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キワモノの父親の後を継いで百貨店の社長になった西垣順造がフランスかぶれのバカ妹やアメリカかぶれのアホ甥のいざこざに巻き込まれる話。主人公の順造の一人称。文章は下手ではないものの構成が下手で素人なみ。全体の7割位が回想なんじゃなかろうかというくらい回想が多いうえに、時系列もごちゃごちゃしている。物語内における「現在」がいつなのかがはっきりしないうちに序盤からいきなり過去の回想が断続的に展開するのは技術的失敗で、これでは読者が物語内の世界を理解するためのメンタルモデルを形成できない。書くべきところへの書き込みが足りない上に、会社に行くまでトラックの後について車を運転する様子を描写するとかプロットに関係なくて省いてもいいような無駄な描写が多く、『パンセ』からの引用も浮いている。解説で西尾幹二が「このような一見して出鱈目に見える順序不同の叙述を重ねて、それでもなお、自在に、作品をある大きな流れを伴った全体として構成して行く作者の物語作家としての才能は確かである」と言っているが、このリップサービスを言い換えると、破綻しかけている物語をなんとかまとめられて偉いねと坊ちゃんが拗ねないようにあやしているようなものだろう。作者が自由自在に書くのは作者の勝手だが、読者は自由自在に読めるわけでもなく苦労して登場人物の関係や出来事の因果関係を組み立てなおさなければならず、回想を多用する手法が読者の物語の理解を深めることに繋がらず読者を混乱させるのなら、それは芸術表現として有効な技法ではなく、文章の未熟さに無自覚で読者を軽視した作者のひとりよがりにすぎない。主人公で語り手でもある順造の苦悩や葛藤がよく表現されているわけでもなく、主人公としても語り手としても中途半端な立ち位置で、自分語りをしたいのか没落しつつある一族の物語を語りたいのか、プロットがはっきりしない。そのうえ回想形式にしてしまったことで本来なら緊迫感があるはずのエピソードも味がなくなってしまっている。月並みな構造でも時系列順に一つ一つの場面を丁寧に描写して物語を書いていたらそれなりに読める物語に仕上がっただろうに、乱雑に回想を繰り返す構成のせいで全体が台無しになっている。西部グループの堤清二が書いた小説という権威付けがなかったらボツになるような出来ばえで、小説家の小説というよりは一種のタレント小説。★★☆☆☆【送料無料】いつもと同じ春 [ 辻井喬 ]価格:780円(税込、送料別)
2012.12.20
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幽霊が出てきたりするホラー短篇集。悪霊が電子機器を使いこなす物理的なんだか非物理的なんだかよくわからない現代ホラーに比べたら、幽霊が非物理的アナログな手段でぼんやり出てきて、それを見た人がぽっくり死んだりする話は怖いというよりはむしろほのぼのしていて、ホラーというよりはコメディじゃないかとも思える話さえある。語りの手法としては古くてリアリティはないものの、1日も店を休んだことがない店主が死んだ後も現れて街の人たちが皆で見に行くとか、辮髪を切られて成仏できない中国人の霊が3日置きに辮髪を取り返しに来るとか、着眼点の豊かさは面白い。★★★☆☆【送料無料】死の診断 [ アンブロ-ズ・グイネット・ビア-ス ]価格:398円(税込、送料別)
2012.12.20
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1929-41年のアメリカの大恐慌についてまとめた本。30年代前半のフーヴァー大統領時代の最悪期の農民の苦境については雑誌や新聞などの典拠からデータやエピソードを引用しつつ、どのようにして農民が農場を失ったか、流浪者がどのように生活していたのかを完結にまとめてあるものの、30年代後半のルーズベルト大統領時代のニューディール政策や工場労働者のストについてはほとんど言及されておらず、大恐慌についての本というには情報不足で中途半端な印象。大恐慌時代の農民についての本として見るならそこそこ面白い。★★★☆☆
2012.12.20
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1910年代のガーンズバックによるアメリカでのSFの勃興、日本での海野十三の奮闘から80年代頃まで、各作家の特徴や見所を解説したSF入門書。SFというジャンルの成り立ちや古典作品の見所が丁寧かつ簡潔にまとめられていて良い。しかし日本の作家については海野十三ばかりがやけに詳しくて、小松左京とかの近代の日本のSF界の代表的作家についてはあまり言及されていないのは構成のバランスに欠く印象。それと自分が有名なSF作家だと思っていたレイ・ブラッドベリにはまったく言及がなくてアレ?と思ったけど、コアなSFファンにとってはあれはSFじゃないという扱いなのか、それともページ数の都合で省いた小物扱いなのか、よくわからない。これは未来が舞台のファンタジーでジャンルとしてはSFじゃないよという線引きの基準も説明してくれたら文系のSF初心者にわかりやすいのだけれど、高学歴理系研究者特有の書き方というか、これは知ってて当然でしょみたいな感じで科学知識を説明しないまま流したりするのは若干不親切。★★★★☆【中古】 SFキイ・パーソン&キイ・ブック / 石原 藤夫 [新書]【あす楽対応】価格:251円(税込、送料別)
2012.12.20
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イタリアのマフィアの成り立ちや組織構成や儀式や資金源や抗争について書いた本。シチリアのマフィア、ナポリのカモッラ、カラブリアのヌドランゲタ、ニューヨークへ渡ったイタリア系移民によるギャングのマーノ・ネーラやカーサ・ノストラなど、それぞれ性質が異なる犯罪組織の特徴がわかりやすくてよい。麻薬取引に反対していてファミリーの結束があるギャング団という神話的マフィア像を覆して、実際はどっぷり麻薬で利益を得ていて庶民からは犯罪で搾取しつつ権力者は暗殺するか賄賂で抱きこみ、マフィア内での地位を上げるためにファミリーの古いボスを暗殺してのし上がったり敵対するファミリーを暗殺したりするという凶悪な現実をよく描いている。アル・カポネやラッキー・ルチャーノなど、アメリカで名を上げた有名なギャングのエピソードも面白く、マフィアの顔写真とかもあるので退屈せずに読める。★★★★☆【送料無料】マフィア・その神話と現実 [ 竹山博英 ]価格:693円(税込、送料別)
2012.12.20
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時系列順にケルト文化から現代の独立運動までアイルランドの歴史について説明した本。ノルウェー人のヴァイキングに侵略されたとか、清教徒革命のクロムウェルに武力平定されたとか、それぞれの出来事については正確な記述なのだろうけれど、それはアイルランドの歴史というよりもアイルランドを侵略した側の歴史で、史実の背後にあるアイルランド人の思想的背景や生活環境の変遷が見えてこず、本のタイトルに物語と冠しているくせに事実の列挙だけでエピソード性に乏しくて物語としてはつまらない。要するに、昔はアイルランド内で諸侯が群雄割拠して統一する強力なリーダーがいなくて内戦していて、12世紀にはより強力な軍事力があるノルマン人のヴァイキングに攻撃されて、ノルマン人の武人ストロングボウがアイルランド南部を治めたらノルマン人よりも強大なイギリスの配下になるほうがお徳だとアイルランド諸侯は判断してヘンリー二世やジョン王の統治下に入ったものの、イギリスの隙をついてたびたび反乱が起きて、その後もイギリスの統治下ではイギリス国教徒でないカトリックは差別されてて自治権もなくて貧乏すぎてアイルランド人は不満だったらしく、そのうえイギリスとは違うケルト的文化があるのでナショナリストが独立したがってたらしい。そんで1949年にアイルランド北部のアルスター地域以外はアイルランド共和国として独立したけどそれだけじゃ不満で完全独立したいということでIRAががんばっているらしい。アイルランド研究の資料としては役に立つかもしれないものの、この本を読んでも結局アイルランド人はどういう人たちなのか、なぜ独立に固執するのかという核心部分がよくわからないままだった。ケルト文化の残滓があるとはいえ結局はゲール語でなく英語を話してるし、独自の文化を持つ人の民族独立運動というよりはカトリックやプロテスタントの宗教対立が根底にあるように見える。★★★☆☆【送料無料】物語アイルランドの歴史 [ 波多野裕造 ]価格:861円(税込、送料別)
2012.12.20
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笑いについて考察した本。文章が回りくどくてわかりにくいうえに、若干古い本なので笑いの例として引用されているエピソードもモリエールとかの古いフランス喜劇からで、元ネタを知らないと引用で説明がわかりやすくなるどころかますますわかりにくくなる。内容はわかりにくく、びっくりばこや雪だるまという分類もしっくりこないものの、状況のおかしみや性格のおかしみなどの大まかな分類は妥当。これは喜劇に対する論文だけれど、現代の漫画なりアニメなりを分析する際の指標としても使えそうなのでためしにサウスパークの14シーズンのエピソード7:Crippled Summerを分析してみる。このエピソードではヤク中になったタオリーがサマーキャンプで働き、そのサマーキャンプではネイサンとミンジーがライバルのジミーを暗殺しようとするコメディが展開される。・全体がヤク中の更正ドキュメンタリー風パロディ・操り人形:ミンジーがネイサンの言いなりになる操り人形役だが、ネイサンの思い通りに動かないところにおかしみがある。・言葉のおかしみ:ネイサンの言葉をミンジーが間違って解釈するところにおかしみがある。・性格のおかしみ:タオリーがヤク中になっているところにおかしみがある。・繰り返し(状況の繰り返し):ネイサンのジミー暗殺計画が何度も同じパターンで失敗するところにおかしみがある。状況を説明するキャプションが繰り返し挿入されるところにおかしみがある。・ひっくり返し:ネイサンがジミーを暗殺しようとして自分が仕掛けた罠に引っかかるところにおかしみがある。・雪だるま(自己増幅):ネイサンの計画が失敗するたびに次の計画はより大げさになってネイサンの被害も大きくなるところにおかしみがある。(ブラックマンバ→インディアンの襲撃→サメにレイプ→C4で吹き飛ばされる→二度目のブラックマンバ、インディアン、サメ)・運動のおかしみ:タオリーがヤク中になってふらふらする様子、ネイサンがサメにレイプされる動作におかしみがある。厳密に分析はできないものの、現代のアニメに対しても大まかな分析はできるようだ。笑いがパターン化されうるということは逆にパターンから笑いを作ることもできるわけで、創作者の参考になる部分もあるだろう。★★★☆☆【送料無料】笑い [ H・ベルクソン ]価格:693円(税込、送料別)
2012.12.12
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どこかの島で少女がおっさんといちゃいちゃする表題作とその他の短編集。主人公の女性の一人称。物語に芯がなく、どの短編も読み応えが無い。主人公の「わたし」に思想や魅力があるわけでもなく、登場人物にも物語の舞台にもリアリティが無く、プロットが良く練られているわけでもない。文体には多少は純文学めいた言い回しが出てくるものの、内容は人間に向き合わないまま言葉いじりででっちあげた空疎な物語で、感動からは程遠い。少し不思議な出来事が起きて、オチもつけないままほったらかしにして終わるというパターンの繰り返しで、特に見所も無く暇をつぶすのに役立つという程度の内容だけれど、これを読んで暇をつぶすくらいならまぶたを閉じて寝たほうがましというくらいの出来栄え。★★☆☆☆【送料無料】まぶた [ 小川洋子(小説家) ]価格:452円(税込、送料別)
2012.12.07
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ブルータスがシーザーを殺した後に反逆者として殺される話で、シーザーの話というよりはブルータスの話。シーザーがローマの内戦を終えて凱旋するところから物語が始まるものの、なぜブルータスがシーザーを暴君として殺害しようと思ったのか、その具体的な動機がよくわからないので、最初の山場のシーザー殺害場面もたいして面白くない。シーザー殺害後にブルータスが民衆に対して「おれはシーザーを愛さぬのではなくローマを愛したのである。みなは、シーザー一人生きて他のことごとくが奴隷として死ぬことを望むのか、シーザーを死なせて、万人を自由人として生かすことよりも?」と演説するものの、シーザーの独裁が民衆にどう影響したのか具体的なことがよくわからない。肝心のブルータスがシーザーを殺害する動機がよくわからないので、ブルータスが言うところのシーザーへの愛や正義への共感もできない。ブルータスの演説にいったんは納得した民衆がアントニーの演説を聴いてあっさりシーザー支持に寝返えるのなら、シーザーの独裁も元々そんなにひどいものでもなかったんじゃないのかと思えてしまう。途中でシーザーの亡霊が出てくるものの、ただ出てきただけという感じでプロット上の存在意義があまりないのも面白みに欠ける。民衆の愚かさを描いている点はそこそこ面白いものの、肝心のシーザーとブルータスの存在感があまりなく、カタルシスがない。★★★☆☆【送料無料】ジュリアス・シーザー改版 [ ウィリアム・シェークスピア ]価格:452円(税込、送料別)
2012.12.05
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夫が死んで名門フランス料理レストランを経営することになった未亡人が画家と恋愛したり店をのっとろうとする人と戦ったりする話。三人称。描写ペースが安定していて文体自体は読みやすい。しかしプロットとしては大して面白くない。画家との恋愛と店ののっとりへの抵抗という二つの話がプロットとしてつながらないまま行ったり来たりしてばたばたしている感じで、夫に子供がいるかもしれないという冒頭の仕掛けはプロットに大して活かされていないし、無駄に登場人物が多くて人間関係もわかりにくい。そのうえ店をのっとろうとする連中への対処は他人任せでハードボイルドにもなりきらずに無駄に後味の悪いえぐさが残る。恋愛か、ハードボイルドか、あるいは女経営者の奮闘記なのか、どこを物語の焦点にしたいのかがはっきりせず、どれも中途半端という感じ。★★★☆☆【送料無料】花の降る午後 [ 宮本輝 ]価格:770円(税込、送料別)
2012.12.04
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