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諸田和音:きな粉団子が時々無性に食べたくなるReviveTheGunSword灰蘇の剣銃36「怪人王と龍」 ―鏡を眺める魔女。映っているのは怪人王妃・樹玲消滅の様子。 「これは予想できなかった……まさかの大逆転劇とは」 机に置いてある無数の小さな人形。倒してあった白い魔法使いと宇宙人の灰色人形を起こす。白い羽の生えた人形を倒す。 「この二つは消えたのではなく合わさって一つ……う~ん。まぁでもそこまで脅威でもないかな。それよりもこっちの方が」 魔法使いと宇宙人の人形を半分づつ合わせて置く。 机の上の白い龍と黄金の怪獣めいたドラゴンの人形を対面させて置いた。 「時田麻村には勝って欲しいけど……どうかな?負けた所でDMCが解散するだけ。これからも街に怪人は現れ続ける、私がいる限りね。ただ……時期は慎重に見極めなければ」 赤、白、黄、黒、緑の5体の人形を眺める。LOKIを模した物であった。 「市長君は街が発展すればそれ良いスタイルだしこの5人は様子見で放置かな?そう考えるとコイツら5人が第六区に絡んで来たのも街的にはOKだった……いやぁやるねぇ市長君……オータムホースがこの国一番の大都市になるのもそう遠くないのかも」 鬼の人形を地図の真ん中に置く。 「市長君はその内国政に出るのかな?行く行くは総理大臣?それはそれで面白い事になりそう……私がある程度好き勝手できるのは市長君が街にとって邪魔では無いと判断してるのだろうね。邪魔だと思われたら私を確実に排除できる何かを仕掛けてくるはずだし」 魔女は触手集合体の人形を眺めて収容所の上に置く。 「私はここで大人しくしてるのが今の所ベストかな?ああでも、市長君が龍の勝ちを読んで今の状況を眺めているのなら少しだけ乱して驚かせたい……時田が負けそうになったら私が手を貸してやろう」 *** 和音と時田麻村は第五地区の港に移動していた。 「DMCもこの街の破壊は気にするのか」 「もちろん。少しばかりの破壊は更なる発展のためには必要だが流石にお前と私が第五地区で暴れるのは被害が大きくなりすぎる。そうなった場合つまらない連中が調子に乗ってウジャウジャとでてくるからなぁ」 「ここなら問題ないと」 「ああ、ここは莫迦な連中が闇取引によく使っている港の倉庫があるだけ。船も古いものしかない『消えて良い』ものばかりだ」 「そうか……」 和音は第五地区中央塔を見つめている。 「相方の女が気になるのか?それはそうだろうな樹玲は俺を除く最強の怪人。心配するな、お前もすぐにあの世に送ってやる」 黄金のオーラを放つ時田、マントを翻し悪魔めいた角を持ち、黄金の鎧を身に着けた黒い怪人王。空気を震わせる。 「なるほど、怪人王を名乗るだけの力はあるみたいだな」 和音は青白い龍のオーラを一回り大きくする。それを見た怪人王が飛び出す。 「うおおおおおおおおおおお!」「はあっ!」 和音は飛び出してきた時田の拳に合わせて拳を激突させる。 「うおおおおおおおおおおお!」 拳のラッシュを仕掛ける時田、和音も合わせて拳を突き出す。大きな衝撃音が連続鳴り響き周囲のコンテナを震わせる。 「スピードは互角か……」「……」 和音の顔には余裕が感じられる。 「この怪人王のラッシュに対してその余裕……気に入らんな」 時田はラッシュを止め和音から離れる。 「貴様はDMC最大の敵だと認識した!DMCやがて世界中に拡散する!!世界中にDMCの名前を広め恐怖と羨望の頂点に俺は立つ!!」 「くだらん野望などここで打ち砕く」 「ククク既に世界にDMCは広がりつつある。この街の院瀬見を染め上げれば準備は整う……新たな秩序が生まれるのだ!!」 「お前を怪人化した魔女に踊らされているのではないか?」 「馬鹿を言うな、あの魔女はただのビジネスパートナー。DMCは怪人化する前から世界を見据えていた」 「只のカルト集団がいまや怪人集団とはな」 「病気、怪我、サイバネ改造による様々な弊害。これらをすべて解決し人間を超えた存在に上がれるのが怪人化だ。信者には昇華と呼ばせているが」 「怪人化も色々と副作用があるだろう?」 「理性を保つのが困難になる、人間としての倫理感が薄れる程度の事など怪人化の快適さ、万能感に比べれば些細な事……それに怪人化の負のイメージを払しょくさせる計画も立ててある」 「碌でもなさそうだが」 「興味を持ったな?この俺の拳を受け止められた勇者に褒美として話してやろう。模擬戦相手にも困っていたのだ……本気を出すと怪人と言えどすぐに壊れてしまうのでな貴様という存在の出現が嬉しいぞ」 時田が右手をかざす。和音は自分の体が重くなったと感じた。 「ほう……今ので膝を着かぬとはな。俺は圧を自在に操れるのだ」 左手をコンテナに向けるとアルミ缶のようにひしゃげた。 「そうか」 「強がるか、まあいい話してやろう。DMCはこの先組織を二つに分ける。恐怖で世界を支配するDMCとそれに対抗するDMC(仮)だ。対抗する組織の管理は勿論俺だ。DMCの支配者でありながら陰では対抗組織を操る」 「茶番劇を仕掛けるのか」 「その通り。どれだけDMCの評判が悪くなろうとも対抗組織の人気が高まれば関係ない。最終的に俺の影武者が倒れるもよし、対抗組織を潰しまた新たにつくるもよしだ。貴様はDMC、対抗組織どちらにも当てはめられる」 「その計画はオレを倒せると決まっていなければ成立しない」 「それに何の問題が?この怪人王に勝てる者など居ない」 時田のかける圧の中悠然と歩いて接近する和音。 「動けるのか……だが俺の圧は動きを止めるだけのもものではない」 手を捻る時田、和音の体が前に押し出される。そして右手に力を込め迎え撃つ。 「このように!」 アッパーカットで殴りつける時田、和音は防御するも体が浮き上がる。 「このように!」 圧を利用してロケットジャンプ、空中の和音に飛び蹴りを放つ。和音は十字受けで防御。 「このように!!」 圧を利用してコンテナを投げつける。飛び蹴りで吹き飛んだ和音に衝突する。 「クククク……生きてるよな?俺のラッシュを受けた男がこの程度で死ぬわけがない」 「……当然だ」 コンテナを跳ねのけYシャツの埃を払う和音。 「貴様は地面に足をつけた戦いしかできない。口から吐くブレスも使うようだが空間を全てを自在に操り飛翔する俺には当たらん」 「確かにオレは飛べないな(亜瑠は短時間なら飛べたが)」 「俺は民衆が畏れる存在そのものに成るのだ。この力で強制的に膝をつかされ、この力で強制的に吹き飛ばされ、この力で木っ端微塵になる様を見れば必ず畏れる」 和音に両手をかざして全方位から圧力をかける。 「クククク……動けまい?そしてとっておきの技がある」 口を開ける時田。中から黒い渦が高速回転してる玉を出現させる。 「超重砲弾だ!今回はこの程度の出力でやる。全力で放てば磁場に影響し次元を歪め地球環境破壊になるからな……さぁ受けるがいい!人類を超え神に至る者の力を!!」 超重砲弾が放たれる。黒い力の砲弾は衝突の瞬間莫大なエネルギーを放ち炸裂するはずだった。しかし黒い砲弾は和音の目の前10cmの所で停止。 「何だ!?何が起こった!!」 和音は龍の息吹で超重砲弾を包み込み受け止めていた。 「こんなもの宇宙に捨てるしかないな」 上を向いて龍の息吹を放つ和音。光の筋となって超重砲弾と共に空に消えていった。 「ふん」 圧力高速を破る和音。時田を睨みつける。 「あの超重砲弾とやらはお前の体力をかなり奪うようだな。見た所2回が限界と言った所か」 「……ほう、中々鋭い。確かに超重砲弾は短い間に何度も撃てるものではない。全力で放てば1度で体力が尽きるだろう。だが貴様とて無限の体力を持っていない、同じ手で防げない状況で放てば良いだけの事」 時田は黒い力の塊を自身の周囲に二つ浮かべて突進する。 「超重砲弾のカウントダウンだ!貴様をインファイトで削りながら溜める!!」 宙に浮きながら両手両足を使ったインファイトのラッシュ。和音は防御しながらラッシュの隙を見つけカウンターの打撃を入れていく。 「おのれ……」 「お前の動きは見切った。武術経験のない者の動きは簡単に見切れる」 「ちっ……」 距離を取って圧力攻撃を仕掛けようとする時田。和音は時田の腕を掴んで引き寄せ捻りを入れて地面に叩きつける。そして更に追いうちの踏みつけ攻撃。 「ぐぁっ……この俺の頭を踏むなどおおおおおおおお!!」 高速スピンで和音の拘束から逃れる時田。窒素を圧縮した刃で斬りかかる。 「不可視の剣だ!長さも形状も解るまい!!」 「武器が良くても雑な動きで軌道が丸わかりだ」 和音は振りかぶる時田に対し踏み込み接近、巴投げで山積みのコンテナに叩きつけた。 「何故だ……貴様と俺はスピードは互角……」 「所詮お前は怪人になってから手に入れた力が全て。オレは違う」 「経験の差というやつか……確かにそれは仕方が無いな。その代わり俺には貴様には無いものを持っている」 小瓶を取り出す時田。中には蠢く黒い触手。蓋を開け地面に落とすと一気に広がり人型を形成する。黒いドレス姿の黒上の女性の姿に。 「はじめまして。私は黒山羊の魔女とでも名乗っておきましょうか……ビジネスパートナーの時田麻村に依頼された派遣の仕事のようなものです」 「ええい!余計な事は言うな魔女!!仕事はキッチリしてもらうぞ」 「はいはい」 両手を広げ宙に浮く時田。 「絶大な力に召喚術!!貴様の言う経験の差などひっくり返る!!」 「DMCの黒幕はお前か?魔女」 和音は魔女を見据える。 「黒幕ねぇ……元々DMCは存在してたのですよ。ある縁があってこの街に来てみたら面白うなDMCって集団がいた。だから力を貸したって訳。私にはやりたいことが色々あるから人間社会で力を持ってる物の協力が必要だったのです」 「お前は人間社会の悪だ」 「ですかねぇ?私は人間好きですよ?ああでも、人間として人間が好きな感情とは違いますね。可愛い実験動物かな?」 「いつまで喋っている!行くぞ魔女!!こいつを叩きのめすのだ!!」 魔女の足元から触手が伸びる。空中の時田は超重砲弾の溜めを始める。 「フッ!」 拳銃の弾丸程の龍の息吹を撃ち魔女の触手を散らせる。 「痛っ……私の触手を破壊できるとは。そういう事……時田では手に余るはず。ならばこうしましょう」 触手が集まりアサルトライフルを模した形状に変わる。 「飛び道具には飛び道具を―」 魔女が構える前に和音は距離を詰める。龍気を纏った拳を鼻、顎、鳩尾、と撃ち込んだ。 「あぎゃあああああああ……何てことするの……めちゃくちゃ痛いじゃない」 地面を転がる魔女が叫んだ。和音が撃ち込んだ箇所から青白い炎が上がっている。 「ドラゴン……いえ、【龍】ね。その力の背後に見えるのは……」 地面に伏したまま触手アサルトライフルを撃つ魔女。漆黒の小さなイカ状の弾丸が放たれる。当たればその箇所から浸食し食い尽くすもの。和音は左手に宿した炎の盾で焼き尽くして弾丸を防いだ。 「……起こしちゃいけない、怒らせてはいけない類の存在を街に呼び寄せたみたいね」 魔女はため息をついて立ち上がる。 「何を笑っている魔女!しっかりやれ!!」 「分が悪いですね……逃げた方がいいのでは?」 「馬鹿を言うな!!コイツはここで始末しておかなければいけない!!」 「まぁそうですよね。逃げた所で彼はDMCを完全駆逐するまで止まらない(この体が分身だと彼にも時田にも知られていないし、ここは負けて死んだ事にしてもいいかもしれない)」 浸食イカ弾をばら撒きながら走る魔女。和音は炎の盾で防ぎながら追いかける。 「(うん、そうしよう。やられたことにして表から姿を消そう、彼を倒す方法はゆっくり考えればいい。彼は人類の味方で平和な間はおとなしいのだから。それはそれとして出来る限り全力で粘ってデータ収集しなければ)」 触手を大きく広げて全方位から攻撃、和音は全身に纏った龍気を炎に変え爆炎で焼き払った。 「熱い!!」 「……」 和音は自分の力が上がり続けていることを感じている。数日前までこんな事は出来なかった。それが今や龍気を自在に操り炎を纏うようになった。 「猛毒の触手に防御不可能な浸食イカ弾に全方位攻撃……これだけ使って何のダメージも与えられないなんて初めて……龍種とやり合ったことあるけど君は別格だ」 再生した無数の触手で和音の炎の連撃を受け止める。触手は燃え上がり肉を焦がす。 「打撃よりも斬撃のほうがいいか……」 和音は両手に息を吹きかける。炎は棒状に青白い直剣、柄は仏具を思わせるフォルムに変わる。 「魔女退け!超重砲弾を撃つ!!」 時田は浮かべてた超重砲弾の一つを胸の前にセットする。 「消し飛べ!!」 「それはどうかな」 和音は大きく息を吸い込む。1発目の超重砲弾の時とは違い射線には海しかない。 「今度は受け止める必要は無い」 「何!?」 龍の息吹を放つ和音、青白い光線が時田の超重砲弾を飲み込む。 「ううううおおおおおおおおおおああああああああっ!!」 残り一つの超重砲弾を使い圧力を全開にして耐える時田。地面のコンクリートが崩壊、海に向かって押されていく。 「ぐうううううう……馬鹿な押し返せん……」 時田の体を覆っている黄金の鎧が崩壊し始める。海まであと数センチの所で龍の息吹は停止した。 「ハァハァハァ……耐えきったぞ!!」 体から煙をあげ叫ぶ時田。だが前方の和音が第二射に入っているのを見て愕然とした。 「第二射……だと!?魔女!なんとかしろ!!」 「しょうがないですね」 時田の前に立つ魔女は触手をまとめて砲身を形成する。 続く
Jan 28, 2023
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柄留:みたらし団子は甘めが好きReviveTheGunSword灰蘇の剣銃35「白と灰と剣と銃」 「お前たちの力は予想外であったがここで潰せば問題ない。DMCはこれからもこの街で成長を続けやがて世界へと羽ばたくのだ」 時田麻村は右拳を握りしめる仕草を見せながら言った。 「ホホホホホホホホ……私が小娘を始末しましょう。チョロチョロ嗅ぎまわっていた女の関係者でしょう?今度こそ確実に消えてもらう」 サーベルを手に柄留を睨みつける樹玲。 「……弾着!!」 グレイブラスターで体を部分的に守った鎧姿に変わる柄留。右手には既にデモンズエッジ・スキャバード。 「やってやんよ!ミレーヌ、蒐魅、見ててよね!!」 剣の白魔女ミレーヌ、グレイキャリバー兜金蒐魅。相反する力を纏い高めていく。柄留の右目は青く、左目は橙に輝く。 対する樹玲は背中から羽を生やしてサーベルを上に構えて片足の腿を高く上げてジャンプする。この階層の天井は高く10メートル程ありそのすれすれまで飛び上がった。 「はああああああああああああああっ!」 急降下して床に剣を突き立てる樹玲。白い爆発が起きて羽毛が飛び散る。 「消えた!?」 柄留の視界から樹玲が消える。グレイブラスターで羽毛を蹴散らそうと構えた瞬間、サーベルが柄留の左上腕部に突き刺さった。 「あうっ……」 『チッ!!咄嗟に躱したか……心臓狙いの一撃だったのに!!』 樹玲の姿は無い。突如空間からサーベルが飛び出し柄留に攻撃を加えた後再び姿を消した。柄留はその場から飛びのいて周囲を見渡す。 「和音君!?」 和音と麻村の姿も消えていた。柄留の視界に映るのは漂う羽毛のみ。 「うっ……」 柄留の右耳をサーベルが掠めた。即座にグレイブラスターを撃ち反撃、しかしそこには羽毛しか存在しなかった。弾丸は羽毛を蹴散らし岩盤に命中。 『鬱陶しい目を狙ったんだけどまた外した……思ってたよりも反応いいわね』 「そりゃどーも……(ヤバイどこにいるのか何が起こってるのかわかんない)」 『DMC最高幹部の最後の一人はこの私。王の傍に立つ者としてふさわしい実力でしょう?』 「ボクだって和音君の横に置いてもらえるにふさわしい力持ってるよ!(とはいったもののどうしよう……分身とは違うけど猿怪人と戦ったアレをやってみるかな)」 柄留は左足にグレイブラスターを取り付け空中高速旋回しながら弾丸を発射。弾丸を足で踏みフィギュアスケーターのように空中を滑る。無数の弾丸が舞い羽毛を蹴散らす。 「(手ごたえが全くない!?)」 デモンズエッジ・スキャバードで薄緑膝丸を出現させて高速回転斬撃で羽毛を散らす。 「いない……」 『嬲り殺しの趣味は無いのだけれどお前が抵抗すればするほど苦しみは長くなる。私は悪くない』 羽毛の舞う量は増えていき柄留の視界は更に悪くなった。 「あぐっ……」 着地した柄留の右足の裏にサーベルが突き刺さった。 「はぁはぁ……」 柄留は眩暈を感じ膝をついた。傷から血煙が上がっているのに気が付いた。 「血が……止まらない」 『ホホホホホ!血煙は視界を更に遮り匂い音もやがて遮断する。お前に出来る事はもがく事だけ』 弾丸を自分の周囲に旋回させて身を守る柄留。樹玲のサーベル刺突は止むも傷からの出血で体力を奪われていく。 『これが怪人王妃の力!自分の無力さに打ちひしがれて死んでいきなさい』 「部分弾着!!」 旋回している弾丸を使って傷に弾着、出血を止める。 「羽が邪魔、とにかくこの羽を消せば……」 火炎弾を装填したグレイブラスターを構える。サーベルが柄留の腕を貫いた、だが怯まずにそのまま引き金を絞った。 放たれた火炎弾はあっという間に宙を舞う羽毛に燃え広がり、爆炎となって周囲を焼く。フロアー全体が火の海と化した。 「ど、どうだー!!」 「ホホホ、見事!」 背後から樹玲の声がした。振り向く前にサーベルが背中に突き刺さる。グレイキャリバーの強固な装甲をあっさりと貫き切っ先は肋骨の下から突き抜けた。 「あ……ぐ……」 「羽を焼くのは良いアイデアでしたが、後ろに羽は残ってました」 「残っててもいいんだ!ソハヤノツルギ!!」 火炎弾と同時に投げたソハヤノツルギが戻って来る。光輪と化したソハヤノツルギはそのまま柄留の背ギリギリを通り抜ける。 「ギャアッ!!」 ソハヤノツルギはサーベルの柄を削った。樹玲の悲鳴があがり周囲の景色が歪む。 「はぁはぁ……」 柄留が目にしたのは先ほどとは違う建物の中。右後方には人型の両足を切り裂かれた樹玲が倒れている。 「おのれ……この私に傷を付けるとは」 「サーベルがお前の本体……色を変え羽毛を操り死角から攻撃してた」 「そうよ、まさか私を捕まえるために刺されるとはね」 「ギリギリ太い血管と内蔵を避けて刺されたんだよ。(斬りにこられたら危なかった)」 「なぁに?もう勝った気でいるとはお目出たいわね。この足の傷なんてお前から吸い取った血で回復するわ」 樹玲の足の傷は見る見るうちに回復していく。 「王と少年は他の場所にいるわ。今頃少年は絶望を感じてるはずよ」 「それは絶対に無い!和音君が負けるものかー!!」 「ホホホホ威勢の良いことお前は絶体絶命だというのに。その傷出血、限界は近いはず」 立ち上がる樹玲。白い羽を広げ両手をサーベルに変えて構える。 「少し前にこの街で話題になったキャリバーも剣の白魔女も結局はこの程度だった訳ね。まぁお前がそいつらに匹敵する存在とは限らないけど」 「むぅぅぅ……」 睨みつける柄留。 「(ボクは二人の力が使えるんだ……負けたくない。もっと上手く使えばこんな奴に負けないはずなんだ)」 「私の攻撃を回避できないお前に勝ち目はない。先ほどの奇襲も通じない」 「(嫌だ絶対に負けたくない!)」 「さぁたっぷり血を流しなさい!そして私に捧げなさい!!」 「くっ……」 樹玲の両腕のサーベルが外れ空中を舞う。飛び上がり急降下、宙に浮いた両腕の剣を暴風めいて操作して柄留を襲う。すれ違いざまに刻んだ。 「ホホホホホホホ!攻防一体の私の突撃!!お前にはどうする事も出来まい!!」 折り返して急降下突撃。両腕のサーベルは柄留の弾丸と剣を弾き体に斬撃を刻む。 「うぐ……」 「ホーホホホホホホ!もっと血を!いいわよお前の血、とても生命力に溢れている……」 更に剣風突撃。回避が間に合わず柄留を刻む。 「一気には仕留めない……なるべく出血させて殺してあげるわ」 速度を増す樹玲。1秒間に16回往復し柄留の体からの血煙で赤く染まっていく。 「ホーホホホホホ!全身ズタズタね!!」 「はぁはぁはぁ……」 「何その目!気に入らない!!次は目を刻んでやろうかしら!!」 「拘束弾着!!」 血煙が樹玲に集まり一気に固まった。 「何!?動けない……」 サーベルも羽も足も全て包帯で巻いたミイラのように固められている。樹玲は完全に棒立ちになりもがいている。 「残念!私は窒息もしなければこの程度の締め付けでダメージを受けたりしない!」 「そうだろうね……ソハヤノツルギでも小さな傷で済ますくらい堅いから……だったら」 意識を失いそうになりながらグレイブラスターを構える。 「グレイブラスターレールガン+デモンズエッジ・スキャバード顕明連!!」 レールガンに三明の剣の一振である顕明連を搭載する。 「これが今のボクにできる全力全開最強の攻撃!!」 溜めに入る柄留。前方の樹玲はミシミシと音を立て内部から拘束を破ろうとしている。 「(外せない……この一撃を放ったらボクにはもう立ち上がる力も残らない)」 焦点が定まらない、体が冷えていく、震える、腕が重い。 「(……頑張れボク、限界を超えろ!!)」 既に致死量の血を失っている柄留。動けているのはグレイブラスターと白魔女の力。 「(死にたくない……だけどコイツに負けて殺されるよりも勝って力尽きる方を選ぶ!)」 体の感覚が無くなっていく柄留。 「(……ゴメンね蒐魅、亜瑠ちゃん。二人が残してくれたであろうボクの命ここで使っちゃうかもしれない……和音君……どうせ逝くなら和音君の腕の中が……)」 「ガアアアアアアアア!!」 「くらえええええええええええええっ!!」 柄留の溜めが完了するのと樹玲が拘束を破るのは同時だった。 「あああああああああああああああああああああっ!!」 顕明連を乗せたレールガンの閃光が樹玲を貫く。 閃光は背後の岩盤を破壊、大爆発を巻き起こした。 ――――――――――――――― 柄留の放った閃光での爆発は二重筒構造の中央塔のフレームを粉砕。倒壊を始め地下部分に落ちていく。 「……(動けない……指一本も)」 柄留は仰向けに倒れて動けない。体は痺れ寒さと痛みで意識が遠くなっていく。 「よく……も……やってくれたわね」 「!?」 柄留が消し飛ばしたはずの樹玲の声が聞こえる。 「(そんな……)」 「辛うじて左手の剣だけは半分残ったわ……お前の体に残る全ての血で再生するわ」 ――こんな所で終わるの? ――嫌だ……でも体はピクリとも動かない。 半分に折れたサーベルだけの樹玲が宙に浮く。柄留の心臓目掛け飛翔する。 「死になさあああい!!」 「――――――――――」 樹玲の切っ先は柄留の胸の上で止まった。刃を止めたのはグレイブラスター。 柄留の意思とは関係なく出現し切っ先と柄留の間に飛び込んで防いだ。 「退けええええ!!」 羽虫めいて飛びグレイブラスターのガードをくぐり抜けようとする樹玲。張り付いたようにピタリと切っ先の前を飛び続けるグレイブラスター。 「鬱陶しい!だけど徐々に再生しているわ……お前の散らせた血煙のおかげでね」 グレイブラスターは柄留を守るように宙を浮いて停止。離れた樹玲は再生スピードを加速させる。 「かなり力を失ったけど……まぁなんとか人型に戻れたわ。お前がこのまま死ぬのを眺め待ちながら血煙で回復するのもありかもね」 「――――――――――」 グレイブラスターは柄留の左手に収まる。瞼が開いた。うすぼんやりとした橙の目。命の灯が消えかけている体を起こし銃口を樹玲へ向けた。 「ホホホホ……死力を尽くして立ち上がったの?でも残念、弱ってるとはいえ拳銃程度で倒れる私ではないわ」 「ワタ……シはグレイキャリバー……デス。このニンゲンはシナセナイ」 「は?」 グレイブラスターから鈍灰色彩が広がっていく。柄留の全身を包み込み大きくとがった上後方に伸びる耳、アーモンド形の漆黒の目、流線形の頭部に一切の無駄を省いた口腔部のマスク形状。しなやかな肉体、腕は人間の者よりも長く、足は趾行性の逆関節。 「キサマのコウゾウはハアクした。ハカイする」 「うるさいいいい!!」 サーベル腕部を飛ばす樹玲。対するグレイキャリバー柄留は銃口からリングレーザーを放ちサーベル腕部を空中停止させる。 「ぎゃああああああああああああああっ」 サーベルにヒビが入り始める。空中停止したサーベルを引き戻そうとする樹玲、だがその場から動く事は無い。 「離せええええええええ!!」 人型を突進させる樹玲。それをみたグレイキャリバー柄留は呟く。 「ナント!ツギはオマエのデバンだ、シロマジョ」 グレイキャリバー柄留の右手に純白のデモンズエッジ・スキャバードが出現。光を放って形状を変える。 「菊一文字則宗」 抜き打ちの抜刀斬りで樹玲の人型の顔を下から切り裂いた。グレイキャリバー柄留の体に羽織袴と胴鎧が装着される。 「キャアアアアアアアアアアアアアッ!!」 「痛いでしょう?本体がサーベルだとしても切り裂かれた感触はあるはず。それは魂に刻まれる。伝承にて存在する菊一文字則宗は幻想の刀。あり得た事象を引き寄せる」 柄留とは違う声。白魔女から発せられるのは剣の魔女ミレーヌ・ジンデルの声。 「試したい技があるんだグレキャリ」「……イワナクともイシでツタワルぞ」 片腕を砕かれ、顔を半分に裂かれた樹玲はゆっくりと後ずさり残った右手を向ける。 「どこにそんな力が……今にも死にかけているのは確か!もうお前はすぐに死ぬ!」 「時間がないのは確かだね」「アア、ダカラもうキメル」 菊一文字則宗にグレイブラスターが融合していく。細長くモザイク柄の装飾となって菊一文字則宗の棟、鍔、柄頭に取り付いた。切っ先には銃口がある。 「やるよ!合わせてグレキャリ!!」「アア!!」 腰を落として平正眼の構え。菊一文字ブラスターの銃口に光が集まっていく。 「やらせるかああああああああ!!」 剣を舞わせて突撃する樹玲。 「絶剣射……」 ミレーヌ柄留キャリバーの体が消える。そして剣を突き出した体勢で樹玲の後ろに出現。 「異次元突き!!」 「あああああああああああああああああああああああああああ!!」 樹玲の体が塵となっていく。 続く
Jan 21, 2023
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ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃34「覚醒と対面」 9体の大城が一斉に柄留に襲い掛かる。仰向けに地面すれすれまで倒れこみながら回避、棒を使って跳ね起きる。 「ヤァ!」 棒で突く柄留。大城の喉に命中するも霞のように消える。そして次の瞬間柄留の側頭部に強い打撃が入った。 「セエエエイ!」 殴られて体勢を崩す柄留にステッキをあてがい首を極めながら投げに持っていく大城。柄留は自ら投げの方向に飛んで両手受け身、そのまま頭を下げた反動で大城の顎を海老蹴りで撃ち抜いた。 「見事!ボーリング玉を粉砕するこのステッキの一撃を受けて動くとは!!」 「痛ったぁ……」 大城の分身は9体に戻っていた。柄留は頭から血を流しながら立ち上がる。 「セセセセセィイイイ!」 前方5体のステッキを弾く柄留。後方から足、腰、肩、脳天の一撃を空中で回避。着地を狙われ腹部に突きを受ける。 「うぐっ……」 「頑丈ですねぇ……鉄骨も貫くこの一撃を喰らって生きてるとは。貴方と吾輩の速さはほぼ互角、手数で勝る方が有利というもの貴女に勝ち目はありません」 「(同じDMC幹部でも蟻アイより遥かに強い……あの分身を何とか打ち破らないと)」 「セエエエエエエイ!」 全方向からの攻撃が柄留に仕掛けられる。棒を振り柄留は左手を広げグレイブラスターを出現させる。マシンガンのように連続発射した弾丸で大城を下がらせた。 「ほほう……銃を出しますか。それなら吾輩も」 9体の分身は同時に上着から銃を取り出す。そして一斉に構えて柄留に撃つ。 「――」 柄留に放たれた弾丸は全て意思を持ったかのように軌道を変え大城の分身を撃ち抜いた。 「何だと!?」 「グレイキャリバーに弾丸は当たらない」 「意味が分からない」 「解らなくて良い。グレイキャリバーはそういう存在。全ての銃弾はグレイキャリバーが支配可能なのだ」 柄留の左目だけがオレンジ色の光を放っている。 「弾着……」 空に向かって撃った弾丸は無数に分かれ柄留に降り注ぎ光に包まれる。 「交代だ……ここからはグレイキャリバーが相手する。何体でも出てくるがいい」 柄留に流れ込んでいた白魔女ミレーヌと棒の権ちゃんの意識は薄れデモンズエッジ・スキャバードは解除される。代わりに蒐魅とグレイキャリバーの意識が流れてくる。 光の中から現れたのは銀と灰色のモザイク模様の全身スーツの柄留。 「姿を変えた所で、銃が効かない程度では吾輩の有利は変わらない!!数で有利!弾が効かないのはこちらも同じ事!!」 「バカが!」 グレイブラスターから放たれる連射。毎秒100発の膨大な弾丸が大城に襲い掛かる。 「!?」 「分身なんて意味がなかったな」 一瞬の内に分身を全て撃ち抜く柄留。 「単体の決戦では剣の白魔女がほんの僅かに上だが多数相手はグレイキャリバーのが有利……さぁどうする?更に数を増やすか単体で挑んでくるか」 柄留は自分で言葉を発しているのが不思議だった。考えるよりも先に言葉が出る、蒐魅とグレイキャリバーの言葉が。 「増やしすぎたのがいけなかった……3体に絞り全力で行かせてもらう!!」 「なるほど……それがお前の最適解。ならばこちらも……」 グレイキャリバーのアーマーがはじけ部分的に残る。柄留の顔があらわになり右目は青く左目はオレンジに輝いている。 「デモンズ・エッジスキャバード……薄緑膝丸!」 「セエエエエエエイ!!」 三体の大城のステッキが襲い掛かる。秒間100発の弾丸を浴びせかけ迎え撃つ柄留。弾丸をくらいながらダメージをものともせずに間合いに入る大城。 「セイイ!」「はっ!」 側転宙返りをしながらステッキを薄緑膝丸で打ち払い螺旋回転、大城の全身に弾丸、目と鼻と喉を狙った斬撃を放つ柄留。 「ムッ……」 2体の分身は消え残る1体は斬撃を防御で何とかしのぎ浅い傷、致命傷を逃れた。 「片手に太刀と銃ってのは中々扱いが難しいね……」 空中にグレイブラスターを放り左足で受け止める。キャリバーの装甲ブーツに吸い付くグレイブラスター。 「今ので吾輩を仕留められなかったのは痛かったのでは?頭部と腹部のダメージはかなりあるようですねぇ」 「このくらいどうって事ないよ……お前こそハチの巣になりながら細切れになれー!」 飛び上がる柄留、左足のグレイブラスターから弾丸が連続発射。そのまま高速回転を始め弾丸と薄緑膝丸の連続攻撃。 「まだ速くなるだと!?」 連続突きで対抗する大城。柄留は撒き撃って衛星のように体の周りを飛ぶ弾丸を踏み台にして空中回避、大城の全身に弾丸と斬撃を叩き込む。 「グアアアアアアアアア……!!」 「名付けて八艘飛び大旋風!……そして撃ち込んだ弾丸は爆裂する!」 「こんな……バカナァアアアアアアアアアアアッ!!」 大城は砕け散って肉片と化した。 「やったぁ……でも頭とお腹めちゃくちゃ痛い……和音君どこかな」 ふらつきながら柄留は和音の開けた中央塔の大穴に向かう。 *** 壁に空いた大穴の外が岩盤に変わった原因について和音は調べていた。すると回廊の壁の一部が扉となって中から人影が出てきた。 「お前はここで足止めさせてもらう」 和音の前に現れたのは蛇を思わせる顔に肉食獣の腕、脚部は猛禽類の、腰から生えているのは蠍の尾の男 「その見た目……ここにきて合成の怪人か」 「四度の改造手術に耐えられたのは俺一人……DMC幹部最強のこの力思い知るがいい」 「いいのか?この建物が耐えられないのでは?」 「周囲は岩盤で覆われている核爆弾級の衝撃でもないかぎり平気だ。ああ、だが天井はそうもいかんか気を付けよう」 「随分と余裕なんだな。DMCらしく名乗ったらどうなんだ?」 「ふ、ではそうさせてもらおうか。俺は鵡州(むしゅう)フミト。DMC最高幹部にして頭脳であり武力においても最強の存在。俺は幼いころからトップだった勉強においてもスポーツにおいても」 「それがどうしてDMCの最高幹部などをやっている」 「俺にとって人間社会など窮屈で仕方が無いのだ。もっと高位の存在であるべきなのだ」 「人間社会でトップに行く前に怪人化か。窮屈だという前にこの国で一番の企業・神名にでも入れば良かっただろう?」 それを聞いた鵡州の目つきが変わった。 「だまれカスが!!何が神名だエリートだ!!この俺を認めないあんな奴らなど只の勘違い集団!!俺の優秀さを存分に発揮できるのはDMC、院瀬見、オータムホースシティ!」 鵡州のビジネススーツが破れ合成生物の全身があらわになる。 「つまらない会話はここで終わりだ」 「ああ」 飛び掛かる鵡州、肉食獣の爪と猛禽類の足爪、蠍の尾で攻撃を仕掛ける。和音はそれらの攻撃を見切って下がりながら回避。 「ほう、反応速度は良いようだな。そして判断力も警戒心も強い……」 鵡州の爪が和音のYシャツを掠める。煙を上げあっという間に腐食して袖口が崩れ落ちた。爪、足爪、尾の全てから紫色の液体が滴っている。 「この腐敗毒はまだ世に知られていない物質……治療方法は無いぞ」 「つまらない会話は終わったんじゃなかったか?」 和音は掌を上にして挑発の手招きをする。 「腐って死ね!」 飛び上がる鵡州、だが次の瞬間和音の龍の息吹が空中で炸裂し吹き飛ばされた。大の字になって岩盤壁に叩きつけられる。 「そのカッとなりやすい性格がダメなんじゃないのか?」 「だ、だまれ……」 即座に体を起こす鵡州、血の唾を吐き捨てて和音を睨みつける。 「頭を冷やすには丁度いい攻撃だった……もうお前をカスなどと思わん。全力で対処する」 大きくしゃがんで手を床に突く鵡州、ジグザグにステップを踏んで和音に接近。爪のジャブ、毒を飛ばしながらの牽制攻撃。和音は上半身を動かして回避、鵡州は足爪の毒飛ばしローキックと上から尾の毒飛ばし突きを同時に放って攻撃。ローキックの毒は和音のズボンの裾を掠め尾は床に突き刺さって破片を飛び散らせた。 「シュラアアアア……」 和音を深追いしない鵡州。また大砲のような龍の息吹をくらう事を警戒して構える。 「王が警戒されるのも解る……お前のような存在並のDMC怪人では相手にならん。この俺の攻撃に対してもまだ余裕があるようだ……根賀が斃されたのも無理はない」 「あの冷凍象怪人か……アレは少し厄介だったな」 「DMC最大の敵はお前だ……間違いない。ここで潰さなければならない危険な存在だ」 大きく口を開き息を吸い込む鵡州、和音は龍のオーラを拡張してバリアをつくる。 「全てを崩壊させる腐敗毒ブレスだ!!」 鵡州から紫色の息が放たれる。煙のように広がり回廊を覆っていく。 「もっとお前の力を引き出して分析したかったがこれ以上は危険と判断した。必殺の攻撃で仕留めさせてもらう」 「オレもお前を少し侮っていた。だがこうすれば腐敗毒などオレには届かない」 和音の全身を一回り大きく包み込む青白い龍のオーラ。触れた腐敗毒を消滅させながら鵡州に近づいていく。 「……そうか、根賀が敗北した理由はそれか。ならば直接腐敗毒を叩き込む必要があるようだな」 鵡州の全身を紫色の腐敗毒の力が包み込む。 「シャアアアアアア!!」 接近戦を仕掛けると和音はそれに応じる。爪、足爪、尾の攻撃は上下左右あらゆる方向から和音を襲う。 「ヌウウウウ……」 格闘技にも自信があった鵡州は和音の動きを見て焦った。最初は回避していた和音、今は全て見切って受け流し、弾き、防御している。爪、足爪、尾の先端には一切触れずに攻撃している鵡州の手足尾に逆にダメージが蓄積されていってる。 「(なぜカウンターを入れてこない?余裕を見せつける為か?いや、そんな感じではない……戦いの中で練習をしているのか?殺し合いの中で?)」 ラッシュを止める鵡州、今度は和音から仕掛ける。 「(なんだ……奴の攻撃は……)」 攻撃に合わせて爪と毒を食らわせるつもりだった鵡州、いつの間にか灼熱の打撃が胸に3発叩き込まれていた。 「グ……(何だ、反応できん……)」 和音の手足は動いて無い。動いたのは龍のオーラであり鵡州が意識していなかった為見えていない。 「ヌオオオオ!!」 打撃のラッシュを受ける鵡州、和音の動きとは別に大量の攻撃が襲って来る。和音の拳の連続攻撃が来たかと思えば全く違う角度から龍のオーラでの攻撃が当たる。 「ガハ……これは体に纏った力を……体の動きとは別に操っているのか」 「お前のおかげでオレはまた自分の力の使い方を覚えたぞ」 和音は太さ3メートル程の龍のオーラ尾で鵡州を打つ。弾丸めいて岩盤壁に叩きつけられた鵡州は毒液と血を飛び散らせて床にずり落ちた。 「ドラ……ゴン……」 鵡州の目に映るのは東洋の龍に近い姿のオーラの和音。 「そうだな……ドラゴン。オレはまだ【龍】に至っていない、その呼び名でいいのかもな」 「ククククク……最強の敵が……DMCの象徴と似ているとは何とも皮肉」 全身の骨を砕かれ満身創痍の鵡州は笑いながら言った。 「トキナガ(時田麻村)様こそDMCの象徴レヴィアタンの化身……あの姿あの力は圧倒的」 大量の血を吐いて意識を失う鵡州。それを見た和音は小さくため息をついた。 「レヴィアタンを名乗る怪人王か……」 天井を見上げる和音。携帯が鳴った。 「病院から……」 『諸田和音さんのお電話で間違いないでしょうか?』 「はい」 『担当医の神谷壊袁です。亜瑠さんが目を覚まされました』 頑なに苗字を名乗らなかった壊袁が名乗った。理由は神名に間違われるのを避けるためと彼の親友が神名で更に同じ医師という理由であったがその事は和音は知らない。 「そうですか、今すぐに向かいたいところですが立て込んでまして……用事が済み次第向かいます」 『わかりました、ご両親には既に連絡しています。亜瑠さんの事について詳しい話は病院に来られた際に致します、それでは失礼します』 突然の連絡に驚いた和音。 「遂に亜瑠が目を覚ましたか……」 和音は信じていた。亜瑠は必ず目を覚ますと。嬉しいというよりも安心した自分の妹は思っていたとおりの者だと。 和音は回廊の途中にある扉を開けて階段のある部屋を見つけた。そこから螺旋階段を上に登る。途中また地震が起きた。警戒しながら上の階層の扉を開けると。 「あ、和音君!!」 柄留が立っていた。頭から血を流し腹部は内出血している。 「なんとか無事のようだな。傷は痛むのか?」 「痛いけど動けるよ。また敵が出てきても大丈夫」 「無理はするな、オレがなんとかしてやる」 「えぇ~……ボクだって和音君の役に立ちたいよー。でも足を引っぱるのは嫌だなー」 「……柄留、亜瑠が目を覚ましたぞ。病院から連絡があった」 「えー!!マジでー!!よかったねー!!!」 「ああ、とっととDMCを潰して亜瑠に会いに行くぞ」 「うん!会いに行こう!!」 再び地震が起きた。警戒する和音と柄留、天井が開いてエレベーターシャフトが現れる。 エレベーターに乗って現れたのは――時田麻村と妻の樹玲。 「見ていたぞ貴様らの暴れっぷりを。男はドラゴン、女は白魔女とグレイマンの力を持っているな」 時田麻村は両手を組ながら大きく響く声で言った。 「お前らだけか?魔女とやらはどこに隠れている」 「知らぬ。あの魔女はDMCではない、協力者ではあるがな。ゆえに一々行動を把握しておらん」 「お前たちを潰した後で探すとしよう」「そだねー!」 「ハハハハハハハハハハ!」「ホホホホホホホホホ!」 時田麻村、樹玲の姿が変わっていく。麻村は黒と金の鎧を纏い大きな角が生えた悪魔めいた姿に、樹玲は白と金の鎧を纏った細身の悪魔の姿に。 続く
Jan 14, 2023
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諸田和音:マンモスの化石を実際に見た事がある。ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃33「殲滅・突撃」 ――和音の前に立ちふさがったのは2メートルを超える大男。オーバーオールに鉢巻を巻き、腕と足には金属製の防具が装着されていた。 「ここから先は警告を無視して進むと安全の保障は出来んぞ」 男は低い声で言った。 「わざわざ忠告してくれるとはアンタはまともな人間のようだな」 「引き返してくれるとこちらとしてはありがたいのだが?」 「すまないがその気はない。進ませてもらう」 「そうか……残念だ。お前を止めるとしよう」 恐るべきスピードで腰のハンドガンを抜き撃つ大男。和音は避けずに受け止める。 「やはり報告通りの男だな。私の名は範側馬之助、院瀬見に雇われた外部傭兵団BV(ブラックヴァリー)の一人」 「なぜ名前と身分を明かす?」 「それほどお前は大きな存在なのだよBVにとって」 「忍者集団がオレに興味を持ったのか」 「こちらに引き込むか、捕らえて調べるか、抹殺するかという話になっている。私が倒れるとこの街にいる全てのBVがお前を狙う事になるだろう。手段を選ばない忍者は汚いものだ、周囲の者も無事ではすまないだろう」 「言葉で揺さぶりをかけても無駄だ。オレは進んでDMCを潰す、邪魔をするならお前たちも潰すそれだけだ」 「24時間365日気を抜けない状況になっても良いのか?」 「お前たちこそ選択するのだな、オレと敵対するのかそのまま全滅の覚悟をしてDMCに付き従うのか」 「大した自信だな……流石これまでBVの上級忍者を斃してきただけはある。私をこれまでの者と同じとは思わない方がいい」 「いつまでも話しているつもりはない来るなら来い」 「チェリャアアアアアアア!!」 一足で和音までの距離を詰めて手刀を振り下ろす範側。和音は片手で受け止めた。 「ズリャアアアアアアアッ!」 突き手のラッシュ攻撃、全てガードする和音。下から突き上げるマシンガンめいたラッシュの連打力で体が浮いていく。 「ズエエエエエエエイ!!」 浮いた和音の体を右回し蹴りが捉える。放たれた矢の如く和音の体は後方のタンクに激突した。 「戦車もスクラップにする私のラッシュ、拳銃が効かぬお前でも堪えただろう?」 「……いいや?」 すぐにタンクから体を起こして着地する和音。 「成程な、これでは上級忍も手を焼くわけだ……だが私には奥の手がある。BVに伝わるこれがな」 ポケットから丸薬の瓶を取り出す範側。あずき色の三つの丸薬を口に入れ飲み込んだ。 「ヌウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」 範側の全身の筋肉が盛り上がる。皮膚が黒く変色していく。 「体のリミッターを外し限界まで力を引き出す……もう止まらんぞ」 和音はゆっくりと近づいていく。 「リミッター外した程度で止められるのか?面倒だ、隠れてる全ての忍者どもを呼べ」 「慢心しおって莫迦が!!」 渾身の右ストレートを撃ち込む範側。和音は片手をそれを受け止めた。反発力で範側の小手は砕け散り肉が裂け骨が飛び出した。 「がああああああ……」 「こういう事だ。腕力の差などではない、お前の攻撃はオレに通じない」 「ウウウオオオオオオオ超業火遁の術!!」 口から大量の炎を吐く範側、和音に浴びせかけられた炎は滑るように弾かれて流れていった。 「ウウオオオオオオオ超雷撃遁の術!!」 左手の指先から電撃を浴びせる範側、電撃は四方散って消えていく。 「ウオおおおお超岩石遁の術!!」 範側の足元から伸びる鍾乳石めいた鋭い土石、和音に触れると脆くも砕け散る。 「ウオオオ超強酸水遁の術!」 腰に下げた水筒の水を強酸にかえて和音に浴びせかける。しかし触れた瞬間蒸発して消滅する。 「……」 「理解できたか?」 「何故だ……あり得ないこんなことは……30年弱血のにじむ修行をしてきた私がこんな……只の子供に」 「退け、怪我人を出したくなければ周囲の忍者も一緒に去れ。オレに蹂躙する趣味は無い」 「ぐうううおおおおお!」 左手に電磁ショックナイフを持って連続突きを放つ。切っ先は割れ電気ショックが範側に跳ね返る。 「ぐぇっ」 痙攣して地面を転がる。 「もういいだろう……オレは行く」 「こんな……事……受け入れられる……もの……か」 和音の全身からは青みがかったオーラが発せられその形状は龍を思わせる。 和音は後方に柄留の気配を確認して風のように速く静かに第五地区第三工場構内を進む。 「忍者たちは離れたまま様子を伺っている……か」 中央塔の前に到達する和音。数十人のアーマー兵、装甲車に戦闘ドローン、ミサイルランチャーを積んだ戦闘フレームが見える。 「ここまで警備を厳重にするという事は間違いない……か」 「PIPIPI……」 ドローンに発見される和音、情報共有されている警備全員が向く。 「これは正面突破しか無くなったな」 装甲車の機銃、ドローンの銃口、アーマー兵のアサルトライフル、戦闘フレームの大砲全てが警告なしに一斉射撃を開始した。和音は半身で中腰になり両腕をクロスして防御を固める。 「……」 一斉射撃は10秒間続き辺りには硝煙と砂埃が巻きあがっていた。 「熱い」 口から炎をチロチロと漏らしながら歩く和音。胸は服の上からでも分かるほど赤熱の色を帯びている。 「吐かせてもらうぞ」 和音が口を開けると青白い光の帯が一直線に走った。そして次の瞬間膨大ななエネルギーが放たれ中央塔の壁面に衝突、爆風が周囲に広がる。 爆風に巻き込まれた装甲車はひっくり返り、ドローンは全て粉砕、アーマー兵は沈黙、爆風を一番近くで受けた戦闘フレームは大破して起き上がることができない。 「マジで飛んでもねーのが来やがりましたねぇ」 中央塔の壁面に開いた穴から人影。 「DMCか」 「自己紹介ってのは大切だよな、DMC幹部の根賀シトム」 頭部が象の怪人が落ち着いた声で言った。 「DMCは今日解散する、時田麻村に会わせろ」 「DMC解散~?解散ねぇ……ボスがいなくなってもメンバーが消えるわけじゃない。名を変え形を変え復活するが?この街ではこういった組織は必要不可欠なんだよ」 「だが潰す。詐欺賄賂人身売買ドラッグ破壊行為人間狩り……カルト教団を隠れ蓑にしてお前たちはやりすぎた」 「街に来て日も浅い子供に何が解る。善悪だけで世の中は判断できない、DMCのメンバーの中には悪人しかいないとか思っちゃう奴か?」 「時田麻村に会わせる気が無いならここで斃す」 「返り討ちにするぞ」 根賀は長い鼻を前に突き出し大きく息を吐いた。鼻の先から冷気が放たれる。 「冷凍保存かそれとも粉砕か」 「……」 和音は両腕で冷気を受けながら前に進む。 「マイナス180度の超低温ブレス……どこまで耐えられるかな?」 冷凍息の出力が増す。マイナス180度の猛吹雪が和音を襲う。 「マグマすら一瞬で凍結させるぞ!もう聞こえないだろうがな……」 和音の後方に倒れているアーマー兵、ドローン、装甲車、戦闘フレームは吹きつけられた冷凍息によって凍結している。 和音は歩みを止めずに一歩一歩進む。 「んん?まだ動けるかだが時間の問題だ俺は10分以上この冷凍息を吐き続けることが可能だ。お前はもうどうしようもない」 「……10分も必要ない」 和音に浴びせかけられた冷凍息は龍のオーラによって熱交換。再び和音の体に灼熱のエネルギーが溜まっていく。 「何……?」 じりじりと迫る和音に焦りを感じ始める根賀。だが動く事はできない、冷凍息を吐いている間は足を止めなければならない。一度中止して再度放つには間があり最大の冷凍息の出力に達するまで10秒ほどかかる。先ほどまでの和音の戦闘を見て根賀は10秒の時間を和音に与えることは危険だと理解していた。 「(クソぅ……不意を突いて一気に仕留めるつもりが奴がここまでタフだとは……接近されれば勝ち目はない。あの超破壊のブレスを吐かれても同じ)」 根賀はこのまま冷凍息で和音を凍結させる他無い。 「……」 和音と根賀の距離は5m。 「(止まらねぇ……近づいてきやがる……どうするこのままでは)」 3m。 「(負けを認めて油断を誘うか?いや、ダメだコイツに通用する攻撃が思いつかない)」 2m。 「(……コイツなら時田麻村に勝てるかもしれない。いっそのことDMCを潰させて俺は逃げのびてどこかで再起を図る方が……)」 「捕まえたぞ」 根賀の長い鼻を握る和音。青白いオーラは先ほどよりも濃く龍の輪郭を形どっていた。 「ま、待て。負けを認める!時田麻村の居場所を教えてやる……だからもうやめてくれ」 「いいだろう。その前にこの鼻は潰させてもらうこれ以上冷凍息を吐かれては困る」 和音の両腕が青白く光り根賀の象の鼻を雑巾絞りの要領でねじ切った。 「うぎゃあああああああああああああああああっ!!」 「さぁ時田の居場所を教えろ」 和音は後から追って来る柄留の為に冷凍息を吐く根賀を潰しておきたかった。捻じり切った鼻を捨て大きな耳を掴む。 「最上階にいるはずだ……この塔はエレベーターは無い。各フロアーの階段を登るか時田だけが知る地下への入り口から一気に上に行く装置を見つける事だな」 「この塔は何だ?」 「DMCの試練の塔……表向きは院瀬見の電波塔。この塔でDMCの所有するドローンなどの機械を制御している。最上階は儀式の間=制御室だ」 「そうか……あと幹部怪人はどのくらいいる?」 「後三人……なんだが時田はこの塔にDMCの怪人らを集める号令をした……」 「集まる前に時田を斃す。怪人で溢れかえってしまえば奴に逃げられるからな」 根賀を解放して穴の開いた壁面から中に侵入する和音。薄暗く人の気配は無い。階段を探して回廊を進んでいると建物が揺れ出した。 「地震か?」 小刻みに揺れる不自然な地震、1周回って戻ってきた和音はすぐに違和感を覚えた。 「……外が見えない」 開いた穴から外の景色は見えない。濃い霧で視界は覆われている。 和音は警戒しながら龍オーラで包んだ左手を壁面の穴に入れる。少し先に岩盤のような物があった。 「どうなっている……オレが入ってきた場所ではなくなっているのか?」 *** 「うわぁ……めちゃくちゃになってる」 中央塔に到着した柄留が目撃したのは和音の戦闘後の様子。ドローンの残骸に動かないアーマー兵、転倒した装甲車、壊れた戦闘フレーム。中央塔の壁面には大きな穴が開いていたがすぐ中にもう一つの壁が見えている。 「和音君は……いない……」 「シシシシシシ……」 「誰だぁ!」 二重になっている中央塔の壊れていない奥の壁が開き中からシルクハットを被った異常なまでにやせた黒スーツの男がステッキを持って現れた。 「誰だと聞かれれば答えなければいけませんね。吾輩はDMC幹部の大城悟です」 深くかぶったシルクハットを上げる大城、金色の体毛に覆われた猿顔が見えた。 「ボクは柄留!……やっと虫じゃないのが出てきた。こんどは猿かぁ」 「ここで貴女を完膚なきまでに叩きのめしDMCの威光を示しますお覚悟を」 一礼した後ステッキを上に半身で構える大城。 「む?今度は杖術??じゃあこちらは……デモンズエッジ・スキャバード!!」 鞘と剣を繋げて両端が鋭い杖を両手に持つ柄留。 「面白い女(ひと)だ。杖術に対抗しての棒術とは」 「二刀流にしてもよかったんだけどデモンズエッジ・スキャバードがこれがいいってさ」 デモンズエッジ・スキャバードから流れるのはどうしても超えたい剣士がいたある男の思い。一度敗れ新たな技術を身に着け至ったのが棒術。そしてついに再戦でその男を負かせた。棒ゆえに使い潰され幾度も新しいものへと棒術の主は変えていった。しかし主の思いは棒に伝わり、破損した後も追い次の棒へと繋げてきた。 最強と言われた剣士を倒した棒術は現代でも形を変え警察組織で習得されている。 「君は集合思念で棒としての名前は無いよねぇ……とりあえず権ちゃんでいいかな」 「フム……」 猿怪人・大城の顔つきが変わった。目の前の柄留という少女が絶対に舐めてはいけない相手だと瞬時に判断し切り替えた。 「セイ!」「ヤァ!」 杖と棒が激突する。二撃目に移るか捌きからの体術に移るかお互い刹那の時に思考をめぐらせる。二撃目から突きに入りたい大城、半歩体を入れて体術に移りたい柄留。再び棒と杖は激突してそこから十合、マシンガンめいて撃ち合う。 「……吾輩のスピードについてくるとは」 「えぇ~……思ったより速いじゃん」 大城は大きく後ろに飛んで構えた。 「素晴らしい……もっとこのままやり合いたい所ですがこれは交流でもありません決闘。早々に決着を付けさせてもらいます」 「む……なにか仕掛けてくる……」 弾丸に対しても反応できる柄留。あの杖の先から何かが飛び出しても防ぐ自信はあった。 「ん?あれ??」 大城の体がブレて分身が現れる。徐々に左右に広がり遂に9体となった。 続く
Jan 9, 2023
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柄留:一部の虫が嫌いReviveTheGunSword灰蘇の剣銃32「続・デモンズエッジ・スキャバード」 加州清光は言っている。欠けてしまって彼の元を離れる事になってしまった。 もし欠けなければ―― もっともっと彼の役に立てただろうか……と。 「加州清光を再現したというのか?ならば意味は無いと言っておこう。鋼鉄も切り裂くこのフォトンブレードを前に鋼の刀身など無力」 現田は八相構えをとりながら言った。 「デモンズエッジ・スキャバードは魂の形つくるもの。ツクモ神と言えばわかりやすいかなー?」 柄留は目を青く輝かせながら言った。 「……科学では証明できないオカルト的な力であったか。ならばその幻想打ち砕いてくれるわ!!」 「行くよ加州清光、君の大好きだった主の事ボクにもっと教えてよ」 柄留の目が青く輝く。充血していた左目は回復し光が宿る。 「デエエエエエエイ!!」 現田は小手を狙ってからの連撃を放つ。柄留は最小の動きで軌道を反らせて突きを隙間に差し込んで行く。現田の指と手に傷を負わせた。 「ちいぃ……」 「ほうほう……大体こういう動きなのね加州清光」 「速いな、だが浅かった」 「今のは試運転だよ……次が本番、覚悟するんだね」 空気が張り詰める。異常な殺気を感じた現田は大きく下がって構えなおしジリジリと間合いを詰める。 「すぅうううううう……」 柄留の呼吸と共に殺気は更に上昇。全身から立ち上る力によってデモンズスキャバードの羽織がはためく。 「デェエ「そこだ!」 現田の動き始めに合わせる柄留。後の先を完全に取り、刹那速く動く。 輝きを増した加州清光の切っ先が現田の喉、胸、左脇三カ所に突き刺さる。 超合金性のアーマー、虫外骨格をものともせず豆腐のように貫いた。 「が……は……」 現田はたたらを踏んで後ろに下がる。 ――刀剣での刺突は深く突き刺されば食い込んで次の動作までに時間がかかる。斬撃と違い攻撃の終わりから返しの次の動作へと移れない。威力は高いが外しやすくリスクが高い。 だが柄留は加州清光から刺突を得意とした主の剣士の情報を元に、自身の力を上乗せしてその戦法を使う。 「(三段の突きを一つに。ただ速さを追及するだけではなく二段目の突きは一段目の突きを消すように、三段目の突きは二段目の突きを消すように)」 一つ目の突きで得た反動で加速して二段目を放ち更に反動で加速して三段目を放つ。 「(突いて押すんじゃない、突きの斬撃をそこに置いて引く――地面を蹴るように、切っ先で反動を)」 柄留の持つ加州清光の切っ先は周囲を明るく照らすほど光を増す。 「大丈夫、解るよ加州清光。君の主の剣技、そして目指していた所……君はもう欠けない、欠けさせない。剣の白魔女の名にかけて」 剣の白魔女ミレーヌの思考パターンが柄留に流れる。 「はぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 「お、おのれ……!」 現田は突きの構えを取る。リーチで勝る為このような行動に出た。 「来い、来ないならこちらから行く」 「返り討ちで串刺しにしてやる!!」 現田が言い終わったと同時に柄留が飛び出す。それは予備動作も無い突然の突進。ふいに放たれた弾丸を思わせるその動きに現田は反応できない。 現田の頭部、胴体、下半身が三つに分かれてその場で千切れ飛ぶ。まるで体の内部から斬撃が爆発したかのように。 「ぎゃばああああああああああっ!!」 「……絶技・三段突き」 柄留は刀身を左の肘を曲げて挟んで羽織で血を拭う。加州清光と羽織はデモンズエッジ・スキャバードの光となって柄留の体の中へ消えていった。 「大勝利~……蟻アイよりも強かったかなこのゲジ怪人」 目の青白い光は消えていつもの柄留に戻る。 「ん?ボクの携帯にメッセージ?」 いつもの読めないメッセージか来たかと柄留は小さくため息をつきながら表示。 「あれ?」 【警告:白魔女ミレーヌ・ジンデル所持のデモンズエッジ・スキャバード不正使用】【エラー:強制遮断失敗 再接続失敗】 【通知:通常モードに移行を確認】 「読める!!読めるけどなにこれ……どういう事??」 携帯を眺めて眉をひそめていた柄留、和音が進んでた方向から聞こえてきた大きな音に反応する。 「和音君の行った方からだ……DMCが出てきてるのかな」 腰を落として力を溜めてジャンプする。横に連なっているパイプに飛び乗り見渡す。 「向こうかな?」 パイプからパイプに飛び移りパルクールで高速移動。大きな倉庫の前に着地するとそこには和音ではなくまたもや甲冑姿の大男。 「カッカッカー!!飛んで火いる虫とはこのことよ」 「は?虫はお前でしょ!?和音君はどこ?」 大男の頭部からは二本の長い触角。 「一応聞くけどお前は何の虫?」 「蜚蠊(ゴキブリ)……の五木……DMC制圧隊隊長」 「おえー……ゲジの次はゴキかぁ……マジでキショいんだけど」 「ククク……その嫌悪感は俺にとって武器……」 背中から脂で濡れる切っ先の太い青龍刀めいた刀剣を両手に持った。 「嫌悪剣蜚蠊!解くと味わうが良い!!」 床に伏せる五木、脇からゴキブリの足が飛び出す。そして急ダッシュ急停止を繰り返す。 「うわ……キモ……」 「この嫌悪剣蜚蠊でこれまで18人を葬っておる……ククク……超低空から緩急をつけた遠心力を乗せた二刀の攻撃。宙に飛べる者でなければ全て回避は不可能!!」 「デモンズエッジ・スキャバード!今度は肥後同田貫宗広、君だ!!」 反りが浅く豪快な波紋無骨な日本刀が姿を現す。鞘のデモンズスキャバードは分裂して頭巾と笠に変わる。 「ムムムム!?なんじゃいその恰好時代劇の用心棒かいな?」 「違う……人斬りだよ……」 残りのデモンズスキャバードに肥後同田貫宗広を納刀する 腰を落として柄に手を掛けて抜刀の構えの柄留。 「フウム?居合切りかいな??」 「莫迦言うんじゃないよ。これは抜き打ち斬り」 「カッカッカ!なんでもいいだろうそんなもん!わざわざ納刀して強くなるとでも?加速なんかせんわ只のオカルト迷信ロマンだ!!」 「なら挑め、肥後同田貫宗広とその主とボクに!」 「お前こそ嫌悪剣蜚蠊を舐めるなよ」 カサカサと動き回り柄留の集中力を削ぎに来る五木。 「斬るのみ……」 肥後同田貫宗広とその主の思考が柄留に流れていく。 「ただ斬るのみ……」 肥後同田貫宗広は主の様々な思いを受けていたが、いざ人斬りの時には「斬るのみ」の一念だったことを覚えている。そこに怒りも悲しみも喜びも憎しみも存在しない。 ――無の境地。 「カカカカカ!『居合切り』などタイミングを外せば怖くない!片手の斬りつけなど威力は知れている。受けきって蹂躙してくれるわ!!」 「……」 柄留は間合いに入れば斬るという気ではいない。 間合いに入ったから斬るのではなく。 そこに駆け引きはなく斬れる時に斬る。ただそれのみ。 刀身の間合いに入り込む五木。だが柄留は抜かずに五木の斬撃をステップで回避する。 「カカカカ!抜けぬか?抜けんだろうなぁこの変幻時代の必勝の剣の前にはナァ!!」 「……」 ――まだだ。 独楽めいて回転する五木。ジャンプ回避した柄留の着地を狙って斬撃が襲う。 「足貰った!!」 「……」 柄留は独楽の回転斬撃に巻き込まれる事は無く、大道芸の笠の上で回る笠回しの毬のように上を転がる。 「なんだとぅ!?刃を全て見切って転がっている!?」 「……」 回転を止めて離れる五木。着地した柄留は再び柄に手をかけて構える。 「なんのー!!……嫌悪剣蜚蠊はまだやれる!!」 背部の装甲を開く五木。そこから展開される翅、不快な音を立てて羽ばたき始めた。 「嫌悪剣蜚蠊超奥義・飛翔吃驚突!」 「――!」 五木の目の前にいたはずの柄留が左に移動していた。 右足は大きく前に、左膝は地面着くほど低く、伸びた右手に握られた肥後同田貫宗広は鞘から抜かれており刃は上を向いている。下からの斬撃を終えた事が解る。 「な……」 左を向くと五木の体は斜めに傾いていく。バランスを崩したのかと力を込めるが傾きは止まらない。やがて地面に落ちそこでようやく自分の体に何が起きたのか理解した。 体は右脇腹から首にかけて切断されていた。地面から残った体を見上げる五木。 「何が起きた……」 「ただ斬ったそれだけの事」 絶命する五木。 柄留はゆっくりとそれでいて無駄のない動きで立ち上がって納刀する。鯉口は切ったままで完全に納刀はしない。その状態で周囲の気配を探る。 「そのタンクの影にいるな……」 「クヘヘヘヘ……ばれたか」 電磁二刀鎌を持って現れたのは蜘蛛に酷似した体を持つ男。 「今度は蜘蛛か」 「違うねぇ……ヒヨケムシの吉行!五木とは仲が悪くてなぁくたばってくれて良かった」 「――」 閃光めいて放たれる抜き打ちの斬撃。吉行の右腕を切断した。 「ギイイエエエエエ……」 「……外したか」 「いてぇじゃねえかよ……だが致命傷は避けさせてもらった」 柄留の被っている笠の端が破壊されていた。斬撃に合わせて吉行も鎌の一撃を放っていた。柄留の方が速く先に斬撃が右腕を捕らえたが吉行には見えていた。 「恐ろしい速さの斬撃だな……五木と違って俺の速さは瞬間のもの。だが誰にも負けねぇ自信はある……まぁつまりカウンターが得意って事」 「……」 「本当はカマキリになりたかったんだけどよぉ……何故かこんなヒヨケムシ……」 切断された腕はいつの間にか出血は止まり背から生えた腕が鎌を持ち直していた。 「次はとらえるぜ。お前の速さに驚いたがもう把握した」 「速さ勝負が望みか……デモンズエッジ・スキャバード……和泉守兼定」 「あああああん?」 「数々の和泉守兼定の中でもこの子は特に剣速に優れた主に使われていた子」 白柄の柄に変形するデモンズエッジ。笠と頭巾は腰に巻き付いて絹布帯を模した物へと変わる。 「それで何がかわるというのだ」 「……(雨粒が落ちるまでに3度斬りつけ3度納刀。空中の薪を8回切りつけ9等分)」 ――神速の剣技を持ちすれ違いざまに相手を斬りながらも立ち止まることは無い。そんな和泉守兼定の主は情に厚く助けを求められれば敵味方の区別なく手を差し伸べた。 剣の間合いでの瞬間的な速さなら先ほどの肥後同田貫宗広の主に勝る。柄留はそう感じ取った。 「――っ!!」 柄留から仕掛ける。相手の左側を取るように移動して3連撃。1撃目は吉行の鎌を弾き、合わせてきたカウンターの鎌攻撃の持ち手指を斬り落とし、3撃目は左手の鎌を弾き飛ばした。下がる吉行、柄留はズイと歩進め更に連撃を放つ。 常人離れした身軽さと体幹で間合いと機を見極め斬りつけていた肥後同田貫宗広の主とは違いこの和泉守兼定の主は筋力と持って生まれた才と鍛錬によって磨かれた技で繰り出す剣技の主。 「グエエエエエエエエエエ……!」 柄留の8連撃を受けて両腕を失う吉行。電磁の鎌二本は弾きと飛び後方に転がっている。 「バカな……人間が到達できる速さを超えたのがこの俺だぞ……貴様のような生身の小娘が何故……」 「剣の白魔女だからだよ」 袈裟斬りを入れる柄留。吉行は首から脇までを切り裂かれ両断された。 「ふう~……」 デモンズエッジ・スキャバードを解除する柄留。またメッセージが届いたが先ほどと同じだったので一瞥して画面を閉じた。 「三連戦だったけど……不思議とあんまり疲れてない。デモンズエッジ・スキャバードを使いこなしてきてる?やっぱりあれかなぁあまりにも凄すぎる人間離れした逸話の剣は呼び出すのに負担かかるみたいな?世界一有名な聖剣とか呼んだりしたら死にそう……そう考えたら菊一文字とかソハヤノツルギはここ一番で呼ぶくらいがいいのかな」 右手を見つめる柄留。 「亜瑠ちゃんはミレーヌと融合?してたからめちゃくちゃ使いこなせたのかも」 本当にミレーヌは蒐魅と融合して自分になったのだろうか?柄留はそう考えながら周囲を警戒する。 「早く和音君に追いつかなきゃ」 タンクの壁面を駆け上りステップを跳びパイプを駆ける柄留。その様子を七曲キョウヤは眺めていた。 「蒐魅とは違うもう一つの力ねぇ……」 動画を送るキョウヤ、すぐに折り返しのメッセージチャットが来る。キョウヤはサイバーフェイスに表示させて読む。 『引き続き監視を続けろ』 「了解~っ……と。さてさてどうなる事やら……この街の行く末は」 柄留とは違うルートで中央塔に向かうキョウヤ。 動画を送った相手はキョウヤの最優先される仕事の依頼主。 続く
Jan 2, 2023
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諸田和音:龍の力を持っている少年。柄留:二種類の不思議な力を持っている少女院瀬見:オータムホースシティを実質支配している大企業鈴村功太朗:院瀬見の良心とも言われているカリスマ。寛大で優しく礼儀正しい。鈴村影彦:功太朗の弟。臆病で卑屈だが行動力はある。兄にコンプレックスを持っている。 ReviveTheGunSword灰蘇の剣銃31 ――第五地区中央塔 怪人王トキナガこと時田麻村は妻の樹玲とソファに座りながらモニターを眺めている。その傍らには山羊の髪留めをつけた魔女。 「イレギュラーが発生したか」 「全く問題ないですよ。たかが二人始末すればいいだけです。問題はむしろLOKIの連中です。あれは完全に想定外ですね」 魔女はラウンジのワインを一口飲んで言った。 「だったらどうにかなさい!」樹玲が叫んだ。 「そうですねぇ……あれは放置できません。向こうはかなり準備をしてきたように思えますのでこちらも対抗手段を準備しますね」 「なにを悠長な……」 「私がパッと行ってLOKIと戦って始末してくればいいとでも思ってます?」 「できるならしなさいよ」 「何か勘違いしてませんかね?私は面白いからあなた達に協力しているだけなんですよ?命令なんて聞きませんし私は私のやりたいことだけしかしませんよ?」 「くっ……」 「まぁまぁ、仲良くしましょうよ。私はLOKIに興味が出てきたのです。でも好き放題されるのは宜しくないのでちゃんと対処しますよ。なので、あの不思議な少年と妙な少女の殴りこみはあなた達でどうにかしてください。怪人王夫婦の力見せつける時ですよ」 「……いいわ!あんなガキども私たちの敵ではない、あんたはLOKIをどうにかしてくればいい」 「ええ、ではまた明日会いましょう」 魔女は影に沈んで消える。樹玲は爪を噛み苛立ちを見せていたが、麻村は落ち着いて外の様子が映し出されているモニターを眺めている。 「樹玲、何も心配することはない。影彦派閥など所詮最小の派閥。勝った連中は思い上がっているに過ぎない。今この中央塔にはDMC怪人が集結している負けるわけが無かろう」 「え、ええそうね」 「DMC上級怪人の終結だ……LOKIのように今度はこちらが力を見せつけてやる番だ」 *** ――第六地区・廃校 「流石は影彦だな、行動の速さにはいつも驚かされる」 「……それだけが取り柄なんだ。兄には何もかも敵わない」 廃校のグランドに設置されたテントで鈴村功太朗と影彦は顔を合わせていた。 「今期中に第六地区の計画を進めなければならなかったんだ……まさか下半期に入ってすぐにこんなに話がまとまるなんて……兄の連れてきたLOKIは只者じゃないな」 「こんな血生臭い方法じゃなくて誰も傷つかないのが良かったんだが……結局先伸ばしにしても犠牲になるものが増えるだけなんだと気付かされたよ。LOKIのやり方は好ましくないが院瀬見の開発事業と第六地区の住民の説得、それと影彦との和解ができたのが大きい」 「……」 影彦はクリムゾンに取り付けられた心臓の鎖を1秒たりとも忘れられないでいる。 「LOKIと共に進むのは危険だとは思うが彼女らは命を賭けて自分たちの力を示して見せた。少なくとも派閥の連中よりは信用できる」 「兄は……いや、そういう所が人を惹きつけるのだろうな。案外LOKIとは元院瀬見の社員なのかもしれん」 「んーむ……自分ではよくわからん」 「それはそうとこちらの怪人部下を受け入れるように第六の人間語りかけてくれて感謝する……兄でなければ争いになってたはずだ」 「殺し合うだけでは何も解決しない。第六区の開発には影彦の部下の力も絶対に必要なんだ。第六区が開発されれば人々の生活も向上するそうすれば街全体も豊かになる」 「ああ、きっと」 功太朗と影彦のテントにクリムゾンとハートが入って来る。 「すっかり兄弟同士打ち解けたようですね。これからの働きを期待してますよ。面倒ごとや荒事はLOKIが引き受けますのでどうか仕事に専念してください」 クリムゾンの姿は骸骨ではなく若い女性、ハートはフードを外しピンクと水色のツートンカラーの髪が見えている。 「君たちはこれからどうするのだ?」 「第六区の調査ですね。ここが私たちの拠点となるので把握する必要があります。第六区を仕切っているG/Tの代表と回るつもりです」 クリムゾンは柔らかい表情を作って言った。 「そうか」 「心配しなくともしばらく院瀬見は第六区に戦力は送り込んでこないでしょう。調査の為に人は来るでしょうが。出来るだけ第六区にいる方が良いでしょうね」 「まぁ自分はそういう訳には行かないがね」 「ご心配なく、功太朗あなたが外出する時はわたくしか他のLOKIメンバーが付き添いますので」 クリムゾンとハートはテントを出る。 「クリムゾン様、功太朗のボディガードの火を吐く少年、銃のバカ女、長髪の探偵は監視しておかなくてよいのですか?」 ハートが言った。 「彼らは功太朗や第六区に危害が及ばない限り平気です。今は様子見しておきます、こちらから積極的に関わる必要もないので」 「はい」 「少年と少女はDMCなるカルトを攻撃するみたいですね。DMCは院瀬見と深い関係があると影彦に聞きました」 「クリムゾン様はDMCをどうするとお考えで?」 「放って置く気はありませんが優先順位は低いですね。少年たちが潰してくれるとありがたいのですが」 「彼らが失敗した場合第六区と功太朗にターゲットが向きますよね」 「いいじゃない、向こうから来るなら貴女や他のメンバーが思う存分潰せば。わたくしはDMCに負けるなどと微塵も思っていません、わたくしが揃えたLOKIメンバーはそんなやわな者達ではありません、そうよねハート?」 「勿論です!DMCが攻めてきたら皆殺しにしてやりますとも!!」 「鈴村功太朗を見つけて取り込めたのは良かったですわ。ハートが周辺調査を頑張ったおかげですわね。最初の予定ではゲリラ活動して力を蓄えるつもりでしたから」 「お役に立てて光栄です」 廃校の校庭に駐車しているSUV車の後部座席に乗り込む二人。運転席にはG/Tの木津彪助手席には兜金大河が乗っていた。 「もうええのか?」 兜金大河は消したタバコをダッシュボード横の缶に吸い殻を投げ入れて言った。大河の合図で車は走り出す。 「ええ、廃校の見張りは付けていますし鈴村功太朗は信用できる人物です」 クリムゾンはフードを被り纏わせている液体金属アンドロイド『来夢』を変形させて顔から外して骸骨姿へと変わる。その動きに合わせてハートも黒いフードを被る。 「そうかい……ま、それは俺も同意見やな。あの男は不思議な魅力がある。ああいう男が院瀬見で力を発揮できればこの街もかわるんやろうな。それはそうと何回かその顔が変わるの見たけど慣れへんな……ずっと女の顔じゃあかんのか?」 「クリムゾンとしてのわたくしの姿は今の骸骨姿。顔は対面用ですよ」 「じゃあさっきの顔もプライベートの顔とは違うと?」 「そうですねプライベートの顔はメンバーと親友にしか見せませんので」 「お前らLOKIを完全に信用することはできひんが……ビジネスパートナーとしてなら大丈夫な気がする」 「それで結構です仕事はキッチリとやりますよ。なので兜金大河、貴方もお願いしますね」 「ああ、わかっとる仕事は手を抜かん。それにLOKIの提案は悪くない。断った場合第六区の住民は行き場も無い事もわかっとる。お前らが最終的になにをしようとしてるのかは聞かん。ワシらはこの街で普通に生活で来たらそれでええんや」 「『院瀬見をぶっ潰せ~!』と酔っ払ったりトリップしたり暴れて騒ぐ、違法な手段やそのひぐらしで生きている第六区を変えられれば良いと?」 「衣食住のレベルが上がればそんな事せんようになる。まぁごく一部の連中は変わらんやろうけどそんなもん他の地区にもおるしな」 「貴方は見た目や風貌、声のイメージと中身はかなり違うようですね」 「ハ!お前のイメージする解りやすいバカな連中のお山の大将は全部消えた。G/Tが全部潰して解散させたからな。バカやって暴れるだけではこの街で生き残れへんのや。上の世代が残してくれたもんを消費して他の地区に敵を作っても何にもならん。こんな格好して武装してるんは身を守る為に戦わなあかんからや」 「自衛の為でしたか。G/Tとはただの反社会的組織ではないのですね」 「……まぁ大層な事を言ったがワシの思い描いてるG/Tの姿と現状はちと違うがな。お前のいう通りただの反社メンバーもおる。妹の蒐魅は一番の理解者やったがそれゆえに色々我慢できひんことがあってしょっちゅう喧嘩しとった」 「なるほど、是非その蒐魅と話をしたいものです」 「残念やが行方不明や。死んだかもしれんし……別人になったんかもしれん」 「何か事情があるという訳ですね。一つ言っておきたいのですがビジネスパートナーであってもわたくしやLOKIに対し攻撃的な者は容赦なく排除しますのでご了承を。そうならないように兜金大河貴方はならず者達を制御してくださいね」 「ああ、LOKIに喧嘩売っても何の得にもならんちゅうことを言っとく……話は変わるがお前ら諸田と柄留にはあまり関心ないんか?」 「そんな事はありませんよ。無視できない存在です特に少年の方は」 「あいつの関心は今DMCに向いとる。その後どうなるかは知らんぞ」 「なんです?その言い方、まるで次はLOKIと対立するかのような」 「LOKIのやり方がえげつない、だから気をつけろと言いたいだけや。せっかく第六区が変わろうとするときにアイツらと揉めるのは勘弁や」 「まぁまぁ……LOKIは基本目立つ行動はしません今回は特別にアピールも兼ねての行動だっただけですよ。目的はこの街を良くする事ですのできっと少年にも理解してもらえるかと」 「アイツと初めて会った時、ワシと同類の者かと思ったんや。特別な力を持った少し周囲の人間から浮いている存在ってな。でも違った、アレは少しなんてものじゃあ無い。さっきのアイツの暴れっぷりを見てそう思った。人間がどうこうできるレベルではない災害の類やぞ」 「災害が起きた時どれだけ被害を抑えることが出来るのか、それをできるのも人間だけですよ。人間離れと言えばわたくしも相当なものだと思いますけど?」 クリムゾンは自信満々で顔を半分整形してすぐに骸骨に戻した。 「冗談はさておき、忠告はありがたく受け取っておきますね。他のメンバーにも変に刺激しないように言っておきます」 「アイツは何も無い時にはただの優男に戻るはずや。この街で異常な悪意と怪物に遭遇したせいで目覚めさせてもうただけやと考える」 「随分とあの少年の事に詳しいのですね」 「ワシも力に目覚めたのは同じような状況やったからな。妹がバカどもに喧嘩売られて両腕失った時に悔しさと怒りで目覚めた」 「なるほど……」 クリムゾンは直ぐに和音の対応を考える。LOKIは表向きはこのまま鈴村功太朗のビジナスパートナーとしての立場を変えずに行動すると決めた。和音と柄留と対立しても負ける気はしなかったが対立しない事に越したことはない。 それと―― 大河の話で和音の力に興味がでた。解明して自分たちに活かせないかと考える。 クリムゾンらを乗せたSUV車両は第六地区の砂利道を走る。 *** 和音と柄留の乗ったサイドカーは第五地区の院瀬見重工第三工場のゲートで停車した。その後ろから遅れて七曲キョウヤのバイクが停車。 「第五地区は広いっすからねぇ……闇雲に突撃しても怪人王は見つかんねえよ?」 七曲キョウヤは端末からホログラム立体地図を表示させて言った。 「あのそびえたつ中央塔にいるのだろう?だったらここから最短距離で進むまで。奴らはもうオレたちが来たことを知っているはずだ」 「え?そうなの和音君?」 柄留はサイドカーから飛び降りて言った。周囲を見渡すが人の気配はない。 「人払いをすませて監視用のドローンが飛んでいる。迎え撃つ気満々なのだろうな」 「なるほどねー……にしてもドローンめちゃくちゃ飛んでて鬱陶しい。撃ち落としていいよね?」 柄留は右手からデモンズエッジ・スキャバードを出現させる。純白の鞘は血管のようなものが脈打っている。 「ソハヤノツルギ!でえええい!!」 いつもよりもスムーズに刀剣を形作る。柄の無い剥き出しの刀剣を鞘から引き抜くと青白い光を帯びていた。柄留は遠心力をつけて円盤投げの要領でドローンに投げつける。 光輪と化したソハヤノツルギは次々とドローンを破壊して飛翔する。周囲100mの範囲にあるドローンを全て破壊して戻ってきたソハヤノツルギを鞘で迎えて納刀した。 「どんなもんだい!」 「上達したのか」 「うん、蟻アイと戦った後から調子いいの。グレイブラスター控える分こっちで頑張るよ。いざって時に全力全開出せるようにね!」 七曲キョウヤはその様子をサイバーマスクで撮影し端末に記録していた。 「俺っちは離れて後から付いて行くよ和音君や柄留チャンみたいに強くないからねぇ」 「勝手にしろ」「なんかあってもボクは知らないからね」 「コソコソさせてもらうぜ~早速なにか来たようだしなぁ」 ゲート横の守衛室から現れたのは甲冑をモデルにした強化スーツを纏った男。 「侵入者、お前たちを排除する」 腰に差したフォトンブレードを抜く甲冑男。柄留が前に出る。 「ここはボクに任せてよ和音君」 「解った」 柄留の横を通りぬける和音。甲冑男はそれに反応して飛び出す。 「おっと、お前の相手はボクだよ!」 金属すら切り裂くフォトンブレードをデモンズエッジで受け止める柄留。 「む……怪人強化と特注スーツとフォトンブレードを持つこの俺の刺突を受け止めるとはな……」 「へぇそう……なんの怪人なのかな?」 「蚰蜒(ゲジ)」 「うへぇ……ゲジゲジかぁ」 甲冑ゲジ男の高速9連斬撃を全て捌ききる柄留。その様子を見た和音は先に進む。 「俺は現田重高……第三工場警備主任」 「柄留だよ。苗字は多分諸田になる」 再び9連斬撃を放つ現田、柄留は一歩も下がらずにフォトンブレードの鎬を弾いて捌く。 「この反応速度……貴様サイバネか」 「全然違う100%生身だよ。でもまぁ100%人間かって言われたら違うかも」 「そのような才能があるものをここで排除しなくてならないのが惜しい……」 現田は大きく後ろにとんでしゃがんだ。わき腹から無数のゲジの足が飛び出した。そし地を這うような姿勢を取り弾丸の如く突進する。 「見えてるよ」 迎え撃つ柄留。しかし現田は減速せずに直角に曲がって柄留の向かえうつデモンズエッジを躱し側面から動作の少ない斬撃で首を狙う。 反応した柄留はツイテールの髪を少し斬られながらも無傷で回避。 「ほう、今のを避けるか。一撃で楽に死ねたものを……」 「デモンズエッジ・スキャバード……加州清光」 デモンズエッジを一度納刀して再度引き抜く柄留。銀色の輝く刀が出現、切っ先は欠けたようなシルエットでまばゆい光を放っている。 「加州清光……だと」 「そう、この子がお前の相手にふさわしいと思ってね」 柄留は少し腰を落として平正眼に構える。デモンズスキャバードは鞘から羽織へと姿を変え柄留に纏わりついた。 続く
Jan 1, 2023
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