも書いているように、私たちがいなければYAHOO!かリクルートかが同じことをやっただろうし、そうでなければウィラー・トラベルや平成エンタープライズらは違う形の集客モデルを自ら作り上げたに違いなく、日本中の他の業界で起こっている事実と照らし合わせて考えても高速ツアーバスの成長は「必然」であるから「楽天さえ無ければ」という考えは意味がないというのが私の考えではある(※)が、とはいえ、当事者にすればそれはいかにも評論家的な意見に映るだろう。一人ひとりはその場その場で真剣に戦ってきたのだ。その相手である(と、彼らが思い込んでいた)私たちのサイトで販売を開始するというご決断の重さは、真摯に受け止める。東北急行バスや東武グループの社内、およびご紹介者も含めここまで導いてくださった全ての方に、心からお礼を申し上げたい。(※)余談だがこの「歴史の必然」という話だが、しいていえば、一つだけ、高速ツアーバスの成長(ないしは全く別の形での高速バスへの新規参入ラッシュ)を防ぐことができた「歴史の“もしも”」がある。それは、需給調整撤廃と同時に「バス停の再配分」機能をあえて作っていれば、という“もしも”だ。政治の要請によりレギュレーション的には規制緩和しながらも、事実上は「バス停の権利」という既得権を残したことで、その壁を越えるために結果として募集型企画旅行という全く別のルールが高速バスに持ち込まれてしまったのだ。既存事業者の方から先に「どうぞどうぞ新規参入してください。我々も身を削って都心のバス停の一部を提供しますから、その枠内で新規参入してください」と捨て身技に出ておれば、その頃から高速バス進出に興味があった一部の貸切専業者や運送業者が喜んでその「枠」に飛びつき一見は競合参入を受け入れることにはなるものの、既存事業者はそのわずかな新規参入者とだけ戦えばさえよく、こんなことにはならなかったのだ! 現実に国内線航空ではほぼそのような構図になっている。羽田空港を利用する際、端っこのスポットにスカイマークらが遠慮がちに止まっていたりするのを見るにつけ、例えば新宿西口の数多くある路線バスのバス停のごく一部を「新規参入高速バス用」として確保し抽選か入札で配分していれば、「引き続き圧倒的に強い既存事業者の高速バスと、ニッチビジネスにしかなりえなかった新規参入の高速バス」という構図以上にはならなかっただろうと思う。ただあくまでも結果論。今となっては栓なき話でしかない。話を戻すと、ただ、東京-仙台線が高速ツアーバスが圧倒的に強い路線だということは、東北急行バスにとっては極めてラッキーな話である。なぜなら、この区間については私たちのサイトで十分以上の顧客を抱えているということなのだから。言葉は悪いが、「釣り堀」が出来上がっているのである。もちろん釣り堀である以上コストを払えばさえ誰もが簡単に釣りができるから、すぐ隣でライバルが糸を垂れているのも事実である。競合は激しい。だが糸の先についた餌がおいしければさえ、お魚はいくらでも食らいついてくれるのだ。各事業者と私たちとで協力しながらこれから一緒にマーケットを拡大させていく必要はない。既に出来上がったマーケットの中に極めて優秀なプレイヤーとして突然現れた東北急行バスは、販売を開始したまさにその瞬間からぞくぞくと予約を受け続けることだろう。今は高速ツアーバスと比べて価格が安いため特に数字がふくらむだろうが、彼らの次のステップとしては、本来の商品の「格」に見合った単価まで運賃を戻していけるかどうか、だ。そのためにも、まずは販路拡大で乗車率を確保することは戦略として正しい。私としては、引き続き、東北急行バスの路線から一つひとつ結果を出すことこそ、他社も含めた取扱拡大に向けた最も有効な切符である。まずは主に仙台においてどのようなプロモーションを進めていくか、やりたいことは頭の中に山ほどある。正直なところ私個人としても会社としても、取扱路線数が急激に増加するようだと、一路線あたりにかけることができるプロモーションのリソースも限界が出てくる。これをお読みの高速路線バス事業者の皆様で、いろいろプロモーション面で特別扱いを受け自社の乗車率を少しでも向上させたいとお考えの方がいらっしゃれば、現在具体的な打ち合わせ中の事業者の顔ぶれも見る限り、実は「特別扱い」の締め切りが近づいている(?)。もちろん、特定の事業者をあえて採り上げたプロモーションは必ずしも必須ではないけれど、普通に空席検索結果に高速ツアーバスと並んで表示されて受身で予約が入るのを待つよりは、せっかくだから自社を大きく紹介してもらいたいと、私が担当者ならそう考えるのだが。
2010.10.01
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