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夢枕獏新潮文庫☆☆☆☆☆◎ 何となく、職場近くの図書館で借りた。この人の文章の特徴でもある、割と下の方に空間の多いページを見て、すぐ読み終わるだろうし、文庫なので荷物にならない、という非常に不純な理由だった。無論、裏表紙の解説が面白そうだと思ったせいもある。が、読んでみて、かなり好みの話が多く、今では「本に呼ばれた」んじゃないかという気分になっている。 「ころぽっくりの鬼」「微笑」「優しい針」「蛇淫」「髑髏盃(クバーラ)」「檜垣~闇法師~」「歓喜月の孔雀舞」の7編。どれも、非常に淫靡というか隠微な世界。「キマイラ」や「魔獣狩り」にアクションがつきものであるとすれば、この作品には男女の秘め事に血、そして死の世界が分かちがたく絡み合っている。私は特に「蛇淫」「檜垣」が好き。「檜垣」は冒頭だけちょっと変えて、人形とアニメーションで映像化されたら面白いんじゃないだろうか。それに琵琶法師の描写がいい。琵琶の描写もいい。そうそう、くだぎつねも好きだ。琵琶の音と般若心経で成仏していく元白拍子(だっけ?)という展開も好み。「蛇淫」は刺青の話。かなり不気味だが、そのインモラルさにかなり惹かれる。その次が表題作の「歓喜月の孔雀舞」と「髑髏盃」だ。この二つにはネパールが出てくる。その描写にもその場にいるような疑似体験ができる。更にヒマラヤだけでなく、日本の山中も出てくるのだが、その描写でもやはり、その場にいるような気分に浸れて、どこかしらない土地に行くのが好きな私には楽しい。こういった小説で疑似体験する方が現実の不都合を経験しないですむため、それはそれでいいものだ。 ミステリも好きだが、こういう小説もいいもんだ。
April 25, 2008
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柳広司創元推理文庫 ☆☆☆☆☆ 初めて読んだ著者。古代ギリシャを舞台に哲学者ソクラテスを探偵にクリトン(ソクラテスの友人)をワトソン役にアテナイに起こった不気味な事件を解決していく。 古代ギリシャ文学・思想・風俗に詳しい人なら、ニヤリとするような描写があるのではないかと思うが、残念ながら、私にはそんな素養はない。せいぜいピエール・ルイスの「ビリティスの恋歌」と比べた程度のものだ。(舞台と内容、もしかすると時代すらも違いすぎるので、はっきりいって意味がないが…) ストーリーは日常の細かな謎をソクラテスが解決していくのを導入に、大事件を解決、さらにそれが後のソクラテスの最後にも繋がっていく…という展開になっており、むしろ、謎解きの手法がミステリ小説の王道をいくものであり、それとは対照的に舞台は古代アテナイという日本では稀有(じゃないかと思う)の設定を用いているのも面白い。また、このアテナイの人々の生活の描写が面白いのだ。また、謎解きにとどまらず、そこからソクラテスの言葉を通して、現代の我々も考えなければならないことを示唆している。まあ、そこが私にはちょっとお堅い印象になってしまったが…。 私が一番面白いとおもったのは、作中の風俗だ。退廃し爛熟したアテナイの人々はそれでも、国力の衰えと外国からの脅威を感じ始めており、一部の若者には、民主主義国家アテナイと対極の全体主義的国家として描写される軍事大国スパルタへの憧れをもち、極端なまでに質実剛健に、男性性を強調した生活を身上とするものたちも出てくるし、在留外国人の立場にも言及されている。馴染みのない古代ギリシャの社会のはずなのに幾つかのキーワードには現代の日本人もドキリとする風刺がひそんでいるような気がする。 私のミステリの読み方のいつものことで、謎解きよりは、舞台の雰囲気に重きをおくせいもあるが、著者の他の作品も過去の偉人を探偵役にしたミステリのようなので、読んでみたいと思っている。新規開拓できて、ちょっと嬉しい。
April 20, 2008
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本島進慧文社 B6変形(189mm*128mm)並製(ビニールカバー付)☆☆☆☆☆◎ 買ってしばらく積読だったので、どこで買ったか記憶が定かではないのだが、奈良の本屋さんだったかもしれない。京都と奈良の歴史のある観光スポットに伝わる伝説が一冊にまとまっており、興味のある向きにはとても便利。嬉しいのは京都と奈良が一冊に収まっているところだ。かくいう私も重宝しそうだ。が、全500ページ余の大作なので、読み終わるのも時間がかかったが、持ち歩くのも重いかった。まだ通勤鞄ならいいが、一眼レフ抱えてこの本持って観光地巡りは(男性はともかく、自分には)ツライかな…。取り上げられた場所にはアクセスの交通機関と地図が収録されている。この地図も一つの場所に一つではなく、細かなエリアでまとまってスポットが掲載されているので便利だ。しかし、細密な地図ではないので、もしかするとちょっと分かり難いかもしれない。まだ実際にこの本を元に現地に行ったことがないので分からないが、方向音痴の自分は迷いそうだ。 取り上げられている伝説の数も非常に多く、割とこのテの伝説には詳しいつもりだったが、知らない話がいくつもあった。歴史・伝説巡りの旅行にはとてもいい。特に事前に目的地をきっちり決める時にはとても役立ちそうだが、行きの新幹線どころか(奈良の場合)大和路快速や近鉄の中で一日目の目的地を行き当たりばったり決める(前夜から翌朝にかけて翌日の目的地は決める)私は持参しなければならない。繰り返すが、ちょっとそれには重い。帰宅してから該当の土地の伝説を見ると、見逃したスポットを発見しそうで悔しい思いをすること間違いなさそうだし…。 とはいえ、歴史・伝説・伝承を訪ねて奈良・京都を旅する人間にはとても嬉しい本だと思う。こんな本にめぐり合えて嬉しい。
April 18, 2008
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家守歌野晶午光文社カッパノベルズ ☆☆☆☆◎ 再読。いくつかのストーリーは覚えていた。ストーリーにいくつか関連があればもっと面白かったのだが、連作とはいっても各作品に関連はない。だが、再読しても楽しめた。
April 6, 2008
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「信濃の国」殺人事件内田康夫講談社文庫 ☆☆☆☆◎ こちらは「信濃のコロンボ」こと竹村岩男警部のシリーズ。実はこのシリーズ、テレビドラマの警視庁捜査一課のエリート、岡部警部を小説で読みたくて借りてきたのだが…前と同様、出てこなかった。これは信濃…じゃなかった、長野県民が、ならずとも?、愛唱されている「信濃の国」という曲にちなんだ作品だが…私、この曲知らないし。また、浅見光彦シリーズが日本国中を舞台にしたものなら、こちらは、作者の長野への愛着が前面に出ている。また、その愛着があるからこその「けなしつつ、ほめる」長野県評が面白かった。確かに言われてみると、長野県民気質って描写されている通りだ。また同シリーズに作家出身の元長野県知事が出ていたりするが、この作品にも実在の人物へのちょっとしたいたずらが仕掛けられているそうだ。 ストーリーはこちらの方が本格的なミステリ。読んでいて展開がしっくりくるのはこちらの作品。といいたいが、ちょっとこの結末は他にやりようがなかったのかな、と思わないでもない。
April 2, 2008
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ユタが愛した探偵内田康夫徳間文庫 ☆☆☆☆◎ 沖縄に行きたくなって読んだ本。実は、前の職場絡みでも思い出に残る一冊。物凄い初版部数だったのを覚えている。 ちょっと時代背景が古くなってしまったのは残念だが、そこらの観光ガイドよりも土地の雰囲気が分かりやすいので好きなのだ。まあ、ストーリーは土曜日の21時あたりからやるのに丁度いいくらいだけどね。だから、私の頭向きでもあるんだけど。 私が生まれた頃にはまだパスポートが必要だった沖縄。今でこそ、沖縄料理も人気があるし、世界文化遺産もあるしで、昭和の高度成長期の頃のイメージからは変化していると思うが、それでも、私が育ってきた広島や北海道、現在住んでいる東京、両親の実家のある群馬、よく行く京都・奈良…知っている土地のどことも違う雰囲気なのではないかと作品を読んでいて期待してしまった。ただ、後書きでもちらりと書かれているが、基地の影響、戦争の残した傷…などあまり安易に行かない方がいいとも思うけれど。 沖縄の様子がよく分かるとは思うが、車での移動の描写が意外に多く、もう少し町並みの描写があったら嬉しかったかも。今年のGWはちょっとムリっぽいけど、いつか行って沖縄料理の食い倒れをやってみたい。 あまりストーリーに関連したことは書かなかったが、琵琶湖の畔で、琉球王朝最後の姫君が彦根の井伊家に嫁ぎ、彼女の伝えた沖縄のぶくぶく茶の茶会が開かれる…というところから始まる。そして、もちろん「ユタ」も作中で重要な役割を果たす。確かに好みのキャスティング・脚本・演出なら、テレビドラマの方が視覚的によりインパクトが強いから、私のような読書目的の人間は楽しめたかも。
April 2, 2008
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