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DHHUその3「ちょっとマズくねーか?」 ハオランが言った。「どうしよう……とりあえずネコマタネコ引っ込めようか?」「いや、そのまま茂みにでも隠せ。タイミングみてパトカーのサイレンでも真似させればいい」「でも……」「ああいうのは一回大人しくさせて話をさせんだよ。野蛮だけどシンプルな方法だ」 指を鳴らすハオラン。ユウは【ゴリラボクサー】のカードを取り出す。「着装! ゴリラボクサー!!」 召喚したゴリラボクサーは黒色の鎧となってユウと合体。外骨格フレームめいた構造で頭部と腕は厚い装甲が覆っている。「ナンダナンダナンダー!? テメェらもボコすぞ!?」「喧嘩祭りかよ」「ストレスカイショージャネーノ」 何の躊躇も無くハオランの頭部目掛けて全力でボルトレンチを振り下ろす男。軽く回避するハオラン。「人殺し上等な勢いだな」「ギャハハハハハ! どうせ俺は無罪になんだよ!! 今まで5人ほどいじめ殺してやったがこのとおり大学生活満喫できてるぜ!!」「ハ! クソ野郎が!!」 ハオランは風のように踏み込むと男の顔面鳩尾に打撃を一瞬の内に叩き込んだ。「ガ……は……」 糸の切れた操り人形のように倒れこむ男。「さて……色々聞かせてもらおうか……なっ!」「ごふっ」 呆気に取られているマイナスドライバーを持った男を飛び後廻し蹴りの一撃で肋骨を砕いて沈黙させる。「クソガッ! 頭カチ割ってやる!!」 クギヌキを振り回す三人目の男、ユウは華麗なフットワークで回避。動作を完全に見切りカウンターの2撃を顎に叩き込んだ。「グ……」 きれいに意識を飛ばされ気絶する男。その場に倒れこむ。「何か様子がおかしいよ」「同感、いくら何でもキマり過ぎだぜこいつら」 ハオランは鼻を鳴らす。「コイツらの体からヤベェ臭いがするぞ……」「臭い?」「ああ、通常の【臭い】じゃねぇ。邪気とか呪いとかそういうのだ」「操られてるとかそんな感じなのかな?」「何とも言えないが……コイツらを連れて帰って調べるわけにもいかんしなぁ。他にも居ないか探してみようぜ」「そうだね」 坂になっている敷地内を進むユウとハオラン。街灯は少なく数メートル先は闇である。「進めば進むほど臭いは強くなってるぜ」―ズル……ズルズルズル……「何今の音?」「お?」「……こんな所で何やってんだ?」 暗闇から現れたのは通常の5倍はある丼を持ったパンチパーマの男。「誰?」「なんだアンタ?」「部外者がこんな所きたらだめだぞ、俺は大池って者だ」 超巨大丼の中にある麺をすする。「なんでこんな所で麺を?」「習慣なんだ麺をすするのが。さて、部外者のお前たちがここに来た訳を聞こうか? 俺はここから先誰も通すなって言われてるんだ」「え、そうなんですか」「ん~?」 近づく二人、大池は超巨大丼を掲げると不意に投げつけた。煮えたぎったスープが二人を襲う。「うわぁ!」「テメェ!」「シャアアアアアアアアッ!」 箸で突きにかかる大池、ハオランは足刀蹴りで受け止めた。「大丈夫かユウ?」「ゴリラボクサー着装してたから平気だよ」「このまま帰って忘れるなら見逃してやる。そうでなければ後悔するぞ」 箸で掴んだハオランの足を捻り体勢を崩しにかかる大池。「把!」 ハオランは拳を繰り出す。大池は丼で拳を受け止めた。「なんだと!?」「弾丸を弾き返す衝撃吸収耐火丼、チタン合金の箸、食べていた麺は常人にはとても噛み切れぬ超硬麺……麺道拳は食べる事すなわち鍛錬」 箸で掴んだ足を大きく捻る大池、ハオランは体を捻じって転倒を回避、両手で着地するとハイエナ獣人変身する。「珍妙な……だがこの箸は離れんぞ?俺の箸摘まみ力は1トン、このまま足を潰すことも可能だ」「ハオランを離せー!!」 ゴリラボクサーを着装しているユウが飛び掛かる。渾身ストレートは丼で受け止められた。「オオオリャア!」 ハオランを掴んだ箸を大きく下から回して遠心力を使って振り回しユウに衝突させた。「くう……」「くそ、何てパワーだ」 ハオランは反対の足爪蹴りで箸の指を狙う。しかしその動きを読んでいた大池はハオランのバランスを崩して地面転げさせた。「コイツ……崩しもできるのか」「お前の動きの情報は丸わかりだ。触れているからな、何か動きを起こす瞬間こちらは把握できる掴まれた時点でお前は詰んだのだ」「だったらこれはどうだ!」 ハオランはポケットからコインを取り出して投げつける。「無駄だ」 丼で受け止める大池。「今だユウ!」 ユウに声をかけると同時に追撃のコイン攻撃、ユウは立ち上がってストレートを撃つ。「フン」 ハオランを離してコインを箸で摘まむ大池、そのままコインをユウに投げつける。「うぐっ」 ユウの肩にコインが突き刺さる。「さぁどうする?帰るか進むか」 箸と丼を構える大池。「テメェ……【凶】(マガツ)の者か?」「その名前は軽々しく口にするもんじゃないぞ若者。今のは聞かなかった事にしてやる」「そうか……」 ハオランはユウの前に立ち腰を落とした姿勢で大池を睨みつける。「ユウ……退散したほうが良さそうだぞ、アイツは簡単にどうこう出来そうにない」「痛てててて……ゴリラボクサーの装甲を貫くなんて……確かにあの男は強敵だね」「見逃してくれるってんならありがたく甘えさせてもらおうぜ、な?」「う、うん……」 ゆっくりと下がるユウとハオラン。「賢明な判断だ。あと3日は来るな、次に来れば遠慮せず始末する」 大池はそう言うと闇の中に消えていった。「……久々に冷や汗かいたぜ。あれは【凶】の幹部かボスの側近だな。息子の護衛をしてるんだろう。アイツの靴裏からワゴン車と同じ匂いを感じた」「って事はワゴン車に乗ってあの男はこの街に来たんだね。息子の護衛の為に」「撤退して立て直そうぜ。アイツはあと3日と言ってたのが気になるが」「あと3日で何が起きるんだろう……放っておいてはいけない気がする」「この大学にターゲットが潜んでる可能性が高いと分かっただけで今日は十分だ。残り2日で何とかしようぜ」「あの男の対策も練らなきゃね」*** 拠点に戻るとケンとターニャの姿が見えた。呪符を結界で囲んでいる。「ケン、順調?」「……人の事気にしてる余裕あるのか?」 ケンは一々話しかけるなと目で訴えながらユウを睨んだ。「俺たちのコレが気になってるのかな? 話してもいいけどユウも何か有益な情報教えてくれないかな? そうじゃなきゃ対等じゃない」「いいよ」 任務でお互いが競争相手なのは分かっていてもユウにとってケンは弟だし気遣って当然だった。ケンは任務に真剣に取り組み兄であろうが何だろうが絶対に勝つ気でいる。「ユウから言ってくれよ、大した情報じゃなきゃこっちは教える必要ないんでね」「……わかったよ」 ユウは監視カメラの映像に映っていたワゴン車を追い大学の敷地内で様子のおかしい若者と【凶】の幹部らしき強者・大池のことを話した。「……へぇ、中々やるじゃん。なるほど……じゃあやっぱりあのアパートは調べるべきか」「ケン?」「ああ、まぁ教えるかどうかギリギリの価値かな? この呪符はパー券として配られてるみたいでね、大学内ではかなりの数出回ってると考えて良い。触れただけで発動するタイプの呪いが込められてるからこうやって触れずに調べてる訳さ」「あと3日とか言ってたけどそのパー券呪符と何か関係あるのかな?」 ユウは近づいて呪符を眺める。「3日後にパー券配った奴らを集めて何かデカい事をするかそれとも何かの時間稼ぎか。なんにせよ早く動いた方がいいのは確かだね。呪符に操られてるのは一般人だしあまり乱暴な事は出来ない数が増えれば増えるだけ厄介だ」「確かにね……大池の方はどうするの?」「まともに相手する必要なんてないだろ? 首領の息子さえ捕まえればいいんだ。遭遇しても俺は豊富な手札を駆使して離脱する、消耗すべき相手じゃないなら戦わないね」「放って置くって事?」「それがどうした? ゲームじゃないんだから中ボス倒さなきゃボスにたどり着けないとかないし」「倒せるならここで倒して捕まえた方が俺は良いと思う」「あっそ、じゃあユウはその大池を倒せるように頑張りなよ。その間に俺は首領の息子を捕らえてさっさと任務完了するから。その方が被害も少ない」「あの大池ってのが邪体の一つを所有してるかもしれないじゃないか」「確かにそうかもしれない、もし邪体が確認されたら財団が動くだろう。流石に試練だからって全て丸投げしないさその為に監視役がいるんだろう」 ケンはストーブの火を眺めているドレス女を見て言った。「ユウはユウの考えで動けよ。俺は俺の考えで動く、必要なら情報交換もする。これで良くないか?」「むむむ……」 ユウはそれ以上言葉が出なくなりあてがわれた部屋にハオランと向かった。「どうしよっかなぁ」 ユウはカードをデッキから出してベッドに並べる。 獅子王 狼の銃士 鮫の闘士 蛇の暗殺者 天馬の騎士(ペガサスナイト) 樹の神官 鰐王 キョンシー(飛僵) チョウチンアンコウ 怪盗コウモリ ネコマタネコ ゴリラボクサー メインのカード12枚を手前にして眺めている。「後のカードはなんだ?」ハオランが言った。「後の38枚はアイテムとか魔法とか特殊カードだね。メインと合わせて使ったりアイテム同士組み合わせたりするんだ」「へぇ~……」「俺は着装で戦うのが得意だからメインの12枚に合わせてデッキを組んでるんだよ」 ユウは嬉しそうに語る。まるで少年が好きなゲームの紹介をするようであった。「大池に対抗できそうか?」「魔眼と獅子王を使えばきっと……」「良かったぜ、全然勝ち目無いとか言われたらどうしようかと。アイツ全然本気じゃなかったしな、こっちは最初から全力で行かねえと」「問題は……」「ん?」「獅子王使って殺してしまわないかって事なんだ。今までの訓練とかは全部通さんの用意したカードモンスターだったし遠慮なくやれたんだけど……さっきの連中を殴った時も怖かったんだやり過ぎたらどうしようって」「そっか……まぁ始めてならしゃーねぇわな。むしろ健全ていうか最初からブッコロシテヤル! とか言ってる奴が勇者にふさわしいとは思わねーし」「手加減して勝てる相手とは思えないしでも殺してしまうのは怖い……」「向こうは殺す気満々で来るだろうし難しいよな」「うまい具合に弱らせて捕まえたい……」「協力は惜しまないぜ! 俺も無用な殺しは避けたい。ユウ、カード色々見せてくれよ一緒に作戦考えようぜ」「うん、ありがとうハオラン!」*** ケンは自分のあてがわれた部屋で呪符を眺めている。「どれだけの数この呪符がばら撒かれたのか……これを使って首領の息子は何をしようとしてるのか……3日で完成する事とは何か……まさか邪体……」 ケンは携帯の地図を表示する。「ユウが遭遇した強敵はここ……その先に大学の建物……全方位にカードモンスターを配置して包囲網をつくるか……今は夜だから一般人もそれほど入ってこないはず」 ケンはカードデッキ2つを取り出し窓から大量に放出させる。次々と具現化するカードモンスター、ケンの指示した配置に向かって行く。「よし……今から謎のアパートに向かおう。その後は大学の中だ行くぞターニャ」「はい」 栄養バーを齧ってミルクで流し込むとケンはバックパックを背負って部屋を出る。「ユウ! 俺は先に行ってるからな!」 ユウのいる部屋にむって叫ぶとそのまま玄関に向かった。続く
Jan 28, 2024
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DHHUその2 カバンを背負ったケンはターニャを連れて小屋を出ていく。残されたユウは頭をかきながらソファのある部屋に戻り自分の荷物からカードデッキを取り出した。「【凶(マガツ)】の首領の息子ってうわぁマジか~……」「ユウ様、質問等ございますか?」 ドレスの女が言った。「えっと……最後に目撃された場所が知りたいね。あとハオランの特技も」 ユウが視線を送ると真っ白い歯を見せてサムズアップするハオラン。「坊ちゃん! 俺の特技は獣化と近接戦闘! ハイエナ獣人だヨロシク!!」「よ、よろしく!!」「ハオランの一家は財団の中でも武闘派して知られています。3人の姉が居り全員が要人警護などについています」 ドレスの女性が言った。「姉貴たちにどやされて勇者様のパーティーに入って来いって言われてさぁ。面白そうだしいっちょやってみっかて参加したらこんな大仕事が待ってたとはなー」「そうなんだ……」「財団のシーア家・勇者候補と組む事なんて一生に一度あるかないかだしテンションあがるわ」「ゴメンおれシーア家の長男なのに財団の皆の事あんまり知らなくて」「気にすんなって! 俺はユウ坊ちゃまで良かったって思ってるぜ、ケン坊ちゃまは何か合わなさそうだし」「がんばるよ、おれ!」「さて何から始めるよユウ坊ちゃん」「えっと……とりあえず坊ちゃんやめない?外で聞かれると恥ずかしいよ」「ああ、分かった。じゃあユウ様……これじゃあ目立つか、ユウ君か?」「ううん、呼び捨てでいいよ」「了解!」 ユウはタブレットを取り出してソファの前の机に置き立体映像で大阪の地図を展開する。「首領の息子が目撃されたのはどこ?」「ここですね」 ドレスの女がマーキングする。「この猪名川の近くの公園です。橋を渡って西には行ってませんね」「ありがとう、まずはここに行ってみる。この拠点にはいつ戻ってきても大丈夫なんだよね?」「はい、いつでもお待ちしております」「じゃあ荷物はここに置いておいて……必要なものだけもって街に向かうよ」「はい」***「ククククク……」 薄暗い講堂の壇上で笑みを浮かべる男。「いいぞもっと絞り出せ……欲を……欲を満たすことだけを考えろ」 数十人の若い男女が交わりあっている。天井にはどす黒い液体が浮いている。 正気を失っている若い男女は狂ったように交わりあいつづけやがて力尽きて倒れていく。「クククククク……単純な連中は楽でいいな……東京より人数は少ないがな」 どす黒い液体が降り注ぎ倒れていた男女に生気が戻っていく。「サークルは手っ取り早く若くて馬鹿な連中を集められる……」男は両手を叩く。「オイ起きろ馬鹿共、今夜のテニスサークルの会合は終わりだ! ノルマのパー券一人3枚捌いてこい」 機械的な動きで衣服を身に着け整列する若い男女。男からパー券と呼ばれるチケットを順番に受け取り講堂から出ていく。「ククククク……快楽と欲の循環。一度でも俺様のミーティングに参加するともう抜け出せない。通常の300倍の快楽を脳に刻み込み場にいる全員分の快楽と共有する。人数が増えれば増えるほど快楽は増し止められねぇ、会合の為なら何でもするようになる」 男の名前はジンガ。国際的犯罪組織【凶】の首領の息子。東京の本拠地を逃れ大阪に潜伏していた。 ジンガがばら撒いているパー券(パーティー券)は呪符である。 ジンガの術にかかった者は本人が解除するもしくは他の術で上書きする他にない。 強力な呪符はジンガが自分より弱いと思った者にしか効果は無く失敗すれば全ての呪符は消滅、掛かっていた術も強制解除になる。 操っている者に呪符を配らせて術を発動する事にリスクはあったが一度でもミーティングに参加したものはジンガに逆らう事はできず用意に呪符の罠に嵌る。 娯楽に飢えた若者をおびき寄せ強烈な快楽で骨抜きにして呪符で操る。この方法で既に50人を下僕にしていた。 空中に浮いていた黒い液体は首領が所有していた宝の一つである。ジンガは逃げる際にその宝を持ち去っていた。宝とは【邪眼】の事である。「こいつ【邪眼】が完成すればこの国で一番妖の集まる京都に移動して、邪眼の持つ【完全魅了支配】の力で最強の妖を下僕とする! 既に最強陰陽師は倒れ九尾の体も滅ぼされた、だがそいつらを倒した奴らの中に俺様の求める妖が居るはずだ……」 【凶】は【真邪王】と呼ばれる存在の邪体を所有している組織。 【邪眼】【邪腕】【邪脚】【邪心臓】【邪頭骨】計5つに分かれていて、それぞれの邪体を完全覚醒させ集めると【真邪王】は復活し願いをかなえる奇跡を起こすと伝えられている。 ユウの父親セイ・シーア率いる財団の活躍で【凶】は壊滅、世界各地に散らばっている邪体を3つを封印した。残るは邪眼と邪腕。 財団の失敗はジンガが邪眼を覚醒出来る力を持っているとは知らない事であった。首領を捕らえた時に回収した【邪心臓】は無事封印されたが邪眼の行方は掴めていない。 ジンガはこれまで術師としての力を隠して生きてきたため財団の認識でも一般人に毛が生えた程度であった。実際は首領の父親を凌ぐ程の邪の力を持っている。「力ってのは隠してなんぼ、いざって時にだけ見せつければいい。不用意に目立っていい事は無いからな」 ジンガは最強の妖を下僕につけ、邪体を全て集めて覚醒させ【真邪王】の奇跡を起こして世界征服を目論んでいる。「親父は魔王と呼ばれていたが俺様は大魔王を目指す!!」 ジンガはパー券で配っている呪符とは違うものを取り出した。集まった者の中で一番体格の良い男の額に投げつける。「グルううううううううううウオオオオオオオオオっ!?」「クククク……怨霊を封じ込めた呪符を快楽で魂が弱まった肉体に貼り付ければ……」 呪符は男の体に吸い込まれメキメキと音を立て肉体を変形させていく。頭頂部から腰にかけて無数の棘を生やし足よりも太い尾、つり上がった目、耳まで裂けた口に鋸歯、手足の爪は熊のように鋭く全身はこげ茶色に変わっていく。「クククさぁ怨霊怪獣の完成だ」「ベガアアアアアアアアアアアアッ!!」「コイツで適当に街を荒らせば大学の些細な出来事なんて誰も気にしない。追手が気が付いたころには邪眼は完成、俺様はこの街にいない」*** 公園のベンチにカバンを降ろすケン。「明るい内に情報収集しておきたいな、ターニャはこの街でたまり場になりそうな場所を聞き込みだ、俺はカードを使って探索する」「了解しました」 日は少し傾き日没まで後1時間程であった。「半径500mに絞って5体に探索させるか……」 デッキから5枚の鳥系カードを取り出し実体化させる。「奴がフラフラ外を歩いてるとは思わないけど念のために網を張らなくちゃね」「では行ってまいります」 ケンから離れ聞き込みを開始するターニャ。彼女は香水と声、動きで幻惑するダンサーアサシン。傍から見ればストリートダンサーに見える衣服である。 ターニャは幻惑を使って警戒心の強い人間をものともせずに聞き込みを続ける。そして路地裏の古めかしいアパートの階段に座っている男を見つけた。「パー券売らなきゃなんないんで~買ってもらえますかぁ~?」 うすら笑いを浮かべる様子のおかしい若者。「パー券?」「そう、パー券。ウチの学校の者じゃなくても若けりゃ全然OK!」 パー券を見つめるターニャ。何かの手がかりになると思い買い取った。ターニャは念のために着けていた手袋で受け取る。アサシンの習慣で素手で物には触らない。「ありがとね~じゃあ明日16時大学の講堂に集合~」 ふらつきながらアパートの階段を登っていく若者。 ――日没後公園。「ケン様、怪しい男からこれを受け取りました」 ターニャはパー券をケンに見せる。「……へぇ、これは仕掛けがあるね。よく引っかからないで持ちかえってくれたよ」 ケンは未来が視える魔眼でパー券を確認し自分が素手で触った状態を見た。どす黒い靄が発生し体に何らかの影響を与えていた。「じゃあコイツだ【鷹の魔女】召喚!」 カードから鷹の頭部をした白い衣の魔女が召喚される。「ターニャの持ってるチケットを解析しろ」「了解」 鷹の魔女が杖をパー券にかざす。紫色の光を放ち始めるパー券。「これは……!」 パー券から黒い手が伸び鷹の魔女の頭部を掴むのが未来視で見えた。ケンは慌てて鷹の魔女を解除する。「もうちょっとで鷹の魔女を持っていかれる所だった……でもこれで術者のいる方角は分かったぞ」 指をさすケン。「東北東ですか」「この方角に絞って調査しよう。ターニャにチケットを渡した男のアパートにも行ってみよう」「現地に着いた初日でここまで……速いですね」「初動が大事なんだよこういうのは。父さんも言ってた、逃げられたら意味が無いって」「セイ様が?流石勇者ですね」「そうさ、父さんは最高の勇者なんだ。財団が長年手を焼いていた【凶】を壊滅まで追い込んだんだから……あの傷さえなければまだまだ勇者を続けてたはずさ」「【凶】の邪体の封印を続けるにも勇者の力が必要ですからセイ様の偉業には財団総員感謝しております」「首領の息子を捕らえれば後は有象無象の残党だけ、残り二つの邪体もすぐ見つけて封印するだろうねこれでしばらくは安泰、俺が勇者に更に盤石さ」 兄のユウとは違い着装がうまくできないケンであったが召喚術は既に父と並ぶレベルで最大10枚のカードを操ることが出来る。総合型の父と同じ勇者を目指したかったがサモナー型だと自分を納得さ鍛錬に励んでいた。戦士型のユウには絶対に負けたくなかった。「ケン様、一度拠点に戻りますか?」「そうだな……このチケットを財団に渡しておきたいしそうするか」***―日没前。 ユウとハオランはジンガが最後に目撃された橋の周辺を調べていた。「ユウ、もう何もないと思うがいつまでこの周辺を調べるんだ?臭いも覚えちまったぜ」「もうちょっと待って……なんでここに来たのか気になって」「逃げようとして警察の張り込みに気が付いたから引き返しただけなんじゃ?」「だったらなんでここだけなのかなって。別の方角にも逃げようとすれば良かったのに」「そりゃあ……そうだな」「ここで誰かと会うつもりだったもしくは会った、何かを取りに来た……とか?」「なるほどありえるねぇ。【凶】のボスの息子なら誰か支援しててもおかしくない」「北から来てここで止まって東に向かった……」「この周辺にあるのは公園と周囲の案内板だけだぜ。案内板も何もおかしなところは無い」 作業服姿のハオランが案内板を調べていても違和感はなく周囲の人間が気にする様子はない。「携帯を使えば済むから案内板なんて住宅地であんまり意味ねえよな……目印にはなるけど……」 それを聞いたユウはハッとした。「それだ! 目印!! 誰かと会ってたもしくは受けとった可能性は高まるよ!!」「それじゃとりあえずこの辺りの靴底の臭いとワゴン車のタイヤの臭いを辿ってみるか」 ハオランの姿がハイエナ獣人に変わっていく。「背中に乗れよユウ」「うん!」 ハオランに負ぶさるユウ、夜目がきき嗅覚が鋭いハイエナ獣人のハオランはワゴン車の臭いを辿って歩き出す。「雨が降らないで良かったな」 住宅街に入って行く二人。人通りも街灯も少ない。監視カメラの数もそれほど多くなくルートを調べれば殆ど映らずに移動できそうだとハオランは思った。タイヤの痕跡はアパートの見える路地裏の前で止まっていた。「この車一台ギリギリ通れる幅の道……ユウ、見えるか?突き当りの塀の横にシートがかぶせてある。あれがワゴン車だ」「凄いよハオラン!」「こっからが本番だぜ、敵が近くにいるかもしれない」「そうだよね……一旦ここは場所だけ覚えておいてワゴン車のタイヤの跡他にどこに続いてるか調べてもいいかも」「あのワゴン車の様子だと頻繁で出てる様子じゃあないからな、他の場所にたどり着ける可能性はある。あのワゴン車自体も調べといた方がいいぜ」「じゃあ……ここに一体待機させておくよ【怪盗コウモリ】」 カードから召喚する。スーツを着た小さな蝙蝠が現れた。「戦闘力はほぼ無いけど賢いし器用なんだ」「いいねぇ」 怪盗蝙蝠は電線にぶら下がって待機、ユウとハオランはワゴン車のタイヤ跡を追う。「何重も重なってねぇから殆ど動かしてねぇなあの車。頻繁に動かしてる車だったら正直お手上げだった」 またも監視カメラに映りにくいルートを選びワゴン車の跡は高台へ続いている。「この先は……大学か……なんつうかうまい事見えにくい周囲の環境だな」「建物がうまい事配置されてるのかな?道路から殆ど建物見えないね」「こっから先がもう大学らしいが……寺、公園、池、の中に気付きにくいように配置された建屋が点々としてる。あのテニスコートも高台入り口からは見えないぜ」「ギャハハハハハハ」「マジかよ」「バッカジャネーノ?」 若者の声が聞こえてくる。「大学生かな?」「多分な、どうする?俺が見てこようか?」人間姿に戻るハオラン。「いや、いいよ」「首領の息子がいるかもしれないぜ?」「自分のカードモンスターに行かせる。ハオランは周囲を警戒してて」「なるほど、単独行動を避けるってのは敵地では大事だぜ」 ユウは【ネコマタネコ】を召喚。「そいつは?」「人間の言葉を話せるネコ。声真似も出来るんだ」「へぇ~便利そうだな」 【ネコマタネコ】を召喚して若者たちに向かわせる。「あ? 誰だ?」「野良猫かよ」「ビビッテンジャネーヨ」 最初に声を発した若者がボルトレンチを取り出す。「とりあえずヤっとくか……俺は弱い者いじめが好きでよー」「異常者かよ」「サイコパスジャネーノ」 残りの二人も長いマイナスドライバーとクギヌキを手に取る。続く
Jan 20, 2024
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DHHUその1『―勇者編―』 夜の森を駆ける少年、名前は【ユウ・シーア】 剣を背負い腰にはバッグを下げている。 「はぁはぁはぁ……」 暗闇を疾走する相手を追い続けていられるのは彼の左目に秘密があった。【魔眼】 ユウの魔眼は痕跡を追う事が出来る。「速い……遠い……」 ユウの魔眼に映るのは黒衣の逃亡者。痕跡を浮かび上がらせたその逃亡者は少年よりも速くすぐに離される。動画のリプレイのように何度も視ることが出来るが使用時間には限度がある。新しければ新しい程精度は増し視た瞬間から徐々に失われていく。 逃亡者の痕跡を浮かび上がらせ斬撃を入れるには少年の攻撃速度も考える必要があり、現状の目の前の逃亡者を浮かび上がらせても攻撃は届かない。「1秒、いや0.5秒でも動きを止めなければ」 ここで変身するか? ユウは迷う。手持ちのカードは4枚。 獅子王 蛇の暗殺者 チョウチンアンコウ 僵尸(キョンシー)「獅子王使いたいけどこれは切り札に残しておきたい……」 世界的に有名なカードゲームによく似たデザインのカード。それもそのはず。ユウの一族が経営する会社が発行しているのが世界的有名な【ワールドファンタジーデュエル】 大ヒットしている体験型ゲームHKFとのコラボもしている。 「くそ……さっきペガサスナイトを使うんじゃなかった。不安はあるけどこの中で一番速いのは蛇の暗殺者か」『セット』 腰のバッグからカードを取り出しバックルに取り付けたホルダーに刺しこむ。『蛇の暗殺者』 蛇の暗殺者は鱗に覆われた細身の人型上半身、下半身は完全に大蛇の姿。「着装!」 体を光が包み込む。鎧となった蛇の暗殺者を纏うユウ。「あーあ……」 モニターを眺めるのは片目を髪で隠した別の少年。名前は【ケン・シーア】ユウの弟である。「この試練ではランダムでデッキから選んだ5枚を使いこなさないといけない。それなのに一番スピードの出るペガサスナイトを最初の索敵に使って消費なんて呆れるよ。俺だったら最初に蛇の暗殺者を実体化して居場所を確認させたらペガサスナイトに乗って上から接近、武器に獅子王をセットして範囲攻撃で仕留めるね。着装は必要ない」「ふむ」 少年の横で見ているのは体格の良い中年の男性。ユウとケンの父親である。「だがユウは着装適性が高い、まだ分からないぞ?」「ですが父さん! いくら着装適性が高くても馬鹿で不器用なアイツは駄目です!!」「ケン、ユウが嫌いなのは知っているが自分の兄の事をそんな風に言うものじゃないぞ、お前が優秀なのは解っている」「……はい」 ケンと呼ばれた少年は納得いかない表情で口をとがらせて言った。「ユウが試練を乗り越えても何も困る事は無い。ケンはケンが目指す勇者になればいい」「ですが勇者と認められるのは一人です、ユウが目指す意味はありません」「どうかな? そう考えているのはケンであって私はそうではない」「……」 ケンは拳を握りしめる。ユウを罵倒してこれ以上父親の評価下げたくなかった。「ハァハァハァ……」 蛇の暗殺者を着装したユウは息を切らせながら徐々に遠ざかる逃亡者の背中を視る。実際の蛇のように蛇の暗殺者は温度で周囲を感じることが出来る。魔眼との合わせ技でユウは逃亡者を捉え続ける。「追いつけない……追いつけないけど……」 獅子王 チョウチンアンコウ 僵尸(キョンシー) 残りはこの三枚のカード。「僵尸(キョンシー)を召喚! チョウチンアンコウのカードを持たせて逃亡者に突撃!」叫ぶユウ、顔色の悪い腕を伸ばした僵尸(キョンシー)が出現、チョウチンアンコウのカードを僵尸(キョンシー)の指に挟んで突撃させる。両足を揃えたジャンプ、ミサイルのように前へ飛んだ。「僵尸(キョンシー)が飛んだ!?」驚くケン。「ほう、あれは飛僵(ひきょう)だな。長い年月を経た僵尸(キョンシー)は神通力を使い飛ぶのだ」「たまたまレア個体を引いたのかな」「いや、ユウは手持ちのカードを鍛えていた。ユウはたった1デッキ、ケンのように7デッキも持っていないがその分磨きをかけている」「手札が多い方が臨機応変に対応できます」「そうだな、しかし今回の試練のような場合ユウのデッキは強い」「俺なら僵尸(キョンシー)なんてデコイに使う程度ですよ」「魔眼の特性もユウとケンでは違う。ユウは過去の痕跡を見て浮かび上がらせるのに対しケンは未来を見て浮かび上がらせる。戦法も違ってくる」「俺の魔眼の方が戦闘向きですしリスクも少ないですしね」「ユウとケンが戦えばケンが圧倒的有利だろうな。だが勇者の適性とはまた別だ」「強い者が勇者にふさわしいです」 父親とケンはモニターを見つめたまま話している。「ハァハァハァ……もう3分経ったか? チックショーこれでもうケンの記録は超えられないかー! せめて試練はクリアしたい」 弟のケンは既に去年2分47秒で試練をクリアしている。「あと7分でクリアしねーと今回も失敗してしまうぞ」 スマートウォッチのタイマーを確認するユウ。 飛ぶ僵尸(キョンシー)が黒い逃亡者に到達する。「今だ! チョウチンアンコウを召喚!!」 僵尸(キョンシー)の指に取り付けておいたカードが発動する。召喚されたのは小さな魚のモンスター。「――」 気が付いた逃亡者は振り向きざまに僵尸(キョンシー)を攻撃、黒い直刀の斬撃が僵尸(キョンシー)の腕を切り落とした。その時小さな魚が逃亡者の肩に食いつく。 チョウチンアンコウのオスは小さくメスに取りつき融合される。ユウの召喚したチョウチンアンコウのモンスターも同じような性質を持っている。 違いは本物のチョウチンアンコウのオスは繁殖の為に融合するがモンスターの方は気付かれないまま生命力を吸い取り道連れにする。「間に合うかな」 追うユウ、チョウチンアンコウの効果で逃亡者は体力を奪われ徐々に速度が落ちている。「この調子で弱っていけば時間内に倒せる」 残りのカードは獅子王のみ。現在着装している蛇の暗殺者は解除するとデッキに回収され試練中は使えない。「……よし、魔眼発動! 過去の痕跡を浮かび上がらせる!」 前を走る逃亡者の数秒前の姿の幻影が浮かび上がった。ユウとの距離は3m。「この距離なら届く!獅子王ー!!」 獅子王のカードを発動、全身を黄金の鎧で固めている獣人が出現。「うおおおおおおおおっ! 着装!!」 ライオンモチーフの兜、重厚で豪華な黄金を纏うユウ。背負っていた何の変哲もない自分の両刃剣を抜き上段に構える。獅子王の力で黄金の輝きを発する。「凄剣イクスバーン!!」 ユウが名付けた必殺技。実際には獅子王の力を込めて一気に放つもので名称は無い。 逃亡者の残像が光の剣で両断される。同時に前方を走る逃亡者も同様に両断される。「やった!」 ユウの魔眼で浮かび上がらせた過去の残像に起きた事は現在の対象にも同様に起きる。過去に干渉する事で現在を改変するものである。「試練クリアーだ!!」 両手を上げて飛び上がるユウ、その様子を眺める父親とケン。「ユウ、去年とは比べ物にならないほど成長したな」 忍者のカードを持つ父親。試練の逃亡者は父親が忍者のカードから召喚したものであった。「父さん! 俺やったよ!!」 目の前に現れた父親に拳を突き出してグータッチを求めるユウ、父親は微笑んで応じる。それを面白くなさそうに見ているケン。「ふん、実戦ではどうだか……実際の敵を攻撃できるのかユウは?」 ケンは眉をひそめて父親の後ろから言った。「で、できるさ!」「ふーん……」「さぁ帰ろう。財団の皆に報告しなきゃな」*** ――8か月後。「先方には話を通してある。現地に着いて案内人に話を聞いたら任務開始だ、協力するもよし個別で行動するもよし」 ユウとケンの父親が行った。「これで勇者が決まるのですね」「緊張してきた……」「この8カ月でお前たちは成長した、財団はこの任務終了後勇者の称号を与えると約束した。ユウ、ケン父さんはお前たちが無事に帰ってくることを望んでいる無理はするな」「任せてください!」「頑張るよ!」 飛行機に乗り込むユウとケン。父親は見えなくなるまで二人を見送った。 大阪国際空港に到着するユウとケン。迎えの車の前に深紅のドレスの女と細身で鋭い目つきの男が立っており手を上げた。「お待ちしておりましたユウ様ケン様」「さぁどうぞこの車で現地に向かいます」 細身の男は運転席にドレスの女は助手席、ユウとケンは後部座席に乗り込んだ。「ここから流王山に向かいます」「それだけ?」ユウが言った。「はい、我々の拠点がある場所までお送りいたします。到着後任務をお教えしますのでそこからはご自身で情報を集め解決して下さい。1日1回の報告は必ずお願いいたします」「あんた達は財団の監視役兼案内人であり手伝ってはくれないって訳ね」 ケンが言った。「パーティーを組むことは禁止されていません。ご自身を含めて4人まで、必ず財団に連絡を。違反があった場合ペナルティが課せられます」「ふーん……じゃあアンタをパーティーに入れることは可能? 一番優秀そうだし」 ケンはドレスの女に向かっていった。「可能ですが全ての行動は財団に把握されていますのでリスクは大きいですよ?」「それはめんどくさいな……パーティーに居れようと思ったけどいいや」「拠点には後二人フリーの財団の人間を用意しています。その者でしたらどうぞ」「じゃあそっちのがいいか」 車は北へと向かう。*** ――流王山中の小屋。「大阪っていってもここは完全に山の中だなぁ」ユウは小屋のソファに座って言った。「監視カメラに結界、上空からも見えない山中の小屋か……成程」ケンは車から降ろされた荷物を確認しながら言った。「じゃあ早速任務とパーティー組める人を見せてよ」 くつろいでいるユウを無視してケンはドレスの女性に言った。「では……ハオラン、ターニャ」 作業服に長身の人懐っこそうな笑顔を浮かべた日焼けした男ハオラン。 毛皮のコートで目の下にクマができた異常なほど肌が白い女ターニャ。「見た感じハオランは前衛か……ターニャは後方支援……俺の魔眼に合わせやすいのは後方支援のターニャだな、前衛は巻き込んでしまうかもしれない」 ケンはそう言ってターニャの前に立った。「宜しくターニャ!」「宜しくお願いしますケン坊ちゃま」 ユウを無視して話を進めるケン。それをみていたドレスの女性がユウに話しかける。「ユウ様よろしいのですか?」「え? ああ……いいよいいよ……着いたばっかりで落ち着かなくて頭回らないし」「左様ですか」 そのやり取りを聞いて鼻で笑うケン。「時間は無駄にしたくないし任務の説明してよ」「あ、ちょっと……」慌ててソファから立ち上がるユウ。「ではこちらに」 ドレスの女性は奥の部屋にあるモニター室に移動する。「今回の任務は潜伏した【凶(マガツ)】の一人の始末です」「む……」「えええええええっ!?」「世界中で大暴れした【凶】は壊滅しましたが生き残りがこの近くに潜伏しているとの情報を掴みました」「そんな大物を俺たちに始末させようだなんて父さんも財団もキツイな」 ユウが呟いた。「【凶】の4大幹部ならまだしも残党なら余裕だよ」 ケンが言った。「潜伏しているのは【凶】の首領の息子です」「なんだと!」「ええええええええええええええええっ!?」「この地で首領の息子は密かに勢力拡大して【凶】の復活を目指していると思われます」「そ、そんなの俺たちに倒せる!?」思わず身を乗り出すユウ。「ユウ! 倒せるかどうかじゃねえ、やるんだよ!」 ケンはユウを睨みつけて言った。「続き、よろしいでしょうか?」「ああ、続けて」 モニターの画像を切り替えるドレスの女。「財団は警察と協力して交通網を監視、最後に確認された首領の息子の姿がこれです」 白いワゴン車から出てくる青年の姿、暗い青髪の他は何の変哲もなかった。「【凶】は生贄を使う儀式をする者達です、行方不明者を調べるなどすれば良いかと」「近くにいるとは限らないんだろう?」ケンが言った。「ええ、最後に目撃されたのが街中だというだけです」「なるほど……まずは情報収集からだ。ターニャ行くぞ」「はい!」続く
Jan 9, 2024
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