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聖女の救済文藝春秋 四六上製☆☆☆☆☆◎ 「ガリレオの苦悩」と同時発売の長編。夫を殺す妻、という面白くなさそうなネタだったので、短編集の方を先に読んだのだが、こちらの方がメロドラマ色も薄く、面白かった。 この小説は最初から犯人は分かるが、そのトリックが、湯川をもってしてもなかなか分からないのだ。ただ、一か所、これはないんじゃないだろうか、という描写が出てくるのが気になる。だが、かなり私好みの展開だった。 ミステリの展開はネタバレになるので、ここには書かないが、湯川と草薙の掛け合い漫才が相変わらず面白い。そして、これは明らかにテレビの影響だが、内海刑事はiPodで福山雅治の歌を聞いているし、湯川はアルマーニの靴だの、半そでのカットソーに革ジャンだの、かなりお洒落になっている。前の著者指定モデルの俳優さんだとイマイチ様にならないファッションだと思う。他の登場人物、薫の先輩の岸谷や草薙の上司間宮なんかも準レギュラー級のキャラだが、映画の登場人物とは重なっていない。でも、ちょっとあの芸人さんなんかのイメージと重なってしまうところがあった。 それにしても、内海薫刑事、どんどんヤな女になってるような気がする。しかし、それを指摘できそうな男性キャラはいないなぁ…。
December 28, 2008
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赤い竪琴津原泰水集英社 四六上製(角背)☆☆☆☆◎ これも図書館で見つけた本。パラっとめくったら、「チェレスタ」だの「ヴィオラ・ダ・ガンバ」だの古楽と音楽に関連した単語が踊っていたので、それに関連したミステリだと思っていたら、恋愛小説だった。 祖母が死んで形見の中から夭折した詩人の日記が見つかり、ヒロイン入栄暁子(いりえさとこ)がそれを遺族に返すところから始まる。彼女が訪れたルーマニア料理店で古楽のアンサンブルが行われており、そこで使用されていた楽器を作った職人がもう一人の主人公で詩人の孫、寒川だった。 楽器職人の寒川とグラフィックデザイナーの暁子という芸術家同士ともいえるカップルだが、そこに寒川の人間関係と暁子の前の男が絡む。それでも恋愛小説とはいっても、割と淡々とした展開で、最後もハッピーエンドで少々あっけないほど。でも雰囲気を味わうには心地よい小説だった。 また、この詩人の日記の礼に暁子は表題にもなっている竪琴(ライア)を贈られるのだが、このライアは13絃のダイアトニック。実は私も20絃のライアを持っているので、これを読んでつい弾いてしまった。
December 27, 2008
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ナラ・レポート津島佑子文藝春秋 四六上製☆☆☆☆☆ 奈良を舞台にした小説。 12歳の森生は、母を早く亡くし祖母と二人暮し。ある日、カスガの鹿を殺してしまう。また、動物に姿を変えた死んだはずの母に大仏を壊してくれと頼む。 その場面から、一気に小説の舞台は変わり、森生とその母はナラ、タカマド山、ヨシノ、ダイジョウ院…etc.と、その地の伝説の人物の中に姿を現す。それはまるで、現代から過去にさかのぼって転生しているような展開と筆致だった。いくつかは私も知っている伝説であり、幾つかは分からない。また、地名・人名はナラ、ヨシノ、ジンソン、トラン、ソウギ…などと全てカタカナで表されているのも不思議な感じがする。また伝説の出典は分からないが、地名の殆んどは行ったことや近くを通ったことのある地名なのも面白かった。 それにしても、驚いたのはいきなりダイジョウ院で門跡のジンソンと彼に仕える「近侍の小者」アイミツ丸の話だ。いきなり寺院恋愛(?)の話になったのだ。この話、どこかに出典があるのだろうか。まあ、あまり恋愛ともいえない内容で、結局アイミツ丸が得度直後に死んでしまうのだが。このストーリーに一番作中でも頁数が割かれている。 奈良といえば大仏だが、この小説でも大仏が大きな役割を果たしているような感じだ。この大仏が奈良の上に乗せられた重石、呪縛のように描写されている。 それにしても、私の印象では奈良というのは、過去の堆積の上に現代があるような場所だと思うが、この小説もそのイメージ通りの雰囲気だと思った。初めて読んだ著者だし、見つけたのも図書館で偶然背表紙のタイトルを見たからなのだが、こういった奈良を舞台にした小説をまた一つ見つけられてよかった。閑話休題:実はこのレビューは今朝未明に書いていた。ところが書き終わっていざアップロードとなった途端ブログのサーバーメンテナンスになり、全てが吹っ飛んでしまったのだった…。メールでのスペアも保存していなかったので、また書き直しになってしまった…。
December 26, 2008
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駅神ふたたび図子慧早川書房 四六並製☆☆☆☆ 京成線の四番線ホームに気まぐれに現れ、その占いがよくあたると評判の「ヨンバンセン」が出した卦を易学学院の4人の人間が解いていく小説の第二弾。 今回もわんこが出てきたり、にゃんこが出てきたり、主人公章平のパパや妹がついに登場したりする。なかなか日常の謎解きがなかなか楽しい。しかし、謎解きをするのは、いつものメンバーでヨンバンセンはそのヒントを出すだけ。章平の下宿の大家さんがまるでミス・マープルみたいで、結構名探偵なのだ。 そして、↓の「遊仙譜」でカセンコってどっかで聞いたなーと思っていたのだが、それがこの小説の前作だったのを読んでいて思い出した。それにしてもヨンバンセンみたいな人が出没する駅、近所にあったらちょっと楽しいかも。
December 23, 2008
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吉岡道夫光文社 カッパノベルズ☆☆☆☆☆ ↓に書いた「古代四国王朝の謎」より2年前に書かれた作品。1992年初版。これも(古代史が専門じゃなくて)文化人類学を専攻した叶雅之が探偵役。 もとから東大寺のお水取りと若狭のお水送りに少し興味があったので、面白い内容だと思ったが、意外と古代の謎の方はあっさりしていた。本当はこのあたりの出自と思われる継体天皇まで話を広げて欲しかったかもね。それに並行して出てくる現代のミステリの方は叶の友人が込み入った理由で大学を辞め、さらに行方不明になって殺人事件の参考人にされて叶とも馴染みの捜査一課の刑事に捜索されるというところから始まる。そしてそこに長い間対立してきた旧家2家が巻き込まれるのだ。まあ、そのあたりはミステリのテンプレートというところだ。 だが、この小説、若狭、小浜のお水送りと奈良のお水取りの描写もある。平日に旅行するなら奈良の修ニ会(これの中で毎年3月12日に行われるのがお水取り)を見に行きたいとおもっているので、読んでいて旅行情緒も味わえて楽しかった。また、小浜も某国の新大統領と同じ名前で話題になっているところだし、「海のある奈良」という通称も好きだ。(これ同名のタイトルで有栖川有栖氏の小説にあるけど)また、小浜は井沢元彦氏が最も好きな場所と書いていたと思う。こちらも行きたいと思っているので、列車の接続の描写などとても興味深かった。まあ、今から16年前の作品だから状況が多少変わっているだろうけど。 この著者の作品は歴史を扱ったミステリがあと1冊くらい、他にも叶雅之を探偵役のミステリがあるようだ。歴史ネタに限らず、他も面白そうだ。
December 18, 2008
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遊仙譜南條竹則 (装丁・挿画)南伸坊☆☆☆☆☆ 南伸坊さんの装丁と挿画につられて図書館で借りた。中国神話の人物と時々ギリシャ神話の人物や釈迦が顔を出す。だが、この本で八仙というのを知った。 何仙姑という美人で大酒のみの仙女をヒロインにした中国神話ドタバタ喜劇、ギリシャ神話と釈迦がゲスト出演、といったところだろうか。この何仙姑が昔フラれた男にそっくりな男と出会い、彼とともに暮らすために難しい術に挑み、その一方で西王母をからかったせいで、その逆鱗に触れた呂洞賓が何仙姑になりすますが、バレて紆余曲折を経て女装してギリシャの死者の島に赴く、というサイドストーリー。 そもそもこの二人がそんなことをしたのは、得体の知れない丹薬、換骨奪胎を作る太上老君がそれを作るための材料を取りに行かせるのと引き換えに呂洞賓には西王母へのとりなしを、何仙姑には惚れた男を仙人にするため(この男に仙骨=素質がないのでと~っても難しい)の薬を授ける、という難題をふっかけたためだ。そこに天界の西王母や王昭君、その他色々出てきているのだが、中国神話に詳しくないので、オリジナル設定は良く分からないかった。だが、その辺りに詳しくなくてもとても楽しかった。文体も常体ではなく敬体で書かれている。それもどこかすっとぼけた昔話風で、挿画の雰囲気ともあっている。
December 15, 2008
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2008年12月発売文庫新・特捜司法官S-A(7)麻城ゆう (挿画:道原かつみ)新書館 ウィングス文庫☆☆☆☆☆ 23世紀を舞台にした小説。この巻は話の内容が重苦しい。でも、次への布石なので、次巻でのカタルシスを待とう。ストーリーが主人公の秋津秀とその付き人セドナを中心に展開するので、秋津と特捜司法官との舌戦がなかったのが寂しかったのだ。ただ、17歳にして大企業の社長を務めるHNベジコウモリとのやり取りがあったのでよかった。 ただ、この小説読んでいて思ったのだが、確かに特捜司法官もヒーロー・ヒロインではあるのだが、秋津も20年近くにわたって、看板番組の主演俳優ということで、やっぱり水際立った存在。私は思わず隣国のヨン様を思い浮かべてしまった。普段は地味だが、まさしくあのくらいのカリスマ性を持った俳優として描かれている。そして読んでいて面白いのが、現代の携帯電話などを未来風の機能を付加して描いていること。ちょっとドラえもんが四次元ポケットから取り出す道具を思い浮かべてしまった。 このシリーズでは今の人類に対して新人類が生まれつつある、という世界が舞台。これを人造人間である特捜司法官がどうやって収拾していくのだろうか。
December 15, 2008
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吉岡道夫光文社カッパノベルズ☆☆☆☆☆ 今、某映画のお陰で三国志がマイブーム。だが、どこかズレている私はついでに魏志倭人伝もそれに含めている。この本も魏志倭人伝の中に出てくる邪馬台国の周囲の国の一つ「イ朱儒国」がどこだったか~ということを推理している。そしてそれを作中研究した郷土史家であり、地元の素封家の死が事件の発端となる。初版は1994年。 ポイントになったのは漁業や釣りに携わる人々が用いる特殊な結び方だった。だが、この素封家の死は自殺で片付けられる。その頃、千葉県市川市に住む古代史が専門っぽいフリーライター叶のところに友人の友人から古代文字が書かれた拓本が持ち込まれる。これを解読していると、その持ち主まで殺されてしまう。そして、その拓本の最初の持ち主こそが土佐清水市の郷土史家で首吊り自殺したと思われていた男だった。さらに、この男の身内で拓本(4つに男によって分割されていた)を持っていそうな人間が殺される。そして、叶は調査のため、土佐清水に行く~という話。 「イ朱儒国」の謎解きも、拓本の文章の単語が随分現代ぽいし、他の描写でも妙に現代的なところがあったが面白かった。また、名探偵が論理的推理で解決に導くという話ではないが、設定にムリがなく、ストーリーがスムーズに進む。でも、これと同じネタ、実はU田Y夫の看板シリーズでも出てくるんだけど…。この程度なら、誰でも考えそうな話でもある。あとは、細かいことだが、叶は市川に住んでいるという設定だが、これ、市川と本八幡を微妙に混ぜてるかも。知っている土地が出てきたのも楽しかった。 それにもまして気になったのは、作中、犯人の「相棒」に寄せる友情の篤さだ。ここのところをもっと描写して欲しかったかなぁ…。気になってしょうがない。そして、この叶を探偵役にしたシリーズはあと二つあるようだ。こっちも読んでみよう。
December 13, 2008
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動物園の鳥坂木司創元推理文庫☆☆☆☆☆ シリーズ最終作。前作を読んでからかなり経っているので、登場人物の名前を忘れていた…。ひきこもり探偵の鳥井がひきこもりになる原因の一因であった、中学時代のいじめっ子が登場、彼と対決する。また、上野動物園がモデルの動物園まで鳥井も外出ができるようになる。相変わらず細やかな人物描写と人と人との違いを大切にする著者の描写と物語が冴えるが、読んでいて、少し心が痛いときも多い。今回も、人々が目をそむけているところを鳥井が表に出す。だが、美味しそうな料理と和やかな人々の描写を読んでいると、随分気が楽になる。また、今回のテーマは動物の虐待だったので、嫌な場面を読むことになるのかと思ったが、そういった場面もかなり控えめで残酷さはない。 長身の坂木と背の低い鳥井の凸凹コンビだが、彼らの内面は解説に書いてあった通り、とてもよく似ている。そして、彼らを包み込むような友人達の団欒を読んでいると、読者もそこに参加しているような気分になる。それが、一番読んでいて楽しかったところで、鳥井の謎解きは時として読むのが辛い時があるのだ。 巻末には鳥井の料理レシピと全国銘菓取り寄せリストが載っているが、このリスト、トラピストクッキーの連絡先の住所が北斗市になっていた。私が函館にいた当時は当別町だったのだが…。市町村合併のせいだが、やはり、あの地を離れてからも随分経ったもんだ。 新シリーズが開始されているようなので、それも読んでみよう。
December 11, 2008
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山村正夫講談社ノベルス☆☆☆☆☆ ネタバレ箇所は文字色を背景色と同じにしてありますが、他にもネタバレがないとは限りません。特に勘の良い方はご注意下さい。 旦那が捜査一課の警部という女流棋士小柳カオリが、将棋が関係した猟奇殺人を推理する。初版は1991年。 坂田金時の子孫を自称する男が持っていた古い将棋の駒を見せられたカオリは、その直後、その男がバラバラ殺人事件の被害者になったことを知る。しかもその殺人は、3人の体をバラバラにして一人分に再構成して遺棄したという猟奇的なものだった。そして、死体の手に将棋の棋譜が握られていたことから、旦那を助けるために事件に関わる。 丹後半島の名所の描写が読んでいて楽しかったし、思わせぶりに出てくる人や他のものにもミスリードされてしまった。だが、最初の方は初出が将棋雑誌だっただけあって将棋の話ばかりで門外漢には退屈だったが、ストーリーが動き始めてからは一気に読めて、予想よりおもしろかった。特に、伝奇的な設定へのもっていきかたも、手術の麻酔中にみた幻覚と思えば、突飛ではないと思う。が、被害者の殺し方にはちょっとムリがあるかも。あんな殺し方したら、痕跡が残ると思うんだけどなあ。近所の動物が死んでたとかで。あと、遺体のバラしかたにもちょっとムリがあるような気がする。私は容疑者と同じ苗字の人間が犯人だと思っていたら、ここで手の細かいどんでん返しがあるし。 読んでいて思ったのはヒロインの良妻ぶりがちょっと鼻に付くこと。現実の女ってもう少し自己主張するぞ。そして、1991年という初版年の通り、まだ携帯電話のない時代の話だが、意外に違和感がなかった。そういえば、冷凍車の普及もこの頃からだろうか?
December 9, 2008
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高木朝雄新風舎 B6判並製 この本、自費出版じゃないかな…?近所の図書館でタイトルからミステリの短編集と思って借りてきたら、短編というより掌編(全64頁)の私小説だった。著者の方のプロフィールを見ると、ちょうど団塊の世代。造船工という厳しい職場で働く傍ら小説を執筆となっていた。 造船所で働く人々の日常を淡々と綴り、ちょっとした言葉の端々に厳しい職場だということが伺える。そして造船所を舞台にした小説ではなくても結末はちょっと皮肉が効いている。また、年齢から政治運動のことにもちょっと触れられているし、作品の雰囲気自体が昭和50年代かそれより前くらいに思われる。読んでいる間、最近ケーブルテレビなどでよくやっている、昔のドラマの再放送を観ているような気分になった。職種も違うし、年齢ももう少し上だが父の職場や周囲の雰囲気もこんなだったのかな。
December 8, 2008
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クリスマス緊急指令高田崇史講談社ノベルス☆☆☆☆◎ 表題作の他、バーを舞台にした洒落た連作や所謂バカミス(?)の類、一台のオルゴールを中心にその周囲の人間模様を描いた作品、また、学生時代の甘酸っぱいような思い出にミステリを絡めた作品など短編集6作。 オルゴールと学生時代の短編が一番のツボだった。特に、学生時代の話はお互いに女の子に思いを寄せたりするのだが、孤立気味で才能豊かな資産家の息子と平凡な男子生徒が共通の趣味を通じて仲良くなる、というのが良かった。これ、大人になってからのストーリーがあってもいいなあ。あとは、表題作は大友黒主の和歌をネタにした作品だが、もう少し突っ込んであると面白かったかも。オルゴールをネタにした作品も面白かったが、オルゴールのチューニングでどういうことになったんだろう??ちょっと想像がつかなかった。 「クリスマス」が表題になっているせいもあるだろうが、いつもの作風とはちょっと違った感じの作品でなかなか興味深かった。
December 4, 2008
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