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2005.03.02

不思議の国のアリスとニセアリス　ＡＣＴ．１６　ビスケット

テーマ：オリジナルイラスト・小説・漫画・夢日記etc……。(1276)

カテゴリ：不思議の国のアリスとニセアリス

　しばらくすると、食べ終わった”もう一人”はこっちに向かってやって来ました。
口の周りにビスケットの粉がほんの少し付いています。

　何て卑しいのでしょう……。
しかも、自分だけ食べて………。

「アンタも自分の食べる分をそのスティックで出したらいいじゃない？！」
”もう一人”は見透かすように言いました。
そう言えば、食べ物などいくらでも出す事が出来るような気が……。

「（なんだ……。そんなに悪い人じゃないかも……）」

　アリスはさっそく、自分の食べる分を”お願い”しました。

「やったーーーーーー！！」
すっごく喜びました。
しかし……、

　”もう一人”のアリスがまたつかみかかり、ポケットのビスケットを1つ残らず横取りし、再び部屋の隅で一人で食べ始めました。

　ガツガツガツ……。

　再度、呆然……。

　アリスはどうしていいのか分からず……。
しばらく立ち尽くしていました。あの人はいったいどうしてこんな事をするのでしょうか？……

　ふと、アリスは思いつきました。
今、自分の”分”を出せば、”もう一人”はきっと奪いに来ないでしょう……。だって、今は”食べてる最中”ですから……。

　”お願い”しました。

　おいしそうなビスケットが出現しました。

「グーーーーーーーーー！（アリスのお腹が鳴る音）」

　お腹が減っていたアリスはそれを食べました。

　なんと言うおいしさでしょう！

　涙が出てきそうです。

　しかし、２個目を口に運ぼうとしたその時、またも”もう一人”がやって来てビスケットを奪い取ろうとしました。
懲りずにまた全部持って行こうとしました。
……アリスは奪い取らせるままにしておきました。

　前回同様、それを部屋の隅で食べる”もう一人”。

　ガツガツガツ……。

　アリスは気を取り直して、自分の”分”をまた出しました。

　案の定、相手はお腹いっぱいになったようで、満足気に床の赤いカーペットの上に寝転びました。
幸福そうです。
もうこっちに来る気配はありません。

　……しかし、しばらくしてから”もう一人”は　ゴロン　とアリスの方に寝返りを打つと、
「かに鍋は？！」と言いました。

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