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金融探偵池井戸潤徳間書店 四六上製☆☆☆☆☆◎ この本、行き着けの図書館で「ご自由に持っていってください」というメッセージつきの本だったので、探偵の文字につられていただいてきたのだが、 これが、大当たり! この人の別のミステリも探してみよう。ビジネス書も書いておられるようだが、そっちはいいや…。 決算書から銀行の貸し渋りの理由のウラに気付いたり、100年ちかく前の家計簿からその人の生活を類推したり…。勤務先の銀行が倒産して路頭に迷っている主人公がお金の出入りや銀行の慣習等から色々な推理を広げていき、それで金融探偵と住んでいるアパートの大家の娘(その大家がやっている銭湯の金策の危機を救ったのがそもそもの始まりだ)が名づける。書くのが遅くなったが連作短編集だ。これ、続きないのかなぁ…。最初は無職の主人公を胡散臭い目でみていた交通課の警官、勝村さんと良いコンビなんだけどなぁ。他にも下宿先の夫婦とその娘、マッサージ店の店主、このあたりの役者が揃えばもう少し作品が繋がりそうな気がするのだが…。 そういえば、主人公は職安通いの合間の気を紛らわし、暇つぶしにこの「金融探偵」をするのだが、職も結局決まらなかったんだよな…。続きないか探してみよう。
July 31, 2008
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風呂と日本人筒井功文春新書 新書判並製☆☆☆☆ タイトルから、ごく普通の日本のお風呂の歴史を想像して買ったら、この本が主に扱っているのは「カラブロ」と呼ばれる蒸し風呂の類だった。というより、こちらの方が今の浴槽のお湯に体を浸すタイプより古くからあったそうな。 カラ風呂と一口に言っても、色々細かい区分けがあり、今一番思い浮かべるサウナのようなものから、単純に炭焼きした後の窯に筵やワラなどを敷き詰め、塩水をかけてその蒸気を浴びるものなど色々だ。また、特に西日本の田舎には「風呂」のつく地名が随分残っているようで、それが著者の興味のきっかけだったそうだ。 今残っていたり残っていなかったりする現地のカラブロの様子や歴史的な推移などは結構面白かったが、海外に似たような事例を求めるあたりで、引用が多くなり、ちょっと物足りないかな。朝鮮半島から渡ったものではないかと類推しておられるのだが、彼の国にそんな遺構や知識を持った人が見つからないようだ。 この窯の中にワラや筵を敷いて、塩水をかけその蒸気にあたる入りかたは、かなり塩田との繋がりも感じさせるのだが、どうも、故意にその類似性は書いておられないような気がうする。また、同様に製鉄とも繋がりがありそうだと本の中で述べておられる。塩田に関係するのか、製鉄や炭焼きに関係するのかどちらも興味深い。山の中なら製鉄だし、海の傍なら塩田だ。ただ、製鉄にしろ、炭焼きにしろ、塩田にしろ、昔の人たちからみれば、専門の職能で、当時の技術関連産業のような感覚だったのではないかと思うが。 温泉と(カラ)風呂を昔の日本人が区別していたようだというのも面白かった。 面白かったが、この本をきっかけに関係する本を読もうという気にはならない。なので、☆は四つ。BGM: S.Rachmaninoff Symphony No.3 a-moll 1mvt.
July 29, 2008
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妃は船を沈める有栖川有栖光文社 四六上製☆☆☆☆☆○ 久しぶりの犯罪心理学者火村英生と推理小説作家有栖川有栖の新作。 こちらのシリーズは、登場人物間のやりとりも日常的で、彼らが事件現場に赴く時の描写や事件を離れてからの描写にも生活感がイイカンジで漂っていて、とても好き。特に関西大好きな私としては、ちょっとした地下鉄の駅名や乗り換えなど、細かな地域情報が出てくるだけでも嬉しくなる。多分、今、一番気に入っている小説シリーズだと思う。ベタっとしてはいないのだが、犯罪心理学者の准教授と推理小説作家、そして彼らをとりまく警察の刑事さんたちや、他の人々もサラリと日常が描写されているようでいいのだ。こういうところがシリーズ物のよさなんだろうが、新しい登場人物も出てくる。結構今後どんな風になるか楽しみな人物でもある。 ま、なにはともあれ、最新作を読んだら次回作が楽しみになってくるのだ。早く次が読みたいものだ。
July 23, 2008
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山魔(やまんま)の如き嗤うもの三津田信三原書房 四六上製☆☆☆☆☆◎ 刀城言耶シリーズ。この本がシリーズ中では一番好き。 特に、最初の描写の怖さが凄い。後になってこういうことだった、という解釈がつくのだが、(それにその一部は私も見当はついていた)それでも怖い。蛇棺葬の怖さとはまた一味違うが、それでも怖がりの人は止めておいた方がいいだろう。 今回気に入ったのは、登場人物間のやりとりだ。特に、言耶が父親に少々コンプレックスを抱いているところがここで現れてくる。かじ(漢字が出せない…)取力枚や鬼無瀬警部もいい味を出している。元気な京女の祖父江偲もいい。彼女と言耶のやりとりが一番楽しく、君の悪い作品の中で、日常が戻ってくるような感じだ。 そして作中にさりげなく、時代がぼんやりと分かるような描写がある。ちょっと検索してみたが、昭和三十年代と思われる。さすがに生まれるかなり前のことである。
July 18, 2008
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ふりむいてはいけない平山夢明ハルキホラー文庫☆☆☆☆☆ かつての新耳袋のノリの怖い話集。掲載誌が「Popteen」だそうで、今時の若い女の子の生活が良く出てくるが…。怖いのは同じ。だが、文章はかなりあっさりしているので、読み易い。二時間かからずに読み終わった。これも雑誌購読層に合ってるかな。だが、不思議なことに新耳袋ほどの行間から漂う怖さはないような気がする。その代わりところどころにある女性の写真が怖い…。まあ、CGあたりを使ったグロはないが。 たまに怖い本が読みたくなる。その時のこの人の本のシリーズはよさそうだ。また、別の本を読んでみよう。ちなみに、怖い話がダメな人は読まないほうがいい。とはいえ「ホラー文庫」と銘打ってあるから、大丈夫だと思うが。
July 10, 2008
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蘇我氏の古代史武光誠平凡社新書 並製☆☆☆☆☆ 奈良に行きたくなり、気を紛らわせるために読んだ本。 が、私が今までこの一族に対して持っていたイメージを結構覆す内容だった。抱いていたイメージといっても某漫画の影響大なので、登場人物が出てくる度に漫画のキャラクターの顔が思い浮かぶ始末だった。 特に面白かったのは、蘇我氏を従来の渡来系の一族としてではなく、葛城氏の一族としている点だ。とはいっても、その配下に多くの渡来人がいたため、彼らの先進技術を利用でき、稲目がまず勢力を伸ばし、馬子がそれを発展させて蝦夷へと引継ぎ、入鹿がその強引さゆえに滅ぼしてしまった、というのはまあ、従来のイメージ通りのようだが…。そして聖徳太子像もその血筋から当時としては、蘇我氏の血を強く引いているため、大王継承の本命にはなりえなかったということだ。両親は皇子と皇女だが、双方の祖母は蘇我氏の娘なのである。 さらに大化の改新についても、通例悪役扱いの入鹿が意外と同情的に扱われており、英雄焼くの中大兄皇子が悪役に近い記述。まあ、その母親の斉明女帝の方がひどい書かれようだが…。そして、中臣鎌足は非常に要領の良い人物像だ。そうそう、順序は逆になるが、継体天皇についても、私はミステリ小説的なことを考え、影の政変など妄想(?)していたが、この著者は割と日本書紀(の方だっけ?)の記述をそのまま採用している。 また、蘇我宗家滅亡後の蘇我氏の行方にも最後にちょっと触れてあるが、天武天皇時代に衰退が決定的になり、奈良時代まではまだしも、結局、平安時代になると従四位下までしか出世できなくなり、公卿ですらなくなってしまったようだ。更に天武朝末期には姓も変わっており、石川姓になっている。そういえば、小倉百人一首とかに石川姓の人っていたっけか…?また、蘇我氏の衰退は遣唐使の定期派遣とも多少関係がある。結局、日本の大陸文化の受容の方法の変化とともに、彼らも歴史の大波の中に飲み込まれていったということだろうか。とはいっても、蘇我の稲目、馬子、入鹿は傑出した人物だったのではないかと思う。蝦夷については、この本では馬子、入鹿に劣らぬ人物とされているが、本当はどんな人物だったんだろうなぁ…。そして、どんな本を紐解いてみても、聖徳太子が抜きん出た人物であったことは間違いないようだ。 さほど奈良の地名が頻出するわけではないのだが、やはり古代史にかかせない一族のことをコンパクトに扱った本だっただけあって、古代史好き・奈良好きにとっては、奈良に行きたくなる発作を抑えるには効果的だった。
July 8, 2008
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