全3件 (3件中 1-3件目)
1
ランダム読書日記 「孤独について」 中島義道 (なかじま よしみち)文春新書 198頁 ¥660 1998.10.20 第1刷発行副題:生きるのが困難な人々へ [目次] 序章 孤独に生きたい第1章 ずっと孤独だった第2章 孤独な少年時代第3章 孤独な青年時代第4章 孤独を選びとる第5章 孤独を楽しむ第6章 孤独に死にたいあとがき[内容]孤独はつらい。孤独は不幸である。しかし孤独は悪だろうか?あなたには親が兄弟が友人が恋人がいる。しかし彼らは本当にあなたの孤独を救ってくれただろうか?別離への不安はいつもつきまとい、あなたの自由を束縛する。そして結局、目を逸らし続けても、誰にも平等に訪れる絶対の孤独-死-から逃れることはできないのだ。力を尽くして孤独を選びとろう!積極的に自ら孤独と向き合い、楽しみ、生き抜くその時からあなたの「自分自身になる」人生が始まる!と、表紙裏に書かれています。「感想」著者の「哲学の教科書」は、哲学に目を向けるきっかけを与えてくれた、すばらしい本だと思いました。しかしこの本で心に残ったのは、序章だけでした。表題と表紙裏の文章に惹かれて買ったのですが、正直言って、これは「孤独」について語っている本なのだろうか、と思いました。著者の人生は本当に「孤独」なのだろうか?とも思いました。著者は決して孤独ではない。少なくとも孤独を強いられたことはない。「選び取った孤独」は「孤高」ではあっても孤独ではない。逃れようとしても逃れ得ない孤独こそ「孤独」ではないだろうか。五体満足で、優秀な両親や姉、現役で東大文一に受かった才能、そして今は国立大学の助教授として勤務している生活。それにしても鍵をかけて電話を切り一日中研究室内にいても勤まるとは、なんと恵まれた生活だろう!同じ大学人でも理系だったら考えられない。著者には飛行機の中でたまたま会った外国人に研究室に招待されるほどの付き合いのよさもある。著者が少し不運だったことといえば、Y教授との出会いくらいであろう。著者は「孤独」という課題を、「死」という課題にすりかえてしまっている。それは、著者が本当は孤独でないからではないか。「孤独」が解決されたら、死は恐れないという人間もいるのだ。哲学者なのだから、半生を回顧して孤独な生涯だと展開してみせるのではなく、キエルケゴールのように「孤独」について真正面から全力で語ってほしい、というのが一読者としての願いです。[頁のかけら] ○どんな人が孤独であろうか?親も兄弟も友人もいない人は天涯孤独である。しかし、その人になすべき仕事があれば、孤独はその仕事を育てあげる大切な養分である。(このような孤独は恵まれた孤独だとしか私には思えない)[類書] 木原武一 1993 「孤独の研究」PHP************************************************** ランダム読書日記 by 行道はるか YUKUMICHI Haruka (2008.4.25. No.80)
2008.04.25
コメント(0)
ランダム読書日記 「じゃがいもが世界を救った」 ラリー・ザッカーマン(LarryZuckerman)関口篤 訳青土社 355頁 ¥2600 2003.4.10 初版第1刷発行副題 ポテトの文化史原題 The Potato How the Humble Spud Rescued the Western World [目次] はじめに1. アンデスの宝 (ペルーとヨーロッパ 1550-1650)2. 哀れな人たちの慰め (アイルランド 1650-1800)3. 中流以上の人々 (イングランド 1650-1800)4. 土に生るリンゴ、万歳 (フランス 1650-1800)5. 独立アメリカ合衆国の食卓 (独立以前のアメリカ 1685-1800)6. やつは首吊りだ (イングランド 1800-1900)7. 包囲された砦 (アイルランド 1800-1845)8. 倹約一路 (フランス1800-1914)9. ランパー芋は真っ黒 (アイルランドの大飢饉 1845-1849)10. じゃがいもと人口 (イングランドとアイルランドの人口激変)11. 女の仕事 (アメリカ合衆国 1800-1914)12. 良い仲間 (イングランドのフィッシュアンドチップス)13. 出自の貴賎 (結論)訳者あとがき参考文献[内容]ジャガイモの歴史は奥深い。ジャガイモはアンデスのチチカカ湖の近辺に生えていた高山植物だった。遅くとも7千年前から栽培されていた。それがスペインのインカ帝国侵略にともない、ヨーロッパに入った。入ったけれども200年以上も利用されなかった。ナス科植物には毒がある、地下で獲れるものは汚い、畑の養分を吸い取り後作にコムギが育たなくなる、などいろいろな理由がついて。 しかしいったん普及すると、コムギよりも収量が多い、土地を選ばないでどこでもよく育つ、栽培が容易である、コムギとちがって加工しなくても食べられる、などの理由で一気に栽培が増えた。 アイルランドではほとんどの農家がジャガイモに頼って暮らした。そこへジャガイモの最大の病気である「疫病」が蔓延した。食べるものが全くなくなり、餓死者のが地獄と化した。500万人が移民として故里を出た。米国に渡った子孫からはケネディやレーガン大統領が出た。まさに、「ジャガイモは世界の歴史を変えた」と言えます。「感想」ジャガイモを中心にすえて、ヨーロッパの社会をあぶり出している貴重な書物と思いました。ここで苦言をひとつ。ジャガイモの歴史に関する本は沢山あります。それらの中ではどれもアイルランドの大飢饉について述べられています。ただ残念なのは、これらの本のほとんどで、肝腎のジャガイモの病害(疫病)が何故か「胴枯れ病」となっていることです。(原因はどうやらK社の英和辞典の訳が原因らしい。胴枯れ病というのはクワの病害名であり、ジャガイモに「胴」などという部分があるはずがない)いつか出版社に訂正を申し入れたこともありましたが、結局改められませんでした。この本もまた例外ではありません(p197)。この本では、また品種を「変種」と訳しているのも「変」です。植物学用語とか農学用語とかの誤訳が多いのは、訳者が文系の人で一般に理系の専門用語をきちんと調べずに翻訳しているのではと思ってしまいます。[頁のかけら] ○人口学者の推測によれば、1830年代のイングランドで生誕時の平均寿命は40.5歳(フランスとアイルランドではさらに低い)。○生き抜く術こそ人間のもっとも真剣な仕事でなければならぬ。 アントワーヌ・オーガスタン・パルマンティエ類書 藤巻宏・鵜飼保雄 「世界を変えた植物」 培風館 1985 杉田房子 「じゃがいもの旅の物語」人間社 1996 山本紀夫 「ジャガイモとインカ帝国」東京大学出版会2004 伊藤章治 「ジャガイモの世界史」 中公新書2008************************************************** ランダム読書日記 by 行道はるか YUKUMICHI Haruka (2008.4.12. No.79)
2008.04.12
コメント(0)
ランダム読書日記 「大衆の心に生きた昭和の画家たち」 中村嘉人 (なかむら よしひと) PHP新書 190頁 ¥700 2007.3.1 初版第1刷発行 [目次] 第1章 さし絵の黄金時代 第2章 ぼくらは少年探偵団 第3章 名物編集者 第4章 現役最長老のさし絵画家 第5章 挿美会のこと 第6章 再び黄金時代がやって来た 第7章 季刊誌「さしゑ」 第8章 プラトン社の「苦楽」 第9章 「寄らば切るぞ!」 第10章 「一人三人全集」 第11章 昭和の幕開け 第12章 「新青年」と江戸川乱歩 第13章 ミステリ-のさし絵画家たち 第14章 「人生劇場」と中川一政 第15章 小村雪岱 第16章 「大菩薩峠」「宮本武蔵」と石井鶴三 第17章 「霧笛」「墨東綺譚」と木村荘八 第18章 戦後の百花繚乱 第19章 洋画家たちの活躍 第20章 転換期の時代小説 第21章 小説さし絵の第一人者 第22章 忘れられない画家たち 終章 郷愁の昭和三十年 「あとがき」にかえて 参考文献 人名索引 [内容] 大正末から昭和30年代まで、テレビもゲームもパソコンもなかった 時代には、新聞や雑誌の連載小説が大きな娯楽でした(そうな)。 連載小説にはかならずついていた「さし絵」は、あるときは小説の 文章以上に心をつかんだ(そうな)。本書では昭和に活躍した 「さし絵」画家たちの名作とエピソードを紹介しています。 あまり厚くない新書版ながら、「さし絵」画家たちの周辺にいた 人たちも含めた217名もの人が出てきます。 「感想」 「中央公論」に連載された 谷崎潤一郎の「鍵」のさし絵を描いたのは あの棟方志功だったということをはじめて知りました。 「ALWAYS 三丁目の夕日」の世界のような著者の長屋暮らしの 話しもでてきます。 私にとっては、さし絵といえば、古本で読んだ吉川英治の「宮本武蔵」 のさし絵(石井鶴三)、新聞の連載だった村上元三の「佐々木小次郎」 のさし絵(木下二介)、雑誌「少年画報」に載った伊藤彦造の剣豪や 西武劇などの緻密で躍動的なさし絵にとても忘れられない印象を もっています。 1日がかりで写画生のようにさし絵を写し取ったことがあります。 [頁のかけら] ○新聞小説のさし絵の仕事は毎日百万人の読者を相手に展覧会 を開いているようなものだと言ったのは、木村荘八である。 ○ 雪岱が描いた雨中のおせん、行水のおせん、からだをくの字に 袂をかかえて走るおせん、蓮の花の中を駕籠でゆくおせんなど、 春信におとらぬ息をのむ美しさ、妖しさ・・・・・・。あまりのみごとな 出来栄えに「昭和の春信」と評された。 (97頁にそのおせんのさし絵が掲載されています) ************************************************** ランダム読書日記 by 行道はるか YUKUMICHI Haruka (2008.4.2. No.78)
2008.04.02
コメント(0)
全3件 (3件中 1-3件目)
1