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流星の絆東野圭吾講談社 四六上製☆☆☆☆☆*ネタバレの可能性があるところは、一応背景と同色にしてありますが、他の部分を読んでいてもネタバレになっていない保証はありません。 帯のアオリにつられて購入したが、正直、私のツボドンピシャリではなかった。それでも、面白かった。 兄妹3人で流星群を見に行った夜、何者かに両親が殺される。その後、両親が経営していたハヤシライスが評判の洋食屋を売ったお金も親戚に盗られ、施設で育った3人は世間の辛酸を嘗めて、やがて美人の妹静奈が金持ち男をひっかけ、長兄が作戦立案、弟が静奈とパートナーで実行する、という詐欺で生計をたてるようになる。ここがストーリーのかなり前の部分なのだが、ここだけ読んでいた時はコンゲーム小説なのかと思ったほどだ。そして、その詐欺の標的を狙っているうちに、両親の殺害犯らしき人間にいきあたって…というストーリー。 この長兄が実にお兄ちゃんというか、親代わり、という感じで責任感が強いのが格好イイ異。実は将来のために詐欺で貯めたお金を元にカタギになる、という時に親を殺した犯人かも、という相手に出会うのだ。だが、正直、読んでいると随所で違うんじゃないかなーというのは読者には察せられるような描写が多い。最も、それでも真犯人を当てるのは二時間サスペンスのノリでもちょっと難しいと思う。ただ、妹を使って相手を騙す、というのがかなりスリリング。特に親の仇が絡んでからは、相手の男もそれまでとは違う(それまでは所謂「キモオタ」ばかり)キレる相手なので、そのやりとりが面白かった。 そして、最初から兄二人が妹を見守る様子がとても微笑ましい。(ここが微妙に私の好みとは違うんだが…)でも兄二人が過保護なんじゃないかというくらい、妹静奈はしっかりしてるぞ。また、「流星」が結構暗示的なキーワードでもある。これが、兄妹の絆だけを表していないような気がする。論理的な「謎解き」を期待すると、最後の土壇場の解決法はあまりに呆気なくてちょっと物足りないが、読後感は物凄くいい。ミステリではあるが、どちらかというと「物語」に重点が置かれていて、映像化にはいいかもしれない。
August 30, 2008
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横溝正史角川文庫☆☆☆☆○ 中編の「髑髏検校」と長編「神変稲妻車」の二編。 髑髏検校は徳川家斉の時代を舞台にした吸血鬼譚。千葉の沖での鯨漁から始まり、短いながらも起伏に富んだストーリーで面白かった。頁数の割に登場人物が多くて、時々誰が誰やら分からなくなってしまったが、仕掛けも上手く好編だと思う。そして、登場人物の数は多いのだが、一人一人が個性的というかデフォルメがきいていて、ドラマ化したら通俗的になりすぎる可能性はあるが楽しいかも。 もう一編はコレ一冊で薄めの文庫になりそうな「神変稲妻車」。こちらは、最初ストーリーがあっちこっちに飛ぶし、登場人物も当然多く、クライマックスまでは冗漫な感じすらして、途中で投げ出そうかと思ったほどだった。それでも、一話一話の密度は濃いし、どこかの週刊少年漫画や八犬○のようにあからさまにご都合主義といいたくなるような展開はなかったように思う。皆無ではないが…。そして、クライマックスからのまとめ方は物凄く見事だったと思う。それまで、あれだけ大風呂敷広げておいて、それが見事に収斂していった。でもちょっと大団円とは言いがたいかもしれない。 ミステリ小説のイメージの強い横溝正史がこんな小説を書いているとは思わなかったが、さすがの出来だと思う。「髑髏検校」にしろ「神変稲妻車」にしろ悪人の側にもどこかに同情の余地があったり、極悪非道の悪人だけでなく、あるときは悪人で途中から主人公の側につく登場人物が出てきたりして、登場人物の善悪の区分けが曖昧になるのも、この著者独特の書き方ではないかと思う。「神変稲妻車」は江戸時代の読み本のような話、ということで、一話一話読者を面白がらせるため、ご都合主義設定・展開ウェルカムなのも当然なのだが、その中でも一ひねりあるように思った。また、偶然なのだが、どちらも読んでいて、御茶ノ水や湯島聖堂、甲府など行ったことのある地名が出てくるのもよかった。 今度山田風太郎や八犬伝(読んだことはあるが多分読了してないのだ)も読んでみようと思うが、私はやはり余り江戸の時代劇よりは現代かもう少し前の戦国時代以前の時代劇の方が好みかもしれないな…。
August 20, 2008
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まひるの月を追いかけて恩田陸文藝春秋 四六上製☆☆☆☆☆ *ネタバレと思しき箇所は文字色を背景と同色にしています。 ミステリーといっても殺人だの犯罪絡みとは言い難い。偽証はあるんだけど。 行方不明になった異母兄の恋人から、彼を探すために主人公はその恋人の女性と共に奈良に旅立つ。奈良が好きなので読んだが、途中までは結構冗漫。この主人公の女の子らしさ(といっても離婚歴もあるんだけど…)にかなり鬱陶しくなる。奈良の風物もこの主人公の目を通してだと、ちょっと興ざめかな…。 ストーリーが面白くなるのは、かなり後ろの方になってから。勘のいい読者(ある意味小賢しい読者)は気付くだろうが、主人公といい勝負で鈍い私は、見事に著者の計略にひっかかってしまった。本当に最後四分の一くらいになって、このタイトルの通りに読者も主人公同様、ある事実に気付かされる。 もっと凄いのは、この本の中には書かれていないが、主人公らにとって大切な意味を持つ場所として、聖徳太子が生まれたと伝えられる橘寺が出てくるのだが、この場所のチョイスというか、聖徳太子の生母がどんな人だったのか、某漫画(作中にもちょっと言及されているが山岸涼子さんの「日出処の天子」)の知識でもいいからあると、作中には全く描かれていないあることが仄めかされているのだ。この人、聖徳太子の父親になった亭主に死なれた後、その亭主の連れ子と再婚してるんだよね…。この小説中には明記されてないけど…。ここまで読んで、面白かった~と思えるようになった。 そして、かなり余韻を感じさせる結末も面白いと思う。
August 10, 2008
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仇敵池井戸潤徳間書店四六上製☆☆☆☆☆ 数日前に読んだ「金融探偵」をヘヴィにしたような内容。もっとも、中で扱っている金融の事情については、私には何が何だか詳しいことはよくわからない…。短編集の体裁にも思えるが、連作短編集というよりは、一章完結の長編という感じだ。 ただ、小さな事件から都市銀行の裏資金で私腹を肥やす人間を追い詰めていくストーリーなのだが、勧善懲悪なので、読後感がかなりいい。主人公のライバルが主人公を呼び出した夜に自殺してみたり、主人公自身も危ない目に遭っており、サスペンスも感じられる。町場の融資話が思わぬ方向に進んでいくのが面白いといえば、面白い。 記憶違いかもしれないが、著者の方のHPによると、もう続編か姉妹編もあるようだ。これも読んでみよう。
August 4, 2008
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冥い天使のための音楽倉阪鬼一郎原書房 四六上製☆☆☆☆ クラシック音楽、音大を舞台にした…一応ミステリなのかなぁ…? まあ、確かにミステリだよなぁ…。が、余りにも感覚的な文章、散文詩のようでもあるが、何が何だか分からない耽美な文章がかなりの部分を占めて、それが著者の狙いなのかもしれないが、読者をミスリードしていく。 ネタはクラシック音楽だし、音大だし…と思ったが、一部読者に不親切じゃないかなーとも思える場所もある。一から十まで論理明解であって欲しいとは(どっちみち私のアタマがついていけないし)思っていないが、この作品はちょっと私の許容範囲を超えている。そして、最後まで主人公に近い役割のヴィオラ奏者の女の子と他の弦楽カルテットのメンバーがアホ過ぎるような気もするのだが…。大学生だと思うとそんなものかな。 文字数はさほど多くない版面なのだが、抽象的な文章が多いし、少々中断したので結構読み終わるまでに時間がかかってしまった。
August 3, 2008
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