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高速バスに詳しい読者の方にクイズ。<有名ないくつかの高速バスターミナルを、ある違いを元に二つのグループに分類すると以下のようになった。分類した基準を答えなさい。 第一グループ:JRバス東京駅(八重洲南口)/名鉄バスセンター/西鉄・天神バスセンター 第二グループ:京王・新宿高速バスターミナル(西口)/JRバス新宿駅(新南口)/阪急三番街高速バス乗り場>さてどんな答えが出てきただろうか? 想像される答えを挙げてみると……「『自動車ターミナル法』に基づいて許可を受けた一般または専用バスターミナルか、同法の許可を受けていないただのバス停か?」いや違うなあ……「高速バス以外に、深夜急行バスが発着するかどうか?」……惜しいけどそれも違う。答えは運用面での違いである。一言で言うと、路線(行き先)別に乗り場番号があらかじめ決まっているかどうか、の違いで分けてみたものだ。八重洲南口や天神では、夜行の続行便が設定されている日など例外を除き、「東名ハイウェイバス(静岡・名古屋方面)は1番乗り場」という風に乗り場番号が決まっており構内各所にその旨の表示がなされているが、西口や阪急三番街では、同時発車するバスが複数ある際など、そのバスが入線してきた順番によって乗り場番号をその場で決定し放送やLED表示で乗客を乗り場に案内する。大雑把に言うと、発着台数に対して相対的にスペースの余裕があるのが八重洲南口や天神など「第一グループ」で、逆に「第二グループ」のターミナルは、かなりキツキツで運用されていることになる。だからこの運用方法の違いは、あくまでも相対的なスペースの差から自然発生的に生まれたものだ。新宿高速バスターミナル(西口)で言えば縦列で3台分のバースがあるが、窓口と待合室がたまたま最も後位に設置されているため、その窓口の正面(つまり一番後ろのバース)を「1番乗り場」とし、一番前が「3番乗り場」だ。私は関西に生まれ育ったため貸切バスの「逆番」に慣れていたためてっきり京王もそうなのかと最初は思ったのだが、古株の社員に聞いてみると「開設されたときは富士五湖線と甲府線くらいで出発台数が少なかったから、1台口なら窓口正面の1番乗り場を使用し、2台目があればちょっと遠い2番乗り場で……という風に運用することを前提に作ったのだろう」というだけのことだった。それが今やあれだけの路線数と便数を出発させ、特に中央高速バスは「続行便文化」が定着しているから日によって台数も大きく増減するという状況だ。「6番カウンター(当時)」で無線とマイクを両手に握って、次の出発便に無線で入線指示をしながら今の出発便について放送で乗り場を案内するといった現場の感触は私の原点であり、個人的には、一日だけでいいから無給でいいから、繁忙日の西口でもう一度走り回ってみたいものだが…さて、そのような背景で同じ高速バスターミナルでも異なる運用方法が生まれた結果、「第一グループ」と「第二グループ」で、そこを使用する事業者の商品政策にも大きな違いができた。「第一グループ」では乗り場の番号が確定しており事前に乗客に伝えることが出来るから、比較的短距離の路線は予約定員制または自由席として乗客には乗り場の前に列を作って並んでもらうことが可能で、必ずしも座席指定制を導入する必要は無い。対して「第二グループ」のターミナルにおいては乗り場が決定するのが入線時なので並んでもらうわけにはいかず、必ず座席指定制としなければならない。座席指定制とすると事業者側には余計なコストが、乗客側には余計な手間が必要なので、長距離路線はともかく短距離路線が育ちづらい。短距離路線が頻発する東関道や常磐道方面の高速バスや、福岡から北九州や佐賀方面の高速バスは、ターミナルのスペースに余裕があったからこそあそこまで成長したと言っていい。西口に代表される「第二グループ」においては、だから、LEDによる案内表示(当時はそんなものは存在しなかった)と放送でのみ、乗客に乗り場を伝えることになる。乗合事業者においては鉄道駅からの流用で「1番乗り場に停車中のバスは、19時ちょうど発の飯田バスセンター行きです」などと放送をするケースが多いが、私としてはそれはちょっと不満だった。乗客が知りたいのは「1番乗り場のバスは飯田に行く」ことではなく、「飯田に行くバスは1番乗り場に止まっている」なのだ。だから「飯田行きの19時ちょうど発は1番乗り場」という順序が正しい。さらに1便に対し複数台で運行する続行便の設定、同じ出発時刻で複数の路線(行き先)の便による同時発車もある。途中バス停で降車する乗客(特に観光客が多い富士五湖線)は、自分が乗るバスの行き先(終点バス停)を認識していないケースも多いから「富士五湖線」といった路線名を付けることも必要だ。私の場合は「中央高速バス飯田線、19時ちょうど発の飯田バスセンター行きは1番乗り場」と「路線名>出発時刻>行き先>乗り場番号」の順番で放送し、3台以上同時発車する場合は「19時ちょうど発の高速バスは、飯田行き1号車2号車、甲府行き1号車の計3台ございます。まず飯田線、19時ちょうど発飯田バスセンター行き1号車は…」としていた。各社別々の車庫から出庫して来るため入線が遅れるクルマもある。同時発車が多くなるとターミナルの外の路上バス停「26番」に振る場合もある。そうなるとむしろ、既に入線しているバスについて乗り場番号を読み上げるというよりは、「まだ来ていないバス」と「既に乗車改札が始まっているバス」をはっきり伝えることが優先される。「19時ちょうどの出発便は、飯田行きと甲府行き、2路線で5台ございます。そのうち、飯田行きでは1号車と3号車、甲府行きでは1号車が乗車改札中です。飯田行き2号車と甲府行き2号車の乗車券をお持ちのお客様は、あらためてこの放送でご案内いたしますまで待合室にてお待ちください」。案内放送一つにしても、ちゃんと考えてしゃべっているか、聞けばすぐにわかる。なぜこんなことを書いたかというと、明後日30日の夜は新宿からの高速バス出発のピーク。夕方の京王新宿高速バスターミナル、その後の西口エリアの高速ツアーバス出発ラッシュを見に行くことを考えていたら気持ちが先走ってしまったから、である(苦笑)。
2010.04.28
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昨日から、宮崎交通の定期観光バス「日南コース」の取扱を開始した。以前より何度となく営業に伺っていた(周りからは、「高速バスに乗るために九州出張にわざわざ宮崎を組み入れているだけ」と見られていると思うものの)が、いろいろ考えていただいた末まずは定観の取扱と相成った。高速バスとは違い、お互いに大きな数字を生む商品ではない(先日書いたように、やがては定観や発地型・着地型双方のバスツアーも、臨界点に達すると急速にウェブでの集客が膨らむと思うが…)が、この事業者の現在の商品ポートフォリオを見ると「まずは定観から」という選択は悪くない。私のサイトの役割は「ウェブで予約を受け付けること」ではない。正しくは「ウェブマーケティングにより新しい需要を掘り起こし、最終的にそれをウェブ上で予約まで成立させること」である。その象徴が手数料率で、システムだけを担う発車オーライネットはもちろん、ウェブ上での発券を主な役割とする大手旅行会社系サイトに比べても手数料は高めだ。事業者から見れば、テレビCMや新聞広告などを通して認知を上げるためのマーケティングコストを、ウェブ上での予約・発券に伴う手数料に上乗せして払うイメージだ。もちろん、実際のテレビCMと比べれば圧倒的に安上がりだし、コストは実績に応じてのみ発生するという利点はあるが。いずれにせよ事業者にとっては、相応のコストをかけることで認知を拡大し新規需要を開拓するための「攻めのツール」である。九州以外の現状を見ると、いつも書いているように特に大都市側において高速バスの認知が著しく低い。一般的な大都市住民の移動の際、高速バスがその選択肢にさえ挙がってこない。選択肢として思いついても、方面別に事業者が分かれ予約窓口もバラバラでわかりづらい。ウェブマーケティングの導入が一刻も早く待たれる状況であり、高速ツアーバス各社が先にそれを本格活用したものだから、高速ツアーバスこそを高速バスの全てだと認識している利用者も多いという微妙な現状だ。だからこそ、九州以外の高速バス事業者がウェブマーケティングを導入すれば高速バスの認知が一気に拡大し利用者数が大きく伸びることが予想される。彼らには「攻め」のツールが必要だ。だが九州内に限ると、高速バスの認知は十分だ。九州内を移動する多くの人にとって、少なくとも「選択肢の一つ」ではあるはずだ。だから九州の事業者にとって(本州向けの夜行便は別として)有効なのは「攻め」ではない。必要なのは、一つはせっかく選択肢として候補に挙げてもらっていながら他の交通機関を選んでいる利用者に対し高速バスを選ばせることであり、もう一つは、抜本的な乗客数の伸びが期待できない以上、現状の乗客数のままで、サービス水準を落とさずとも効率的に利益を上げる手法を考えることだ。前者では、キーは結局「商品そのものの魅力」である。例えば福岡県~宮崎県の全流動に占める高速バスの輸送シェアをみると、普通なら大都市(この場合は福岡県)在住者のシェアは低く逆に地方側(宮崎県)在住者はシェアが高いものだが、同区間に限っては逆転している。理由は簡単。競合相手が鉄道ではなく自家用車だからである(2005年時点でのデータ)。さらにその後「1000円高速」もあり、高速ツアーバスが成功(多頻度昼行路線としては全国でも稀な例だ)しその高速ツアーバスで宮崎側の無料駐車サービスが好評という事実もあり、さらにまもなく開通する新幹線の新八代まで自家用車で出るケースが増えることを考えても、駐車場サービスを提供する、あるいは宮崎朝発→福岡夕発の「現地ダイヤ」だけは宮崎市心より郊外発着を優先するなど、宮崎側での自家用車対策が肝要だろう。多様化する利用者ニーズ(高くても快適さを求めるか、窮屈でも低価格を求めるかなど)に対しては「皆割フェニックス」で成功しているが、本来ならば全便でカテゴライズされた多様なサービスを提供すべきであり、さらにそれらの施策を認知させるトリガーとして、京王系の高速バスが得意とする期間限定の大幅割引も有効だろう。後者では、多すぎる所定便の数を多少絞って効率化を図りつつ輸送力を低下させないために、効率的な続行便設定体制の開発や、それをサポートする精度の高いフォーキャスト(需要予測)手法の開発、乗車率の平準化を図りつつ事業者の収益性を高めるための繁閑に応じた価格設定(完全なダイナミックプライシングは無理でも、現行回数券を廃止した上で中央高速バス「トクワリきっぷ」のような平日限定回数券の導入など)といった手法が考えられる。いずれにせよこの種の路線で必要なのは、認知を上げバスを選択肢に入れてもらうための「攻め」のツールではなく、バスの存在は認識しているが結局他の輸送モードに流れている利用者をバスにつなぎとめる、あるいは、今後ますます攻勢を強める高速ツアーバス(あるいは新規参入の高速路線バス)に逸走させないための「守り」の強化が最重要だ。かつて「フェニックス族」という言葉が生まれたように、宮崎~福岡線では、天神へショッピングに向かう若者の姿が目立つ。彼らの目的は、実際には買い物そのものというより、いわば天神で「新しい空気」を吸うことなのだ。しかし「フェニックス号」は、運行ダイヤやルートも愛称も、バスのカラーリングも内装も、私が初めて乗った20年前とさほど変化しておらず、それではやはり「シンデレラの馬車」の役は務まらない。「高速バスの聖地」九州でさえ、高速バスにはまだまだやるべきことがある。いや、もう余地が無いほど認知拡大が進んだ九州だからこそ、上記のように商品そのものに焦点が当たると言っていい。商品そのものが課題なら、直接的には私たち予約サイトの出る幕は当面無く、他県からの観光客をターゲットとする定観から取扱を始めるというのは、経営的な苦難を乗り越え外部の血を招き生まれ変わった同社こその現実感ある選択だ(将来的にはいろいろ思いもあるのだが)。今回お預かりすることとなった定観については仕事だから当然拡販の努力を惜しむ気はないが、同社にはぜひ、(直接的には)私の手の届かぬところで、高速バスの明日についても真剣に考え続けていただきたくことを大いに期待している。
2010.04.27
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既に取扱中の3社に次いで高速路線バスや定期観光バスを取扱開始するための具体的な打ち合わせが、複数の事業者と同時に進展している。その中で悔しいのは、一つの事業者で契約に合意しても、共同運行先でNGになることだ(なんとか6月から7月をメドに、共同運行路線を2~3路線、取扱を開始したいと考えているが)。とにかく、共同運行会社同士の意思決定プロセスの欠如には驚かされる。共同運行という関係は、普通の業界で言う「ビジネスパートナー」ではないのか。一緒に事業を拡大させていくための仲間ではないのか。この問題は噂としてはよく聞いていたが、実際に自分が直面すると、「悲しい」という、私の願望がこもった言葉すら不適当で、「呆れた」という、突き放した言葉の方が当てはまる気がする。大都市圏に位置し高速バス事業を相応の規模で営んでいる事業者は、おおむね(一部に例外はあるものの)開明的、現実的だ。ウェブマーケティングを導入することのメリットも必然性も全て認識し、あとは誰が先陣を切るか、「業界秩序」を気にしているに過ぎない。それに対し地方の老舗事業者の保守性には驚くばかり。あらゆる面において、地域の「お殿様」(決して悪い意味ではない。皮肉ではなく褒め言葉のつもりだ)であった企業たちだから、一度経営が破綻し経営陣の顔触れと社員の意識が入れ替わった会社以外では、高速ツアーバスとの競合が発生している事実を「現実」として捉えることや、私のサイトのような外部の力を借りて集客するという概念そのものを受け入れられないのだろう。そういった地方の老舗事業者や一部の大手私鉄系事業者にとっては、高速ツアーバスという存在自体を認めていないので、その高速ツアーバスを育ててきた私のサイトのような存在もまた認められない、ということなのだろう。いやむしろ、正義感に基づき「無法者だから成敗すべし」とお考えなのだろう。その「気持ち」は、私にも十分に理解できる。しかし、私が彼らに問いたいのは、「その先」に何を描いているのかだ。「高速ツアーバスは違法だから(最近ではさすがに「アンフェアだから」に変わったが)追い出せ」と主張することは、気持ちとしては理解できる。しかし現実問題として捉えた場合、この状況で行政機関なり何なりが高速ツアーバスというビジネスモデルを禁止することがあり得るのか。何らかの制度変更により「二地点間輸送では募集型企画旅行と認められない」という風にレギュレーションが変わることを本気で期待しているのか。いやむしろ、彼らに本当に問うてみたいのは、一歩譲ってそのような制度変更があった場合のことだ。仮に、だ。明日にでも、彼らの希望通り本当にそのような制度変更があったとする。ウィラー・トラベルをはじめとする高速ツアーバス関連の事業者は、何らかのルールに基づき乗合許可へ移行することとなるだろう。そうなれば、確かに若干は事業の自由度を殺がれることになる。レベニューマネジメント概念に基づく完全なダイナミックプライシングもできなくなる。稼動の低そうな平日はあらかじめ催行を設定せずその日に集中して車両整備を行なうことも難しくなり、予備車両の配置率も上げざるをえないなど、コスト負担も増加する。バス停の権利を手に入れられず事業を断念する会社もあるかも知れない。当日発券が容易になることや高速道路料金の割引など乗合ならではのメリットもあるものの、長距離夜行路線においては、おおむね、デメリットの方が大きいだろう。高速ツアーバス各社の事業は一時的には収縮する。しかし、ではそれで高速バス同士の競合が無くなるのか。かつてのように、一度認可を得てしまえばその路線に他の事業者が新規参入することはなく、安全・安定輸送にさえ努めていれば路線を維持でき、路線維持さえできれば安定した収益源となりうるような、そんな時代が再来するのか。販売力の拡大に努めることも、時代ごとに移ろい行く消費者ニーズに対応する必要も、営業面でのそんなコツコツした努力は高速バス事業者には不要だというのか。それとも、業態間の不公平さえなくなればウィラーやオリオンなどに負けるはずがないとタカをくくっているのか。変な例えだが、先の戦争で米国は日本中を「兵糧攻め」にした上で多くの都市を空襲して、敵である日本を降伏させた。一方「鬼畜米英」と叫んでいた当時の日本の指導部は、一体どんな勝利の姿を描いて戦っていたのか。米国が日本に行なったように北米大陸全体を兵糧攻めにした上で西海岸のカリフォルニア辺りから上陸し、戦車で進軍してワシントンにいる大統領を降伏に追い込むことを考えていたのか。それとも、「抵抗さえしていればそのうち米国も飽きるだろう」とでも考えていたのか。インテリの指導部が、まさか、神風が吹くことを心底から信じていたわけではあるまい。「ツアーバスは許せない」という信念を持つのは自由だが、その信念に囚われるあまり高速ツアーバスの存在を前提に現実的な競合戦略を考えること自体を放棄してしまえば、神風を待っているのと何ら変わらない。本当なら、「今がチャンス」である。高速ツアーバス各社にとってだ。高速路線バス各社が掘り起こし忘れていた大都市間路線において急成長した高速ツアーバス各社が、高速路線バスが既に十分な存在感を持つ地方都市路線でもヘゲモニーを得ようとするならば、である。もちろん、いつも書いているように長距離夜行路線ほどツアー業態に有利で、多頻度昼行路線ほど路線業態に有利といった差異はあるにせよ、それなら各事業者が路線ごとにチョイスすればいいだけの話だ。新興の各社がさらなる成長を目指すなら、敵が寝ている今こそ最大そして最後のチャンスであるし、私個人、そして会社としても、もっともっと踏み込んで彼らの成長を徹底的に支援するというオプションは、選択肢としては明確に存在する。これ以上、高速路線バス各社にウェブマーケティングの提案をすること自体を取りやめ、高速ツアーバス各社に対して品質面の向上も含め将来像を提示しつつ各社の事業戦略にもっともっと踏み込んでコミットし徹底的に育て上げ、既得権益のもと惰眠をむさぼる大きな敵をひっくり返す……きっと、きわめて面白い取り組みだと思う、一人のビジネスパーソンとして。ただし、私の体の中に、学生バイト時代以来の「路線バス会社の血」が流れてさえいなければ。
2010.04.22
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バスに限らない話だが、いまどき、おおよそほとんどの企業が自社サイト、いわゆる「ホームページ」を持っている。その企業または商品に興味を持った消費者に対しウェブ上で商品情報を見せる、という最低限のウェブの役割は、多くの企業がとりあえずのことはやっている。その上で商品の種類によって、そのままウェブで購入や予約するのに向いているものと、そうでないものがある(バスで言えば、予約制の長距離高速バスは前者だし、予約制ではない、あるいは予約率が低い短距離高速バスや平場の路線バスは後者だ。バスツアーは前者に当たるが、貸切バスをチャーターするといった場合は、見積もりから始まり細かい打ち合わせまで全てをウェブ上で完結するのは難しいからウェブ化がなかなか進まない。例えば何千万円もするマンションを購入するとか、個人の体格に合わせてオーダーメイドのスーツを作ってもらう、などの商行為を完全にウェブ化することは難しいだろう)ものの、ウェブ購入や予約に向いている商品ならば、確実にウェブ購入・予約率は上がっているだろう。これまでなら消費者が店舗まで出向いて購入し自分で持って帰らないといけなかった商品を、ウェブ上で注文すれば宅配便で配達してもらえる。書籍や音楽なら媒体物の配達すら不要でダウンロードしてその場からコンテンツを楽しめる。あるいはホテルや交通機関であれば、旅行会社の窓口に行ってクーポンを購入したり電話で予約したりする代わりにウェブ上で必要事項を入力し予約が完了する。そのように、「来店」「電話」といった購入方法から「ウェブ購入」「ウェブ予約」へ移行するというのは、消費者の側では「24時間、いつでもどこでも可能だから便利」「対面のわずらわしさがない」「手元に確認書などが届くので安心」といったメリットがあり、企業の側に「対面よりもコストが低い」「消費者との接触機会が増え売上も増える」というメリットがある限り(現在のウェブよりももっと便利な技術が開発され定着するまでは)、確実にウェブ化は進展する。しかし、それぞれの商品について爆発的にウェブ化が急速に進展する時期というのもある。それは、各企業が個別に自社サイト(「ホームページ」)を作りそのサイトに対し個別に集客するに留まる段階から、各社の商品について業界横断的に比較検討するサイトが生まれ定着した時だ。高速バス、わけても高速ツアーバスで言えば、一義的には私のサイトやその競合である「スカイゲート」「高速バスドットコム」、最近では「バスサガス」「バス探」といった総合予約サイトの誕生がそれに当たる。しかしまた、それだけでは爆発的な成長とまでは行かない。第二段階として、上記の総合予約サイトが「バス比較ドットコム」「YAHOO!トラベル」「じゃらんネット」や大手ポータルサイト(「@ニフティ」「ビッグローブ」など)の旅行コンテンツなどにOEMまたはアフィリエイト提携することで裾野が広がり、最終的には「夜行バス比較ナビ」のようなメタサーチ(同サイトは空席検索をしていないので厳密にはメタサーチとは言えないが、現状ではもっともメタサーチに近い高速バス関連サイトだ。したがって高速バス、あるいは高速ツアーバスのメタサーチサイトは未だ誕生していないと言うべきか)が誕生する過程で、高速バスをウェブで予約するという「文化」が定着する。特に高速バスの場合は、YAHOO!などの検索サイトで「高速バス」と検索される回数は「航空券」の4倍、「ホテル」の2倍もあることからわかるように、潜在需要の大きさの割に各事業者のブランド認知、あるいは予約購入方法の認知が不足していて、ウェブ化の進展によって、それまでなら「高速バスに乗りたいが、どの会社がやっているのか、どうやって予約したらいいかわからなかくて困っていた」という「利用者予備軍」を予約にまで結びつけたわけだが、それ以上に「高速バスをウェブで予約するという文化」が出来上がったことで、理屈ではうまく言えないが、その「利用者予備軍」にさえ入っていなかった正に潜在的利用者にまで高速バスの利用を喚起できたと考えている。それを実現する条件は、多くの企業の商品を簡単に比較検討できるサイトの登場であり、同時のそれらのサイトもまた、比較検討される競合環境が生まれることだ。では、となると、数あるバス商品の中で今後ウェブ化が爆発的に進展し需要を大きく喚起できる可能性があるのはどのような商品だろう。上に書いたように、貸切バスのチャーター契約(例えば合宿を企画した学生サークルのイベント幹事と貸切バス事業者が、価格はもちろん細かい配車場所や目的地などを打ち合わせること)が今すぐ完全にウェブ化するとは思えない。それよりはB to C(個人向け)商品であるバスツアーや定期観光バスが先であろう。バスツアーでは、特にクラブツーリズムがパンフレット掲載の全商品をウェブに対応させウェブ予約比率も上がっているということだが、1社単独の努力では自社内での予約受付方法のシフトに留まり、「バスツアーをウェブで予約するという文化」が定着しそれによって新たな需要を喚起するまでには至らないだろう。高速ツアーバスがそうであったように、横串で簡単に目当ての商品を検索でき、かつ複数の企業の商品を一つのサイト上で比較検討した上で一つの会員ログインで容易に予約・決済まで成立するサイトの存在がまず必要だろうし、それを踏まえて、無色透明な商品作りから個性を主張する商品作りへの変革も必要だろう。その最たるものが、全国の既存事業者の多くが手がける定期観光バスだ。上記に挙げたクラブツーリズムなどのバスツアーを「発地型ツアー」とすれば、定期観光バスは本来「着地型ツアー」であり、マーケットにもっともっと受け入れられる潜在力はあるはずだ。だが現実には悲しいような乗車率の商品ばかりだ。ある既存事業者の若手社員から「そもそも、“定期観光バス”という名称自体を考え直さないと」という意見も聞いたがまさにその通りで、名称もそうだが商品自体も(はとバスなど一部を除き)「古きよき時代」を思わせるものが多い。これでは残念ながら、せっかくの潜在力も発揮できそうにない。例えば、若い学生のカップルにとって日帰りバスツアーや定期観光バスに乗ることがデートや旅先でのお洒落なイベントの一つ、として定着すること辺りが、この課題の一つのゴールになろう。繰り返すが、そのためには販売サイドも商品サイドも両方が、ますます利用者の「比較・検討」の目にさらされ変革・成長することが必要だろう。
2010.04.13
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先週土曜日はバイト時代の友人たちと千葉方面へ。一度乗りたいと考えながら、近すぎてついつい先送りにしていた京成バスの「マイタウンダイレクトバス“ちばきたライナー”」に初乗車。一般的な「都市間の高速バス」よりずっと短距離の、都心に出ようと思えば路線バスと通勤電車を乗り継がねばならない郊外から都心直通サービスを提供するという路線だ。私の実家近くでも神戸山陽バスの垂水・三宮線が好調だと言われているし、そもそも名鉄バスセンターから頻発する名鉄や三重交通の短距離路線、福岡県における西鉄の路線など、同種の路線は全国でけっこう見られるのに東京ではまだ数が少ない。慢性的な渋滞の影響もあろうが、東京や大阪では事業区域が細分化されており郊外の事業者は都心に自社バス停を持っていないし、かといって共同運行にすると便数が折半されてしまう。その意味では、東京駅などの「都心」は事業区域でなかったにもかかわらず様々な経緯から東京駅前の路上にバス停を持つ京成バスは比較的やりやすい立場ということか。この種の路線は、ウェブマーケティングを導入することで乗客数が一気に増えるわけではないから直接的には今の私の仕事の範疇外だ。そもそも予約制ではないから今の事業モデルのままでは取扱さえできないし、ウェブマーケティングは何も代売モデルだけではなく非予約制路線であってもウェブがお手伝いできる範囲はあるとはいうものの、本路線のように観光客の送り込みを期待せず、現地側での集客だけで商売をしようとすると、ウェブよりもむしろ新聞折込やバスマスクそしてリアルなクチコミ(要するに井戸端会議や噂話による認知拡大)の方が効率がいい。なんらかの理由でこの路線に予約制を導入する(例:満席率が高くなり「多少高くてもいいから座席を確約して欲しい」というニーズが高まった、など)としても、事業者側からすれば私のサイトに「送客手数料」相当の費用を払う意義はなく、発車オーライネットなど基幹システムへの「システム利用料」で十分だ。ただ仕事では噛めないとはいえ、これまで高速バスなど乗ったことがなさそうな人が続々と高速バスに乗り込むシーンを見るのは素直に気分がいい。日ごろより、既存の路線バス事業者は「空中戦」に比べ「地上戦」の方が得意だと申し上げているが、全国へ向けて走る高速バスを大首都圏マーケット全域において認知させようとすると空中戦が必要だが、本路線のように特定の地域から東京都心への足ならば地上戦の方が都合よく、路線バス事業者の得意分野を活かして新しいマーケットを開拓したと言えるだろう。そうなるとこの路線の今後は、商品そのものをどうブラッシュアップしていけるかにかかっているだろう。ダイヤやルートは十分に吟味して決めただろうが、とはいえ実際に運用してみると「この時間帯に1本あれば」など、事前には予測しなかった声も上がってきているだろう。もう少し便数が増えるようなら現地側で複数のルートを設定し、主要バス停ではフリークエンシーを確保しつつ末端部分では「面」を拡大することも有効かもしれない。そのような「声」をいかに多く集め商品にフィードバックさせていくかが鍵になろう。大切なことは「作りっぱなし」にしないことだ。都心側のバス停についても、現在の東京駅八重洲口(と、待機場所を兼ねる潮見駅)がベストかどうか。たしかに東京駅は長距離交通の結節点だし八重洲口には百貨店があるとはいえ、平日ならともかく週末に「都心に行く」といった場合、年齢が高い層なら銀座、若い人なら渋谷、原宿、六本木あとは新宿だろうが、こういった繁華街への地下鉄との乗換の便など考えても、「東京駅」という名前の巨大さ?ほどには便利な場所とは思えない。もちろん現実にはバス停確保という別のハードルが存在するから簡単ではないだろうが、あきらめなければ何かアイデアは生まれるはずだ。バス停といえば、本路線のために八重洲口で京成バス3つ目のバス停となる「3番乗り場」ができていたのには驚いた。高速ツアーバスの企画兼運行会社で高速路線バス業態に移行、また貸切専業事業者で高速路線バスへの参入を希望する会社は少なくないが、いずれの会社も大都市側でのバス停の問題で断念せざるを得ない状況だ。ここで詳しく書けないが、その状況は横で見ていて本当に歯がゆい。乗合バスの需給調整は撤廃されたはずなのに、事実上はバス停の権利の問題がネックで(高速路線バス業態での)新規参入がなかなか進まない。しかし京成バスともなると八重洲口という一等地に新しくバス停を確保できるのかと思うと、もちろん簡単なことではなかっただろうからそのご努力に敬意を払うと同時に、少し羨ましいというか複雑な気持ちになる。ちなみに夕方、八重洲口に戻ってくると、鴨川、小湊方面の京成系高速バスが発着する「2番乗り場」のちょっと先で、高速ツアーバスの一種と言えなくもない「鴨川・小湊温泉バス」が満員の乗客の降車扱いをしていた。フルラッピングのクルマだったから最初は事業者名がわからず、高速バスターミナル勤務時代の癖が出て(つまり路線バス事業者の気分で)「ここは高速バスのバス停ですよ。貸切バスは出て行ってください!」と叫びたくなる衝動にかられた(←今でもこういったシーンでは本当にこんな衝動にかられる。「高速バスっぽい貸切バス」を追い出したくなるという感覚は体に染み付いていて、このような「現場」ではムクムクと頭をもたげるのだ・・・)。ただ、よく見ると企画実施は「京成トラベルサービス」、運行は「京成バスシステム」だと気づいた。すると今度は、高速ツアーバス連絡協議会事務局として、高速ツアーバス各社の集合場所の「正常化」のため関連各機関との調整に追われている今の自分の立場を思い出した。「大手私鉄系の会社でも堂々と路上で乗降扱いしてるじゃないか、なんだよ。みんな高速ツアーバスを悪者にするけど・・・」。と、そこまで考えてもう一つ大切なことを思い出した。京成バスシステムという会社は、「あみプレミアム・アウトレット号」で今の私の大切な取引先でもあるのだ。この業界に何かと対立軸を持ち込みたがる人は多いが、その対立軸がいかに相対的なものに過ぎないか、あらためて実感した一瞬だった。「バス停の権利」の今後も、既存事業者という「ムラ」の境界線の今後も、一筋縄にはいかなさそうだ。
2010.04.12
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私が今の会社に転職した時点では、サイト上での利用者のメイン導線は「空席検索」ではなく「ディレクトリ型」であった。つまり、「○月○日 ○県→○県 大人○人」と条件を入れて「検索」を押す形ではなく、「関東発」ボタンを押すと関東から各地への路線(「東京→仙台」「東京→大阪」など)が一覧表として表示され、どれかの路線名を押すとその路線に紐づく便の一覧が表示され、さらにどれかの便を選んでクリックするとその便の詳細(内装のイメージ写真や空席カレンダーなど)が表示される仕組みになっていた。当時はまだ高速ツアーバスの企画実施会社の数も少なかったし(ちなみに高速ツアーバス予約事業に参入した際の取扱社数はわずか9社。現在では60社を超えている)、1社ごとの商品数も少なく、利用者にとっては一つ一つの便詳細ページを開いて空席状況や価格、車両タイプなどを確認してもさほど手間ではなかったのだ。むしろ空席検索型にしてしまうと乗車希望日に満席の便は表示されないから取扱商品がシャビーに見えてしまうというこちら側のデメリットの方が大きかった。昔の話ではない。わずか4年ほど前の話だ。しかし、3年半前に私たちでは、メイン導線を「空席検索」に変えた。東京~大阪間を中心に商品数が一気に増える一方、私たちのサイトの販売力も拡大し満席となる率が高くなっていた。全ての便について一つ一つ詳細ページを開いて価格や内容を確認し、また一覧に戻って次の便の詳細を開けばその便は満席で、また一覧に戻って次の便を開き・・・・・・という動きが利用者に負担となりそうな状況に変わったからだ。だから日付や人数など条件を入力し「検索」ボタンを押すとその日に空席がある便だけが一覧表示され、必要に応じて座席グレード順や価格順などで利用者が並べ替えまたは絞込みできる導線をメインに据えたのだ。もちろん、興味がある便をクリックすれば詳細を確認できるのは以前と同じだ。というより、宿泊予約等、他のサービスとようやく導線を統一できるだけの商品が揃った、ということだった。イメージで言うと、イチゴを買いたい客が、あるお店では佐賀産が350円で、別の果物屋に行ったら長崎産が400円で、次のお店では栃木産が350円で、と価格や見た目(おいしそうかどうか)をいったん記憶して比較し、長崎産と決めたら2番目のお店に戻り購入・・・という動きから、スーパーのイチゴ売り場に行ったら佐賀も長崎も栃木も同じ棚に並んでいて、一目で比較し長崎産を手にとってレジに向かう動きに変えたのだ。同時に、企画実施会社側での価格設定の方法も変えた。企画実施会社が商品を登録する際、一度登録した料金は原則的に変更できない(販売する座席数だけはリアルタイムに出し入れできる)形で、要するに各社のパンフレット上の販売価格をそのままサイトに登録してもらっていたのだが、この時期からは価格そのものを(理論上は1円単位で)リアルタイムに変動させるようにしたのだ。合わせて、レベニューマネジメント概念を本格導入し、データ分析に基づき各社の価格設定を支援するようにした。この変更が高速ツアーバス業態全体に与えたインパクトは、私たちが想定していたよりも大きかった。繁忙日には在庫切れ(早々に満席になること)が発生していることはわかっているが片道回送になっては利益が出ないと続行便の設定に二の足を踏んでいた各社が、最初から「ウラ」が回送になることを覚悟で「オモテ」便に思い切った高値を付けて片道輸送で十分に利益が出せるよう工夫するなどし、繁忙日の在庫切れはずいぶんと解消した。さらに私たちでは、旅行業免許も保有する貸切専業のバス事業者に、繁忙日だけの「スポット運行」をしないか提案に回った。ふだんは普通の貸切バス会社だが、連休や年末年始だけ彼ら自身が高速ツアーバスを企画実施し自社のバスを運行させる。自社企画実施とはいえ年に数回の運行のためにチラシやポスターを作るなど無駄なので、全席を私たちのサイトに登録する。もちろん、データ分析に基づき私たちの方から「○月○日は東京→大阪 3台 往路は8,000円 復路は4,200円くらいがベストですよ」といった支援はする。空席検索型の導線なら、その日だけ運行するスポット便であっても画面上は定期運行便と同列に並ぶので十分に予約が入る。平成エンタープライズなど、その形からスタートし定期運行に移行、今や3列シートの高速ツアーバス専用車だけで10台を超える。高速バス繁忙日はおおむね貸切バス閑散日だから、貸切バス事業者にすれば稼働率向上にとって非常に都合がいい。しいて言えば、旅行業免許は持っていても自社でツアーを日常的に企画実施している会社は多くないから、貸切バスの営業マンが自ら座席表を作成したり夜中に乗車受付を手伝ったりしないといけないが。私自身も何度も新宿や大阪まで乗車受付を手伝いに行った。最初はそこまでして「まずはやってみましょうよ」とお願いしていたのが、そのうち事業者の方から「今度の連休はどこに何台出したらいい?」と相談が入るようになる。一番面白かったのは近所の高校のサッカー部が全国大会に出場するだろうと大量にバスをキープしていたのに予選で敗退したため応援ツアーがキャンセルになり、あわてて高速ツアーバスのコースを設定し最後の1週間で5台を満席にしたことだ。もう一つ、空席検索型にしたことによる変化は、座席タイプを中心に商品バラエティが一気に増えたことだろう。企画実施会社としては多数の候補からなんとか自社の便を利用者に選んでもらいたいから、座席タイプはもちろんアメニティグッズや朝食付きなど商品の個性を競い始めるようになる。従来の、公共交通機関にありがちな「無色透明」「最大公約数的」な商品から、顧客セグメントに対応した個性を主張し始め、「お客様自身が、バスを選んで乗る時代」が生まれたのである。さらに未だ一部とはいえ、その「選択肢」の中に高速路線バスもようやく入りつつある。一方、上記の形だと繁閑に合わせて在庫(増発)をコントロールできるのは4列スタンダードタイプだけとなり、現状では高速バスくらいしか使い道のない3列シート車は閑散日に合わせた最低限の台数しか各社持ち合わせていない。結果として繁忙日には上級車両が早々に在庫切れになりスタンダードだけが空席検索結果に表示される、という事態が起こっている。次は何とか、3列シートを各社がどんどん増発設定できるような環境(要するに高速ツアーバスと補完関係になる3列車の使い道)を考えないとなあ。取り急ぎ老舗貸切専業バス事業者や観光型のバスツアーが得意な会社などとアイデアを出し合うことになろう。新しいアイデアを考えるためにブレストをする時は、いつも本当にドキドキする。
2010.04.08
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先週末は箱根の宿「箱根エレカーサ ホテル&スパ」へ。必ずしも安い宿ではないが驚くほど高いわけではなく、サイト上のビジュアルやクチコミ情報「お客さまの声」に投稿された内容を読む限りコストパフォーマンスは高そうなので期待して予約した。ビジュアルを見る限り、こじんまりしたお洒落なリゾートである。スタイリッシュな内装とイタリア料理をベースにしたディナーが売りで、プライベート感あふれた上質な宿といった印象だ。ただ、もともと企業の健保組合の保養所だった建物だという情報は、元ホテル屋として実は知っていた。周囲にも同様の保養所が多く、なじみのある大手私鉄の健保組合のものらしい保養所もいくつか見かけた。以前、「ホテル時間・旅館時間」でご紹介した栃木の宿が、たしかに見た目はお洒落なリゾートっぽく見えたもののどことはなしに「旅館の時間」が流れていて、「ホテルの時間」の方が好きな私たちにはちょっと不満が残ったので今回も内心少し不安があった。宿に到着して内外装に目をやれば、その気(中古バスの出自を調べるような感覚?)で見るなら、たしかに保養所だった名残が散見される。しかし、チェックインのオペレーションからディナー、そして翌日のチェックアウトまで、いい意味で予想を覆し、保養所の建物をコンバージョン(業態転換)したという「中古」としてのネガティブな印象はほぼ感じなかったと言っていいだろう。十分に週末のステイを堪能できた。特に、ディナーの開始時刻を幅広い時間帯から選べたり、チェックアウトが11:00と(このクラスのリゾート施設としては)遅めだったりと滞在者が自分の時間軸で滞在を組み立てていける点は、上質なリゾートの要素を十分に満たしていると言えるだろう。食事について、軽いアレルギーを持っている旨をあらかじめ伝えておいたところ、見事なまでにスマートに対応してくれた。客室も料理も接客も、少なくともこちらが受ける満足感では1クラス上の高級リゾート並みだった。十分に満足しただけに、この建物が企業の保養所だったときのことをつい想像してしまった。さすがに今の私の会社にはそのようなものはないが、前の会社は創業70年を超える老舗企業であり、近郊のリゾート地にこのような保養所があった(同様に健保組合のものだった)。社員旅行が華やかなりし頃はよく利用されたのだろうが、特にホテル企業というのはシフトで動いていて部署全員がいっせいに休むことが難しかったこともあり、さて、年にいったい何回使われていただろうか。私自身、みんなでお酒を飲みにいって仕事の話をしたりするのは大好きなほうだが、かといって貴重な休日を上司や後輩に気を遣いながら過ごすことに好んで費やそうとは思わないし、ましてやプライベートの旅行で自分の会社の保養所に宿泊してそこで上司の家族と顔を合わせるなど、どう考えても「保養」になるとは思えない。さらに、健保組合としては保養所を自ら所有・維持していくコストも無視できなくなっている。<※それゆえ、最近では企業の福利厚生を一括して受託する会社(ベネフィット・ワンなど)が人気だし、逆に、保養所の運営を健保組合などのオーナー側から受託してしまう会社(四季倶楽部など)も台頭している。>社員に対する福利厚生が不要だと言っているのではない。上司部下の親睦が不要だと言っているのでもない。少なくともある時代において、週末に部署単位でビールを飲みながら小田急ロマンスカーと路線バスを乗り継いで箱根の保養所に出かけることが、保養所を構えられるだけの「立派な企業」で働くことの特権として誇りとして感じられたこともあっただろうし、そのような時間を通して上司部下の親睦が深まり、そのことが企業にとっても大切だった時代があったのは間違いない。しかし今の自分に置き換えてみると、むしろ休日は、自分自身の価値観に合わせて家族や友人との時間を過ごすことが優先だ。全ての日本人が私と同じ価値観だとも思わないがおおむね同じ傾向だろうから、どの保養所も私の前の会社のそれと同様、稼働率は極端に低いだろう。あくまで想像だが、この建物が保養所だった昨年までは、稼働率は高くなかったことだろう。たまに部署単位で社員旅行を受け入れたりすればご機嫌なのは年嵩の上司だけで、内心はイヤイヤ付き合っている若手社員の姿に、この建物は同情していたのか、それともこれも仕事だと気づかぬふりをしてきたのか。それが、お洒落なホテルやウェディング施設を運営する会社に託され、今や見事に上質なリゾートに生まれ変わった。スマートなユニフォームに身を固めたスタッフが生き生きとゲストを出迎え、ゲストはそのサービスに身をゆだねる。着飾ってディナーを楽しむレストランでは、満室とはいえ14組しかいないゲストの内、なんと3人ものゲストがバースデーの祝福を受けていた。特別な日の夜を楽しむためにわざわざこの場所を選んで足を運んでくれるカップルがいるという栄誉を、この建物はいま噛み締めているに違いない。私自身、元ホテル屋として、チェックイン客の少ないロビーや閑散としたレストランに流れる空気がどれほど淋しいものか、身にしみて知っている。「選んでもらえない」「使ってもらえない」ことが、万全の態勢(少なくとも意識としては)でお迎えしようと意気込んでいる現場のスタッフにとってどれだけ残酷か、よく知っている。一人でも多くの潜在顧客に高速バスの存在と魅力を伝え、一人でも多くの利用者を高速バス各社にご送客する・・・・・・それが今の私の役割であることに、私としては心から誇りを感じている。
2010.04.06
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3日発売の『日経トレンディ5月号』の特集「得する旅行術」で高速バスをご紹介いただいた。同誌については、昨年の4月号でまさに高速バスを大々的にというか、ウィラー・トラベルや旅の散策ツアーズなど多くの会社のバスを比較する特集を組んでくださったからそれと比べるとさすがに規模は劣るが、ビジネス向け仕様の上級車両、夜行便で到着後すぐに朝からチェックインできる宿泊施設、さらには東京~名古屋あたりの出張なら早めに切り上げて夕方便で戻ってくるなど、出張客を意識した情報を数多くご掲載いただいている。本特集を担当なさった記者さんは、初めてご取材(当時は同社の別の雑誌の編集部にいらしたが)でお目にかかったのはもう3年ほど前のことで、高速路線バスと高速ツアーバスを巡る状況については様々な角度からよくよくご理解なさっている方であるし、今回は私としても、会社としては未だお取扱がない事業者の高速路線バスの情報についても、ネタとしてはご提供させていただいている。しかし結果として紹介されているのは昨年同様、ウィラー・トラベルを中心とした高速ツアーバスがメインであり、一部にJRバスの情報が出てくる程度である。もちろん今の私の事業にとってはありがたい話で大変感謝しているが、一方で業界内では、このようにマスメディアにおいて高速ツアーバスが「高速バス」として紹介されることについて、微妙な感覚をお持ちの方が多いこともよく理解している。なぜあらためてそんなことを書くかというと、こうやってあらためて誌面で見せられると、私自身も「微妙な」感触を持ってしまったからだ。ずいぶん前に、プロ野球パ・リーグの審判員が「個人的には巨人ファン」という趣旨の発言をし、リーグが異なるとはいえ審判員が特定のチームに好意的だと世間から思われるのはよくないと非難を浴びた件があり、その意味では中立的なマーケットプレイスを標榜する会社にいる身でこのようなことを書くのは本当はよくないのかも知れないが、私自身、個人としての「高速バスの原点」は私鉄系事業者同士の共同運行で多頻度運行される所要2~3時間程度の昼行路線であり、長距離夜行路線、それも高速ツアーバスがさも高速バスの代表事例かのように紹介されることに、さしたる理屈はないのだが違和感を覚えてしまったのだ。さらに既存事業者の中の一部の方が、こういった記事を取り上げて「ツアーバスが高速バスと名乗るのはおかしい」とあちこちでおっしゃるのを想像すると気分が重くなる。高速ツアーバスについて「高速バス」という名称を使用することに関して私たちでは、問題がないことを行政によく確認した上で使用している一方で、一部の事業者などからは、そのような表現を規制すべきだという意見も聞くというのが現状である。だがここで気分が重くなると書いたのは、法解釈について異なる考えの人たちがいることに対してではなく、そのようなネガティブな発想こそが、高速路線バス自身の成長を妨げているように思えて仕方がないからだ。別に高速ツアーバスが満点だという気は毛頭ない。運用面では特に課題があろう。しかし、『日経トレンディ』という、いわば「企業の消費者志向性をまとめて本にしました」というようなコンセプトの雑誌が、いい加減な取材ではなく(高速路線バスの情報も踏まえた上で)、それでも高速ツアーバスを中心に取り上げる、いや、取り上げ“ざるを得ない”状況は、一体なぜ生まれているのか。その疑問に真摯に向き合って理由を探ることを避け呼称問題に矮小化し、ただただ従来の自分たちのやり方だけを「正」とし変化を拒み続ける限りなんら本質的な解決にならず、高速路線バスがより広くマーケットに受け入れられることはないだろう。同誌や別のメディアによる同じような企画が今後またあったとしても、またもや高速ツアーバス中心に紹介されることになるだろう。逆に、高速ツアーバス各社の柔軟な商品性と、高速バス同士の競争による商品の進化がなければ、仮にこのような企画があったとしても高速バスに大きくスポットが当たることさえなかっただろう。だから私には(以下は感覚的な話で恐縮だが)、高速ツアーバスについて「高速バス」という名称を使わせたくないという既存事業者の考え方こそが、結果として自らの首を絞めているようにしか思えないのだ。既存事業者各社が、高速ツアーバスを「もう一つの高速バス」として、つまり蹴落とす対象としてではなく競争相手として認識しそれをハラに落とし込み、盗めるところは盗んで自らの商品に肉付けをしていくことこそが、彼ら自身の次なる成長のために大きなきっかけになると信じている。その意味では、「内部補助理論」の誤謬と並んで、この「高速バス呼称」の件は、高速路線バス再成長に向け、苦しくともクリアしなければならない象徴的な二つの大きなハードルであるし、その「踏み絵」を踏むことができればさえ彼らは必ず再び成長できるだろうと考えている。何度も繰り返すが、私自身、全ての内部補助を悪だとするつもりは一切ないし、高速ツアーバスのことを「高速バス」と呼ばせたくない気持ちもよく理解している。しかしそれでも、内部補助理論を否定し、高速ツアーバスの存在を「もう一つの高速バス」として認知させることにこだわるのは、この二つの問題こそが既存事業者に「変化を拒む(自分への)言い訳」になり得るからであり、そのことが彼ら自身の成長を妨げている象徴だと考えるからである。偉そうなことを書いたが、素直に「一人でも多くの利用者に高速路線バスに乗ってもらいたい」と考えていなければ、既存事業者に営業に回るなどというまどろっこしいことをせず、ウィラー・トラベルやオリオンツアー、平成エンタープライズなどのお尻を叩いて高速ツアーバス業態だけを大きくすることに専念していた方がよほど楽だ。なぜそうしないのかと聞かれれば答えは一つ。高速路線バスや高速ツアーバスの(あるいは今後生まれるかも知れない「三つ目の、四つ目の高速バス」も含めての)各社同士が切磋琢磨することが、高速バスマーケット全体を拡大させると信じているから、である。
2010.04.05
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出張のために飛び立った先日と戻ってきた本日夕方とで、飛行機の離着陸の向きが南北逆になっていた。飛行機は風上に向かって離着陸すると言うから、「風向きが変わった」ということだろう。意外だったのは、出発の際には過去数ヶ月間の出張の時と違って南向きに離陸して春を実感したにもかかわらず、本日は北に向かって着陸し冬が逆戻りしていたことだ。時に暖かく時に寒い日を行きつ戻りつ、それでも季節は着実に進んでいくのだろう。以前「歴史を見る目」の項で書いたように、既存バス事業者という会社を取り巻く環境を見れば、「1000円高速」による高速バスの減収や昨今の不況は、いわば「日々の寒暖」である。むしろ意を決して直視せねばならぬのは、モータリゼーションの進展や人口減少、右肩上がり経済の終焉など、ロングスパンでの「季節の変化」だ。ではそれをもっと小さく「高速バス」に絞ってみた場合どうなるか。その場合、私は短期長期という時間軸ではなく、現在の高速バスを取り巻く環境の変化は、高速バスに固有の変化かそれとも社会一般で起こっている変化か、つまり空間的な広がりの中で捉えられるべきだと考える。今風の言い方をすれば「ローカルな現象」か「グローバルな潮流」かの区分である。言うまでもなく、いわゆる規制緩和(需給調整撤廃と参入要件の緩和)による新規参入増加こそ、高速バスに固有の現象の代表である。1990年ごろまでの、ある区間には一つの共同運行ペアにしか路線認可を与えないという国の方針(平バスで言う「地域独占」に対し「路線独占」「区間独占」と呼ぶべきか)からダブルトラック、やがてマルチトラックが認可されるようになり、さらに高速ツアーバス業態が容認されるに至って、高速バスの新規参入は飛躍的に増加した。2002年の規制緩和は本来、本分野においては、貸切専業事業者が乗合許可を得て高速バス事業に進出するケースを主に想定されていたと考えられるが、制度は変わっても結局は「停留所の権利」に代表される様々な参入障壁が残った一方、お隣の貸切バス分野では想定どおり新規参入が多く見られたため、高速ツアーバスという少しひねくれた形態での新規参入ラッシュとなった。ただその結果として旅行会社という異業種が高速バス事業に関わることとなり、固定観念に囚われない柔軟な商品作りが持ち込まれたことで業界全体ではより大きな成長をすることができたのは怪我の功名と言うべきか(必ずしも旅行業界がバス業界に比べ柔軟だと言っているのではない。異業種による新規参入者が業界の固定観念を打破しブレークスルーをもたらすことは一般的な事象である。なお、規制緩和が進み新規参入が相次いでいるのは、バスに限らず我が国の多くの産業に共通かも知れないが)。以上が高速バス事業に固有の環境変化だとすれば、反面で世の中全体に起こっている変化もある。それはウェブの普及による消費環境の変化である。まず、ウェブの普及は何よりもまず「販売力のフラット化」をもたらした。どんな大手でも貸切専業である限りは法人向け(つまり「1台いくら」)の販売はできても個人向け(つまり「1席いくら」)の販売をする方法を持ち得なかったが、ウェブの普及により中小の貸切専業バス事業者や中小の旅行会社でも大きな販売力を持つことができたのである。ウェブの普及はもう一つ、消費者の購買プロセスの中で「比較・検討」の重要性を一気に大きくした。ウェブ化によって購買プロセスは従来の「AIDMA」(注意→関心→欲求→記憶→行動)から「AISCEAS」(注意→関心→検索→比較→検討→行動→情報共有)へ変化したと言われているが、紙のチラシ・時刻表と電話予約だった頃に比べ、乗客が予約までの間に目にする高速バスの情報量(座席のスペック、ビジュアルはもちろん、他の利用者による評価すなわちクチコミ情報まで)は飛躍的に増大している。常々申し上げているように、規制緩和による新規参入の増加という「ローカルな現象」と、ウェブ化による消費環境の変化という「グローバルな潮流」の組み合わせが「お客様自身が、バスを選んで乗る時代」をもたらしたのである。『バスラマ・インターナショナル』118号の表3に、ウィラー・トラベルが「日本のLCCを目指す」とする意見広告を出稿しているが、その意味では、規制緩和による参入要件緩和とウェブ普及による販売力のフラット化こそ、米欧におけるLCC成長の大きな背景であったことは間違いなく、今日の高速ツアーバスの成長をそれと重ねてみることは正しいだろう。少なくとも、旅行形態の変化(団体から個人へ。旅行会社のお仕着せの旅行から個人で組み立てる旅行へ)に直面して危機的な状況にあった中小の旅行会社や貸切専業バス事業者に対し、起死回生の大きなチャンスを与えたことは間違いない事実である。では上記のような環境の変化は、しかし、既存事業者にとってマイナス面だけなのか? 私にはそう思えないのだ。「高速ツアーバスは『LCC』か?」の項で書いたように、LCCの本質的意義を考えたならば、である。つまり、だ。移動距離が長い米欧では、「デフォルト(規定値)」の交通手段がいわゆるレガシーキャリア(老舗の航空会社)であり、上記環境変化を機にそれへのアンチテーゼ(対抗軸)としてLCCが台頭した。一方で移動距離がさほどではない我が国では、「デフォルト」の交通手段は新幹線に代表される鉄道である。その鉄道への対抗軸としての交通手段があるとすれば、それこそが高速バスである。たしかに「高速バスマーケット」に限定して物を見れば、既存事業者は今日の環境変化の割を食っている。しかし視野を「都市間移動マーケット」に広げてみれば、既存事業者は今まさに急成長のチャンスを手に入れつつあるのだ。20年近く続いた高速路線バスの「安定期」(言い換えれば「踊り場」でもあった)を終え、再成長期に向けて、スタートラインに立とうとしているのである。既存事業者の高速路線バスが再び成長の軌道に乗ることができるかどうか、再び春に向けて季節を一つ進めることができるかどうか。その分かれ目はただ一つ。彼らがもう一度、かつて成長期だった頃と同様の、挑戦者としての意識を取り戻せるかどうかにかかっている。「風向きを変える」のは、神様やお天道様ではなく、彼ら自身の意識である。
2010.04.02
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