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2012.10.26
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日本の足元をみすかされ、値上がりした天然ガスを買わされている昨今ですが・・・

喫緊の課題として、日本のエネルギーのベストミックスとは何か?ということですね。

米戦略国際問題研究所所長のジョン・ハムレさんがインタビューで「原発ゼロ、米が危ぶむ理由」を説いているので、紹介します。
(デジタル朝日ではこの記事が見えないので、10/24朝日から転記しました・・・そのうち朝日からお咎めがあるかも)


Q:「原発ゼロ」は何が問題なのですか。


 結局、当面は天然ガスに大きく依存するしかないが、日本は輸入しなければならないので、日本国内のエネルギーコストは他の先進国と比べて、2倍から4倍にもなってしまう。それは日本の産業の競争力に跳ね返る。日本はすでに最もエネルギー効率に優れた国だからこれ以上、上げることは難しい。結局、日本経済は減速することになる。

Q:核不拡散体制への影響もあると主張していますね。
A:これは経済より複雑な問題だ。原子力には大きな期待がもてる一方でリスクも伴う。日本は核兵器(による攻撃)を経験しているから、核兵器に限らず原子力エネルギーに対しても忌避意識が強いことは理解できる。しかし、我々は商業原子力発電とともに生きているというのが現実だ。現在全世界では約400基の原発が稼動しており、その半数以上は、米日仏3ヶ国にある。日本がやめたからといって、世界は原子力発電をやめることはない。特に中国は今後30年間に、75から120基を新たに建設するとみられたいる。
 我々は、将来にわたって原子力エネルギーの広がりを管理するとともに、(核兵器の)拡散を防止することを国益と考えている。世界各国に対して、核の安全を説くことができるのは、自ら原子力の運用を行っている国だけだ。

Q:運用していないと、どうしてだめなんですか。
A:だれが耳を傾けるかということだ。日本に発言力があるのは世界で展開する商業用原子炉メーカー4グループに、日本の3社が入っているからだ。日本は商業用原子力エネルギー分野で世界の一大強国だ。しかし、原子力発電をやめてしまえば、その地位を失うことになる。
 もしそうなると、これから原発が新たに建設されるのは主に、中国、インド、ペルシャ湾岸諸国、ロシアになる。しかしいずれも拡散防止を先頭に立って推進する国ではない。不拡散は、米欧日が主導してきたものだ。3極体制が崩れると、不拡散の目的を必ずしも共有しない国々がより大きな影響力を持つことになる。それは日本にとっても好ましいことではない。世界は今より大きな危険にさらされることになる。

Q:しかし、欧州の大国ドイツは原子力発電の放棄を決めました。
A:深刻な過ちを犯したと思う。ドイツは我々と同様、不拡散のグローバルシステムを主導する技術力と倫理的権威を兼ね備える国家だからだ。それに日本が続いたら、世界の不拡散体制には重大な打撃となる。

Q:米国政府が、わざわざ日本に伝えたのはなぜですか。
A:私はもう政府の人間ではないので代弁はできない。しかし、米国は不拡散を支えるパートナーが必要なのだ。日本はこれまで最強のパートナーだった。日本が東京電力福島第一原発の事故で面目を失ったと感じているのはわかる。しかし、今後も(原子力に)積極的に関わってほしいのだ。

Q:朝日新聞が10月初めに実施した世論調査では、51%が30年代あるいはそれ以前に原発をゼロにすべきだと答えています。この民意を無視しろと言うのですか。
A:日本の政府も電力業界も、しかるべき指導力を発揮していないと思う。福島第一で起きた危機は、津波による破壊、メルトダウンによる放射能流出に加え、政府や電力会社に対する国民の信頼の崩壊という第3の危機も含まれる。三つ目は今も続いているし、政府は国民を守れるのかと、国民に不信感がある。これを何とかしなければならない。日本の経済と安全保障がともに先細りになってしまう。

Q:具体的にどんな措置をとるべきだと考えるのですか。
A:まずは、監視体制を強化することだ。これまでは原子力安全・保安院が経産省の内部にあり、まるで、野球チームのオーナーが審判もつとめているようなものだった。うまく機能するはずがなかった。これは原子力規制委員会が新たに作られたことで、一応達成された。しかし、実際に十分な機能を発揮するまでには時間がかかるだろう。その間、米国の原子力規制委員会(NRC)など国外の規制機関と連携して支援を受けるべきだろう。さらに、組織を強いものにするためには、有能な人材を雇い入れなければならない。政治指導者は、若い人たちに、この仕事は崇高で重大なものだと理解させなければならない。個人的には特別な給与の優遇制度も設けたら良いのではないかと思う。

 次に、日本政府は福島第一の問題から逃れようとするのではなく、逆に積極的な方針を打ち出すべきだ。具体的には『我が国経済にとって必用なので原子力発電を続ける。世界で最も安全で信頼できる原子力発電国になる』ということだ。政治的なリーダーシップが必用だが、完璧な工学的解決策で素晴らしい結果を出すのは日本のお家芸だ。

Q:原発の安全という点で、中国をどう見ますか。
A:核不拡散に加えて中国にはそんの問題もある。鉄道の運行や食料品の生産で安全が確保されていない国で、さらに100基以上の原発が建設されたらどうなるかということだ。だからこそ日本に率先垂範してほしいのだ。

Q:日本が原発ゼロ政策を進めた場合、中国がアジア太平洋地域の核の秩序に影響力を強めることも米国は懸念していませんか。
A:それも私の大きな懸念だ。

Q:野田政権は「原発ゼロ」の閣議決定を見送りました。これで、米国の不安はある程度解消したのではありませんか。
A:私が願うのは、日本が原子力発電の信頼回復に向けて前向きな政策課題を打ち出すことだ。後ろ向きの方針を取り下げることではない。

Q:理想論かも知れませんが、人類は最終的には、核エネルギーへの依存から脱却を目指すべきなのではありませんか。福島第一の事故で示されたように、放射能洩れや放射性廃棄物の処理など手に負えないリスクがあります
A:正直に言って、私は原発より化学工場の隣りに住むことの方が怖い。少なくとも今、米国では厳しく規制され、極めて安全だ。過去に重大な事故があったことは事実だが慎重に管理しさえすれば非常に安全になりうる。

Q:しかし、放射性廃棄物の処理の問題は残ります。
A:問題は使用済み燃料の再処理をしないで、他の国より多量な廃棄物を抱えている。ちなみにこのワシントンから約37キロ離れたところにも原発がある。30年近い運転で発生した使用済み燃料はすべて敷地内に保管されている。地上に設置されたテニスコート2面ほどの大きさの2層のコンクリート容器の中だ。廃棄物処理の問題は実態以上に大げさに語られている側面がある。

 これを言うと米国内で波紋が広がるのだが、私は使用済み核燃料は何らかの国際機関が厳しい監視のもとに回収し、再処理するのが良いと思っている。プルトニウムが核兵器に転用される恐れもなくなる。道のりは遠いが、最終的にはそれを目指すべきだろう。もちろん日本にも参加してほしい。

<取材を終えて>
 次期国防長官候補としても取りざたされるワシントンの超本流インサイダー。温和な人格者だが「原発ゼロ」批判は一切の妥協を許さない厳しさだった。世界の核秩序が崩壊するという強烈な危機感があるからだ。一方、米側では閣議決定先送りを受け「どうせ日本は実行できない」というゆがんだ安堵も広がる。
(編集委員:加藤洋一)


孫崎さんの27日ツイートです。








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Last updated  2012.10.27 06:43:24
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