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2012.04.02
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カテゴリ: 歴史
ちょっと中断があったけど、あいかわらず『中国化する日本』を読み進めています。
すでに中国脅威論に染まった大使にとって、この本の読み方が、どうしても「敵の本質とは何か?」という読み方になってしまうのです。

それにしても、中国が嫌いなはずの与那覇先生は、そういう感情を表に出さず、中国を客観視して述べるところが、さすが歴史学者という感じで・・・・歯がゆいのです。

・真説日中戦争1p197~200
・真説日中戦争2p203~205
・真説「大東亜戦争」p205~

*********************************************************************
『中国化する日本』4 >目次

・真説自由民権p138~140
・工業化された封建制p167~169
*********************************************************************
『中国化する日本』3 >目次
・明朝は中国版江戸時代?p61~63
・窓際族武士の悲哀>p103~105

*********************************************************************
『中国化する日本』2 >目次
・「中国化」とは本当は何かp15~17

『中国化する日本』1

*********************************************************************

<真説日中戦争1> p197~200より
 かように内政面でも、脳味噌が江戸時代のままという状態の日本人が、「あの戦争」に至る過程で最初に手を出した地域が満州だったのは、当時の目線では千載一遇の幸運で、後からみると驚くべき不幸な偶然でした。
 なぜそういえるのか。それは、当時の満州が中国大陸のなかで唯一たまたま、例外的に江戸時代に近い経済や社会の構造を持った地域だったので、「このままやっていけば、江戸時代レベルのやり方でも中国全土を征服できるんじゃない?」という壮大な勘違いを日本人にもたらしたからだ、というのが大略、先の安富氏らによる最新の地域研究の成果です。
 江戸時代の近世日本というのは、農民が自分で作物を換金して納税するのではなく、全国各地の殿様が米のまま収税したものをわざわざ大坂まで運んで、そこでお金に換えるという、よくよく考えると何の意味があるのかわからない極めて不自然な財政構造を持っていました。あたりまえですが、社会の底辺まで自由市場取引が発達した近世中国にはそんなものはなく、日本人だって中世後期は代銭納な上に、鵜の目鷹の目で戦国大名が食料の分捕り合戦をやっていたわけですから、当時の死活的最重要資源である米が大坂1ヶ所に集まってしまうだなんてバカな話があるわけがない。
 ところが、満州という地域は自然環境上の制約から偶然、かなり広範囲な地域の住民が比較的少数の中枢都市にわざわざ出てきて、そこで売り買いして暮らすという(まるで江戸時代の大名のような)慣行ができていた。だったら、その地点さえ押さえてしまえばこっちのもの、現地住民は否応なく我々になびくはず―かくして、関東軍の奇襲電撃作戦(1931)が功を奏し、あまりにもあっさり日本は満州全土を征服してしまいます。
(中略)
「満州ではうまくいったじゃないか」という気分が抜けないまま、満州のようにたまたま江戸時代の日本と似ている地域でしか通用しない「将棋」型の戦略で中国大陸にまで手を出してしまった日本軍はしだいに泥沼にはまっていきます。首都(王将)を落とせば降伏してくるはずだ、有力政治家(飛車角)を引き抜いて傀儡政権を作ればついてくるはずだ、囲碁を将棋と勘違いしたままゲームをプレイし続けるこの発想が行きついた悲劇が、南京事件(1937)であり、重慶爆撃(1938~1943)です。
 ピカソによる絵画化で有名なドイツ空軍のゲルニカ爆撃(1937)は、国際法違反であることが明白だったのであのヒトラーすら、公式には関与を否定していたのですが、1年後の重慶爆撃は、おおっぴらに敵国首都の一般市民を無差別に爆撃することで相手国を早期降伏に追い込もうとする戦略爆撃のハシリとして全世界に報道されたわけですから、まことにわが日本が人類史上に誇る独創的な発明です―そのツケは、やがて日本人自身が東京大空襲や原爆投下という形で払うことになります。

日中戦争における江戸時代マインドについては、与那覇先生は明らかに批判的ですね。


<真説日中戦争2> p203~205より
 共産主義の大儀に依拠してゲリラ戦を指導した毛沢東はいうに及ばず、最近では蒋介石も戦争の初期から、短期決戦は利あらずとみて持久戦の覚悟と戦略を練っていた点が注目されています。1938年5月20日、国民政府の中国空軍は「人道遠征」を敢行。これは西日本の領空に侵入しながら、爆弾ではなく反戦ビラを撒いて帰還するという作戦で、当時は中立だった(というか日本に武器や資源を輸出して儲けていた)アメリカでも、中国評価が一気に高まります。戦時中の蒋介石は「儒教の本家たる中国に、儒教の分家たる日本が勝てるはずがない」と演説したこともあるほどで、力が通用しなければ道徳に訴えて国民を動員し、あわせて国際社会の支援先も日本から中国に切り替えさせて、世界を巻き込んで日本軍を撃破する戦略でした。
 すなわち、蒋介石も毛沢東も、まさしく中華の伝統たるグローバルな正戦論で、日本の江戸時代型軍事動員を凌駕しようとしたのです―そして、実際に凌駕します。やがて米国は日本に大陸からの撤兵を勧告して経済制裁を発動、追い詰められた日本が対米英開戦に打って出て以降のお話は、あまりに自明ですからここでは語りません。

 要するに、「あの戦争」とは日本と中国のふたつの近世社会が文字通り命がけで雌雄を競った戦いだったのであり、そして日本はアメリカに負ける前に中国に負けたのです。だって、アメリカとも戦わないと中国との戦争を続けられなくなった時点で、すでに負けじゃないですか。
『あの戦争になぜ負けたのか』式の著作は山ほどありますが、負けた相手をアメリカだと書いている時点で、まったくわかってないのと同じ。対中戦線と対米戦線の両方を含んだ「あの戦争」をいかに呼ぶかについては、右派好みの「大東亜戦争」から左派好みの「十五年戦争」「アジア・太平洋戦争」まで諸案がありますが、私の授業では「日中戦争とそのオマケ」と呼べと指導しています。対米開戦以降の太平洋戦争自体が、それまでの日中戦争の敗戦処理なのです。
 この「日本はなによりも中国に負けた」という本当の歴史の教訓を語ってこなかった点では、戦後日本の左翼も右翼も大同小異で、たぶん、それだけ認めるのが悔しい事実だったのでしょう。そのもやもやした屈辱感にきちんと向き合ってこなかったから、今頃になって「赤化したアメリカは最初から中共とグルで、日本はいっつも国際社会でいじめられっ子の被害者なんだ!」とでもいいたげな逆ギレ史観が出てくる。
 21世紀、中国がますます強大化するにつれて―くだんの新幹線事故を見るかぎり、技術的にはもうしばらく日本に分がありそうですが―外交や経済の面で「中国に負けた」と日本人が感じざるを得ない局面は、先年の尖閣問題あたりを皮切りに、たぶん従来よりも増えていくのでしょう。
「あの戦争」での対中敗戦すら心情的に処理できていない人々が、そんな時代に正気を保って生きていけるのか、私は不安を感じています。

 大使の憤りは与那覇先生言うところの逆ギレ史観なのかも?という気もしなではないが・・・・
中国人の前で、あの戦争で「中国に負けた」と思うのは耐え難いものがありますね。


<真説大東亜戦争> p205~
(追って追記予定)



著者インタビューの抜粋です。

「西洋化」に代わる物語を より
与那覇与那覇先生

発売後1週間で増刷が決まるなど、『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』(11月刊)が好調である。著者の與那覇潤さんは弱冠32歳の大学准教授。本書は著者のふだんの講義内容をまるでライブ録音そのままに、会話体で書き下ろしたものだというが、タイトルにある「一千年史」のとおり、院政の開幕/源平合戦から政権交代/ポスト3.11まで、1000年超の日本史すべてを斬新な視点で論じ切る内容が話題になっている。その狙いや執筆の舞台裏を、與那覇さんに語っていただいた。

――與那覇さんの本来の専門は明治時代の沖縄問題(*『翻訳の政治学』 岩波書店 2009)で、前著で扱っているのは昭和の戦争(*『帝国の残影』 NTT出版 2011)と、これまで近現代史の分野で研究をしてこられました。それが今回はそもそも、どうして一人で1000年分も書こうと思ったんですか?

與那覇:普通じゃないですよね(笑)。ただ、従来からよきにつけ悪しきにつけ、日本の近代化って「特殊」だ、といつも言われてきた。「よき」の方は「アジアで唯一の列強入り」や「奇跡の戦後復興」であり、「悪しき」の方は「歪んだ軍国主義」とか、「民主主義の不成熟」とか。でも、そういうこと言うならじゃあ、日本の近代化の歩みはいつどこで「歪められた」のか。その「特殊さ」の起源をつきつめて考えていくと、結局そこまで遡らないといけないことに気づいたんです。

――遡るといっても、普通の本なら明治かせいぜい幕末までで、日本が「欧米列強」と比べていかに「特殊」かを説明してゆくわけですよね。ところがこの本だと、なんと源平合戦まで戻っちゃうから、比較の対象も欧米ではなく中国に。

與那覇:はい。たとえば先日の*TPP論争でも「開国」や「黒船」にたとえられて、「どうして日本人はグローバル化がヘタなのか」とか、逆に「そもそもロクなもんじゃないグローバリズムに日本が合わせる必要があるのか」とか、議論されてましたよね。でも実はこれって、今に始まった話じゃないんですよ。中世の昔から日本は「グローバル・スタンダードに合わせるのか、日本独自の道をゆくのか」で揺れてきて、源平合戦も南北朝の動乱もある意味、全部それをめぐる争い。ただし、当時はヨーロッパなんて後進地域だったので、その「グローバル・スタンダード」は「中国標準」のことだった。

――それがタイトルの『中国化する日本』の由来なわけですね。

與那覇:そうです。第1章(※期間限定で無料ダウンロード実施中。2012年2月5日まで)に書いたことなんですけど、実際、日本史でいうと中世の年代に当たる宋朝以降の中国の国内秩序と、現在賛否両論の「グローバリズム」の国際秩序は、すごく似ていて。よく言えば徹底的な競争社会、悪く言うと弱肉強食の格差社会で、形式的には「平等」な条件で自由競争していることになってるにもかかわらず、実態としては猛烈な権力の「一極化」や富の偏在が起きている。そういう中国=グローバル社会のあり方を受け入れるか否か、で国論が二分されたから、日本は中世のあいだはものすごい内戦状態だったんだけど、結局、「受け入れない」という結論を出したおかげで、近世にはピタリと平和になって…。


「維新」幻想の蹉跌:なぜ改革は挫折するのか
今日の日本政治の停滞の要因は、かって江戸時代を行き詰まらせた諸要素と、ことごとく一致しているんだそうです。





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Last updated  2012.04.02 00:20:44
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