全4件 (4件中 1-4件目)
1
![]()
北山猛邦『「アリス・ミラー城」殺人事件』~講談社ノベルス、2003年~ 北山猛邦さんの、いわゆる「城シリーズ」第三作です。 簡単に内容紹介と感想を。ーーー『アリス・ミラー城』に、10人の探偵が集められた。最後に残った探偵が、『アリス・ミラー』を見つけられるという条件で…。 いびつな城では、次々と事件が起こる。ある者は密室状況で顔をつぶされて殺され、ある者はバラバラにされ…。事件を収束させようと、皆殺しをたくらむ人物も現れ、事態は悪化の一途をたどる。 はたして最後に残るのは…。ーーー 読後、まずは「?」でした。 正直、文体は、最近の猫柳シリーズと比べる間もなく堅めでややとっつきにくい感じでしたし、登場人物たちも癖もあるしで、苦手な感じもあったのですが…。 ネットで確認して気づいて、あとから面白さがやってきた感じです(自分の読解力のなさをあらためて感じました…)。 いつものような、これは面白かったです、とはちょっと違う感じですが、面白い作品であることには間違いありません。 おそらく発売当初に買って読んでいるはずなので、10年ぶりくらいの再読です。その間に短編集『私たちが星座を盗んだ理由』(収録作品はどれも面白かったです)や猫柳シリーズを読み、本書を再読すると、あらためて北山さんの作品(というか世界観というか)の面白さを感じさせられます。 良い読書体験でした。
2013.04.27
コメント(0)
氷川透『密室は眠れないパズル』~原書房、2000年~ 氷川透シリーズの長編です。 氷川さんは、講談社ノベルスから『真っ暗な夜明け』(2000年5月)でデビューしましたが、『密室は眠れないパズル』(原題『眠れない夜のために』)の方が、実際には先に発表された作品のようです。本作が鮎川哲也賞最終候補作だったとのこと(『真っ暗な夜明け』島田荘司さんの薦より)。出版社の意向もあるのでしょうが、タイトルは『眠れない夜のために』の方がずっと良かったのでは、と個人的には思います。 前置きが長くなりましたが、簡単に内容紹介と感想を。ーーー 推理作家志望の氷川透が、東都出版の編集者・小宮山のもとへ打ち合わせに行った夜、二人はミステリー談義に花を咲かせた。そこに、ミステリーマニアの上野も加わり、議論はさらに盛り上がる。重役たちも顔をのぞかせた、その後…。 悲鳴を聞いて、氷川たちが現場に駆けつけると、次長が胸に刃物を刺されていた。いまわの際に、彼ははっきりと、常務に殺された、と口にしたのだった。 さらに、出版社のビル全体が、密室状態となり、外線も通じない。 はたして常務はどこか。常務を捜す中で、さらなる事件が発覚し、事件は混迷を深めていく。ーーー これは面白かったです。『真っ暗な夜明け』よりもシンプルな人間関係で把握しやすいですし、密室状況にも引きつけられます。謎解きの論理性も納得できました。
2013.04.20
コメント(0)
星新一『ありふれた手法』~新潮文庫、1990年~ 30編のショートショートが収録された作品集です。 高校生の頃に読んで以来ですから、もう10年以上ぶりの再読ということになります。例によって忘れていました…。 特に面白いと感じた話について、簡単にメモしておきます。「風と海」は、島の外を知らない世界の中で、海の向こうには何があるんだろう、と疑問を覚えた二人の話。この手の物語が好きだと、あらためて感じました。「レラン王」は、空想することを仕事とする王が、世界が洪水に襲われる夢を見て、ある対策を練る…という話。こちらも壮大で面白かったです。「あるいは」は、不老長寿の薬を作った博士の話。博士は、薬をハエで試すのですが…。ショートショートでは当然なのですが、やはりオチが絶妙です。 最後に収録された「現象」は、人々が急に動植物に優しくなるという話。はたしてその理由は…。 しばらく前から、寝る前の読書を続けているのですが、本書のようなショートショートはうってつけでした。 面白かったです。
2013.04.13
コメント(0)
高木彬光『わが一高時代の犯罪』~角川文庫、1976年~ 中編の表題作の他、4編の短編が収録された、神津恭介シリーズの作品集です。 それぞれについて、簡単にコメントを。ーーー「わが一高時代の犯罪」 とても面白かったです。時計塔からの人間消失という魅惑的な謎の提示ももちろんですが、物語の雰囲気が抜群です。松下研三さんが一高(東京大学教養学部の前身)に入学し、神津恭介さんと出会い、その最初の活躍を目の当たりにするのですが、学生らしさが随所に描かれているのが印象的でした。松下さん自身は、ウルトラスーパーという渾名(その理由も面白いです)ですし、その他主要な登場人物は、むずかしい哲学書ばかり読んでは、寝言にもショーペンハウエルの名が出るというフラテン、同時に七人の恋人をもつといわれる青髭、麩を常食にし、西式健康法の医学的に究明しようとする西式と、とてもバラエティに富んでいます。自分自身がこんな学生生活を送ったわけではないですが、なんだか懐かしい感じがしました。 この中の一人を訪ねてきた謎の女、その後の学生の失踪、そして死……。裏には、さらに深い問題も隠されていました。 以前読んだ『人形はなぜ殺される』も面白かったですが、本作も負けず劣らず面白いです。 読む前は、タイトルがあまり好きではありませんでしたが、読了してみると、このタイトルしかない、と感じました。抜群の作品だと思います。「幽霊の顔」 戦死したはずの男を呼び戻す、証拠として写真に男を写そう…。そういう霊媒師のトリックを暴くべく、旧家を訪れた松下さんですが、本当に写真に男が写され、慌ててしまいます。そして、神津さんに助けを求める…という話。 こちらは殺人事件がからまない物語です。「月世界の女」 休養のため、あるホテルに泊まった松下さんは、自分は月の世界で生まれた、まもなく月に帰らなければならない…という話をする女と出会います。はじめて会ったときは、その美貌に心惹かれた松原さんですが、その発言を不思議に思います。さらに、彼女の愛を得ようとする3人の男たちがホテルにやってきます。そして、密室状況からの女の失踪事件が起こり…。 こちらも殺人事件のからまない物語です。これは好きなテイストの話でした。「性痴」 神津恭介さんが飛行機で隣り合った女は、神津さんに、10年前に死んだ夫が生きている節がある…という不思議な話をします。気にかけていた神津さんですが、その女との面会の日、女は殺されてしまいます。その女、多くの男たちと関係を持っていたようで…。 被害者の女性が、音痴ならぬ性痴という性格で、それがうまく活きた物語でした。「鼠の贄」 本書の中で、表題作に次いで面白いと感じた作品です。松下さんの友人が、異常なまでに鼠に恐怖を感じていました。その男の手記には、妻には見えない鼠が自分には見える、妻たちに鼠を喰わされた…など、おぞましい描写も含めた、恐怖がつづられています。 奇妙な手記ということで、島田荘司さんの『眩暈』などが連想されました(内容は全く違いますが)。そしてこのような、一見現実的でない奇妙な手記が提示され、それが現実的な解決をみる、という物語が好みでもあり、また本書の解決もとても面白く、私には好きな作品でした。ーーー あらためて、高木彬光さんの作品を読むようになって良かったと思いました。特に表題作は抜群に面白かったです。良い読書体験でした。
2013.04.06
コメント(0)
全4件 (4件中 1-4件目)
1
![]()

![]()