椿荘日記

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マリ・デユプレシ

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けむり男と落ちてきたお月様~3


けむり男と落ちてきたお月様~4


その6


November 10, 2004
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カテゴリ: カテゴリ未分類
がたがたという、寝台脇の書棚の触れ合った部分の振動する音で目が覚めてしまいました。


晩秋の十一月になりますと、朝とは言え五時の空は未だ暗く、猫の爪の様な細い月が、二つ星を伴って墨色の空に浮かび、夜明けからの眠りを待ち兼ねている様です。
猛暑だった今年の夏は、昨年以来日課となっておりました、朝のお散歩が体力的に難しく半ば諦めていたのですけれど、十月に入りまして大分恢復して参りましたので再開し、空の白むのを待ってから、温かい服装で出掛けます。

マリのこの「椿荘」は家々の立ち並ぶ小高い丘の中腹にあり、自宅前の坂を少し上った辺りにある公園の、紅葉した桜の葉の色を仄暗い光の中で楽しみつつ、人気の無い何時もの道を辿ります。
喫煙者には益々肩身の狭い昨今の状況ながら、一向に止める気のないマリですけれど、家の中は元より、指定場所やお馴染みのお店以外では喫煙は控えておりますので、こういった場所では遠慮なく取り出し、澄んだ大気に紫煙を一筋燻らせながらの歩みは、やはり快く嬉しいものです。
夫は仕事のストレスの所為か、一年前から喫煙の習慣が戻ってしまい、もう一人、マリの身近の常習者と申しますとそれはマリの日本画の先生で、この方も大層な喫煙者ですので、二人分の副流煙をも引き受けなければならない身としては、当然幾分控えめとなるのは自然な運びでしょうか(苦笑)。とはいえ戸外で思い切り、澄んだ空気と吸う煙草の味は格別のもので、有毒とは思いながらも、止めることは惜しい程の楽しみは、悪魔的と謗られても仕方ありませんね(苦笑)。

季節ごとに目を楽しませてくれる各々のお庭のお花たちは、早咲きの山茶花、そして待ちに待った大好きな椿など、ぽつりぽつりとその可憐な姿を見せ始め、蝉の声や鳥の囀りなどの夏とは違ったお散歩の楽しみを思い出させてくれました。
桜並木の切れた辺りに、何時もですと、白く雪を頂いた富士山が鈍色の空を背景に、その薄紫色の姿を神秘的に浮かび上がらせるのですけれど、生憎靄が掛かって見えません。


朝は漸く白々と明け始め、業務を控えた黒塗りのタクシーが慌しく傍らを行き過ぎ、忙しい朝の到来を告げるようです。
途中立ち寄ったコンビニエンスストアの熱いお茶を手に、今日の予定を反芻しつつ歩き続けますと、まだ慣れない所為か、息が切れ動悸がして参りまして、少し短めに切り上げることとし、お散歩コースの終盤である自宅前の坂道が、朝日が微かに射し始めた向こうに見え、大分息の上がったマリをほっとさせてくれるのでした。







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Last updated  November 10, 2004 11:41:09 PM
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