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2012.02.24
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カテゴリ: 経済
中国の自己中心的なレアアース輸出統制があって以来、大使の中国観は修復不能にまで悪化したのである。
中国のレアアース統制 」というテーマを設けて延々とフォローしているのは、中国にたいする怒りもあるわけです。

中国はこの暴挙の代償として、世界中に敵対者を増やすという愚を犯したことにもなるのでしょう。
ということで、図書館で「ベースメタル枯渇」を借りてきて鋭意読み込んでおります。



ベースメタル
西山 孝・前田 正史著、日本経済新聞出版社、2011年刊、

<内容紹介より>
レアメタルばかりが注目される金属資源問題だが、リサイクルをはじめ誤った理解が跋扈している。たとえば、いまだに枯渇した資源は一つも見あたらない! 金属資源研究のプロが資源経済学のアプローチで問題を解明。

<大使寸評>
国家資本主義でないと起こし得ない「高値狙いの売り惜しみ」に世界は出し抜かれて、なす術もなく代替品の開発に着手したわけであるが・・・この際、メタル枯渇について備えるいい契機となったと思うほかないのです。

Amazon ベースメタル枯渇

この本の勘所を引用します。

<序章>
「資源があと何年もつか」というときによく使われているのが、耐用年数(埋蔵量/年間消費量)である。ところが、耐用年数は実際に枯渇する時期を表してはいない。現在の状況がそのまま続くと仮定したときの話である。新鉱床の発見や消費量の増減があると大きく変化する指標である。
 しかし、近年のウナギ上りの需要増加を見ると、人類が「資源の枯渇」という厳しい現実に初めて直面する日もそう遠くないのではないかと思わせる節がある。ローマクラブが『成長の限界』で1971年に指摘した資源の枯渇が、現実のものとなりつつある。というのは、中国やインドといった人口大国が急速な経済成長を遂げているために、これまでとは桁違いに速いスピードで消費量が増大しているからである。

 このような背景のなかで、わが国は、戦後の欧米キャッチアップ政策から脱却し、工業生産による国家成立を標榜している。そのためにハイテク産業の拡大を図り、さまざまなメタルを駆使して新たな機能的社会の構築に励んでいる。レアメタルをはじめとする多種・多様な資源を輸入し、その安定供給を図ることは社会の発展のために不可欠の条件となっている。
 2010年秋、尖閣諸島中国漁船衝突事件をきっかけに中国による事実上の対日禁輸がなされ、「レアアース危機」が一気に表面化した。(中略)その後、中国からの輸出が部分的に再開されたことから現在は小康状態が保たれているが、依然として輸出規制は変更されていない。この事件はわが国に深刻な影響を与えたのみならず、わが国のメタル供給体制の脆弱さを世界に露呈し、無防備で放置されていることが明らかになった。

<リサイクルの限界> p102~105
 リサイクルはどこまで進められるか。それはメタルの市場価格よりいかに安い費用で再生できるか、あるいは毒性のあるメタルでは社会的影響をどの程度軽減できるのかの二点に絞られる。
 リサイクルは、厳しいメタル市場で勝ち残れるコストでないと続かない。ときに、資源の枯渇がクローズアップされると、招来の不足分をリサイクルで補うことで資源問題がすべて解消するかの如く論じられるが、今後のリサイクルを推進するには、きわめて制約があることを念頭におく必要がある。経済的に合理性のあるリサイクルはすでに国際メタル市場のなかに組み込まれており、収集システム、メタル再生コストから、リサイクルの対象にならないものが残っている。

<近・中未来の需給予測の重要性> p168~169
 資源産業は組立工場と違い、来月から生産ラインを増やして増産できるようなものではない。だからこそ、近・中未来の視点で考えるとともに現未来への配慮は欠かせない。今回のように価格がどうこうではなく、まったく入ってこないとなれば死活問題になる。場当たり的な対応しか行ってこなかったツケが一気に表面化した事実を重く受け止める必要がある。
 レアアースが使われているハイテク製品の最終価格において、素材費が占める割合はごく小さなものである。したがって、産業界も政府も安定確保を軽視して、真剣に取り組んでこなかった。しかし、このままではすまされない。少し割高になったとしても、緊急の対策が必要となっている。

 問題はレアアースだけにとどまらない。わが国は、生産活動と国民生活の質を維持するための多くの資源を海外輸入に頼っている。安定確保に向けた抜本的な対策がとられない限り、第二、第三の資源危機を回避することはできない。今回の事件を踏まえて、早急に現未来の需給予測から始め、対策を立て直さないといけない。
 もちろん、近・中未来の対策も現未来と同様に重要である。耐用年数は現在の状況がそのまま続くことおを前提にしているため、非常に流動的である。たとえば、この30年の間、亜鉛の耐用年数はずっと20年程度のままで、縮まっていない。新しい鉱床が発見されて埋蔵量が増えたり、技術が進歩して経済的かつ合理的に回収できる資源も増えたためである。
 いたずらに耐用年数に振り回されるようなことは厳に慎まなければいけない。しかしながら、一方で銅をはじめ、亜鉛、鉛の新交渉の発見はいよいよ困難なものになってきている。いつまでも20年が続くとは考えられない。

<わが国の資源戦略> p170~172
 具体的に現未来、近・中未来に区分し、レアメタルとベースメタルの資源戦略をまとめると次の4項目になる。
(1)現未来におけるレアメタルの供給障害には、新素材の急激な需要増加による供給不足と人為的に作り出される突発的な障害の二つがある。たとえば、21世紀になって携帯電話や液晶テレビの爆発的な普及によりタンタルやインジウムの価格が一時的に5倍以上に高騰し、やがて価格は元に戻っているが、これは需要増加に対し新規鉱山の開発などに手間がかかり増産体制の確立が数年遅れたためである。類似した事例はほかにも多数存在する。
 このような時間的ずれを発生させないためには、わが国に先端技術産業と資源産業が一体となった組織を作り、現未来の需要量をあらかじめ産出し、この予測に基き鉱石から素材にいたるまでの流通にボトルネックができないようにつねに見張ることが肝要である。
 次にレアアースをはじめタングステン、ビスマス、インジウム、シリコン、白金、パラジウム、コバルトなどの資源は、特定国の政策や紛争などによる人為的な障害が潜在しているので、供給先の多様化を図り、生産国における極端な偏在が起こらないようにする必要がある。
 この場合も、先端技術産業と資源産業がリスクを共有し、政治問題、経済問題を含む広範な視点からコスト依存性に幅を持たせ、偏在を減少させ、流通にボトルネックができないようにすることである。

(2)現未来におけるベースメタルについては、世界市場が資源メジャーにより支配されているので、わが国が世界戦略に参入することは困難である。したがってレアメタルとは戦略が大きく異なり、わが国がリードして世界の安定供給が考えられるような立場にはない。わが国の資源技術、経済力、消費量を背景に、優秀な精錬所に適切な価格で、しかも滞りなく鉱石あるいは製鉱を提供できるように専念すべきである。
 このような状況から、資源メジャーの一部に参画し協力を深めて輸入品の安定確保を図り、また資源メジャーが対象としない中・小規模鉱山の独自開発を行い、資源確保とともに人材育成を目的にすることである。

(3)近・中未来におけるメタル確保は、おおむねこれまでに手がけられている事柄の踏襲、促進が主体になる。新鉱床の発見による埋蔵量の増加、メタル消費量を少なくする省資源化、代替材料の開発および実用化、リサイクルの四つである。
 レアメタルでは、新鉱床の発見が期待できるメタルも多い。想定される需要に呼応した探査・開発計画が重要である。また省レアメタル、レアメタルを使わない代替材料の開発、リサイクルも重要で、白金やジスプロシウムのように極端な埋蔵量の偏在から抜け出せないメタルでは特に必用である。

(4)ベースメタルでは、鉄、ボーキサイトを除き、銅、亜鉛、鉛は枯渇が心配される。これまでに枯渇した資源種はないが、中国やインドといった人口大国が急速な経済成長を遂げているためである。これまでとは桁違いに消費量が増大する。低品位鉱など準経済的資源の開発準備が肝要である。
 地球化学的に見ると、人類がこれまで使ってきた金属資源量、エネルギー資源量は地殻にあるものに比べるとわずかで、まだまだ余裕がある。しかし、現存の掘削技術、精錬技術に限定すれば、そう遠くない招来、人類は「資源の枯渇」という厳しい現実に初めて直面することになるかもしれない。

<あとがき> p191~193
 資源・エネルギー分野でも、資源統計などを容易に手にすることができるようになってきたが、一見、つじつまは合っているが視点を少しずらすと、現実離れした、あり得ない結論がしばしば誘導されている。さらに困ったことには、この議論に賛成意見や反対意見が重ねられ、矛盾が拡大していくことである。
 マスコミでもつじつまの合わない結論がもっともらしく報じられることがある。たとえば、2010年秋、尖閣諸島の事件を契機にレアアースメタルが供給不足になった。ハイブリッド車や液晶の製造ができなくなってしまう。この危機を乗り越えるためにもっとも有効な対策として、新規鉱山の開発や休止鉱山の再開が準備されている、代替品の可能性がある、リサイクルできるなどと華々しく報道された。
 見かけ上は矛盾していないが、前者と後者では時間スケールが全く整合していない。本文でも詳しく述べたが、新規鉱山開発によってメタルが製造されるようになるまで急いでも数年ではできない。
 レアアースを使わない強力な磁石が実験室で成功したからといっても実用化できるかどうかはこれからの話で、リサイクルも回収できるような多量の廃棄物が出てくるのはまだまだ先である。
 すなわち、資源開発では生産ラインを増やして来月から増産できるようなすばやい動きはできない。もしこのような対策が成功すれば数年先にはレアアースの供給は安定するということであって、在庫が数ヶ月もないときの解決策にはならない。
 このような矛盾が定着しないようにつねに心がけてきたが、まだまだ不十分で、随所に誤解が見受けられる。そこで、このたび出版のお話をいただいたことを契機に、事柄を改めて取り上げ、さらにわが国が今日解決しておかなければならない資源問題および資源戦略にも言及して『ベースメタル枯渇』としてまとめた。問題の所在はかなり指摘したつもりである。









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Last updated  2012.02.24 09:58:32
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