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法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』~講談社ノベルス、2012年~ もともと、「ミステリーランド」のために書き下ろされた長編作品のノベルス版です。 まずは、簡単に内容紹介を書いた上で、感想を。ーーー 怪盗グランプリへの招待状が届き、危険を感じて断った怪盗グリフィンのもとに、依頼が舞い込んだ。メトロポリタン美術館のゴッホの自画像は贋作である、自分たちのもとにある本物とすり替えてほしい…それが、依頼者・オストアンデルの依頼だった。 意外な手段でオストアンデルの依頼に応えたグリフィンだが、これはさらなる冒険への序幕だった…。 ボコノン共和国の大統領と将軍が分け持っている人形をめぐり、グリフィンたちが奮闘する。ーーー これは面白かったです。 オストアンデルや将軍たちとの駆け引き、どんでん返しと、わくわくはらはらしながら読みました。 挿絵もとても可愛いです。
2013.01.26
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高木彬光『首を買う女』~角川文庫、1988年~ 名探偵・神津恭介シリーズの短編が7編収録された短編集です。 簡単に、それぞれの内容紹介と感想を。ーーー「青髭の妻」過去に3度、同様の手口で女性を殺したと思われている「青髭」について松下研三が雑文を書いたところ、これを脚色上演したいという依頼が入った。しかし上演の日、ふたたび惨劇が起こる。「恐ろしき毒」あさりの毒を使い、親族を殺害した男。完璧に振る舞ったはずだが、男のもとに神津恭介が現れて…。「首を買う女」人形の首だけを買いに来た女に、松原は興味をそそられた。兄にそのことを話すと、首なし死体の首の部分に、人形の首を置いた事件があったという。神津恭介は、首の展覧会を開催し、女の動きを探るが…。「鎖」兄が殺人の嫌疑を受けている。そして兄も自分も、首のない女を見た…。そういう女の来訪を受けた神津は、事件に興味を持つ。犯人は、自転車の鎖で、被害者の首を引きちぎったという。そして、調査にあたる中で、神津自身も顔のない女を目撃したのだった。「湖上に散りぬ」ホテルに滞在している姉妹の近くに、顔がただれた男がやってきて、手紙を手渡した。姉宛ての手紙を受け取った妹は、男の存在にふるえる。そして妹は、湖上のボートの上で殺された。しかし現場に居合わせた人は犯人の姿に気づかず、凶器は、まったく発見されなかった…。「モデル殺人事件」「狂女像」という油絵にひかれた松原は、会場に、その絵のモデルとなったのではと思われる女がいるのに気づく。松原は、その女の振るまいに、どこか戦慄を覚えたが…。その後、松原は、その絵を描いた画家や、その兄弟、知人たちと知り合った。そんななか、モデルの女が、画家のアトリエで殺された。「棋神の敗れた日」日本将棋連盟を訪ねてきた男は、なんとその場にいた実力者たちを、次々と打ち負かした。しかし、居合わせた神津の采配で、男と対戦した素人の松原は、その男に勝ったのだった。なぜ松原は、男に勝てたのか。ーーー「モデル殺人事件」は問題編と解決編に分かれていたり、「棋神の敗れた日」は殺人事件ではなかったりと、バラエティに富んだ作品集となっています。私は、特に「棋神の敗れた日」が楽しめました。 その他、「鎖」「湖上に散りぬ」では、神津さんの心遣いもあって、興味深かったです。
2013.01.19
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山田詠美『快楽の動詞』~文春文庫、1997年~ 『筒井康隆の文芸時評』を読んで気になっていた作品「逆説がお好み」を含む8編の小説が収録された作品集です。エッセイ風の作品から、批評的な作品まで、解説の言葉を借りればとりあえず「文章」としか呼べないような作品群です。けれどそういったジャンル分けはともかく、面白いです。 表題作「快楽の動詞」は、「どこそこへ」という目的語が不要な「いく」と、「死ぬ」という言葉のもう一つの使い方について。まさに「快楽の動詞」ですね。エッセイ風で、考察がとても面白いです。「否定形の肯定」は、特に楽しめた一編です。言葉をそのまま受け取る、「すきっと、さわやか」な三郎くんを登場させて、「否定形の肯定」にまつわるすれ違いを描いています。「駄洒落の功罪」は、徹底的に駄洒落を忌み嫌い、駄洒落へのテロ活動を行う女子高生の話です。「逆説がお好み」は、ミーハーで知的な男性と付き合いたいと言っている女性が、作家と付き合うため、いろんな物語を読んで、なにやら誤解していく(?)話でした。こちらも面白かったです。「文体同窓会」では、いろんな文体が集まります。自分ばっかり見ている美文の文体や、かたゆで卵ばかり食べる男の文体などが登場、主人公の文体たちが彼らをいろいろ評価する、という話。 続く「口の増減」は、雑誌に友達募集の記事をのせたふえず口に、へらず口から手紙が届いて…というお話。なんとかへらず口を目指そうとするふえず口ですが…。「ベッドの創作」は、男性とベッドにいる女性が、その情景を2つのパターンで小説化して、善し悪しを考えるというお話。そのギャップが笑えます。「不治の快楽」では、「蛾万」と「浮良地」の論戦から始まり、「蛾万」側が快楽禁止令について発表して…というお話。いわゆる堅い文章の「蛾万」と、バトルを必要としない「浮良地」のギャップ、快楽禁止令を知ったヨイヨイやイクイクたちの慌てぶりなど、こちらも大いに笑えました。 なかなか、ふだん読まないタイプの作品ですが、面白かったです。そしてあらためて、こういう本に出会うきっかけとなった『筒井康隆の文芸時評』のような、読書案内本も良いなぁと感じます。
2013.01.13
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石崎幸二『皇帝の新しい服』~講談社ノベルス、2012年~ ミリア&ユリ&石崎幸二シリーズの最新作です(シリーズ9作目にあたります)。今回も島を舞台に、殺人事件の謎に挑みます。 まずは、簡単に内容紹介と感想を。ーーー 愛媛県の錠前島にある仲津賀神社で行われる祭礼では、神職の娘が花婿候補を選ぶという儀式が行われる。 この婚礼の儀式に参加するという知り合いのため、仁美はミリアとユリに相談し、石崎を花婿候補の一人に推薦しようとする。大企業の重役が、その背後にはいた。 儀式への参加をしぶしぶ認めた石崎だが、彼のもとへ脅迫状が届いた。しかもこの儀式をめぐり、過去に殺人事件が起こっていたことも判明した。 石崎たちは、過去の事件を解決し、今回の儀式では事件が起こらないよう奮闘するが…。ーーー 読了からしばらくの時間があいてしまい、ざっとした内容紹介しか書けませんでした。 そしてやはり、島での事件、石崎さんとミリアさんたちの掛け合いなど、この安定感が、デビュー作からの読者には嬉しいです。今回はスタンドも登場したのが面白かったです。 それにしても、斉藤刑事と石崎さんの関係の行方やいかに…。 そして、本作からがらっと表紙のイメージが変わりましたね。書店で探すときに、一瞬わかりませんでした…。***あけましておめでとうございます。本年も、よろしくお願いします。あいかわらず読書ペースはぐっと落ちていますが、ぼちぼちと続けていきたいと思います。
2013.01.05
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