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ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃40「和音と亜瑠と柄留」 「はっはっは覚えてたかM、いや諸田亜瑠くんと呼ぼうか。儂は秋馬光鴨(こうおう)。院瀬見の役員をしている者だ」 高級ビジネススーツの老人が言った。 「公園のホームレスの中でも異質だったよあんたは。皆お互い詮索しないから言わなかっただけで」 「そうだったか……馴染んでた自信はあったんですが」 「馴染んでたよ、完璧すぎるほど完璧なオータムホースのホームレス老人だったよ。でもただ一点、眼の光がギラギラし過ぎてたのが不自然だった」 「やれやれ『目は口ほどに物を言う』ことわざにある通りになりましたか」 「院瀬見の役員があたしに何か用?」 「二人とも用があるんですよ。前置きは無しにして単刀直入に言います。儂に協力して貰いたい。鈴村功太朗だけが院瀬見の良心ではありません」 「それはつまり院瀬見のあんたの派閥に入れって事?」 「そうです、スカウトしにきました。二人とも進路は決まっていますか?」 「オレは警察官になる」「あたしは……大学行ってその後は家業の刀鍛冶継ぐ予定」 「なるほど和音くんは警察官、意志は固そうですね。亜瑠くんはどうですかな?儂の派閥にインターンで入るというのは。家業を継ぐのが急ぎではないのなら何年か院瀬見に入ってみるのもいいかと思いますが?」 「強引すぎる勧誘だね……なにか意味があってこんなやり方で来たんでしょ?今まで大人しくしてたのにこのタイミングで会いにくるっての思いつきだとは考えにくい」 「いいですね、正に貴女のような人材を探しているのです。院瀬見への忠誠心など必要ない。儂への忖度も必要ない、亜瑠くんには只の無茶な若者ではない強さと賢さと胆力を感じます」 「へぇ~」 「院瀬見は優秀で不真面目、優秀で真面目、無能で不真面目、無能で真面目と色々な者が居ますが一番儂が欲しているタイプが分かりますかな?」 「優秀で不真面目な奴でしょ?秋馬光鴨あんたのようなタイプは側近の部下に癖の強い軍師タイプの人間を欲しがる」 「正解です。不真面目とはネガティブな意味ではなく型破りで柔軟とも言える。規律を守り頑なで誠実な人間が真面目。それが悪いわけじゃない組織には必要。優秀で真面目な者は探しやすく確保もしやすい、だが本当の意味での優秀で不真面目な者は中々居ない」 「あんたから見るあたしがその優秀で不真面目な奴って事」 「ええ」 「言っとくけど軍師タイプじゃないから。バリバリ前線に出て敵の首取るよあたしは」 「はっはっは元気で結構。儂が貴女にふさわしいポジションと仕事を与えれば才能は花開きもっと能力を活かせる。こう見えても儂は人を見る目には自信がありましてな」 「へぇ~そう?じゃあ次にあたしが何するか解るかな?」 亜瑠は全身に龍の力を流し電気を纏う。そして秋馬光鴨の横の大男に手をかざす。 「黒駄(くろだ)はバイオ筋繊維を移植し10倍の量を持つ男。並の攻撃は効きませんぞ?」 「止めておけ小娘、下手に俺を攻撃すると反撃でぶっ殺してしまうだろう?それでは光鴨様に申し訳ない」 黒駄はつり上がった眉を更に吊り上げながら言った。 「真面目な無能ってお前の事じゃない?既に勝ちは決まったんだけど」 「何を!!」 車を吹き飛ばす威力の張り手を亜瑠に放つ黒駄。だがその張り手は亜瑠にではなく黒駄自身の顔を打った。 「ガ……!?」 「お前の右手はもうあたしの支配下にある。筋肉に送られる電気信号を読み干渉すればこんな事もできるんだよ」 亜瑠は黒駄の右手を操り自らの顔面を掴ませる。 「グオオオオオ!」 左手で右手を剥しにかかる黒駄、メキメキと骨が軋む音が聞こえる。 その光景を見て和音は亜瑠の学校での出来事を思い出す。 目立つ亜瑠は1年生の頃しょっちゅう上級生に絡まれていた。その度絡んできた上級生を不慮の事故や偶然に見せかけて痛めつけて撃退していた。 靴箱のロッカーに動物の死骸を入れられた時は片っ端から怪しい者を自分自身の手で攻撃するように痛みと恐怖で締め上げて遂に犯人を見つけ不登校になるほど追い詰めた。 「(亜瑠はオレとは違い殴り合いの喧嘩などしない)」 ある意味では亜瑠は和音よりも上手く立ち回っていた。半年もすると誰一人亜瑠にちょっかいかけるものはいなくなり、うわべだけの取り巻き、距離を取りながらも出来るだけ仲良くしたい者に囲まれるようになった。亜瑠は出来るだけ愛想よくふりまき怖がらせないように努めた。 亜瑠が素で接して心から友人だと言えたのは兜金蒐魅ただ一人。 「秋馬光鴨さん、貴方もこうなりたくなければお帰りくださいお金の問題じゃないんです」 「はっはっは!まさか力押しとは。いやはや和音くんの方が冷静ですね」 「そうよ、あたしは和音ほど我慢強くないんだから」 「まぁいいでしょう今回は引きます。君たちは必ずまたこの街に戻って来る、その時にでも話をしましょう」 「……わかった、じゃあもう行って」 黒駄を解放する亜瑠。黒駄は亜瑠を睨み右手を抑えながら車の助手席に乗り込む。続いて秋馬光鴨が後部座席に乗り込んだ。 和音と亜瑠は車が去るの見届けた後再びタクシーに乗り込む。 「待たせたわね。守山探偵事務所に向かって下さい」 「ハイーーーーーー!」 声を裏返しながら大声で答えるタクシー運転手。 「相変わらず器用だな亜瑠」 「あんなの本当に強い奴には効かないし手品みたいなものよ」 「手品……か。亜瑠に操られた地元のサイバネチンピラが血まみれになりながら土下座で頭を打ち付け続けていたのを思い出した」 「傍から見ればあたしは何もしてないし相手が勝手に奇行に走っただけに見えるし便利」 「オレにはそんな芸当無理だ」 「和音はわかりやすいパワー型だからねー。多分そっちの方が強い奴と戦うのに向いてる。グレイキャリバーに取り付かれた蒐魅と互角に戦えたのはミレーヌとデモンズエッジ・スキャバードのおかげだしね。和音なら多分一人で戦えたよ」 「だがその場合は柄留は生まれなかった……」 「そうだね……」 和音と柄留の会話をなるべく聞かないようにしながらタクシーの運転手は車を走らせる。 *** 守山探偵事務所に到着する和音と亜瑠。厳重なセキュリティを抜けて事務所に入った。 「やあ、待ってたよ……M(亜瑠)」 「徳三さん!!」 車椅子に乗り、全身をチューブで繋がれ大きなタンクを背負い現れた老人は守山徳三。 「柄留の言ってた人か……」 「あ~……あいつミレーヌの記憶で知ってたのね」 応接室には鈴村功太朗と罅助の姿も見える。 「こんな姿ですまないね……長年酷使しすぎた体に限界が着始めてもう殆ど動けないんだよ……時々遠隔操作ロボットでホームレスたちの公園に行ったりしてるよ」 「……なるほど。そういう事だったのか」 柄留が初めて徳三とあった時は歩いていたと和音に話していた。 「探偵・守山徳三はもう死んだ。ここに居るのは只の隠居ジジイだ」 「そっかぁあたしが会ってた徳三さんも遠隔操作ロボだったのね」 「すまないね……無理を言って罅助に用意してもらったんだ。一見すると全身サイバネに見えるからね」 奥の部屋から徳三の顔をした二足歩行ロボットが歩いてくる。 「神名製の旧型を特殊なルートで手に入れたんです。設定などは鈴村功太朗さんに手伝ってもらって」 罅助が言った。 「いやぁ~流石神名だと感心させられましたね。刻印は25年前の物……なのに古さを感じない完成された構造……ユーザーインターフェースを乗せ換えるだけで今でも十分に通用するものです。軍用に開発された物がこの街に流れてきたのでしょうね」 鈴村功太朗が言った。 「……いきなり本題に入りたいのですが、話とは何ですか?」 亜瑠は功太朗を見て言った。 「ああ、早速話をしよう。かけてくれ和音君も」 応接室に座る和音と亜瑠、功太朗と罅助。徳三も同席する。 「これを見て欲しい」 功太朗がアタッシュケースから取り出したのはモザイク柄のミント吸入器と戦闘フレームに乗る際に使うカード。 「これを亜瑠くんに貰って欲しい。蒐魅の使っていた吸入器と彼女が弾丸で修理した戦闘フレームのカードキーだ」 「……この吸入器はGウェポン化してる!!」 「そうなんだ。本来ならグレイキャリバー消滅と共に消えるはずのGウェポン、柄留くんグレイブラスターの影響か蒐魅が使っていた時のままなんだ」 ミント吸入器を手に取る亜瑠。 「んん?」 鈍い光を放ってミント吸入器は小さな手のひらサイズのリボルバーに変わった。 「装填数5発のミニリボルバー……弾丸は無し」 机の上に置くとミント吸入器に戻った。次にカードキーを手に取る。スリーブに何かが貼ってあるのを見つけた。 「あ……コレ……あたしと撮った写真だ!」 亜瑠と蒐魅がカメラに顔を近づけて笑っている写真。 「蒐魅がグレイブラスターを拾ってから戦闘フレームに乗ることは少なくなったけど、そのカードスリーブは肌身離さず持っていたよ」 「そっか……」 亜瑠は写真とミント吸入器をカバンにしまう。 「これを渡す為に呼んだの?」 「いや、話は別にあるんだ。亜瑠くん、君にオータムホースに来て欲しい。そして私たちに協力してくれないか」 「え?それってさっき他の人にも言われたんだけど」 「そうなのか……既に先を越されたとは。どこからの誘いだったのか良ければ教えてもらえるかな?」 「院瀬見の秋馬光鴨って名乗る人。派閥に入れって言われた」 「……こんな顔だ」 和音は携帯の画面に手描きで似顔絵を描き功太朗らに見せた。 「これは!ホームレス公園に居た鴨さんじゃあないか!!」 徳三が声を上げた。 「まさか彼が院瀬見の派閥長の一人だったとは……探偵として情けない」 罅助が言った。 「徳三さんや罅助さんが知らないのも無理はない。光鴨は姿を見せない事で院瀬見でも有名だったからね。顔を知ってるのは極一部の人間だけさ。彼が姿を現したという事は院瀬見は大きく動くんだろうね」 功太朗は眉間に皺を寄せながら言った。 「なんで、あたしなの?和音の方が頭いいし強いし」 「和音君には既に断られててね。もう決めた道があると強い意志で言われたのさ」 「……まぁあたしは別に絶対決めた道に行くってまだ決めてないけど。とりあえず大学受験ってだけで」 「ならばオータムホースの大学に入ってくれないか?二校とも素晴らしいところだよ」 「この国トップレベルの科学技術に特化した大学と普通の所でしょ?」 「一つは私の母校でもある」 「……考えとく。この街に住むのもありかなとか思ってるし」 *** 話を終えた和音と亜瑠はタクシーを拾って瞬栄の家に向かう。 「オータムホースに住むのか?」 「ありかなって。和音も大学出たらこっちに来るんでしょ?」 「ああ」 「それにアイツ(柄留)を陶子さんだけに見させる訳にはいかないじゃん?」 「警察学校で少し落ち着けばいいのだがな」 「あはは」 瞬栄の家についた後すぐに支度を済ませ亜瑠は両親と共に帰っていった。 *** ―翌日 「退院だよー!」 病室で柄留が叫んだ。 「大きな声を出すな。それはそうと早く退院出来て良かったな、保護者は比留山陶子さんになるのか」 「そうみたい!実際は0歳だけど和音君と亜瑠ちゃんと同じ18歳設定にするとか」 「設定とかいうな」 「実際は0歳なのにこのボディ……イケナイ気分バブバブ」 「やめろお前の姿は亜瑠と同じなんだぞ」 「って事は亜瑠ちゃんの服全部着れるんだ逆にボクの服も今度交換しよっと」 「それよりも……お前学力テスト大丈夫なのか?」 「それがさ~……陶子さんが置いてった問題集やってみたんだけど結構いけるんだぁ。頭の良さ亜瑠ちゃんに似てるのかも?」 「それは良かったな。あとは一般常識を身につければいい」 「それが一番ムズイ……」 「来月から警察学校だな」 「そうなんだよ~和音君と離れて暮らすの寂しいなー……それと後は女子校生やって見たかったなぁ~蒐魅もミレーヌも行ってないから記憶にないんだよね……」 「お前の言い方だと勉強とかではなく休み時間放課後クラブ活動がやりたいだけに聞こえるな」 「そうそれ!青春感じたい!TVで青春ドラマ見てたら憧れ強くなったんだよ!!」 「いい事ばかりじゃないぞ?」 「カーストとかってやつでしょ?」 「お前はやらかして停学になるんじゃないか?」 「なんでよ!」 「短気ですぐに手が出るだろ?常人を遥かに超えてるその身体能力で暴れたら終わりだぞ。オレも亜瑠もバレないようにやってるんだ」 「ボクだって手加減できるよ!でもその場でやっちゃう感はある……蒐魅が出るのかも」 「……亜瑠が言ってたぞ『ミレーヌの悪い所と蒐魅の残念な所ばっかり目立たないようにして欲しい』ってな」 「良い所は?」 「オレはミレーヌも蒐魅も知らないが……お前としてならそうだな……前向きでへこたれない、ポジティブで切り替えが早い柔軟な思考、高い道徳心、思いやりがある。などか」 「えへえへへへへへ……なんか和音君にべた褒めしてもらえると蕩けそうになるね」 「今あげた数と同じくらい悪い所もあるんだがな」 「あ~ダメダメ!そっちは聞きたくない!!」 「オレも人の事を偉そうに言えない。悪い所だらけだ」 「悪い所があってもそれを上回る長所と魅力が和音君にはあるんだよ!」 「柄留……亜瑠が認める魅力的な人間になれるといいな」 「なるよ!ボクは伸びしろしかない!!」 和音は柄留の顔を見る。薄っすらと左右の目から青と橙の光が見えた。 「冬休みにまたこの街に来てやるよ。亜瑠と一緒にな」 「え~じゃああと3カ月かぁ……でも我慢する。色々頑張らなきゃいけないし!」 「ああ、オレもだ」 終
Feb 25, 2023
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ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃39「エピローグ」 デモンズエッジ・スキャバードを手に取る亜瑠。 「……完全に柄留のものになってるね。グレイブラスターも見せて」 「うん」 左手からグレイブラスターを出現させてリボルバー回しをする。 「……本当に出せるんだ。白魔女とグレイマンの両方」 「そだよ」 「備前長船長光」 そう言って亜瑠はデモンズエッジ・スキャバードを鞘から抜く。 「反応しない」 鞘から抜かれたのは刃のついていない剣。 「あれ?和音君がやった時は出来たよ?」 「じゃあグレイブラスター貸して」 グレイブラスターを受け取る亜瑠。弾倉を開ける。 「使えそう……じゃあ試しに水冷弾」 亜瑠がそう言って念じると水色の弾丸が装填された。弾倉の蓋を閉めコンクリートの柱に向かって引き金を絞る。 亜瑠の右手に軽い反動があって水の塊が飛ぶ。コンクリートの柱に衝突した弾丸は水しぶきと冷気を巻き散らかした。 「よくわからないけどグレイブラスターは使えるみたい。所有者だけが撃てるはずなのに」 「グレイブラスターの中に居るグレイキャリバーが亜瑠ちゃんを認めているとか?」 「悪い宇宙人に認められてもね……」 「悪い宇宙人ってのはちょっと違う気がする。ボクが助かったのはグレイキャリバーのおかげだもの」 「ミレーヌから聞いてたのよ。地球侵略の為に来たグレイマンズの1体なんでしょ?グレイキャリバーは所有者に取りつき弾丸を利用して軍隊、武器をつくって勢力拡大する奴じゃないの?」 亜瑠は蒐魅の真似をしてリボルバー回しをする。 「蒐魅に取りついた時はそうだったみたい……だけど一緒に居る時間の中で彼女の考えや生き方に影響されて目的を変えたっぽい。この街の悪と戦うダークヒーローの武器として最後まで寄り添うつもりで考えてたらしいよ」 「グレイキャリバーの考えてる事解るの?」 「怪我して死にかけた時に……デモンズエッジ・スキャバードとグレイキャリバーがコミュニケーション取ってるの聞こえてきたんだ」 「そうなんだ。コイツらは柄留の事どういう存在だと捉えてるわけ?」 「蒐魅の魂とミレーヌの肉体を持つ亜瑠ちゃんにそっくりな存在……」 「ちょっと納得できないなぁ……柄留の性格がミレーヌベースなのが」 「ボクにそう言われても困るよ」 「頭では理解しようとしてるんだけど……蒐魅はもういないしミレーヌだって二度と会えない。柄留はどちらでもない一人の人間なんだって……でもそう簡単に受け入れられない」 「亜瑠ちゃんが居なければボクは生まれる事は無かったし和音君にも会えなかった。だからすごく感謝してるんだぁ」 「やめてよ……あたしはお前に冷たくしてるのに」 「亜瑠ちゃんがいつかボクの事認めてくれるかわかんない。だけど感謝の気持ちだけは伝えたくて」 柄留は吸い終わったストロベリーバニラの吸引機を返す。 「ボクは自分のベッドに戻るね」 亜瑠は黙って外の景色を見つめたままウルトラミントを吸う。柄留が去った後も新しいカードリッジを装着して吸っている。 「――あんな顔であんなこと言われたら恨み言も言えないじゃん」 亜瑠は携帯を取り出して蒐魅とのメッセージのやり取り、一緒に撮った画像を眺める。 「あんたがもういないなんて受け入れられない……助けられなかった……柄留がもしかしたら蒐魅で記憶を失なってるだけなんだって思い込もうとしてた期待してた……」 亜瑠は椅子に座り込んで両手を顔を覆う。 「ミレーヌだったらボコボコに不満ブチまけてさっさと白魔女の神殿に帰してやろうと思った……。アイツは一人の人間『柄留』なんだ」 泣くのをこらえながら亜瑠は机に伏す。 「アイツは訳も分からないまま事件に巻き込まれて逃げもせずに、ミレーヌと蒐魅の断片的な記憶、思いを感じながら死ぬ寸前になるまで戦い抜いたんだ……それなのにあたしは」 テラスに休憩に来た医師が入ってきた。亜瑠は目に溜まった涙を拭いて立ち上がる。 *** ――諸田瞬栄の家 「すまないね兄さん」「お邪魔しますお義兄さん」 和音の両親が言った。 「遠慮するな、さぁ上がってくれ」 続いて後ろに立っていた和音が上がる。 「おや?和音君Mちゃんは?」 「怪我して入院してます」 「もしかしてウチの病院?」 「そうです。あ、アイツ本名は兜金柄留って言います」 「なにか事情があってニックネーム名乗ってたんだねぇ」 和音はMだった時の亜瑠と誤魔化した時の柄留を合わせて一人の存在として話す。 「(とりあえずこれで矛盾は無いはずだ……)」 「何だ和音?ガールフレンドか?」 和音の父が言った。 「そんなんじゃない、オレと亜瑠共通の友達だよ」 「おおそうか、そういやこっちに友達がいると言ってたな亜瑠は。その子の事か」 「お父さん、年頃の娘息子の交友関係を聞くんじゃありませんよ。そっとしておいてください紹介するなら二人から言うでしょう」 和音の母が言った。 「つい気になってな。和音も亜瑠も仲のいい友達居ないんじゃないかってなぁ」 「(蒐魅とMと柄留の話が一緒になるが……まぁ問題はないだろう)」 亜瑠の検査の結果が出て退院が決まるまで瞬栄の家で待機する事になっている。 「昼ご飯はどうする?」「何か頼みます?」「和音君は何かリクエストある?」 「この前買った蕎麦が冷蔵庫にあるからそれを茹でますよ」 「いいねぇ!」「それにしましょ」「了解」 和音はざるそば4人前の用意に掛かる。 食べ終わり母と片づけをしている和音。 「和音も一緒に今日帰るんでしょ?」 「いや、もう少しやりたいことがあるんだ明日まで居る。母さんたちは亜瑠と帰ってよ。元々オレは明日までこっちに居る予定だし」 「そうなのね」 「進路も決めたんだ。オレは警察官になるよ」 「あらまぁ、てっきり亜瑠と二人でお家の鍛冶継ぐのかと思ってたわ、お父さんきいたらショック受けるかも」 「亜瑠がいるだろ?それに……また刀鍛冶やりたくなるかもしれないし」 「そうね~」 母と話していると和音の携帯が鳴った。守山罅助からであった。 リビングを出て二階に上がる和音。 「和音だ」 『罅助です、今大丈夫ですか?』 「ああ」 『大体の事は陶子さんから聞きましたよ。亜瑠さんも目を覚ましたって』 「そうだ」 『鈴村功太朗さんが亜瑠さんと話をしたいと言ってましてね。渡したいものがあるとか。都合がついたら守山探偵事務所で会いませんか?』 「オレは行けるが亜瑠は今日退院してすぐ帰る予定なんだ」 『そうでしたか、ならば和音さん一人で来られるので?』 「多分な、また詳しい時間なんかは後で連絡する」 『それではまた』 通話を終了する。和音はすぐに亜瑠に向けてメッセージを送った。 数分後亜瑠から返信があった。 『検査の結果退院OK出たし家に帰る前に守山探偵事務所に寄りたい』 *** 和音は亜瑠を迎えに行くと両親と伯父に言い家を出る。タクシーを拾って病院に。 病室に行くと柄留の姿は無く、亜瑠はぼんやりとTVを見ていた。 「来たぞ」 「うん。もう荷物はまとまってるよ」 「父さんたちは瞬栄伯父さんの家で待ってもらってる」 「わかった」 「ところで柄留の奴はどこに行ったんだ?」 「さぁ……しばらくカーテン閉めてモゾモゾしてたけどお昼ご飯食べたあと出ていったよ。売店でも行ってるんじゃない?」 和音は柄留のベッドの机に吸入器が置いてあるのを見つけた。 「あの吸うやつお前のじゃないのか?」 「あ~アレは一つアイツにあげたのストロベリーバニラ気に入ったみたいだし。カードリッジはここの売店でも売ってるしね」 病室を出ると点滴を引いて歩いてる柄留に出くわした。 「あれー!?和音君たちどこ行くの?」 「亜瑠はもう退院だ。オレが迎えに来たんだ」 「ボクがおトイレで苦戦してる間に……危うく入れ違いになる所だったね」 尻に手を当てて言う柄留。 「はぁ……コイツ悪いところミレーヌに似てるんだ……馬鹿で下品だったからねアイツ」 軽い手刀を柄留の頭に当てる亜瑠。 「じゃあな柄留。またこの街に来ることもあるだろうしその時まで元気でな!」 「うん!またね亜瑠ちゃん!!和音君はまだ居るんでしょ?」 「ああ、オレは明日までこの街にいる」 「じゃあまた明日ねー!!」 飛び跳ねながら手を振る柄留。和音たちがエレベーターに乗るまで見送った。 「なんだいつの間にアイツと打ち解けたんだ?」 「柄留の事妹だって思う事にしたらなんか気が楽になってね。まだまだ心の整理は出来てないけどとりあえず柄留の事は受け入れたんだ」 「そうか」 「ふと思ったんだけど、アイツがミレーヌよりの性格だったから和音と相性良かったのかもしれない。蒐魅の性格だったらどうなってたかな」 「全然違った展開になってたかもな」 「そもそもあたしがずっと寝てしまってたのが駄目だったんだ……龍の力で体は訛らなかったけど」 病院の受付で手続きを済ませて退院する。外に出ると七曲キョウヤがサイドカーを止めて立っていた。 「いようお二人さん!」 「何の用だ?」 「テメーは……七曲」 「おやおやおや……亜瑠さんですね?Mの姿では何度かお会いしましたねぇ」 「散々引っ掻き回してくれたよな……蒐魅もあたしも」 パチパチと電気音を鳴らし亜瑠の髪が逆立っていく。 「ストップストップ!電子機器壊されちゃあかなわんぜ。俺っちが来たのは和音君に知らせることがあってね……例の怪人製造をしているって収容所、今日にでも警察が監査に入るんだと。つまりどういう事か解るよな?」 「院瀬見は怪人に関する証拠を残さず消した。だからあっさりと監査を受け入れた」 「そういう事。奴らは何も懲りてねーのさ、DMCが消えても怪人はこの街に現れ続ける……目的はさっぱり掴めねーが」 「和音、コイツはこうやっていつも引っ掻き回そうとするんだ。なまじ正確な情報なせいで無視するわけにも行かない。情報で人が動いてコイツが得をする構図になってんのよ!」 「ああ……そうだな」 「ハハッこれは手厳しい!だがまぁ俺っちは自分の利益で動いてるのは確かだ。俺っちの情報を聞いて誰がどう動くのか見てそれに合わせて依頼主の望む結果にしていく」 「コイツは情報を与える相手を選んで誰に何を言うか計算づくなんだよ。口の軽い奴には自業自得になるように、行動力のある奴には時間が迫っているものを、金にがめつい奴には飛びつきたくなる餌を撒いて横から少し掠める」 「いやぁ~亜瑠さんは手ごわいね!」 「全然思ってないだろ、本当にそう思ってたら話しかけてこない。へらへらした態度で『ムカつく奴』を演じてるんだ。嫌われることで逆に持ってきた情報の価値を上げている。依頼主の前ではこんな態度じゃないはずだ」 「流石流石!蒐魅の親友だけはあるね!!俺っちは煽りすぎて蒐魅に大分怪我させられたなぁギリギリの所で保つのがベスト何だが蒐魅は手が速すぎて」 「用が済んだなら消えろ。感電させて欲しいか?」 「んじゃあこの辺で退散するぜ。追加で言っておくと第六地区は今後激変する、LOKIの事は頭の片隅にでも置いておいて忘れないようにな」 サイドカーに乗って去る七曲キョウヤ。 「街を出るオレたちにわざわざ言いに来るとはな」 「戻って来ると読んでるんでしょうね。この街の裏社会と無関係ではいられないほど関わってしまったからねあたしたち」 「そうだな」 「久しぶりに電気だしたらめちゃくちゃお腹すいてきた……病院のご飯お粥だけだったし」 「晩飯は亜瑠の好きな地元の寿司屋に行くか?退院祝いに」 「いいねえ!セント鮨!!あそこの特上盛り食べたい!!」 「じゃあさっさと用事すませて瞬栄さん家に戻るぞ」 タクシーに乗り守山探偵事務所に向かう和音と亜瑠。 大通りに出た所で後ろからずっとつけてくる車に気が付いた。 「亜瑠」「黒い車つけてきてるね」 ミラー越しに後を走る車を見る。違法スモッグシールドを張っているので中の様子は全く見えない。徐々にスピードを上げタクシーを追い抜かした。 「止めさせる気か」「そういう事ね……」 和音と亜瑠の考えた通り黒い違法スモッグ車は速度を落とし左右に進路妨害をしてタクシーを停車させた。 「ヒイイイエエエエエエエエエ!!」 タクシーの運転手はパニックを起こしている。 怪しい車から異常なほど筋肉が盛り上がった男と高級ビジネススーツを着た老人が降りてきた。 「あれ?あのお爺さんホームレスの一人だ……」 亜瑠が言った。 続く
Feb 19, 2023
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ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃38「柄留と亜瑠」 言葉に詰まり肩を震わせる亜瑠。それを見た柄留はオロオロと和音の顔を見ている。 「亜瑠、お前が寝ている間に何があったか聞いてくれ」 和音が言った。 M(亜瑠)の足取りを追っている内にオータムホースの問題に巻き込まれ、蒐魅の事を知り、院瀬見派閥と戦い第六区を解放、DMCのトップを斃した事を話した。 「そうなんだ……蒐魅のやりたかった事を和音と柄留がやり遂げたんだね……あたしと蒐魅であんた達二人のように大活躍のあげく解決したかったなぁ……」 「オレと柄留だけでやり遂げたんじゃないぞ。守山探偵事務所に比留山さん、鈴村功太朗、G/Tの連中にLOKI……それと亜瑠と蒐魅が居たから出来たんだ」 「そうだよ亜瑠ちゃん!」 柄留が急に大きな声を出した。 「全部繋がってるんだよ……亜瑠ちゃんがこの流れを引き寄せたんだ!」 「……でも肝心の蒐魅がいない」 「うぅ……」 「グレイキャリバー蒐魅との最後の戦いの時、あの子はもうおかしかったんだ。限界を超えたサイバネ改造手術にグレイキャリバーの融合。最終的には院瀬見、DMCのクソ野郎を殺して回る殺人マシーンみたいになってた。蒐魅は何をすれば第六地区を救えるのかDMCは何をすれば潰せるか解らないままがむしゃらに突き進んだ。あの子の知り合いで歌手の夢を追いかけてた少女がDMCに騙されてドラッグ漬けにされたあげく歌えなくなり自殺したり、知り合いの子供が企業のカス共の娯楽の為に残虐猛獣ショーで生餌にされたり。何も悪い事をしていない必死に働いてた家族の店があらぬ疑いをかけられクソサイバネの襲撃をうけたり……蒐魅から話を聞くたびにあたしは協力してどうにかしてやりたいって思ってたのよ。鈴村功太朗が蒐魅の協力者で負担を軽くするために戦闘フレームを使わせてた事を知ってた、だけどそれは蒐魅を救う事にはならなかったグレイキャリバーの影響を緩やかにはしてたけど」 「あ、ああああ……」 眼球を揺らして頭を抱える柄留。 「どうした柄留?」 「辛い辛いよ和音君……亜瑠ちゃんの話を聞くと蒐魅の思いがいっぱい流れてきて頭の中ぐちゃぐちゃになる」 「落ち着け、大丈夫だ」 柄留の背中をさすってやる和音。 「やっぱりお前は蒐魅でもあるしミレーヌでもあるんじゃないかな……白魔女の力とグレイキャリバーの力が相殺し合って蒐魅だけ取り出せると思ったけど体が無ければどうしようもない。消滅の前にミレーヌが自分の召喚体を使って蒐魅を拾ってくれた……のかな?ミレーヌの召喚体はあたしからできてる物だし奇跡を起こす代償で力を使い果たして意識を失った……戻って来るまで1カ月かかるほどね」 「うう……」 「ビルの屋上に変なトゲトゲの殻があったって言ってたでしょ?そこから柄留は生まれたんでしょきっと。あたしが意識を失った一か月後ビルの屋上で誕生した」 「え……じゃあボクってまだ0歳……?」 「でかい赤ちゃんだな。しっかし話し方はミレーヌそっくりだね……姿顔はあたしだし蒐魅っぽい所はなんかないの?」 「えっと……姿はきっと蒐魅の願望なんじゃないかな?亜瑠ちゃんの事大好きで憧れてたし生まれ変わったら亜瑠ちゃんみたいになりたいって思いがこの姿にしたんだと思う」 「ばっかやろう……あたしの姿なんかになるんじゃなくて蒐魅のまま戻って来いよ」 亜瑠が見つめると柄留は照れくさそうに微笑んだ。 「あぁ……今の表情とか蒐魅だ……はぁ、でももう居ないんだなあの子は……ミレーヌと蒐魅が残したのがお前なんだね」 立ち上がる亜瑠。枕元にあった小さなかばんを持って病室を出ていく。 「亜瑠ちゃん……」 「オレが追いかけてくる。お前は比留山さんとここで待ってろ」 病室を出る和音、亜瑠はエレベーターを待っていた。 「なぁに?ちょっと一人になりたいだけだってば……」 「話があってな……ちょうど二人で話したいことなんだ」 「ふ~ん……最上階のテラスに行くけどそこでいい?」 「ああ」 最上階の防弾ガラスで囲まれたテラス。亜瑠はカバンからミント吸入器を取り出して吸い始める。 「やばい物じゃないってば」 「知ってる。見栄えはよくないがな」 「学校とか家じゃ吸えないからね……別にこんなの飴ガムと変わんないのに」 「親父とお袋がそれ吸ってるの初めて見た時大騒ぎになったな」 「あ~不良になったとかなんとかね」 「吸い始めたきっかけは何だったんだ?」 「蒐魅のタバコ止めさせる為に買ったのがきっかけ……アイツ昔はタバコ吸ってなかったのに急に吸い始めたんだ。臭いし嫌で咳き込んでたしどうしても吸いたければこれにしなって渡したの。あの子はストロベリーバニラが好きだったよ」 「今考えると夏休みとか長い休みの時だけ会ってた亜瑠の友達の話、蒐魅だったんだな」 「そうだよ。あの子がウチの家に来たがらなかったし他の子に紹介して欲しそうじゃなかったしあたしと蒐魅だけで遊んでたね」 「話は変わるが……亜瑠、家の裏山での事覚えてるか?」 「裏山?変な仙人を名乗るおっさんとバチボコの特訓してた事?」 「覚えてたか。オレはこの街に来てその事を思い出したんだ」 「そうなの?」 「名前は確か輸波だった。」 「そうそう!そんな名前だった!!思い出しただけであのニヤケ面、腹が立ってきたわ」 「龍の力の事もこの街で思い出してきた。どうやら輸波に記憶を封じられてたっぽい」 「マジで!?高校生になって大人しくなったな和音~とか思ってたけど忘れてただけなんだ。でも結果良かったんじゃない?和音の力危険だったし……一番喧嘩っ早い時期に封じ込んだ輸波のオッサンいい仕事したよ」 「……そんなにオレは喧嘩っ早いか?」 「自分から仕掛けないけどアホが突っかかってきたら退かないじゃん。絶対ボコボコにするか圧かけて黙らせるかしてたし」 「……そう言われればそうか」 「和音は見た目が中性的だしバカ男からしたらちょっかいかけて反応見てやろうとか思われてたんじゃない?昔一度家に殴りこんで来た珍走団100人、二人でぶちのめしてバイクも全部スクラップにしたじゃない。丁度父さんも母さんもおじいちゃんも居ない時」 「あったなそんな事も」 「だから輸波のオッサンは封印したわけよ。あたしはか弱いからそのままだったけどね」 「亜瑠がか弱い……バイクを投げ捨ててたお前が……」 「和音に比べたらって事よ。あの珍走団事件の後から大人しくなったから……アイツが封印したんだね。してなかったらその後何が起こってたか……周囲一帯吹き飛んでたんじゃないかなぁ」 「……何とも言えないな」 「TVで見た第五地区の光景があたしたちの地元で起きてたんだよ」 「あれは怪人がだな」「あはは……」 「龍の力は解ってきたがオレたちの龍種なんなんだ?何の由来だ?」 「倶利伽羅龍王って輸波が言ってた」 「倶利伽羅龍王……なるほど。色々合点いった」 「輸波いわくそのおかげで刀造りに向いてんだって。それ聞いてあたしは家業の刀鍛冶継いでもいいかなって思った訳よ」 「そうだったのか」 「こうやって二人で話し合うの久しぶりじゃない?子供の時はよく話したけど」 「そうだな……あの珍走団事件の後くらいから亜瑠とはあまり話さなくなったな」 「マジであれからだね。高校受験もあったしお互いすれ違うようになった。別に仲悪くなった訳じゃないし単純に顔合わす時間無くなったんだよね」 「確かに」 「そういえば和音って仲良い友達居た?」 「特別仲のいい奴はいないな……同級生は皆よそよそしいぞ」 「多分怖がってんだよそれ。表情全然変えないし背高いし声に圧感じるし勉強も運動も出来るし見た目もいいから目立つし」 「普通にしてるつもりなのだが怖がらせていたか……」 「陰で憧れたりしてる子結構いたと思うよ?あたしは周りからよく声かけられたけど凄く仲のいい友達はいなかったね、皆遠慮してるというか……対等なのは蒐魅だけ」 「蒐魅と会ってみたかったな」 「会わせればよかったなぁ~」 和音と亜瑠はしばらく黙って空を眺める。 「先に戻ってるぞ」「うん、もうちょっとしたら戻るから」 *** 病室に戻る和音。柄留は布団を抱えて丸まっていた。 「柄留、なにしてるんだ?」 「ボク……蒐魅になれないかなって。もう一回トゲトゲの殻に入って生まれ直ししたい。望まれた存在じゃないんだ……」 「お前が悪い訳じゃない」 「亜瑠ちゃんが怖いよう……ねぇボクどうしたらいいの?和音君……」 「お前は柄留だ。亜瑠がどう言おうとオレはお前を柄留という一人の人間として接する。柄留として生きろ」 「あああああああん!知らなきゃよかったぁ~……出生の事知って辛いよう……!!和音君だけがボクの味方だ……」 「ああ、オレはお前を見捨てない。お前に名前を付けて保護した者としてな」 「はぁはぁはぁ……ヤバイ鼓動が速くなってきた……嬉しすぎてさっきまでの悲しい気持ちからの落差で体が……和音君結婚して……」 「……どさくさに紛れて何を言ってる」 「だってぇ……和音君がボクの全てなんだもん」 「いいか、お前はミレーヌと蒐魅の記憶があるとはいえ0歳児。これから色んな事を経験して成長していく。オレが全てじゃあない」 「ボクは和音君とずっと一緒に居たいよ」 「一緒には住めない。お前は兜金柄留として一人の人間として生きていく。比留山さんのいう事を聞いて警察学校に入り特殊課の配属されるんだ」 「えええええええええええええええええええええっ!!??」 「デモンズエッジ・スキャバード、グレイキャリバー。それを使いこなすお前が普通に生活は無理があるだろ」 頷いている比留山陶子。 「ドラゴンの和音君が一般生活できてるならボクも大丈夫だよ!」 「ウチに来たとしてどうするんだ?」 「えっと……和音君と一緒に暮らす」 「オレは学校があるし大学受験も控えてる。お前はするんだ?」 「う~~~~~~~~~~~ん……居候?掃除くらいならできるよ」 「いいか、お前が何かやりたいことがあるなら協力する。今の所なにもないだろ?それなら比留山さんのいう事を聞いてこの街の平和の為に働くんだ」 「え~……」 「オレも大学卒業したら警察官になる。比留山さんの特殊課に入るつもりだ」 「和音はキャリア組で特殊課に入ってもらうつもりだ。後4年以上待たなければならないのが辛いがな」 「ボクの方が和音君より先輩になるって事?」 「先輩だがオレの方が役職は上になるぞ」 「えーーーーーーー!!??」 *** ――数時間後。 諸田家の両親が病院に到着。担当医の話を聞いた後、比留山陶子から説明を受ける。 亜瑠は午後の検査で問題無ければ退院と決まった。和音は一旦両親と伯父の瞬栄の家に向かう。 諸田両親が帰ったのを確認して病室のベッドの仕切りカーテンを開ける柄留。 「もぅ~!なんでボクが隠れてなきゃダメなの?」 「父さん母さんには関係ないからね。あたしと同じ姿してややこしいんだよお前」 向かいのベッドの亜瑠が言った。 「死にかけるほどの重傷負ったくせに元気じゃない」 「ボクは回復力凄いんだよ二つの力を宿す者だからね!」 「さっきまでメソメソしてたくせに急に威勢が良くなったね」 「元気なのが取り柄だから」 「元気『だけ』が取り柄なんじゃないの?」 「む……亜瑠ちゃんきらーい」 「あたしもお前なんか嫌いだよ」 しばらく沈黙が続く。亜瑠は小さなかばんを持ってベッドから降りた。それを見た柄留は亜瑠に付いて行く。 「……」 「……」 最上階のテラスに到着。亜瑠はミント吸入器を口にして吸い始める。 「何?吸いたいの?」 「うん……」 亜瑠は予備の吸入器を取り出す。 「味は何がいい?ウルトラミントとストロベリーバニラしか持ってないけど」 「ストロベリーバニラ」 亜瑠はストロベリーバニラのカードリッジを取り付けて柄留に渡す。 「ゆっくり吸うんだよ、初心者は口に含ませて吹かすんだ」 恐る恐る吸う柄留。口の中に甘さと酸味が広がりバニラの風味が鼻を通り抜ける。 「甘酸っぱい!美味しい!!」 「そう、良かった」 「これってお薬?」 「医療用の吸入器から生まれた嗜好品。薬系のカードリッジは薬剤師しか買えない……そういやミレーヌの前では吸ってなかったっけ」 「ボクはミレーヌじゃないよ」 「……そうだった。話し方があいつに似てるから」 亜瑠が視線を向ける。 ストロベリーバニラを吸う仕草はミレーヌではなく蒐魅を思わせた。 「左利きなんだ?」 「どうかなぁ……両ききだけどつい左手使う事が多いかな?お箸とかペンは右だし剣も右手で振るよ?」 防弾ガラス張りのテラスに今は亜瑠と柄留の二人だけ。 「お前……柄留は退院したら警察学校に入るんだって?」 「うん……いつの間にかそうなってた。なんかおまわりさんになるとかじゃなくて陶子さんの課に入る為に手続き上必要だからだって……」 「そっか、がんばれよ……」 「う、うん……」 「ねぇ……今なら誰も居ないしデモンズエッジ・スキャバード出してみて」 「おっけー」 柄留は右手から脈打った白い鞘のデモンズエッジ・スキャバードを出現させる。 続く
Feb 12, 2023
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諸田和音:連休はあと一日、せめて一日はゆっくり回りたいと思ってる。柄留:和音とずっと一緒に居れると思ってるが不可能かもしれないとも思ってるReviveTheGunSword灰蘇の剣銃37「終わりと始まり」 「あの崩壊波は完全に受け止められません……隙を見て逃げてください時田」 「馬鹿を言うな!」 「!!」 迎え撃つ体勢に入っていた魔女に対し和音は龍の息吹を放たずに一気に接近。形成した炎の剣で魔女を切り裂いた。 「しまっ……た」 「ハッ!」 黒い血を流す魔女を蹴り時田に押し付ける。たたらを踏む魔女と時田、和音は近距離で龍の息吹の体勢に入る。 「――!!」 和音から龍の息吹が放たれる。時田と魔女は回避する間も無くまともに受けた。後方の海は裂け青白い閃光が伸びていく。 「ぐあああああああああああああああああああっ!!」 魔女はすぐに蒸発、時田は体を崩壊させながら海面を滑っていく。 「ぐあああああ……崩壊が止まらない……このままでは……!!」 考えている間に時田の体は塵となって全て消滅した。 *** ――魔女の自室 「かはっ……」 分身を破壊され鼻と口から血を吐く魔女。 「あれは並大抵の龍種じゃない……対策を立てなければね。LOKIの出現といいこの街は本当に退屈しない」 机の地図に並べてある人形の中から時田と樹玲の物を持ち上げ消滅させる。 「これでDMCは終わり。残った幹部は碌でもない、金とドラッグに溺れたカスばかりでどうしようもないし怪人同士潰しあいになるでしょう」 魔女はハンカチで血をぬぐって立ち上がった。壁にかけてある鏡の前に立つと培養槽が映し出された。 「DMCとドクターのおかげで完全なる存在の誕生に一歩すすんだ。時田夫婦が消えたことで院瀬見の派閥バランスはまた変わる……次はどこに取り付くか」 魔女はLOKIと鈴村功太朗の人形が並べられている第六区の地図を見つめる。 「第六区で素材調達はもう無理……DMCもダメ……閉鎖的で人が集まっていて活動しやすい所は……学校かな?」 魔女は第一区第二区第三区の小中高大学校の地図の上に赤い山羊の人形を置いた。 「大学は二つ、高校は三つ、小中校は三つ……さてどこにするか。そういえば時田夫婦とアンチ怪人のヒーローの話をしてたのを思い出した……学校との組み合わせて面白くなりそう」 邪悪な笑みを浮かべ魔女はマントを付けた子供の人形を出現させて地図の上に置いた。 *** 和音が龍の息吹で魔女分身と時田を殲滅した同時刻、中央塔も柄留の攻撃で倒壊し始めていた。 「中央塔が……!?柄留か」 和音は大ジャンプして倉庫街を高速パルクール。煙を上げて倒壊する中央塔に向かう。 「流石にサイレンが鳴っているな。警察と消防もすぐに来るだろう」 和音が到着した時には中央塔は半分崩れ周囲は砂埃に包まれていた。 「柄留の気配は……生きている」 砂埃を吹き飛ばして中央塔に入る和音。床は完全に抜け二重筒構造の壁面が剥き出しになっていた。 「出入口を隠す為にこういう構造になっていたのか……」 下に降りていく和音、落ちてくる瓦礫を受け止めて捨てながら最下部に着地。 「柄留!!」 床の中央に柄留が倒れていた。全身傷だらけで出血が多い。和音は柄留を抱きかかえ崩れ落ちる中央塔を駆けあがって脱出。その直後完全に倒壊し地下部分は瓦礫で埋め尽くされた。集まる野次馬、消防、警察。砂埃に紛れて和音はその場から離れた。 「おやおやおや~」 停車してるサイドカーに到着すると目の前に七曲キョウヤが立っていた。 「退け、お前に構ってる時間はない」 「いいんすか~?和音君その様子だと携帯ぶっ壊れて使えないんじゃ?」 和音がズボンのポケットから取り出した携帯は画面が粉々になり電源すらつかない。 「使ってくださいヨー」 「……」 キョウヤが携帯を差し出してきたが和音は少し考える。 「(ここで比留山陶子さんに連絡すればこの携帯に履歴が残り七曲キョウヤに知られてしまう……だが……)」 虫の息の柄留を見て和音はキョウヤの携帯を手に取り比留山陶子に電話をかけた。 『……誰だ?』 「諸田和音です、オレの携帯が壊れたので知り合いからかけてます」 『……緊急事態って事か。まぁいい私が番号と携帯を変えればいい事だ。何のようだ?』 「柄留を病院に運びたいのです」 『そうか……わかった手配しておこう。IDも心配するな、迎えは必要か?』 「いえ、オレが運びます」 『例の病院に来い、私も向かう』 そこで通話は終了。和音はサイドカーのトランクに積んである雨具で柄留を包み携帯をキョウヤに返した。 「やじ馬が集まって道激込みなんだけどいいんすか和音君?俺っちが先導して道開けさせるけど?」 「必要ない、自分の足で行く」 柄留を抱きかかえて飛び上がる和音。もはや人目は気にしない、最速最短ルートで病院に向かうには建物を超えて一直線に行くのがいいと判断した。 第五地区の工場の屋根、塀を超え第二地区の幹線道路を超え第一地区に入り病院に到着。目撃した物は少なくなかったが和音たちがあまりにもあっという間に通り過ぎたため動画に撮れた者は居なかった。 「諸田さん!」 顔見知りの看護師が声をかけてきた。 「お話は刑事さんから伺っています、その子をこちらの担架に」 柄留を担架に乗せる和音、駆けつけてきた医師と他の看護師が柄留を緊急処置室に運ぶ。 *** ――翌日 第五地区の中央電波塔の倒壊、港での爆発事件は全てDMCの内部抗争という形でニュースになっていた。 そのニュースを病室のネットTVで見ている和音と比留山陶子。そして―― 「……これやったの和音?」 薄い栗色の髪をした女性が言った。名は諸田亜瑠。 「まぁ……半分はな」 「派手にやったねー……あたしとミレーヌ、守山探偵事務所は出来るだけ静かにやってたのになんだかなー」 「オレは亜瑠みたいに器用にできないからな」 「そうだよ、昔っから和音はねー。あと半分派手にやったのはあそこでイビキかいて寝てる奴って訳ね」 向かいのベッドで点滴をしながら寝ている柄留を指さす。 「亜瑠、アイツが目を覚ましたら色々話を聞かせてくれ」 「いいよ。いっぱい話すことあるし和音にも聞きたいこといっぱいある。それにアイツと話したい。父さんと母さんは昼くらいに到着するっぽいけど……」 亜瑠はじっと柄留の顔を見ている。 「アイツが目を覚ますと親父たちにややこしいこと言いそうだ」 和音は柄留の顔を見て言った。 「やっぱりそうか~」 「別の病室に移して貰った方がいいかもしれない」 「マジ!?カーテンで隠しとけば……」 それを聞いていた比留山陶子が口を開く。 「柄留の身柄はこちらで引き取る事になるだろう、今のうちに警察病院に移してもいいかもな」 「どういう事です?」「え?」 「和音にも亜瑠にも言った特殊課の話だ。柄留は警察関係の人間という事になっているIDも作ってあるのだ」 比留山陶子は携帯に柄留の個人情報を表示させる。 「あれ?生年月日があたしと和音と同じ!?それにこの苗字……」 「兜金……だな」 「諸田の姓を名乗らせると色々問題があるだろう?私の比留山も使えない。適当な姓をつくって名乗らせるより知り合いで尚且つ親族の多い家が都合よかったのだ」 「コイツは兜金柄留(仮)となる。警察学校に入れて卒業後私の特殊課に配属となるだろう。守山罅助が探偵事務所で預かる話も出ていたがあまり自由に動かれても困るのでな」 「それはそうですね」 和音は少し笑いながら言った。 「いや、兜金って陶子さん……蒐魅と同じ苗字じゃん」 「そうだ……」 「……」 「兜金蒐魅の件。柄留とお前と守山事務所、大河の話を聞いて整理しているところだ。亜瑠、お前が蒐魅の名前を出すまで黙っていたがMとしてのこれまでの事話してくれるか?」 「え?今!?あたしは話するよりアイツの話を先に聞きたいんだけどなぁ……無理やり起こしていい?」 亜瑠がベッドから降りてスリッパを履いた。 「お前とても一ヶ月以上寝ていたとは思えないな」 比留山陶子は半分呆れた顔で言った。 「まぁ体感的にはちょっと長く寝た程度だよ。まさか一ヶ月以上も覚めないなんてね。だからほら体は全然訛ってないよ。痩せたくらいかな?昨日シャワー浴びた時に自分の体みてびっくりした」 「壊袁先生も驚いてたな」 「あはは……さて問題児を起こしますか」 柄留の寝ているベッドの横に立ち手をかざす亜瑠。 「むにゃむにゃ……駄目だよ和音君そんな事……」 「どんな夢見てるのコイツ……」「オレの顔は見んでいい」 徐々に目を開く柄留。 「んああああああ……アレ?ここどこ??あ!!和音く~ん!!」 「おい」 横に立っていた亜瑠が頬っぺたをつねる。 「痛い痛い……もう~……」 亜瑠の顔を見て固まる柄留。 「亜瑠……ちゃん!?」 「そうだよ!はじめまして『柄留』」 「え?え!?ここ病院!?」 「まずは落ち着こうか。最初に聞きたいことはお前は何のなのかって事」 「え……それを亜瑠ちゃんが聞くの?」 「言えよ」 「え……怖……助けて和音くん」 その様子を笑って見ている和音。 「何で笑ってるの~?」 「あたしを見ろ!お前ミレーヌじゃないよね?」 「違う……よ」 「蒐魅?」 「それも違うかな……」 「ふ~~~~~~~ん……」 じっと柄留の目を見つめる亜瑠。 「はぁ~~~~~~~~~~……あたしの『引き寄せ』でも蒐魅ダメだったのかぁ……命かけるほど頑張ったんだけどな」 「えっとゴメンなさい……」 「完全に混ざってるんだろうな~都合のいい奇跡なんて起こせないって事なんだね」 「ボクをどうするつもり?」 「お前をどうこうするつもりないよ。和音が『柄留』って名前つけちゃってあたしと同じ姿してるの凄い不思議な感じだけど」 「ええええっと……」 「柄留、お前の最初の記憶は?」 「ビルの屋上で裸で寝てた……」 「場所は?」 携帯でオータムホースシティの地図を表示して見せる亜瑠。 「ここ……」 「ん~そっか~……じゃあそこから今までの出来事あたしに話してくれる?」 柄留はグレイブラスターの事、デモンズエッジ・スキャバードの事、和音との出会い、蒐魅の断片的な記憶の事などを話した。 「ふむふむ……まず最初に言いたいのは――グレイブラスターとデモンズエッジ・スキャバード両方持ってるのがあり得ない事なんだよね」 亜瑠はベッドの横の椅子に座った。 「デモンズエッジ・スキャバードとは白魔女ミレーヌ・ジンデルの使い魔で悪魔と呼ばれる異次元の生物の一種。剣の魔女だったミレーヌ・ジンデルが納めた剣の魔法の集大成。世界中の剣、剣士の技、それに関係する逸話、思い、この世界に存在する情報を読み取って形にするものなのよ」 「使っていくうちになんとなくわかってたつもり……」 「白魔女ってのはこの星の秩序を乱すものを排除する組織。この世と別次元の狭間にある神殿に魂は保管され任務がある時に派遣される。派遣された白魔女は任務を終えるか体を保てないほどのダメージを受ければ神殿に帰るの。この世で活動する際に相性のいい肉体を借りるか生命力を分けてもらって分身をつくる。あたしがMと名乗って活動してた時ミレーヌはあたしの体の中で待機してたし戦闘時はあたしが待機してた。時々分裂して話したりご飯食べたりしてたけど普段は融合してた方が色々都合よかったね」 「なるほど……瞬栄伯父さんの話や守山探偵事務所の人間の話と合わせて今のを聞くとよく解る。Mが二人いたのかどうかという話も出ていたからな」 和音が言った。 「で、ミレーヌの目的は『グレイキャリバー』の討伐。コイツは宇宙からの来訪者で地球侵略計画を立ててるグレイマンズの一人。あたしは面白そうだし蒐魅に会うついでにオータムホースでミレーヌと一緒に敵を探すことにしたんだ。でもすぐにそんな気持ちは吹き飛んだのよ」 「兜金蒐魅……」 「そう、よりにもよってあの子がグレイキャリバーに選ばれてしまってた。ミレーヌが言うには取り付かれた時点でもう一つになってるからどうしようもないんだと。でもあたしは諦めなかった。グレイキャリバーを破壊した瞬間蒐魅だけ取り戻せないかとずっと考えた……あの子にあたしが白魔女だってバレないようにMと名乗ってミレーヌの姿でオータムホースで行動してた。蒐魅が暴走しないようにグレイキャリバーに操られて人類の敵にならないように祈りながら」 「亜瑠ちゃんは素の姿で蒐魅には会わなかったの?」 「会ったよ。いつもの笑顔で接するのが辛くて3度しか素の姿で会わなかった。蒐魅の行動を調べるにつれてあの子の前で知らないふりして泣きたくなって手伝いたくなっても……もしミレーヌと出会わなくてあの子がグレイキャリバーにとりつかれなければ、あたしはあの子と一緒にこの街で暴れまわってたかもしれない」 「亜瑠ちゃん……」 「あたしが大学に行ったら一緒に住もうって蒐魅と話してたんだ……」 続く
Feb 4, 2023
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